特集1 鯨(2)
[Guide]鯨ゆかりの地を巡ってみよう 全国「鯨」マップ
現在、日本には複数の商業捕鯨地があります。
また、全国の「鯨」に縁のある地域には、畏敬の念を示す祭事や史跡のシンボルがあります。 日本人と鯨の関係を示す名所を紹介します。 |

(A)モヨロ貝塚 (北海道網走市) モヨロ貝塚は5~13世紀に栄えたオホーツク文化最大の遺跡。鯨の骨で作られた銛が多数発掘されるなど鯨との関わりが深い。 ![]() |
(B)道の駅 和田浦「WA・O!」 (千葉県南房総市) 関東唯一の捕鯨基地がある南房総。和田浦の道の駅にはシロナガスクジラの骨格標本のレプリカが屋外展示されている。 ![]() 写真提供/南房総市 |
(C)国立科学博物館 (東京都台東区) 館内には鯨の骨格標本が展示されている。また屋外にも体長30メートルのシロナガスクジラの実物大模型の展示がある。 ![]() |
(D)鯨塚 (東京都品川区) 寛政10年、品川沖に紛れ込み品川の漁師たちにより捕まえられた鯨の供養碑が、利田神社の横に「鯨塚」として現存している。 ![]() |
(E)鯨船行事 (三重県四日市市) 鯨を大漁・富貴の象徴と見なし、これを仕留める演技で祈願する捕鯨の歴史のない地域の行事。国指定重要無形民俗文化財。 ![]() |
(F)瑞光寺 雪鯨橋(ずいこうじ せつげいきょう) (大阪府大阪市) 鯨骨の橋。瑞光寺の僧が現在の和歌山県太地町で豊漁祈念をしたお礼に、漁師から贈られた骨で鯨を供養するために造られた。 ![]() |
(G)くじらの博物館/太地浦くじら祭 (和歌山県東牟婁(むろ)郡太地町) 日本捕鯨発祥の地。世界有数のスケールを誇るくじらの博物館があり、毎年11月の第1日曜日に「太地浦くじら祭」が開催される。 ![]() |
(H)道の駅 キラメッセ室戸・鯨館 (高知県室戸市) 捕鯨で栄えた町・室戸。道の駅内の「鯨館」では、鯨の生態と捕鯨の歴史、室戸沖の深海のジオラマなどが紹介されている。 ![]() |
(I)しものせき水族館「海響館(かいきょうかん)」 (山口県下関市) 国内唯一の全長26メートルにもおよぶシロナガスクジラの全身骨格標本を展示。下関市周辺に生息するクジラの仲間の調査・研究も行う。 ![]() |
(J)くじら資料館 (山口県長門市) 古くから捕鯨が行われていた北浦と呼ばれる沿岸地域。古式捕鯨と漁民の歴史を伝える品々を展示している。 ![]() |
(K)長崎くんち (長崎県長崎市) 諏訪神社の秋季大祭「長崎くんち」での万屋町(よろずやまち)の奉納踊りが「鯨の潮吹き」。7年に一度の出演で、次回は平成32年となる。 ![]() |
(L)海童神社 (長崎県南松浦郡新上五島町) 「海童神社」は鯨のアゴの骨でできた鳥居で有名。また「鯨賓館(げいひんかん)ミュージアム」には捕鯨に関する資料が多数展示されている。 ![]() 写真提供/新上五島町観光商工課 |
和田浦で聞いた 鯨を捕るということ![]() |
例年、初漁の日に地元の小学5年生を招いて解体を見学してもらう。手際のよい作業に子どもたちの目はくぎづけ。 |
捕鯨の対象は国際管理下にはないツチクジラで、和田浦に水揚げする2隻の船に割り当てられた捕獲枠は年間26頭です。 漁期は6月20日から8月末まで。ツチクジラは夏場に水深1,000~3,000メートルの海に来る習性があるため、海底の地形が急に深くなる外房では、沖合6マイル(約10キロメートル)くらいで捕獲できます。日帰りが多いのですが、捕れない場合は沖合で2~3日留まることもあります。 ツチクジラは音に敏感なため、いったん潜ると40分は出てきません。できるだけ静かに近づき、50メートル以内の射程から捕鯨砲で銛を発射します。肉を柔らかくするため、捕獲から18時間経ってから解体します。 私たちは資源を枯渇させない合理的な管理のもと、地元で捕れる物を食べるというごく自然な営みを行っているものと考えています。 ツチクジラを対象とする南房総の捕鯨は、17世紀初期に内房の勝山で始まりました。400年の伝統や文化、技術を次世代につなげたいという思いで取り組んでいます。 |
![]() 2011年に新造した30トンの捕鯨船。この船に対して年間14頭の捕獲枠が与えられる。乗員は6名。 |
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庄司義則さん 1961年、千葉県生まれ。北海道大学を卒業後、日本水産株式会社を経て、93年に外房捕鯨株式会社へ。98年より代表取締役社長。46歳で東京海洋大学大学院の修士課程修了。 |
取材・文/三浦良恵、下境敏弘
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