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農林水産省

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18年12月号 文字情報

aff(あふ)agriculture forestry fisheries:December 2018

平成30年12月3日発行(毎月1日発行)


[表紙]
今月の「手」

白鶴醸造株式会社 丹波杜氏 小佐 光浩さん
白鶴資料館にて、丹精込めて仕込んだ日本酒を注ぐ
撮影/キッチンミノル


CONTENTS

  • 連載 私のおもいで弁当[福井県]vol.8 … 2ページ
  • 特集1 日本酒 … 4ページ
  • 特集2 甘酒 … 14ページ
  • 全国の日本一を訪ねて vol.8 … 18ページ
  • MAFF TOPICS … 20ページ
    あふラボ
    「木のお酒」誕生に向けて
    News
    「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区決定
    「GAP」を分かりやすく、身近に
    海外旅行ではお土産選びにご注意を
  • 読者の声 … 23ページ

今月のクイズ

酒蔵などの軒先につるされている、杉の葉で作った球体状のものは何でしょうか。(答えは23ページ)



広報誌『aff(あふ)』について
農林水産業や農山漁村は、食料の安定供給はもちろんのこと、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の発揮を通じ、国民の皆さまの毎日の生活において重要な役割を担っております。また、農林水産行政は、生産などの現場に密着したものであると同時に、毎日の生活に深く関わっています。農林水産省では 「aff」を通じ、農林水産業における先駆的な取り組みや農山漁村の魅力、食卓や消費の現状などを紹介しております。

Webサイトのご案内
「aff」は農林水産省のWebサイトでもご覧になれます。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/

本誌に掲載した論文などで、意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。


私のおもいで弁当

子どもたちに伝えたい郷土料理や懐かしいふるさとの食材を使ったお弁当を、著名人が、お弁当へのあふれる想いと共に紹介します。全国のふるさとの美味を、あなたもお弁当に入れてみませんか?


【vol.8】福井県 里芋

福井県の勝山市や大野市は、調理したときに煮くずれしにくい高品質の里芋の産地として有名。山から運ばれた砂質の土壌や、盆地で昼夜の温度差が大きいこと、豊かな水が流れることなどの好条件がそろっているためとされる。

[写真1]
里芋

[写真2]
天龍源一郎
Genichiro Tenryu

1950年生まれ。福井県勝山市出身。天龍の四股名で幕内力士として活躍後、プロレスラーに転身。「ミスタープロレス」として、2015年まで現役を続ける。最近は滑舌が悪いことでいじられ、タレントとしてもブレイク。

[写真3]
天龍源一郎さんのちからめし弁当


九頭竜(くずりゅう)川が運んだ土で育つ里芋は絶品

僕が生まれたのは、1950年。日本も、ましてや農家だった実家もそんなに裕福な時代じゃなかったから、子どものころにおいしいものをたくさん食べたという思い出はないんだよね。親は米と葉タバコの専業農家だったから、朝早くから夜遅くまで働いて、母親も普段は一緒に夕飯を食べることができないくらい忙しかった。だからご飯の思い出と言えば、売るほどあった米と、ばあちゃんが飼っていた鶏の卵で、卵かけご飯を何杯も食べたってことぐらいかな。

一つだけ覚えているのは、里芋がおいしかったこと。煮っころがしをよく食べたけど、ねっとりした粘着感がほどよくて、柔らかいのに、歯ごたえがしっかりある。大人になってからいろいろなところで里芋を食べたけど、やっぱり地元・勝山あたりの里芋が一番だと思うよ。九頭竜川が氾濫するたびに、農業に大切な良い土壌が作られていったからなんだろうね。


タンパク質の多い揚げ物で大きくなったレスラー時代

角界入りするために、13歳で実家を離れたわけだけど、家での最後の夜に、親父が「これで好きなものを買ってこい」って、2千円を渡してくれたんだよね。それで大好きだったアジフライを山のように買いこんで帰ったらすごく怒られた。親父はいろいろなものを買ってくるだろうと思ってたんだろうけど、まあ、仕方ないよね。好きなんだから。

それで東京の二所ノ関部屋に入門して、部屋から中学校に通った時、弁当を持たされたんだけど、部屋のまかないさんがご飯の上にメンチカツ1つを載っけた弁当ばっかり作るんだよ。恥ずかしくて、弁当箱を開けられなくてね。メンチカツじゃなくて、大好きなアジフライだったらどうだったかな(笑)。

プロレスラーに転向してからも、体を大きく、強くしなくちゃいけないから、やっぱりタンパク質をたくさん取ったな。鶏の唐揚げなんて一度に2キログラムは平気で平らげたよね。それで14、15キログラムくらい太った。本当に奥さんはいろいろ良くやってくれたと思う。ま、その素敵な奥さんを見つけた僕が、一番エラいんだけどね!


[レシピ]つやつや里芋の煮っころがし

【材料(4人分)】

里芋…500グラム
A
 三温糖…大さじ3
 黒糖…大さじ2
 しょうゆ…大さじ5
 みりん…大さじ3
 酒…100cc
塩…少量

【作り方】

  1. 里芋は皮をむき、少量の塩で軽くもみ洗いし、ぬめりを取った後、水洗いをする
  2. Aの調味料を鍋で煮立て、1を加えて落し蓋をし中火で10分煮る
  3. 落し蓋を取って、2分から3分煮つめ、つやが出れば完成

監修/飯倉孝枝、取材・文/柳澤美帆、撮影/三村健二


特集1 日本酒 米から始まる物語

太古の昔から、米と水で造られている日本酒。その香りと味わいは、バラエティに富んでいます。海外でも人気が高まる日本酒の魅力を探ってみました。

[写真1]
神社の境内にずらりと並ぶ酒樽。米で造られる日本酒は大切なお供え物として、昔から神様に捧げられてきました

古来より日本人の暮らしとともに歩んできた日本酒

日本酒の歴史は古く、そのルーツは水稲が渡来した弥生時代にさかのぼるとされます。奈良時代には国家の組織に朝廷のための酒を造る「造酒司」が設けられ、平安時代には寺社や民衆の間でも日本酒が造られるようになりました。

