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農林水産省

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トップランナー 今、この人たちが熱い vol.1

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株式会社荒川農園(香川県)  平成26年度 全国優良経営体表彰 個人経営体部門 農林水産大臣賞受賞

”逆境を乗り越えた先にあった
明るい笑顔とおいしい野菜”



学生時代に農業法人でアルバイトしたことがきっかけでこの道に進み、現在は独立して株式会社荒川農園の代表取締役として活躍する荒川鉱章(あらかわひろあき)さん。恒常的に水不足であり、土壌条件的にも野菜栽培に恵まれない場所で、独立から年々成果を積み重ね、法人化にも成功した背景を探ります。

株式会社荒川農園の人たちの写真


荒川 鉱章さんの写真
荒川 鉱章さん


幅広い年齢層のスタッフが働く様子の写真
幅広い年齢層が明るく取り組み、活気あふれる雰囲気が好循環の原動力だ
アルバイトから始め、順調に農地を拡大し法人化
大学在学中に、香川県内の大規模な農業法人でアルバイトをしていた荒川鉱章さん(42歳)。卒業後はそのまま就農し、10年間の勤務後、結婚と住居の新築を機に平成18年に独立しました。

荒川さんは「機械化農業とは違う、人の手をかけてこそ得られる良質な野菜を!」という明確なビジョンを掲げ、5カ年単位で計画を立てて着実に実行しています。

最初の5カ年は、農地を増やして人材を確保し、品目毎の栽培技術レベル向上に集中。そこでまず行ったのが、販売と生産の住み分けです。販売をJAに委ねて生産に資源を集中させることで、創業時と比べて収益が約3倍もアップしました。また、輸送コストや市場での価格などを踏まえて、なるべく収益性が高いサイズになってから野菜を出荷するようにし、10a当たりの収穫高を平均より大幅に引き上げることにも成功しました。

次の5カ年では、従業員の質を高めることや、継続的な雇用を維持するための環境整備や投資を目標に掲げて、今も邁進中です。昨年2月にはついに法人化。収支がより明確化し、継続的に収益を上げられるようになりました。これにより、雇用維持の目標も達成。中高年の雇用を推進することで、地域雇用にも一役買っています。

近隣には野菜栽培には不向きな農地が多い中、「諦めないで工夫を凝らせば結果はついてくる」と信じ、計画的な努力を重ねた荒川さん。独立から8年で、経営面積を13倍にまで拡大させることに成功したのです。その経営努力が認められ、平成26年度全国優良経営体表彰において、個人経営体部門の農林水産大臣賞を受賞しました。


農業経営は”感覚よりも理論”
これらの計画を進めるうえで、荒川さんが心がけていることがあります。それは、実家が農家ではないからこそ「感覚よりも理論(ノウハウ)を積み重ねて農業を行う」ということ。その中の一つが、日報の利用です。毎日を反省し、記録をつけてデータベース化することで、現場では気付かなかった問題解決策を思いつくことが何度もあったといいます。日報の活用でノウハウを蓄積する姿勢は次世代にも受け継がれ、自発的に意見を交換し合う若手社員が中心となって農園を盛り上げています。

人を育て、野菜を育てる
20~60代までの幅広い年齢層のスタッフが働く荒川農園。荒川さんは農業の将来を見据えて、若手の育成には特に力を入れています。現在、スタッフの取りまとめは正社員である若手3名が担当。「人を育て、野菜を育てる」という経営理念のもと、働くスタッフが明るく、お互いが切磋琢磨できる風通しのよい環境作りにも心を配っています。

しかし、荒川さんの挑戦はこれだけでは終わりません。より収益性の高い農業経営を進め、「従業員が楽しく働き、みんなで知恵を出し合ってより良いものを作っていく”チームワークの経営”で、今までにない農業の仕組みを実現したい」と夢を語っています。



荒川農園のあゆみ 1996年、大学卒業と同時に県内農業法人に就職。2006年、結婚と住居新築を機に30aの農地から独立就農。同年に経営規模を1.26haに拡大。2011年、作付け面積10.66ha、販売金額4,118万円を達成。2012年、作付け面積12.86ha、販売金額6,017万円を達成。2013年、作付け面積16.65ha、販売金額8,826万円を達成。2014年、株式会社荒川農園として法人化。同年、全国優良経営体表彰農林水産大臣賞受賞



荒川農園の特徴的な取り組み

作業中の写真
1 作業の効率化
各畑でうねや溝の幅を統一。機械作業の能率アップはもちろん、スタッフの作業効率の向上にも繋がった
整理整頓された道具の写真
2 整理整頓
道具を分かりやすく整頓することで無駄をなくし、臨時雇用者もスムーズに仕事に取り組める
農作物の大きさを判定している写真
3 収穫の工夫
「市場価値の高い農作物の大きさを簡単に判定できないか」という課題に応えた若手社員の案。スタッフ全員が携帯する

情報共有しているの写真
4 情報共有
ホワイトボードで「見える化」を図った会議。朝と昼の2回、スタッフ全員で行うことで日々の目標を確認

日報を確認しているの写真
5 ノウハウの蓄積
作業後にスタッフが日報をつける。蓄積する記録が財産に。現在は効率を考慮し、デジタル化を図っている

白下糖作りの写真
6 次なる挑戦
連作障害の回避策としてサトウキビを導入。現在は白下糖作りまで進行。6次産業化を視野に挑戦を続けている


荒川農園
所在地 香川県高松市
作付け面積 16.65ha
栽培品種 ブロッコリー(11.5ha)、青ネギ(2.5ha)、レタス(2.0ha)、キャベツ(0.4ha)
販売金額 8,826万円
労働力 家族1名、常時雇用8名、臨時雇用年間144人、研修生2名


文・写真/淵江亮一(フリート)