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農林水産省

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特集1 米(6)

[PRODUCER]  日本最大規模の米生産者を訪ねて



日本最大規模の農地面積を誇るのが、協業型農業法人「兵庫大地の会」です。
13年前、「地域の稲作を守り続けられる農家になろう」と、県内の若手農業者が地域横断的に連携して立ち上げました。


東京ドーム210個分!!東京都千代田区の広さにも匹敵する1,000ヘクタールの大規模水田

東京ドーム210個分!!東京都千代田区の広さにも匹敵する1,000ヘクタールの大規模水田
株式会社兵庫大地の会
【所在地】兵庫県姫路市夢前町宮置918番地  【主要な事業】米の生産・販売
【農地面積】約700ヘクタール(他に契約農地約300ヘクタール)
【販売金額】約1億5,000万円(2014年度の共同販売分)【労働力】社員26名


兵庫大地の会の代表・衣笠愛之さんのほ場では、日本酒原料米(山田錦)の収穫も進む。海外で日本酒の需要が伸びる中、その供給力が注目されている
兵庫大地の会の代表・衣笠愛之さんのほ場では、日本酒原料米(山田錦)の収穫も進む。海外で日本酒の需要が伸びる中、その供給力が注目されている
消費者から高い評価を受けている兵庫大地の会のブランド米。多様なニーズに応えられるよう、約20品種を生産
消費者から高い評価を受けている兵庫大地の会のブランド米。多様なニーズに応えられるよう、約20品種を生産


始まりは中山間地の小さな水田
兵庫県夢前町(ゆめさきちょう)(現姫路市)の中山間地にある0.4ヘクタールの水田を手に入れて、専業農家を始めた衣笠愛之(よしゆき)さん。1994年、33歳のときでした。「最初は小さな水田でしたが、3年間で3ヘクタールになり、夢中で働きました」と衣笠さん。次第に近隣の農家から認められ、後継者のいない高齢の農家から「うちの農地を任せたい」と頼まれることが増えていきました。

観光客でにぎわう姫路市の中心部からそれほど離れていない夢前町ですが、農家の担い手不足はそれだけ深刻化していたのです。

若手農家と共同で株式会社化
地域の稲作の将来に強い危機感を覚えた衣笠さんは、「水田を次の世代につなげるには、個々の農家では戦えない。同志をつくろう」と考えるようになり、2003年、思いを共有する県内の若手農業者8人と"たんぼの継承人"を標榜する協業型の農家集団「兵庫大地の会」を立ち上げ、肥料や資材などの共同購買や米の共同販売などに挑戦します。

12年には、TPP(環太平洋パートナーシップ)による影響を見すえて、経営環境の変化により対応しやすくするため、県内の農家21軒が共同出資して大地の会を株式会社化し、衣笠さんが代表に就任しました。

「若い農家の集団ですが、一家言あるプロばかりですから、株式会社として一つにまとまるのに10年かかりました」と衣笠さんは笑います。メンバー間で意見がぶつかれば、膝をつき合わせてとことん話し合い、結束を強めたそうです。

現在、平均年齢36歳、26人の社員が経営する農地は、北は日本海側の新温泉町から南は淡路島まで、県全域にわたります。合わせれば700ヘクタールに及び、委託生産の300ヘクタールを含めると1,000ヘクタールに達しています。

すでに株式会社の稲作経営規模として日本最大級ですが、農林水産省の「人・農地プラン」(※)もあって農地は集まり続けており、新たな売り先の開拓などの対応に追われる日々です。

「平場の農地における集約のような効率化は難しいのですが、分散した農地でも十分スケールメリットを活かせています」

※「人・農地プラン」=地域が抱える人と農地の問題を解決するため、「未来の設計図」として集落単位で策定する計画

人と人のつながりで夢が形に
チームプレイの利点として、社員の多くが県の農業団体やJA青壮年部の要職を務めているため、「情報が集まりやすくなり、かつ県への政策提言など情報発信をしやすくなった」と言います。

単に意見を述べるだけでなく、行政やJA、民間企業と連携して、地域活性化のための実物大の姫路城を稲で描く水田アート、農業に愛着を持ってもらうための農業体験や食育、農機具メーカーとの新機種開発など、さまざまな事業を実現してきました。

「まずは夢を持つこと。夢は人と人のつながりによって形になる」という信条を持つ衣笠さん。握った寿司のシャリを冷凍にして輸出できないか、ベテランの農業者のノウハウをデータベース化してはどうか――と夢が広がり続けています。


米女子 Kome-Girl
黒田亜子さんは小学2年生の娘を持つお母さん。普段はオペレーターを担当
黒田亜子さんは小学2年生の娘を持つお母さん。普段はオペレーターを担当
米作りの現場に 子育てママが大活躍!「きすみ農Girls」
兵庫県小野市の農事組合法人きすみの営農では、約37ヘクタールの広大なほ場で、6名の子育てママ「きすみ農Girls」が農作業に精を出しています。黒田亜子さんもその一人。今では稲刈りの際に大型コンバインを華麗に操縦しますが、4年半前まではまったくの未経験者。「収穫の時が一番やりがいを感じます」と農業の楽しさを話します。

高齢化で担い手不足に悩んでいたきすみの営農も、今ではママたちが中心的存在。「やはり子どもには安心な作物を食べてもらいたい」と話す点は、子育て世代のお母さんだからこそのモチベーションです。自らが刈った米にも愛情がたっぷり注がれています。

「きすみ農Girls」は30~40代の子育てママ6名の女性部。きすみの営農の窮地を救い、「女神が舞い降りた」とも言われたとか
「きすみ農Girls」は30~40代の子育てママ6名の女性部。きすみの営農の窮地を救い、「女神が舞い降りた」とも言われたとか


取材・文/下境敏弘
撮影/島 誠