今月の農林水産大臣賞 vol.1
一度食べたら、ほかのものが食べられなくなる! 毎日、食卓にのせたいトマト
独自の品種開発と高い生産管理技術、対面販売にこだわった"お客様第一主義"の農家が作るトマトは、「毎日食べても飽きない」と顧客の心をつかんで離さないおいしさです。
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日本農業賞とは、全国農業協同組合中央会(JA全中)、都道府県農業協同組合中央会(JA都道府県中央会)と日本放送協会(NHK)の主催により、農業経営や技術の改革と発展に意欲的に取り組んでいる農業者と営農集団を表彰するものです。 |
真っ赤に完熟するまで一粒一粒丁寧に育てられるミニトマト。
にいみ農園(愛知県) 新美康弘さん・みどりさん 康弘さんは1967年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後に父親の跡を継いで就農し、トマト作りの道へ。みどりさんは1966年生まれ。生命保険会社勤務後、康弘さんと結婚。会社員時代のノウハウを活かして、顧客との信頼関係を築く販売に携わっている。 所在地/愛知県碧南市桃山町2-34 http://www.niiminouen.co.jp〔外部リンク〕 |
トマト本来の味にこだわる
「まずは食べてみてください」
もぎたての真っ赤なミニトマトを目の前に並べてくれたのは、にいみ農園の新美康弘さん。
口の中でかむと、さわやかな酸味と程よい甘みが広がり、トマトらしい青臭さもほんのりと感じられます。もう一つのミニトマトは、しっかりしたかみごたえでジューシーな甘さ。おいしさはもちろん、特徴ある味の違いにビックリです。
「最初のものが『プリンセスあかねちゃん』、次が『プリンセス希(のぞみ)』。どちらもうちのオリジナルです」
にいみ農園では、この2つにオリジナルトマト「プリンセスまお」を加えた3品種を直営売店3店舗で販売、地元のJA7カ所に出荷しています。
「最近では糖度の高いフルーツトマトやカラフルなミニトマトが出回っていますが、うちがこだわっているのは"毎日食べても飽きがこない"野菜としてのトマトです」と新美さん。そのため、価格も1キログラムでミニトマト1296円、トマト864円とスーパー並みに設定しています。
プリンセスまお なめらかな食感と、とろけるような口どけが特徴の中玉サイズのトマト。真っ赤に完熟しても果肉はしっかり、ジューシーさが口の中に広がる。 |
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プリンセスあかねちゃん さわやかな酸味とほんのりした甘みのバランスが絶妙!表皮が薄く、トマト本来の香り&ジューシーさが楽しめる。種苗登録品種。 |
プリンセス希 酸味が少なく、やさしい甘みでトマトが苦手の人にも食べやすいのが魅力。少し厚めの表皮としっかりした果肉は、お弁当やおやつにも最適。 |
独自の品種開発と高い生産管理技術
新美さんが父親の跡を継いで就農したのは1989年のこと。その8年後、輸入増加に伴う価格低迷に見舞われ、経営困難に陥りました。そのとき、「お宅のトマトはとてもおいしい」と近所の人が直接農場に買いに来てくれたことをきっかけに、市場出荷ではなく、直売主体の経営へ転換することを決意。わざわざ足を運んで買いに来てもらえるだけのトマトを作ろう、と品種開発に取り組みました。
「毎日、スタッフに食べてもらっては、試行錯誤を繰り返していました」と妻・みどりさん。
こうして生まれたトマトは、授粉作業がいらないため、挿し木技術で増殖。授粉と苗生産の手間を省くことで年3作栽培(※)を行い、年間を通して安定供給しています。
また、トマトの味は日射量とかん水量で決まりますが、これも新美さんが開発した水耕栽培キットと肥培管理システムにより、その時期で最もおいしいトマト栽培を可能にしています。
※年3作栽培:1年間に3回、苗を植えること。
新美さんが考案した水耕栽培キット&肥培管理システムで、水と肥料を管理している。 |
足を運んでくれるお客様の笑顔を糧に
販売面をバックアップしているのが、妻のみどりさんです。
「トマトは季節によって味が違うので、『今日は暑いからプリンセスあかねちゃんのほうがのどごしがいいと思いますよ』と、その時期のおいしさの違いをお客様に伝えるように心がけています」
また、トマトの生育状況やその時期の上手な保存法などを書いたミニコミ誌『ぷちとま倶楽部』を毎月発行し、顧客との信頼関係を深めています。その甲斐あって、直売所にはひっきりなしにお客さんが訪れます。多くの人が予約注文で購入し、同時に次回分を注文。その理由は「ここのトマトを切らすと家族が怒るから」だとか。
すべてはお客様の笑顔のために。これらの努力が評価され、にいみ農園は第44回日本農業賞・個別経営の部 大賞(農林水産大臣賞)に輝きました。また、平成27年度(第54回)農林水産祭で内閣総理大臣賞、日本農林漁業振興会会長賞も受賞しています。
「これからもおいしいトマトを一生懸命作っていきます」
直売所内の試食コーナー。「トマトは時期によって味が違うので」と、そのときの好みの味が選べるようになっている。 |
直売所「にいみトマト」。 購入時に次回の予約をする顧客が大半のため、取り置きも多数。 |
スタッフが毎月交代で発行している『ぷちとま倶楽部』。 |
取材・文/岸田直子
撮影/原田圭介
撮影/原田圭介
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