貴重な米から造られる日本酒は、“特別な飲み物”として、祭りや冠婚葬祭の際に欠かせないものとなったのです。


16世紀後半以降、酒造りの技術が進歩

日本酒造りの技術が大きな進化をとげたのは16世紀後半。酵母の働きによるアルコール発酵によって米が溶けた「もろみ」をこして酒粕と清酒に分ける技術や、「火入れ」と呼ばれる酒の熱殺菌処理、木桶による製造と貯蔵などが行われるようになり、一度に多くの酒を造ることができるようになりました。

江戸時代になると灘(兵庫県)の硬水で造られる酒はキレが良いことから「男酒」、伏見(京都府)の中硬水で造られる酒はなめらかできめが細かいことから「女酒」と呼ばれるなど、日本酒の地域ブランドも確立しました。

近年、日本酒全体の出荷量はほぼ横ばいで推移していますが、純米酒や吟醸酒などの特定名称酒(6ページ参照)の出荷量は増加傾向。消費者の嗜好が「量」から「質」へと、変化していることがわかります。

[図1]
日本酒の種類別出荷量の推移
出典:日本酒造組合中央会調べ

[写真2]
日本古来の祭礼や神事に欠かせない「御神酒」。神様にお供えした酒をいただくことで、その霊力を分けていただくという意味をもちます
Copyright Hassyoudo-stock.adobe.com


海外で人気が高まるSAKE

近年、世界的な日本食ブームを背景とし、日本酒の輸出量は増加傾向です。2017年の輸出量は23,482キロリットルと、この10年で倍増し、売上金額は約3倍の187億円となりました。海外の大規模イベントや国際会議で日本酒のPRを実施し、注目を集めているほか、「ロンドン酒チャレンジ」など海外での日本酒コンテストも開催されています。

[写真3]
海外での日本酒コンテストの様子

[写真4]
2017年の日本酒の輸出先国は67カ国。全体量及び金額のうち、アメリカ、韓国、台湾、中国、香港の5カ国・地域で約8割を占めています。

[図2]
日本酒の輸出量の推移
出典:財務省「貿易統計」


ラベルで分かる日本酒の基礎知識

ラベルには、米の種類から飲み頃まで、さまざまな情報が記載されています。その読み方が分かると、自分好みのお酒が見つけやすくなるかもしれません。

[写真1]
日本酒の瓶(720ミリリットル)とラベル(表)の写真
(1)特定名称
(2)原材料、アルコール分
(3)精米歩合(米を削って残った割合)

[写真2]
日本酒の瓶(720ミリリットル)とラベル(裏)の写真
(4)原料米
(5)日本酒度と酸度
(6)飲み頃

(1)特定名称

国税庁が告示した「清酒の製法品質表示基準」を満たす清酒の分類で、「純米」「吟醸」「純米大吟醸」など全部で8種類あります。使用原料、精米歩合、麹米使用割合、香味などの要件が定められています。


(2)原材料が米、米こうじ、水、醸造アルコール

本醸造
精米歩合70パーセント以下

特別本醸造
精米歩合60パーセント以下

吟醸
精米歩合60パーセント以下

大吟醸
精米歩合50パーセント以下


(2)原材料が米、米こうじ、水

純米
精米歩合規定なし

特別純米
精米歩合60パーセント以下

純米吟醸
精米歩合60パーセント以下

純米大吟醸
精米歩合50パーセント以下


(3)精米歩合(米を削って残った割合)

[図1]
精米歩合の図。表面を削るほど、精米歩合は低くなります


(4)原料米

日本酒の原料として優れた性質をもつ「酒造好適米」が主に使われます。

山田錦
1936年、兵庫県で命名。粒が大きく、「酒米の王様」とも呼ばれ、香りがよく、コクのある味わいになりやすいといわれています。

五百万石
1957年、新潟県の米生産量が五百万石を突破したことを記念して命名。淡麗な味わいを生みやすいといわれます。

美山錦
1978年、長野県で命名。米質が硬く、醸造の際に溶けにくい性質があり、すっきりとした味わいを生みやすいとされます。

雄町
江戸時代末期、岡山市雄町で発見。現在の酒造好適米のルーツともいわれ、コクのある味わいになりやすいといわれます。

[図2]
酒造好適米と食用米の違いの図。
酒造好適米:米の粒が大きく、吸水率がよい/中央部にある「心白」が大きく、麹菌が入りやすい/タンパク質が少なく、アルコール発酵が順調に進みやすい


(5)日本酒度と酸度

日本酒度とは酒の比重を示す指標。+になるほど糖分が少なく、-になるほど糖分が多いため、辛口、甘口の目安になります。一方、酸度が高いと濃厚で辛く感じ、低いと淡麗で甘く感じる傾向です。

[図3]
日本酒度と酸度の図


(6)飲み頃

同じお酒でも温度によって味わいが変わります。日本酒ほど温度を細かく変えて楽しめるお酒は、世界でもほかにありません。冷や(常温)、熱燗、冷酒のほか、5度刻みで呼び名が異なります。一般的に、冷やすほど味がシャープになり、温めるとまろやかになります。

[図4]
日本酒の温度と飲み頃の図


文/加藤恭子


米農家を訪ねて:兵庫県三木市
日本一の酒米「山田錦」を守り続ける

日本酒の原料となる酒造好適米(酒米)の中で、醸造家の圧倒的な支持を集めるのが「山田錦」です。日本一の産地・兵庫県三木市の生産者を訪ねました。

[写真1]
秋晴れの空のもと、収穫した稲穂を抱える冨依さん。長雨が続き、刈り取りのタイミングに頭を悩ませていましたが、この日は絶好の稲刈り日和に

日本一の秘密は粘土質の土と昼夜の寒暖差

兵庫県三木市の北東部に位置する吉川町(よかわちょう)では、大正時代から山田錦の栽培研究が進められてきました。現在では、最も優れた山田錦を生産する「特A地区」に指定されています。

