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農林水産省

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aff 2019年5・6月号
4ページ目/全6ページ(特集1)

生産者インタビュー(2)

ドローンやITで
ぶどう栽培を「見える化」

クピド・ファーム(山梨県)

クピド・ファームの代表・岩下忠士さん(右)と同社の安部正彦さん(左)。
クピド・ファームの代表・岩下忠士さん(右)と同社の安部正彦さん(左)。

上空から枝の広がりを把握する

日本有数のぶどうの産地、甲府盆地の北部で栽培にドローンやスマートフォンのアプリケーションを活用する試みが始まっています。取り組んでいるのは、この地で巨峰やピオーネを栽培してきた岩下忠士さんです。

「難しいとされるぶどう栽培の中でも、とりわけ技量が問われるのが、せん定です。余計な枝を残せば房に養分が行き渡らなくなって着色不足や糖度不足を引き起こし、逆に切りすぎれば房が少なくなり、収量が減ってしまいます」

棚の上から5mの高さで撮影。写真のゆがみを調整しながらパソコンで合成する。
棚の上から5メートルの高さで撮影。写真のゆがみを調整しながらパソコンで合成する。写真提供/(一社)農林水産業みらい基金

ぶどう棚を見上げながら切るべき箇所を決めるのですが、枝との距離が近いため全体像が把握しにくいことが作業を難しくします。2015年、このことを岩下さんに相談したのが、電機メーカーを早期退職し、近所でぶどう園の経営を始めた安部正彦さんでした。岩下さんはドローンの活用を思いつきます。

「さっそくカメラ付きの機種で試したところ、枝の広がりが手に取るように分かるのです。その後、農協や県内企業などに協力を求め、撮影したデータをもとに図面を作成できるようにしました。図面を用いれば、経験だけに頼らず、栽培計画を立てられますし、新規就農者は、どの枝を切るべきか、熟練者に助言をもらえます」

購入したドローンは1回の充電で約10分飛行し、1haの範囲を撮影できる。
購入したドローンは1回の充電で約10分飛行し、1ヘクタールの範囲を撮影できる。

粒数が的確に分かるアプリを開発

岩下さんと安部さんが次に取り組んだのが、摘粒の際、粒の数を効率的に把握する方法でした。そのままでは1房当たり100粒ほどになるのを35から40粒に減らすことで大きくハリのある粒になり、房の形も整うのですが、経験を要する作業である上、短期間に終えなければなりません。ピーク時には朝5時から夜まで粒を切り続け、疲れてくると勘が鈍って数が不ぞろいになることも。これを支援するツールとして開発したのが、スマートフォンで房を撮影すれば、適正な範囲の粒数かを瞬時に判定できるアプリでした。

内側を黒くした箱を背景に撮影し、果粒数を解析する。
内側を黒くした箱を背景に撮影し、果粒数を解析する。写真提供/(一社)農林水産業みらい基金

期待できる収量を見える化するプロジェクト

ぶどう産地の未来のため、ドローンや摘粒アプリを新規就農者の技術習得用のツールとして活用して、ぶどう栽培のハードルを下げたい。そう考えた岩下さんたちは、就農希望者の研修や栽培管理支援に会社組織として取り組むため、2018年に株式会社クピド・ファームを立ち上げました。同社が実施したイベントをきっかけとして、すでに1人が就農を果たしています。

「将来的にはドローンなどで得たぶどう園のデータに気温などの気象データを組み合わせて、収量予測の精度を向上させたいと考えています。コスト計算が正確にできるようになれば、特に就農希望者にとって安心材料になるはずですから」と岩下さんは抱負を語ります。

クピド・ファームでは月に1回程度、ぶどう栽培の体験イベントを実施している。
クピド・ファームでは月に1回程度、ぶどう栽培の体験イベントを実施している。

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