このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー
aff 2019年5・6月号
特集1 ぶどう

奥深いぶどうの世界

1ページ目/全6ページ(特集1)

甘みと酸味のバランスに優れ、生のままおいしく食べられる日本のぶどう。
世界に誇れる高い品質は生産者や研究者のたゆまぬ努力のたまものです。

古代エジプトの壁画にも
描かれたぶどう

古代エジプトの壁画などに栽培の様子が描かれていることからも分かるように、人類は、乾燥した土地でも育ち、ワインの原料にもなるぶどうを数千年前から育ててきました。

古代エジプトのナクトの墓の壁画(イメージイラスト)
古代エジプトのナクトの墓の壁画には、ぶどうの収穫や破砕の様子が描かれている。(イメージイラスト)

日本での由来については諸説あります。奈良時代の高僧行基(ぎょうき)が訪れた甲斐の国(現在の山梨県)で修行中、夢枕に手にぶどうを持った薬師如来が現れます。その姿と同じ薬師如来像を刻んで安置したのが、柏尾山大善寺です。以来、行基は薬として大陸から伝わったぶどうを勝沼に伝え、栽培が広まったという説。山梨県・勝沼の雨宮勘解由(かげゆ)が自生の山ぶどうと異なるつる植物を発見して自宅に持ち帰り植えたのがはじまりという説などです。

ぶどうを手にした薬師如来像 写真提供/大善寺
山梨県の勝沼地方にある大善寺は「ぶどう寺」として知られる。鎌倉時代に建てられた薬師堂には、ぶどうを手にした薬師如来像がまつられている。写真提供/大善寺

明治時代を迎えると、政府は産業振興のため欧米から多くの品種を導入しましたが、当初、欧州の品種は気候が合わずに失敗が続き、米国から導入したデラウェアなどの品種が根づくことになりました。

日本では生食用がメインに

日本のように雨の多い気候は本来、ぶどうの栽培に向かず、病害や虫害が出やすいのですが、研究者や生産者が品種改良に取り組み、日本の気候に適し、耐病性を兼ね備えた品種を次々に誕生させました。栽培方法の研究も進み、土壌と水の管理を徹底することにより高品質のぶどうが作られるようになっています。また、世界で生産されるぶどうの7割はワインの原料用ですが、日本では、そのまま食べる生食用が9割を占めることになりました。

Q

日本一栽培面積が大きい品種は?

答え巨峰

日本では生食用として60種類以上が栽培されており、最も大きい面積で作られているのが巨峰。日本の気候でも栽培できる欧州種の大粒のぶどうを目指し、石原早生とセンテニアルを交配して、1942年に誕生した品種です。育成地から眺められた富士山にちなんで命名された巨峰は、そのおいしさから「ぶどうの王様」と称されます。果肉は甘みが強く、豊かなコクが特徴です。

巨峰は商標名で、正式な品種名は石原センテニアル。提供/JA松本ハイランド
巨峰は商標名で、正式な品種名は石原センテニアル。写真提供/JA松本ハイランド
Q

ぶどうの収穫量日本一は?

答え山梨県

ぶどうは全国で広く生産されています。日本全体の収穫量は年間17万6,100トン(2017年)で、都道府県別の収穫量では1位が山梨県。そして、2位長野県、3位山形県、岡山県と続き、この4県で約6割を占めます。生産量日本一の山梨県では甲府盆地を中心とした水はけのよい地域での生産が盛んです。年間の日照時間が長く、降水量が少ないという内陸性気候がぶどう作りに適しているのです。

ぶどうの品種別栽培面積
Q

最も高価なぶどうは?

答えルビーロマン

石川県の砂丘地農業研究センターが藤稔(ふじみのり)という大粒ぶどうをもとに14年の歳月をかけて育成した品種です。2017年の金沢市中央卸売市場の初競りでは1房111万円、続く2018年も1房110万円という高額で落札されました。初競りは御祝儀価格ですが、品数のそろう最盛期の8月でも店頭価格は1房1万円くらいします。

ルビーロマン
特徴は粒の大きさ。赤い実は巨峰の倍くらいあり、中には直径4cmになるものも。写真提供/JA全農いしかわ
Q

最も古くから
栽培されている品種は?

答え甲州

鎌倉時代には栽培が始まったといわれる山梨県原産の甲州は2013年、DNA解析によって欧州系のぶどうと中国の野生種の交雑で生まれたものと判明しました。粒はやや小さく、果肉は柔らかく、香りは控えめ。ほどよい甘酸っぱさが魅力です。

皮と実が離れやすくて食べやすい甲州
皮と実が離れやすくて食べやすい甲州は白ワイン用としても評価を高めている。
Q

ぶどうの効用は?

答え疲労回復や
動脈硬化予防に有効

栄養豊富なぶどうは欧州で「畑のミルク」と表現されるほど。ブドウ糖や果糖など吸収されやすい糖質がたっぷり含まれ、疲労回復の効果が望めます。また黒や赤系の皮には、動脈硬化を予防し、目の疲れに効果があるとされるポリフェノールの一種アントシアニンも豊富です。長野県などは、ぶどうで初の機能性表示(注)を目指し、長野県産ナガノパープルの成分(アミノ酸の一種のGABA)が血圧上昇を抑えるとして消費者庁に届け出ています。(2019年4月現在)

(注)機能性表示食品
事業者の責任において科学的な根拠に基づき特定の保健の目的が期待できるという機能性を表示した食品。

ぶどう(生)の成分
長野県果樹試験場で育成されたナガノパープル。提供/JA松本ハイランド
長野県果樹試験場で育成されたナガノパープル。写真提供/JA松本ハイランド
Q

ユニークな形のぶどうがある?

答えさまざまな形があります

マニキュアフィンガーという品種は、粒が長く、先が赤く色づくとまるで爪を染めた女性の指先に見えることから命名されました。中国では「美人指」という名前で呼ばれます。マイハートは、ハート型の粒の新しい品種です。また、ぶどうなのにバナナという見た目もバナナに似た品種もあります。市場にはめったに出ない珍しい品種です。以上3品種とも日本生まれです。

マニキュアフィンガー
マニキュアフィンガー
皮ごと食べられる。あっさりとして甘く、適度な酸味がある。写真提供/茨城県
マイハート
マイハート
ウインクとシャインマスカットを交配させた品種。写真提供/志村葡萄研究所

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449
FAX番号:03-3502-8766