この地で4代にわたってその生産に携わってきた冨依多雅藏(とみよりたかぞう)さんは、この地が「日本一の山田錦の里」と呼ばれる理由についてこう語ります。

「吉川の土は粘土質のため保水力が非常に高く、土が軟らかいので根の張りが良いのです。また、昼夜の寒暖差が大きいことも山田錦の生育に適しています」


天候の変化を見極める力が「特A」の山田錦を育む

山田錦は、酒造り用の米(酒米)として人工交配された品種で、上品な甘みの日本酒に仕上がるとして醸造家に人気です。しかし、稲穂の高さが約1.3メートルと高いため、倒れやすく、カビが寄生して生育を妨げる「いもち病」にも弱いなど、デリケートな性質を持っています。そのため、栽培には経験に裏打ちされた高い技術が求められます。

「年によって変わる天候に注意し、今年は生育が早いのか遅いのかを見極めて、田植えや稲刈りのタイミングを決めます。水管理や土作りにも気を使いますね」

取材に訪れた10月下旬。冨依さんの田んぼでは、稲刈りが行われていました。稲穂を手に取った冨依さん、「ひと粒ひと粒が大きく、しっかりと粒張りの良い山田錦に育っている」と満足顔です。

「今年の収量は例年の8割くらい。でも、品質は例年以上だと自負しています。今後、行われる等級検査(米のできばえを判定する検査)が楽しみですね」


[写真2]
台風の影響で、倒れている稲も多い。稲が機械につまるのを防ぐため、たびたびコンバインを降りて、稲穂の向きをそろえる作業を行います

[写真3]
金色に輝く稲穂は、地面に着きそうなほど頭を垂れていました

[写真4]
脱穀を終えた山田錦。大粒で、粒の大きさがそろっているのが特徴です

[写真5]
兵庫県内でも、三木市は山田錦の産地として有名です


国内生産量No.1の酒米

山田錦は大粒で、芯の白い部分(心白)が大きいため、はぜ込み(米粒の中心部に麹の菌糸が繁殖していく程度)が良く、米を溶かす力の強い麹を造るのに適しています。また、雑味の原因となるタンパク質の含有量が少ないことも特長です。

[写真6]
山田錦の米粒

[図1]
銘柄別生産量
山田錦:38,300トン(38パーセント)
五百万石:20,227トン(20パーセント)
美山錦:7,018トン(7パーセント)
雄町:2,873トン(3パーセント)
その他:31,752トン(32パーセント)
資料:農林水産省「平成29年産米の農産物検査結果」(速報値)


山田錦の発祥は兵庫県

山田錦は、1923(大正12)年に兵庫県立農事試験場(現・県立農林水産技術総合センター)で、山田穂を母とし、短稈渡船(たんかんわたりぶね)を父として人工交配を行い、選抜された品種。1936(昭和11)年に「山田錦」と命名されました。兵庫県の山田錦の出荷量は約22,209トン(平成29年産)で、全国の58パーセントを占めています。兵庫県は名実ともに日本一の「山田錦」の産地となっています。

[図2]
山田錦の産地別生産量
兵庫県:22,209トン(58パーセント)
岡山県:3,541トン(9パーセント)
山口県:2,241トン(6パーセント)
その他:10,309トン(27パーセント)
資料:農林水産省「平成29年産米の農産物検査結果」(速報値)


酒蔵を訪ねて:白鶴酒造(兵庫県神戸市)
伝統的な酒造りを時代に応じて進化させる

日本酒生産量で全国の約3割を占める兵庫県。蔵元の数は87にのぼります。神戸・灘の老舗酒蔵「白鶴酒造」を訪ね、酒造りの伝統と進化について聞きました。

「丹波杜氏」伝統の技を未来の酒造りに生かす

兵庫県神戸市東灘区に本社を置く白鶴酒造株式会社は、1743(寛保3)年の創業。現在、同社には、異なる特徴を持つ3つの醸造所があります。そのうち、今回取材した「本店二号蔵工場」では、昔ながらの伝統的な製造法を用いて吟醸酒・純米酒などを製造しています。

工場の醸造責任者を務める丹波杜氏の小佐光浩(こさ みつひろ)さんは、こう語ります。

「この蔵で日本酒を造るのは10月から翌年の4月まで。白鶴には通年生産できる蔵もありますが、この本店二号蔵だけは特別。最新の設備を取り入れつつ、昔ながらの手法を大切に、吟醸酒などの特定名称酒を主に造っています」


経験を通して培った感覚で酒を造る

一般に、酒造りは「一麹、二酛(もと)、三造り」と言われます。麹を造る工程では、蒸米に麹菌を増殖させ、酵素を蓄積させます。酛とは、酒母を造る工程のこと。麹・蒸米・水・清酒酵母を混ぜ合わせ、その酵母を純粋に大量培養します。造りとは、もろみを造る工程で、酒母に麹・蒸米・水を段仕込み(数段階に分けて加えること)して発酵させます。このもろみを搾ることで清酒が生まれるのです。

実は、小佐さんが最も気を使うのは麹造りの前に行う“洗い”や“蒸し”などの予備工程。米の状態を見ながら、浸水時間や蒸し時間などを微妙に調整するのです。

「もちろん、データに基づいて管理しますが、手で弾力を確かめたり、食べてみたりと、やはり経験を通して培った感覚が大切ですね」

白鶴の特徴について聞くと、「特徴がないのが、白鶴の特徴なんです」と、意外な答えが返ってきました。“日常の酒”として、飲み飽きない酒を目指しているそうです。

毎年10月になると、酒造りのスタッフである蔵人たちが酒蔵に集まってきます。そして、食事とともに初搾りの新酒を味わいながら「今年もいい酒を造ろう」と誓いあうのだそうです。また、奈良県の大神神社で開かれる「醸造安全祈願祭(酒まつり)」に参加し、酒造りの安全を祈って掲げる杉玉をいただきます。

