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農林水産省

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特集1 きのこ(3)

[きのこ図鑑] 身近なきのこ編


栽培きのこも種類豊富で健康効果にも期待が
きのこの人工栽培は、約300年前、シイタケから始まったといわれています。現在、人工栽培されているものは約20種類あり、そのすべてが腐生性(ふせいせい)のきのこで、マツタケなどの菌根性(きんこんせい)のきのこは栽培が難しいとされています。

栽培方法には原木栽培と菌床栽培があります。原木に穴をあけて種菌を植え付ける原木栽培は、自然に近い昔ながらの方法で、主にシイタケ、ナメコに用いられます。それ以外の栽培きのこは菌床栽培で作られ、多くはおがくずに栄養源を加えて固めたものを培地にして育てられます(コラムの泉さんのしいたけは菌床栽培です)。

きのこは低カロリーで、食物繊維、ビタミンB群、ビタミンDなどの栄養素が豊富。β-グルカンの免疫力を高める作用、シイタケの機能性成分であるエリタデニンによる血中コレステロール値や血圧の低下作用など、健康に寄与する効果も期待されています。


ツクリタケ
ツクリタケ
ツクリタケはマッシュルームの和名。フランスでは16世紀ごろから栽培されていたといい、カサの色の違いによってホワイト種、オフホワイト種、ブラウン種などがある。堆肥で栽培される。
エリンギ
エリンギ
日本には自生していないものの、1990年代に栽培がスタート。特に長野県、新潟県で盛ん。クセがなくて歯ごたえがよく、和洋中どの料理にも合う。

ナメコ
ナメコ
ぬめりが特徴で、栽培も古くから行われている和食の友。晩秋にはブナなどの広葉樹の枯れ木や切り株に群生する様子が見られる。

シイタケ
シイタケ
生でも乾燥させてもおいしい食用きのこの代表。天然ものは春と秋に広葉樹の枯れ木や切り株に発生。日本での栽培は江戸時代から行われている。

ハナビラタケ
ハナビラタケ
カラマツなどの針葉樹の根元や切り株に発生し、ハボタンやケイトウに似た大きなカサが特徴。コリコリとした食感も独特。栽培も行われている。

ヤナギマツタケ
ヤナギマツタケ
広葉樹の枯れ木や腐朽(ふきゅう)部、街中ではポプラなどの街路樹に発生。マツタケの名がつくが縁は遠い。栽培ものは食感のよさが好評。

エノキタケ
エノキタケ
白くて細長い栽培ものがおなじみ。晩秋から春にかけて見られる天然ものは姿かたちが大きく異なり、茶褐色で柄は太く、カサには強いぬめりがある。

マイタケ
マイタケ
秋にミズナラなどの広葉樹から発生し、カサが重なり合って3~5キログラムを超える大きな株になることも。栽培も盛ん。シロマイタケもある。

ヤマブシタケ
ヤマブシタケ
山伏の衣装の胸飾りに似ていることが名前の由来。夏から秋にブナ科の広葉樹の枯れ木などに発生。栽培ものも手に入りやすくなった。

タモギタケ
タモギタケ
ニレなどの広葉樹の倒木や枯れ木上で、初夏から初秋にかけて見られる。北海道での栽培が多く、独特の色と歯切れのよさが持ち味。

ブナシメジ
ブナシメジ
和洋中いずれの料理にも使える。野生では、秋にブナやカエデの倒木などに群生。カサに大理石様の模様が見られるものもある。



復興に前向きに取り組むしいたけ農家 [福島県南相馬市]
5年3カ月をかけて再開したしいたけ栽培への思い
父親の経営する重機修理会社で働いていた泉景子さんは、30歳を前にしいたけ栽培に興味を持ち、近隣の農家に教えを乞うと、丁寧に指導してくれました。また別の農家は、高齢で廃業する際、道具一式を譲ってくれました。2年間の修業を経て栽培を開始した泉さんですが、7カ月後に東日本大震災が起き、休業を余儀なくされます。

それでも「師匠たちのためにも諦めたくない」と、同じ小高区の建設会社の協力を得て、自らも重機を操って自宅の裏山を崩し、10トントラック80台分の土を運び出して造成した敷地にハウスを建てました。再出荷を果たしたのは5年3カ月後の6月9日。同時期に避難指示も解除されました。

手がけているのは人工培地(菌床〈きんしょう〉)での栽培です。摘み取りから出荷まで一人、早朝から夜遅くまで土日もなく働き通しの日々ですが、「充実感があり苦にならない」と言います。新たな目標もできました。「師匠が40年かけてとれなかった農林水産大臣賞の受賞です。50年かかろうと絶対に諦めません」と泉さんは目を輝かせます。

泉 景子さん 泉 景子さん
1980年、福島県生まれ。南相馬市の沿岸部の高台で、しいたけ農家を営む。



取材・文/三浦良江、下境敏弘
撮影/船津祐太朗


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