このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

福島大学の被災地支援 意欲的に活動する学生たち

福島県福島市  福島大学うつくしまふくしま未来支援センター学生サポーター組織 FURE's(フレッツ)




安心・安全な農作物の生産や流通体制の構築の支援、正しい情報発信などを通して農業生産者を応援する福島大学。
その学生組織FURE'sのメンバーはさまざまな活動を通して福島が抱える課題に向き合っています。
福島県福島市


佐藤美紗さん(前列左)が代表を務める観光パンフレットの制作のプロジェクトのメンバー
佐藤美紗さん(前列左)が代表を務める観光パンフレットの制作のプロジェクトのメンバー


今年のガイドブックはうつくしまふくしま未来支援センターのマスコット「めばえちゃん」が案内するスタイル 今年のガイドブックはうつくしまふくしま未来支援センターのマスコット「めばえちゃん」が案内するスタイル


避難を余儀なくされた被災者と被災地域の復旧・復興の支援を目的とする組織として、東日本大震災の発生直後の2011年4月に福島大学内に設立されたのが、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」(通称「FURE」(フレ)※)です。
※FURE:Fukushima Future Center for Regional Revitalization


3つの部門で被災地の復旧・復興の支援活動を展開
以前から地域密着型の大学として地域貢献に力を入れてきた福島大学では、新たな組織の名称は、地域が抱える具体的な課題に対応していくという意志を込め、「研究センター」ではなく、「支援センター」としました。

52名のスタッフでスタートし、現在、被災地の復旧・復興や商工業者の再建を支援する「地域復興支援部門」、子どもたちの学習支援や心のケアなどを展開する「こども・若者支援部門」、農業の復興支援を行う「農・環境復興支援部門」の3部門が活動しています。

復興支援の活動の実践を学生の成長につなげる試み
FURE事務室の武山智治さんは「震災後、福島大学の志願者は心配したほど減少せず、それどころか、このような時だからこそ、福島で学びたい、と入学してくる学生もいました」と語ります。

そんな思いを抱く学生が支援に参加できる仕組みを設けようということになり、2013年、FUREの事務室に福島が抱える課題をセンター専任の教員とともに考え、行動する学生サポーター組織として「FURE's」(フレッツ)が結成されました。復興支援の活動を通して得られる経験を成長につなげ、復興に積極的に貢献できる人材を育成しようという試みです。

学生に参加を呼びかけたところ、「地域社会の役に立ちたい」「福島の現状を学びたい」と60名が結集し、おのおのが関心を持つ分野の特任教授の指導を受けながら、支援活動を行うことになりました。加えて、センターが主催する研究会やシンポジウムへの参加や、センターの運営スタッフとしての活動も行っています。

学類や学年が異なるメンバーだが、編集会議で熱心に議論を重ねた 学類や学年が異なるメンバーだが、編集会議で熱心に議論を重ねた

「私たちが大好きな福島を好きになってほしい」
2014年にはFURE's内でプロジェクトチームを編成し、学生が事業を立案・実行していくことになります。

その一つが観光パンフレットの制作です。2015年度は5人で、県央部の中通りをコース別に紹介するパンフレットを作りました。おいしい食べ物を紹介する「まんぷくコース」では、福島県が15年かけて開発した米の銘柄「天のつぶ」や収穫量全国2位の桃を取り上げています。

代表の佐藤美紗さん(人間発達文化学類1年生・取材時)は「取材に行くたびに福島の魅力を改めて感じ、また、みなさんに快く対応していただきました。私たちがますます好きになった福島に多くの人に来てもらって、好きになってほしいです」と微笑みます。

農業未体験の学生が一から米作りにチャレンジ
もう一つのプロジェクトが米作りの試み、「おかわり農園」です。「生産者の立場で考えてみよう」と農業初心者の学生が集まり、株式会社松川アグリ農産から福島市松川町の12アールのほ場を借り、その指導を受けながら、田植えから稲刈りまで全工程を自分たちで行いました。

「実家は農家ですが、それまで農作業は手伝い程度でした」と語る代表の武山蓮(れん)さん(経済経営学類3年生・取材時)は「祖父や父の苦労が身に染みて分かりました」と言います。

米作りのほか、昨年11月には福島県産米のブランド力向上や生産者と消費者の交流の場づくりに役立ちたいと「ふくしま・かわまた米コンテスト」を開催しました。「イベントでも外部の方々と関わる機会が多く、たくさんのことを教えていただきました」(武山さん)。

現場に飛び出した若者たちは、机上では学べない貴重な経験を重ねています。


パンフレットの「ゆったり温泉コース」では飯坂温泉を紹介 パンフレットの「ゆったり温泉コース」では飯坂温泉を紹介

安全でおいしい米はどのように生産されているのか、学生が体験を通して学んだ
安全でおいしい米はどのように生産されているのか、学生が体験を通して学んだ

昨年11月に福島市・川俣町・JA新ふくしまとの共催で米コンテストを実施。第1次審査には約70軒の農家が参加した
昨年11月に福島市・川俣町・JA新ふくしまとの共催で米コンテストを実施。第1次審査には約70軒の農家が参加した





文/下境敏弘


読者アンケートはこちら