「この季節が来ると、『今年も酒造りが始まるなぁ』と感じますね」

そう語る小佐さんの表情は、キリリと引き締まって見えました。

[写真1]
白鶴酒造の本店二号蔵工場で造られた吟醸酒・純米酒などの「特定名称酒」


[図1]
日本酒ができるまで

(1)洗米
(2)蒸米
(3)麹造り

[写真2]
麹造り工程で「仕舞い仕事」と呼ばれる操作。空気に触れる面積を増やすことでコウジカビの増殖を促します

(4)酒母造り
[写真3]
温度調節しながら約8日で仕上げ。数日後には酵母の発酵によってプクプクと泡立ってきます

(5)もろみ造り
酒母、麹、蒸米、仕込み水を入れて発酵中の状態が「もろみ」。櫂(かい)入れ作業によって発酵・熟成を調整します
[写真4]
もろみ造りの様子

(6)搾り
(7)火入れ
(8)貯蔵
(9)瓶づめ


職人のノウハウを「見える化」し「匠の技」を、さらに磨き上げる旭酒造(山口県岩国市)

徹底したデータ管理・分析を通じ高品質の酒を安定的に生み出す

国内外で人気の大吟醸酒「獺祭(だっさい)」を手がける旭酒造。同社では、旧来の「杜氏と蔵人による酒造り」ではなく、「社員だけの酒造り」を行っています。すべての工程において詳細なデータを取り、分析することによって「うまい酒」を造るための方法を徹底的に追求してきました。桜井博志社長は言います。「高品質の製品を安定的に作り続けるためには、高度なデータ活用が不可欠です」

[写真5]
タンク内の発酵状況を示すグラフを壁一面に貼り、醸造データを見える化


「山田錦」を安定的に確保するためICT技術を積極的に活用

旧来の製造工程を見直し、酒を通年生産できる体制が整ったことで生産量は大きく増加。そこで浮上した問題が、原料となる米「山田錦」の確保です。旭酒造では、農業向けICT事業を行う富士通と協業。生産農家が蓄積した生育データを活用することで収量を増やし、全量を旭酒造が買い取る仕組みを作りました。桜井社長は「酒造会社が責任をもって全量を買い取ることで生産者との信頼関係を築く。これこそが大切なのです」と話します。

[写真6]
平成30年7月の西日本豪雨で、発酵中に停電被害を受け、通常ブランドで出荷できなくなった純米大吟醸酒を、地元出身の漫画家・弘兼憲史氏の協力により「獺祭 島耕作」として発売。売上の一部は義援金として寄付されました


取材・文/梅澤聡 撮影/キッチンミノル


自分好みの日本酒と出合う

全国の酒蔵の数は約1,500軒。お酒の種類は4万種類にもおよびます。お酒の特徴を知って自分好みの日本酒を見つけるコツを、利き酒師の千葉さんに伺いました。

千葉麻里絵さん
東京・恵比寿のGEM by moto店主。利き酒師。学生時代に、日本酒バーでのアルバイトをきっかけに生産者を訪ね歩いたことから、日本酒の魅力を知り日本酒の伝道師に。

[写真1]
さまざまな日本酒と酒器の写真

[写真2]
千葉麻里絵さんの写真。難しく考えず「スッキリ」「濃厚」「果実の香り」など、自分の言葉で好みを利き酒師に伝えて

お酒を楽しく飲む5か条

・まず肴を食べてから
・適量を知り、飲みすぎない
・和(やわ)らぎ水を飲みながら
・うんちくをひけらかさない
・一気飲みやお酌の強要は厳禁


日本酒初心者にオススメは?

くせがなく飲みやすいのは純米大吟醸ですが、まずは吟醸酒や純米酒などのスペックにこだわらず、「爽やかな味」「柑橘系」など自分の感覚で注文して、少しずつ好みのお酒を探しましょう。味だけでなく香りも楽しんで。


お酒にあった器を選びましょう

日本酒を楽しむには、酒器にもこだわりましょう。冷酒には、口当たりが繊細な、薄張りのグラスがベスト。熱燗には、深さのあるぐい飲みよりも、口径の広い平杯のほうが、香りが穏やかに広がります。

[写真3]
日本酒を注ぐ千葉さんの写真


料理とお酒のペアリングを楽しむ

日本酒は、味と香りで分類すると4タイプに分けられ、それぞれに相性のいい料理があります。

香りが高く、濃厚な味

主に古酒や長期熟成酒:重厚感があるタイプ(熟酒(じゅくしゅ))

濃厚な香りと複雑な味わい。ロックやぬる燗がおすすめ。エスニック料理、中華料理など、濃い味の料理が合う。

[写真4]
豚の角煮、麻婆豆腐


香りがひかえ目で、濃厚な味

主に純米酒や生酛(きもと):コクのあるタイプ(醇酒(じゅんしゅ))

やわらかな香り、濃厚な味わいのお酒で、冷やまたは熱燗がおすすめ。しょうゆベースのこってりした料理が合う。

[写真5]
西京焼き、肉じゃが


香りが高く、すっきりした味

主に大吟醸酒や吟醸酒:香りの高いタイプ(葷酒(くんしゅ))

花、ハーブ、果実などのような爽やかな香りが楽しめるお酒。さっぱりめの味わいの料理が合う。

[写真6]
しゃぶしゃぶ、ハードタイプのチーズ


香りがひかえ目で、すっきりした味

主に本醸造酒や普通酒:軽快でなめらかなタイプ(爽酒(そうしゅ))

すっきりした味わいで、ほのかな香りが特徴。香り控えめのさっぱりした料理が合う。

[写真7]
白身魚のサラダ、湯豆腐


「日本酒はちょっと苦手」という人に

低アルコールのスパークリング酒が人気

スパークリング酒には、あとから炭酸ガスを加えたものと、瓶づめ後、瓶の中で二次発酵させたものがあります。アルコール度数は7%前後と低めで飲みやすく、女性に人気です。

