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農林水産省

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特集 野生鳥獣と向き合う(2)

[PART1 被害]農作物を食い荒らす深刻な鳥獣被害に農家が悲鳴!



シカ、イノシシ、カラス等に農作物が食べられるなどの鳥獣被害。農家のやる気まで奪ってしまう、深刻な問題です。

野生鳥獣による農作物被害が深刻化しています
CASE1 シカ
草食性のシカは食欲が旺盛で、農作物に加え、ほとんどの種類の植物を食べる。
柵を飛び越えて侵入するうえ、背が高いので地上2メートル近い高さの植物や樹皮までが被害に



被害を受けたキャベツ
写真提供/長野県
樹皮を食べるシカ
写真提供/北海道


牧草地を荒らすシカの群れ
写真提供/信州大学・竹田准教授
被害を受けた白菜
写真提供/神奈川県



CASE2 イノシシ
雑食性で、地中の植物や昆虫なども掘り返して食べてしまう。田畑に侵入して農作物を食い荒らしたり、泥を体にこすりつける「ぬたうち」を行う
雑食性で、地中の植物や昆虫なども掘り返して食べてしまう。田畑に侵入して農作物を食い荒らしたり、泥を体にこすりつける「ぬたうち」を行う
写真提供/農研機構・中央農業総合研究センター


CASE3 サル
植物を中心にした雑食性で、十数頭から百数十頭までの群れで行動するのが特徴。集団で来て果物や野菜などを食べ散らかす。家屋に侵入したり、人に危害を加えることも
植物を中心にした雑食性で、十数頭から百数十頭までの群れで行動するのが特徴。集団で来て果物や野菜などを食べ散らかす。家屋に侵入したり、人に危害を加えることも
写真提供/埼玉県



一年の働きが一晩で水泡と化す
「朝、畑に行ったら、収穫間際のキャベツがシカに食べられていた。今季の仕事が水の泡だ」

そう語るのは野菜の栽培農家・Aさん。設置していた柵を飛び越えて侵入されてしまった、と嘆きます。

「うちは収穫直前にイノシシに入られ、稲がなぎ倒された。臭いがついてしまって出荷できないから、これまでの苦労が一晩でパーだ」

稲作を営むBさんも頭を抱えて暗い表情。これまでも多くの被害に遭ってきた2人は「もう農業をやるのがイヤになった」と、精も根も尽き、疲れ切った様子です。

野生鳥獣による農作物被害額は、毎年200億円前後。被害額が大きいのは北海道、福岡県、長野県、宮崎県、兵庫県などで、被害の7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。特に近年、シカ、イノシシの被害が増加しています。

動物園やテレビなどで目にするイノシシやシカは、かわいいイメージですが、農家にとっては天敵以外の何者でもありません。丹精込めて育てた農作物を一晩でダメにし、暮らしの糧を失ってしまう……。農家にとって鳥獣被害は、まさに死活問題なのです。

このほか、農業被害に限らず、車両との接触事故や、家屋・文化財の破損、人身被害など、生活環境や生態系への影響も深刻化しています。


漫画『山賊ダイアリー』

野生鳥獣は増加し、高齢化で狩猟者は減少
では、どうして鳥獣被害がこれほど深刻化してしまったのでしょうか。

古来から農耕が盛んだった日本では、動物と人間の間に常に軋れきがありました。人々は山の中やふもとに小屋を作って寝ずの番をして鳥獣の侵入を防いだり、防護柵を設置したり、弓矢や落とし穴で捕獲していたのです。食糧の乏しかった時代は、シカやイノシシの肉は貴重なたんぱく源として食べられ、狩猟と農業との兼業で生計をたてる人たちも少なくありませんでした。

しかし、近年になって農山村の過疎化が進み、農業従事者の減少に伴って営農条件の悪い中山間地を中心に耕作放棄地が増加。野生鳥獣の生息地域が広がり、生息頭数がますます増えています。その一方で、捕獲の担い手である狩猟者は減っており、高齢化が進んでいるのが現状です。

野生鳥獣は増え、狩猟者は減る。日本の農業の明るい未来のために、抜本的な対策が求められています。


シカ・イノシシが増加する一方、狩猟者は減少しています
シカやイノシシの数は増加していますが、狩猟免許を所持する狩猟者は減少の一途。その半数以上は60歳以上と、高齢化が進んでいます。
個体数の推移(推定)
●ニホンジカ(北海道を除く)
●ニホンジカ(北海道を除く)
(参考)2012年度の北海道の推定個体数は約59万頭(北海道資料)
●イノシシ
●イノシシ
資料 : 環境省「統計手法による全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等について」より作成 ※注 : 数値は全国の個体数推定の中央値
狩猟免許所持者数の推移(年齢別)
狩猟免許所持者数の推移(年齢別)
資料 : 「平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」より作成 ※注 : 近年7年間は毎年集計、それ以前は5年ごとの集計




取材・文/岸田直子

イラスト/岡本健太郎 ©岡本健太郎/講談社
(イラストは漫画『山賊ダイアリー』からの引用です)