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MAFF TOPICS(1)あふラボ


MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。
「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

「地元産アサリ」を育て、アサリ資源復活

暮らしに役立つ最新の研究成果を紹介します。


網をかけてアサリを守り育てる。
網をかけてアサリを守り育てる。


アサリの稚貝をまいた干潟に網をかける保護方法の比較。網の縁を埋めると大量に生き残るが(左)、埋めないとほとんど全滅する(右)。
アサリの稚貝をまいた干潟に網をかける保護方法の比較。網の縁を埋めると大量に生き残るが(左)、埋めないとほとんど全滅する(右)。
3ミリメートルの網目の袋に砂利とカキ殻加工固形物を入れて干潟に並べると、アサリの浮遊幼生が中に入り込み、網袋の中で安全に育つ。
3ミリメートルの網目の袋に砂利とカキ殻加工固形物を入れて干潟に並べると、アサリの浮遊幼生が中に入り込み、網袋の中で安全に育つ。


減っているアサリを守り、育てて増やす
古代よりアサリは日本人にとってなじみ深い貝ですが、最近では漁獲量が大きく減少しています。特に瀬戸内海では最盛期の100分の1以下という危機的状況です。

「瀬戸内海のアサリが減少したのは、過度に海をきれいにしすぎたことが原因のひとつに考えられます。その結果、栄養塩が不足し、養分のない海になってしまったのです。豊かな海が形成されないとアサリは育ちません」(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所業務推進部長日向野純也(ひがのじゅんや)さん)

このため、水産研究・教育機構では、減少した原因を究明し、漁業者や地域住民と連携して回復を目指した研究開発に取り組んでいます。

アサリは生まれてから2~3週間は「浮遊幼生」と呼ばれるプランクトンとして海水中を漂って生活し、輸送されてたどり着いた場所で稚貝となり、成長します。

アサリの資源再生、保護のためにこうした浮遊幼生や稚貝の特性を研究してきました。具体的には、アサリの浮遊幼生を見分ける技術を開発し、移動経路を明らかにしました。そのほか、干潟の上にアサリをまき、網をかぶせたあとに網の縁を埋め、稚貝が流出して魚に食べられるのを防いだり、砂利とカキ殻加工固形物を網袋に入れ、その中に入ってきたアサリを育てる技術を開発しました。また、カキいかだを利用して、アサリを吊り下げた養殖も行っています。

アサリは海水中の植物プランクトンをこしとってえさにするため、海水を浄化します。海水をこす能力は非常に高く、東京湾に住む全部のアサリで、東京湾の海水の全量を1年間に2回分こしていると言われています。

「こうした意味からも、アサリ資源の価値を大事にし、今後は豊かな里海を作り、アサリの養殖を進めることが必要です。アサリ生産回復の鍵は地元産のアサリを育てること。さまざまな地域の養殖に応用できるようにすることが使命だと思います」(日向野さん)

アサリは地域によっては資源が激減している。 アサリは地域によっては資源が激減している。


あふラボトリビア
アサリは生食できる?

日本では昔から二枚貝を生で食べる習慣がなく、アサリは生食されませんでしたが、カキのように滅菌装置があれば生で食べることは可能です。ただしアサリの生食ではビタミンB₁を壊すアノイリナーゼという酵素が働くので、栄養的には注意が必要です。



取材・文/細川潤子




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