[写真8]
低アルコールのスパークリング酒の写真


和らぎ水を飲みながらゆっくり味わって

お酒が弱い人のみならず、強い人も和らぎ水を飲みながらお酒を飲むことで、酔いのまわりがゆっくりになります。二日酔い防止にも効果的。分量は、お酒の2倍が目安です。

[写真9]
和らぎ水の写真


取材・文/石井栄子、撮影/戸井田夏子


特集2 甘酒

「飲む点滴」ともいわれ、疲労回復に効果がある飲み物として再注目されている甘酒。米麹や、日本酒造りの過程で出る酒粕を使って造られます。

伝統的な「麹甘酒」と香りよい「酒粕甘酒」

メディアなどで効能が取り上げられ、再び人気が高まっている甘酒。その歴史は古く、日本書紀には古代から愛飲されてきたことが記されています。

甘酒は大きく分けて、2種類あります。ひとつは米と米麹を原料とし、アルコールを含まない「麹甘酒」。もうひとつは「酒粕甘酒」で、酒粕にほとんど甘味がないため、砂糖を加えて造ります。こちらもアルコールはほとんど含みません。


米麹と酒粕の違い

「米麹」とは蒸した米に麹菌を繁殖させたもの。ご飯やおかゆに米麹を混ぜ、保温しておくと米のでんぷんが糖化されて、一晩で甘酒ができあがります。一方、日本酒を搾ったあとに残るものが「酒粕」。日本酒のふくよかな香りとコクが特長です。


ふりだし

[写真1]
稲穂の写真
甘酒の原料はお米。日本酒向けに栽培される酒造好適米も使われます。

精米・洗米

蒸米
[写真2]
お米に水を吸わせてから、甑(こしき)という大きなせいろや蒸米機で蒸します。

麹菌散布

麹造り
[写真3]
麹造りの様子の写真
写真提供/白鶴酒造株式会社

麹菌繁殖

米麹
[写真4]
甘酒や日本酒だけではなく、みりんや味噌など日本古来の発酵調味料の原料としても米麹は欠かせません。麹菌の働きにより自然な甘さが作り出されます。
米麹を加水・保温すると、麹甘酒になります。

酒母造りを経て「もろみ」となり、搾りを経て酒粕と日本酒になります。

もろみ
[写真5]
もろみの写真

酒粕
[写真6]
麹菌と酵母の働きを利用し、アルコール発酵させる日本酒。その過程で作られる酒粕には、よい風味とともにビタミンなど豊富な栄養が含まれます。
酒粕を加糖・加熱すると、酒粕甘酒になります。

あがり

[写真7]
甘酒の写真

取材・文/加藤恭子 イラスト/SHUN NAKAO


酒粕甘酒と麹甘酒 好みの味はどちら?

ふだん何気なく口にしている甘酒ですが、製法も味わいも異なります。その違いを知り、目的や気分に応じて飲み分けてみては?

【麹】東京:天野屋

東京都千代田区外神田2-18-15
電話:03-3251-7911

[QRコード1]
http://www.amanoya.jp/〔外部リンク〕

江戸時代後期から続く「室(むろ)」での糀(こうじ)づくり

1846(弘化3)年に創業し、神田明神の鳥居近くで糀甘酒を造り続けている老舗。6代目ご主人の天野博光さんをはじめ4人の職人が、地下6メートルの「室」と呼ばれる創業時からある地下室で約20時間かけて米糀を造っています。同量の米と米糀を混ぜて60度の温度で約10時間発酵させると、優しい甘さの風味豊かな看板商品「明神甘酒」ができあがります。

[写真1]
店内の喫茶部でいただける明神甘酒「温」400円(税込)。参拝客に親しまれています

[写真2]
併設の売店ではパックの明神甘酒を販売

[写真3]
「ストレートタイプ」1,000円(150グラムが4パック、税別)

[写真4]
2倍の水で薄める「甘酒の素」780円(350グラム、税別)


【酒粕】兵庫:大関

兵庫県西宮市今津出在家町4-9
電話:0798-32-2016(お客様相談室)

[QRコード2]
https://www.ozeki.co.jp/〔外部リンク〕

日本酒の風味が芳(かぐわ)しい酒粕で造る甘酒

1711(正徳元)年に創業し、「大関」の商標で親しまれている酒造メーカー。1974(昭和49)年にワンカップタイプの甘酒を販売開始して以来、蔵元ならではのしぼりたての酒粕を使用した甘酒が人気。しぼりたて原酒の量り売りや日本酒を使ったお菓子を販売している直営店「関寿庵」では、併設の喫茶で酒粕甘酒を味わうことができます。

[写真5]
ストレートタイプの「おいしい甘酒」参考小売価格600円(950グラム、税別)

[写真6]
しぼりたての新鮮な酒粕に、生姜とハチミツのまろやかな甘さを加えた「大関甘酒」参考小売価格115円(190グラム、税別)

[写真7]
関寿庵
兵庫県西宮市今津出在家町3-3
電話:0798-32-3039


神職や巫女による年末恒例の甘酒仕込み
熊本・阿蘇神社

正月の初詣客に振る舞うため、神へのお供え物を調理する神饌所(しんせんじょ)で、神職や巫女らが3万人分の甘酒を造ることが年末の恒例行事となっています。「阿蘇は寒冷地のため、参拝客を温かくもてなしたい」と、戦後から始まったそうです。

[写真8]
四斗樽に入れた炊きたてのもち米と麹を竹の棒で混ぜあわせ、発酵させるための別の容器に移す作業を一日4回行います


おいしく飲んで健康管理 甘酒パワーで風邪予防

冬の風邪予防に役立つといわれる甘酒。体に作用するメカニズムについて、専門家にお話を伺いました。

[写真9]
甘酒の写真

100種類以上もの酵素が消化を助け、免疫力を向上

麹菌の力によってお米が甘くなるメカニズムは、麹菌が作り出す代表的な酵素、アミラーゼの働きによるものです。ご飯を嚙んでいると口の中で甘くなるのも、唾液中にアミラーゼが含まれるため。麹菌が作り出す酵素は、タンパク質を分解する酵素だけでも100種類以上もあります。

