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MAFF TOPICS(1) あふラボ


MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。
「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

ユニークで新しい「光る花」の研究開発に成功

暮らしに役立つ最新の研究成果を紹介します。

蛍光を発するトレニアの花。
蛍光を発するトレニアの花。
研究開発に使われた白いトレニア。
研究開発に使われた白いトレニア。
特定の光を当てた実験中のシャーレ内。左が遺伝子組換えをしていないトレニア、右が蛍光タンパク質遺伝子を取り入れたトレニア。花が咲く前の状態から光っている。
特定の光を当てた実験中のシャーレ内。左が遺伝子組換えをしていないトレニア、右が蛍光タンパク質遺伝子を取り入れたトレニア。花が咲く前の状態から光っている。


暗闇で鮮やかな黄緑色に発光
蛍光塗料などで人工的な加工を施したものとは異なり、植物自体が蛍光を発する「光る花」が誕生しました。

この"本物"の光る花は、農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)花き研究所(現・野菜花き研究部門)、NECソリューションイノベータ株式会社、株式会社インプランタイノベーションズ、国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学の産学共同研究により開発されました。

光を発する仕組みは、遺伝子組換え技術を用いて、海洋プランクトン由来の蛍光タンパク質を花に取り入れたことによるものです。暗闇の中で特定の波長の光を当てると、鮮やかな黄緑色の蛍光を発します。

「光る蛍光タンパク質としては、ノーベル賞受賞者の下村脩(しもむらおさむ)先生が見つけたオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質が有名です。最初にそれを導入しましたが、当初の手法では鑑賞できるほど十分には光りませんでした。そこで、黄緑色蛍光タンパク質を大量に発現させる手法等を組み合わせました」と農研機構野菜花き研究部門の佐々木克友(かつとも)さん。花は夏に咲く鉢花として知られる一年草の白いトレニア(夏スミレ)を用いました。

「開発途中には、紫色のトレニアを使いましたが光らず、白のトレニアに変えて成功しました。また、技術的に難しかったのは、光らせるために蛍光タンパク質を花弁の中に蓄積させる、という部分です。花びらは細胞の層が非常に薄いので、そこに蛍光タンパク質を多く蓄積させるのに苦労しました」

今後の取り組みは多くの種類の花に
光る花が市場に出回るまでにはまだ時間がかかりそうですが、現在はできるだけ早く多くの人に体験してもらおうと、ドライフラワーなどの開発を進めています。

「今後は遺伝子組換えが可能な菊、らん、バラなどの白い花に応用できそうです。花弁だけを光らせる、黄緑色以外の色を組み合わせるという研究も考えています」

研究開発が進めば、もしかしたら光る花が庭園の照明代わりになったり、高速道路沿いの植え込みが発光したりする時代がやってくるかもしれません。


あふラボトリビア
自生する光る植物・ヒカリゴケ

北海道など冷涼な地域に分布する「ヒカリゴケ」は、洞窟のような暗い場所で光ります。自力で発光するのではなく、原糸体(げんしたい)のレンズ状細胞が暗所に入ってくるわずかな光を反射します。レンズ状細胞には葉緑体が多いので、反射光はエメラルド色です。



取材・文/細川潤子




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