生産者インタビュー(1)
喜ばれるぶどうに
仕上げるために
保命園(愛知県)
農林水産大臣賞を受賞したぶどう園
愛知県のほぼ中央、岡崎市にある小高い丘に2ヘクタールのぶどう畑が広がっています。ここ保命園で育てられたシャインマスカットは2017年、「あいちのぶどうコンテスト」にて農林水産大臣賞を受賞しました。「賞をいただいたぶどうは成長過程から手応えがあり、わくわくしていました」と言うのは、実家のぶどう園を継いだ3代目園主の内田秀典さんです。
現在、内田さんはシャインマスカットや巨峰の他、保命園のオリジナル品種の茜(あかね)など35品種を育てています。これだけ多くの品種を手がけるのは、顧客の多様なニーズに応えるとともに、作業の時期をずらして、限られた労働力を分散するためです。
おいしい粒、形の良い房にするために
ぶどうは年間を通したさまざまな作業を経て育てられます。冬に行う大事な作業が、せん定です。枝の色つや、生えている向きや角度、芽の形や数など1本ずつ果樹の特徴を見極め、10年後を想定して枝をどのように伸ばしていくか考えながら切ります。
暖かくなってきたら、土壌の乾燥を防ぐとともに微生物を増やして根が健康に育つようにワラを敷きます。春には、芽かきといって早く出た芽を取り、均一の長さになるように調整する作業や伸びた枝が重ならないよう棚に縛る誘引という作業を行います。この後、房に養分を集中させるため、房を適切な大きさにする花切り、房の数を制限する摘房(てきぼう)、房の粒の数を制限する摘粒(てきりゅう)などの作業を行います。種なしにするためのジベレリン処理を行うのが5から6月です。
「冬だけでなく、夏も、必要な葉を残しつつ、せん定し、房に日光が届くようにします。こうすることでよりおいしいぶどうになります」
ぶどうが熟してきたら鳥や獣、病気から守るため1房ずつ果実袋を掛けます。収穫期は8月から9月まで。収穫後、ぶどうをたくさん養って消耗した果樹に「お礼肥(れいごえ)」として堆肥をあげます。
「ぶどう作りで大事なのは手間のかかる作業を適期にすませることです。どうしても間に合わないなら、あきらめる木、あきらめる畑を決めなければなりません。どれもかわいい木ですが、見極めができないとどれもダメになってしまいますから」と内田さんは言います。
「お客様の顔の見える」房作り
保命園ではインターネットを介した販売も行っていますが、売上の9割以上を占めるのが、ぶどう園に隣接する直売所での対面販売です。
「意外にも、すでに忘れられたような古い品種の評判が良かったり、小房で多くの品種を楽しみたいという方がいたり、直接うかがうお客様の声はとても参考になります。粒の多い大きな房など好みが分かっているお客様のため特定の房を仕立てることもあります」
あの人に喜んでもらおう、と顔を思い浮かべながら丹精込めたぶどうで礼状をもらい、泣いたこともあるという内田さん。より良いぶどうを、と他産地の生産者に教えを請うなど技術の向上に余念がありません。
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