こうした酵素はさまざまな構造を分解し、消化を助ける働きをします。さらに、甘酒に含まれるブドウ糖には即効性の高い疲労回復効果があり、近年は「飲む点滴」と呼ばれるほど、そのパワーが注目されています。そのほか、オリゴ糖が腸内細菌の働きを活発にして免疫力を高め、病気になりづらい体質に改善する効果も期待できます。

酒粕甘酒の甘さはほとんどが砂糖によるものですが、消化に耐えるレジスタントプロテインが豊富に含まれ、やはり腸内細菌の働きを活発にし、血中コレステロールを排出する働きもあります。

[写真10]
東京農業大学教授 前橋健二さん
1969年生まれ。東京農業大学農学研究科醸造学専攻修士課程修了。発酵による食材の変化、味の解析や味覚のしくみなど、「発酵」と「味」について多方面から科学的にアプローチ


ちょい足しでおいしく効果的に

プラス フルーツ

[写真11]
イチゴやマンゴーなどを加えてミキサーで撹拌すれば、スムージーのようなフルーツ甘酒のできあがり。ほかにも旬の果物でお試しを。


プラス 抹茶

[写真12]
ビタミンCやカテキンなどが含まれている抹茶とのミックスもおすすめ。抹茶の苦味が加わり、独特の甘さが苦手という人にも飲みやすくなります。


プラス 生姜

[写真13]
生姜に含まれるジンゲロールと呼ばれる成分が、血行を促進。甘酒と組み合わせれば体の中からぽかぽかと温まります。


プラス ヨーグルト

[写真14]
麹甘酒に含まれるオリゴ糖にはビフィズス菌を増やす作用があり、ヨーグルトと摂取することで、整腸効果がより期待できます。


撮影/加藤熊三


あっぱれ 全国の日本一を訪ねて vol.8

木枡の生産量日本一!岐阜県 大垣市

木枡は、古くから使われてきた日本の計量容器です。大垣市は材料となるヒノキの一大集積地だったこともあり、生産が盛んに行われ、日本一の産地になりました。


正確な木枡を作り続けて全国シェア80パーセント

木枡は米の収穫量を測ったり、年貢を計算する際に用いられたりするなど、生活になくてはならない必需品でした。経済の基本を成すものだったため、誤差が生じる容器はご法度。材料には、狂いが少ないヒノキが多く用いられました。中でも「木曽ヒノキ」は、ほかのヒノキよりも時間をかけて成長する分、優れた材料として重宝されてきています。

その木曽ヒノキが集まる名古屋に近く、水運が発達していた大垣で木枡が盛んに作られるようになりました。最盛期にはほぼ100パーセント生産していたこともありますが、現在は5社であわせて年間200万個、全国生産量の約80パーセントの木枡を生産。世界的な和食や日本酒ブームも手伝って、最近は海外からも木枡に注目が集まっています。

[写真1]
木枡制作の様子

[図1]
岐阜県 大垣市
【DATA】日本列島のほぼ中央に位置し、古くから中山道や美濃路などが通る交通の要衡。関ケ原の合戦で石田三成が本拠地とした大垣城が有名。


大垣市ってこんなところ

その1 カミツレ生産量日本一

[写真2]
カミツレ(カモミール)はハーブティーなどによく用いられる、鎮静作用のある有用植物。大垣市の気候や土地が栽培に適していたため盛んに生産されるようになりました。


その2 木枡で乾杯条例

[写真3]
木枡と地酒で乾杯する習慣を広めて、地場産業を活性化しようと「木枡で地酒による乾杯を推進する条例」を制定。これにより郷土愛が育まれることも期待されています。


その3 日本一大きい掛け軸

[写真4]
琳光寺(りんこうじ)には、長さ50メートル、幅6メートル、重さ130キログラムの日本一大きな掛け軸があります。1923年に当時の住職が、重さ20キログラムの毛筆を使って、1週間かけて書きあげたものです。


日本一にズームイン

木枡でお酒を飲むのは本当は、間違い!?

木枡というと、日本酒を飲むための酒器だと思う人が多いようですが、本来、枡は計量器。ですから製材所が作る枡とは異なり、「はかりや」だからこその、狂いのない製品を作ることを、今も心がけています。

とはいえ現在は計量器としてではなく、器としての役割が主流です。日本酒を飲むのに、本来ははかりである木枡で飲むのは、実はちょっとやんちゃな飲み方なのですが、いつの間にか木枡をそのように使うのが粋とされるようになりました。確かに、ヒノキの香りが日本酒の香りとあいまって、お酒がよりおいしく感じられるのだと思います。


使い手のことを思い手作業で丁寧に仕上げる

ヒノキは高級建材なので、原木から木枡用の材料をとることはしません。建材などから出る端材を使用しています。捨てられる材料を使用することから、木枡は環境に優しい製品だといえます。

作り方は、端材を乾燥させて、カットし、サイズを整え、溝を彫るなど、出荷するまでに約12の工程を経ています。機械を使って一気に20枚の板を同時にカットしますが、糊づけや仕上げの研磨などは、今でも一つひとつ職人が手作業で丁寧に仕上げています。今後は、木枡を並べた壁材を作るなど、新しい用途にもいろいろと挑戦していくつもりです。

[写真5]
大橋量器 代表取締役 大橋 博行さん
大橋量器の三代目。新しい木枡の使い方を提案しながら、木枡の文化を残したいと奮闘中。その心意気に若い世代が興味を示し、社員の平均年齢は30歳を下回る。


もうひとつの大垣名物。
「水まんじゅう」

古くから、豊富な地下水に恵まれていることから大垣市は「水の都」と呼ばれています。その名水を使って明治時代から作られている「水まんじゅう」は大垣の銘菓です。

[写真6]
水まんじゅうの写真


高級木材・ヒノキの端材を使って製造

[写真7]
建築材や建具材を作る際に出た、端材を使用。現在は木曽ヒノキだけでなく、ほかのヒノキも使用している


使い手を思う丁寧なものづくり

[写真8]
使う場面を想定して、丁寧に「面取り」をする。写真は木枡の角を丸める作業で、これにより手触りや口当たりが良くなる


さまざまな用途の木枡を開発

[写真9]
伝統的な木枡のほか、カラフルなものや、形のおもしろいもの、さらには光る木枡など、さまざまな種類を製造


取材・文/柳澤美帆、撮影/小倉和徳


MAFF TOPICS

「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

あふラボ

「木のお酒」誕生に向けて

国立研究開発法人森林研究・整備機構の森林総合研究所が、世界で初めて、木を原料に飲用を目的とするアルコールを作る技術を開発しました。今後、安全性が確認されれば、お酒の歴史で初めて、「木のお酒」ができるかもしれません。

今回、開発したのは、すでに開発していた湿式ミリング処理という木材を細かくする技術を応用し、熱処理や薬剤処理をすることなく、木材に食品用の酵素と酵母を加えてアルコール発酵させる技術。

試験的にスギ材とシラカンバ材を原料にアルコールを作ったところ、スギ材のものからはスギ特有の香りを、シラカンバ材のものからは、ウイスキーを樽熟成させたときのような甘く芳醇な香りを感じることができました。現段階ではまだ飲むことのできる「お酒」ではなく、詳しく成分分析を行い安全性の確認を慎重に進めています。

木の種類によって香りが違うので、1200種類とも言われる国内の樹木から多彩な香りを持つアルコールを製造できそうです。各地で有名な木を使い、地域オリジナルのお酒を作ることもできるかもしれません。

木からアルコールができるまで

[写真1]
原料の木

[写真2]
(1)粉砕した木と水を混ぜて湿式ミリング処理

 [図1]
 水中で回転するビーズによって木を粉砕する

[写真3]
(2)クリーム状のスラリーに

[写真4]
(3)スラリーに酵素と酵母を加えて発酵タンクへ。木の繊維が糖に分解され、糖がアルコールになる

 [図2]
 木の繊維が糖に分解されて糖がアルコールになる図

[写真5、写真6]
(4)できた発酵液を1回から3回蒸留すると、アルコール度数20パーセント以上の蒸留物が完成

[写真7]
木の種類ごとに独特の香りがあります


あふトリビア

「酒」の漢字の部首は?
部首は氵(さんずい)に見えますが、実は酉(ひよみのとり)です。酉は酒を入れる容器から生まれた象形文字とされ、水よりもこちらの方が漢字としての意味合いが強く、部首になったとか。酌や酔など、酒に関連する他の漢字にも酉が使われています。


NEWS1

「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区決定

[画像1]
「ディスカバー農山漁村の宝」(選定地区決定)のロゴマーク

日本の各地には、豊かな自然、食、産物などを活用し、地域の活性化に取り組んでいる地区があります。こうした埋もれている地域資源の力を引き出し、農山漁村の活性化などにつなげた優良な事例を選定するのが、「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」。このほど、五回目となる今年度の選定地区が決まりました。

今年度は1015件の応募があり、宮城県大崎市の「大崎の米『ささ結(むすび)』ブランドコンソーシアム」など32地区を優良事例として選定。これらの活動は、「ディスカバー農山漁村の宝」特設Webサイトなどで紹介しています。また、意見交換や情報発信を行うシンポジウム、選定地区で生産した農林水産物や加工品が集まるマルシェなどのイベントも毎年開催。今後も元気なムラの取り組みから目が離せませんね。


第5回選定地区はこちら

(1)北海道帯広市:株式会社いただきますカンパニー
(2)北海道北竜町(ほくりゅうちょう):黒千石(くろせんごく)事業協同組合
(3)北海道雄武町(おうむちょう):農業生産法人株式会社神門(じんもん)
(4)岩手県遠野市:遠野・三陸ブランド海外輸出協議会
(5)宮城県仙台市:農事組合法人仙台イーストカントリー
(6)宮城県大崎市:大崎の米「ささ結」ブランドコンソーシアム
(7)秋田県大館市:大館市まるごと体験推進協議会
(8)福島県猪苗代町(いなわしろまち):農事組合法人結乃村(ゆいのむら)農楽団
(9)栃木県足利市:有限会社ココ・ファーム・ワイナリー
(10)栃木県茂木町(もてぎまち):株式会社もてぎプラザ
(11)埼玉県秩父市:一般社団法人秩父地域おもてなし観光公社
(12)山梨県市川三郷町(いちかわみさとちょう):株式会社桑郷(くわのさと)
(13)富山県南砺(なんと)市:南砺市商工会利賀村(とがむら)支部
(14)石川県羽咋(はくい)市:合同会社のとしし団
(15)福井県小浜市:小浜市阿納(あの)体験民宿組合
(16)愛知県豊田市:一般社団法人おいでん・さんそん
(17)愛知県新城(しんしろ)市:つくでスマイル推進協議会
(18)三重県尾鷲(おわせ)市:株式会社梶賀(かじか)コーポレーション
(19)京都府与謝野町:与謝地域山村活性化協議会
(20)兵庫県丹波市:有限会社こやま園
(21)奈良県川上村:一般社団法人吉野かわかみ社中
(22)島根県大田(おおだ)市:おおだ一日漁(いちにちりょう)推進協同組合
(23)岡山県美作(みまさか)市:地美恵(じびえ)の郷みまさか(美作市獣肉処理施設)
(24)山口県周防大島町(すおうおおしまちょう):株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
(25)徳島県阿南市:加茂谷元気なまちづくり会
(26)愛媛県西予(せいよ)市:企業組合遊子川(ゆすかわ)ザ・リコピンズ
(27)高知県北川村:北川村ゆず輸出促進協議会
(28)福岡県太宰府市:福岡県立福岡農業高等学校食品科学科梅研究班
(29)大分県豊後大野市:株式会社成美
(30)大分県国東(くにさき)市:ウーマンメイク株式会社
(31)宮崎県串間市:株式会社くしまアオイファーム
(32)沖縄県南城(なんじょう)市:株式会社美(ちゅ)らイチゴ


【Pick up!】選定された宮城県大崎市「大崎の米『ささ結』ブランドコンソーシアム」

大崎市はササニシキ発祥の地。ササニシキ系の復権で震災復興につなげようと、新ブランド米「ささ結」を開発しました。平成29年度には5キロで約2,500円と高価格帯で販売される品種に成長。酒蔵とも連携し「純米大吟醸酒ささ結」を開発、販売しています。また、稲作体験イベントを通じて環境配慮型農業のPRも行っています。

[写真8]
仙台都市圏の家族向けに行った「ささ結」の稲刈り体験

[写真9]
米粒の形をした2つの円は、「自然」と「知恵」の循環をイメージ

[写真10、写真11]
選定地区が参加するマルシェも開催


特設Webサイトはこちらから
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https://www.discovermuranotakara.go.jp/〔外部リンク〕

インスタグラムはこちらから
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https://www.instagram.com/discovermuranotakara/〔外部リンク〕


NEWS2

「GAP」を分かりやすく、身近に

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、GAP認証を取得した農畜産物が選手に提供されることとなっているのはご存じでしょうか。

「GAP」というのは「Good Agricultural Practice」の頭文字を取った言葉で、日本語では、「よい農業のやり方」や「農業生産工程管理」といわれます。

農畜産物の生産には、異物の混入や農機具での事故など、さまざまなリスクが潜んでいます。リスクを自ら見つけ、現場の整理整頓、生産履歴の記録などによって作業手順や機材などの管理を適正に行い、農畜産物の安全や環境の保全、働く人の安全を確保する。そうして、消費者にGOOD!、地球にGOOD!、生産者にGOOD!となる、持続可能な農業経営を行うための取り組みがGAPです。

民間の第三者機関の審査によりGAPが正しく実施されていることが確認された農場はGAP認証を受けることができます。

農林水産省では、農業者向けにオンライン研修「これから始めるGAP」、消費者向けに情報発信サイト「Goodな農業!GAP-info」を開設しています。

この機会にぜひ、チェックしてみてください。


農業のGAPってなに?

GAP = Good(よい) Agricultural(農業の) Practice(やり方)

「適正な農業のやり方で生産しよう!」という取り組みのこと


持続可能な社会の実現へ貢献

例えばこんなこともGAPです

食卓に安全を届ける
[写真12]
異物混入を防ぐ、農薬を正しく利用するなどの取り組みを行います

環境に優しい農業を行う
[写真13]
農薬や肥料は適切に使い、さまざまな生き物との共生を目指し、環境保全に配慮した農業を行います

農業者の笑顔を守る
[写真14]
安全に農作業を行うために危険な作業を把握し、服装や機械の使い方など、ルールを作って実践します

動物にも優しい環境を整える
[写真15]
飼育環境に配慮した農場で、良質な飼料や水の給与を行い、適切に管理します
(ふきだし)寒いときには服を着るよ


第三者機関によるGAP認証

[画像2]
GLOBALG.A.P.
規格を運営する非営利団体による、世界で最も普及しているGAP認証

[画像3]
ASIAGAP
財団法人日本GAP協会による日本発のGAP認証
本年10月、日本の規格で初の国際承認を取得

[画像4]
JGAP
財団法人日本GAP協会による日本発のGAP認証


広がるGAP認証の取り組み

[写真16、写真17]
国内の小売店でも、取り扱いが増えている

写真提供/ザ・ガーデン自由ヶ丘 池袋店


Goodな農業!GAP-infoはこちら
[QRコード3]
https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap-info.html

これから始めるGAPはこちら
[QRコード4]
http://gap.maff.go.jp/〔外部リンク〕


NEWS3

海外旅行ではお土産選びにご注意を

年末年始に海外旅行を計画している方も多いのではないでしょうか。今年はアジアで初めて中国でアフリカ豚コレラが発生するなど、多くの国で家畜の病気が発生しています。そのため、空港や港では動物検疫を強化し、病気の侵入を水際で食い止めています。現在、ほとんどの国からの肉製品は日本に持ち込むことができません。皆さんのご協力をお願いします。

また、動物検疫で活躍している検疫探知犬がモデルを務めるカレンダーが完成しました。動物検疫所のWebサイトから無料でダウンロードできますので、ご活用ください。

[写真18]
各地の空港で協力を呼びかけ

[画像5]
「中国でアフリカ豚コレラ発生中」のポスター

[写真19]
2019年検疫探知犬カレンダー完成!


検疫情報についてはこちら
[QRコード5]
https://www.maff.go.jp/aqs/index.html〔外部リンク〕

カレンダーについてはこちら
[QRコード6]
https://www.maff.go.jp/aqs/topix/pamphlet.html〔外部リンク〕


取材・文/丸山 こずえ


クイズの答え

杉玉(酒林)

新酒ができたころに新しいものをつるし、それを知らせる役割を果たしています。時間が経つと緑から茶へ色が変化していくので、酒の熟成の進み具合も分かるのが特徴です。

お酒の神様がまつられている大神神社では、ご神体である三輪山の杉の葉を使った大杉玉がつるされていて、11月の「醸造安全祈願祭」の前日に取り替えられます。

[写真20、写真21]
杉玉の写真



編集・発行 農林水産省大臣官房広報評価課広報室
〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL:03-3502-8111(代表)
FAX:03-3502-8766

編集協力 株式会社文化工房
〒106-0032 東京都港区六本木5-10-31 矢口ビル4F
TEL:03-5770-7114(代表)
FAX:03-5770-7132
編集/中村麻由美、小尾悠梨子、糸瀬早紀、 藤田紫糸、小竹結女、伊藤高、小野沢啓子、三邉晶子
アートディレクション/釜内由紀江
デザイン/石川幸彦、清水桂