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農林水産省

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aff 2019年7月号
農業のめぐみ

田畑は作物をつくるだけじゃない

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水田や畑は、私たちが食べる米や野菜が作られる大切な場所です。私たちが生活をする上で、大変重要な多くの「めぐみ」をもたらしてくれます。この「めぐみ」を「農業・農村の有する多面的機能」と呼んでいます。

日本では、年の平均気温が100年当たり1.21度の割合で上昇。また、猛烈な雨(1時間の雨量が80ミリメートル以上の雨)が発生する回数も増加しています。

例えば、このような気候変動や頻発する豪雨などの気象災害に対しても、その影響を軽減するような役割を持っています。

では、主な「めぐみ」を見てみましょう。

洪水を防いでくれる

水田は、周りをあぜで囲まれており、雨水を一時的に貯留することができます。

また、耕作されている畑では、土の粒子が集まって団粒構造を作り、その小さなすき間に水を蓄えることが可能です。そのため、大雨になっても一気に川に流れ込むことがなく、洪水の危険を減らしてくれます。このめぐみは、田畑での農作業を継続することにより得られます。

あぜに囲まれている水田は、大雨の際、雨水を一時的に貯留し、時間をかけてゆっくりと下流へ流すことができる。

土砂崩れを防いでくれる

傾斜地に作られた田畑は、生産活動を通じた日々の手入れによって、土砂崩れが起きるのを未然に防いでくれます。さらに、耕作された水田では、水がゆっくりとしみ込むため、雨水による急激な地下水位の上昇を抑える働きにより、地すべりを防ぐ役割も。

また、水田に張られた水や田畑の作物は、雨や風から土壌を守り、下流域への土壌の流出を防ぎます。

耕作が続けられていると...
雨水は田畑に貯留され、地下水が急激に増えないため、土砂崩れなどが起きにくい。
長い間、耕作が放棄されると...
雨水が貯留されず、地下水が急激に増えて、土砂崩れなどが起きやすくなる。

地下水をつくってくれる

水田に溜められた水は、ゆっくりと浸透して地下水になり、下流地域で生活用水や工業用水として活用されます。また、長い時間を掛けて下流の河川に戻り、川の流れを安定させる働きも。耕作された畑からも同じようなめぐみが得られます。

田畑に溜められた雨水などの多くは、地下水となり、良質な水として下流地域の生活用水などに活用される。

美しい景観をつくってくれる

農村地域では、農業が継続的に営まれることによって、田畑に育った作物や農家の家屋、その周辺の水辺や里山が一体となって美しい田園風景を形成しています。

こうした美しい景観は、四季折々に変化し、澄んだ空気やきれいな水などとともに、人々に癒しややすらぎを与えてくれます。

日本の棚田百選にも選ばれた、国内最大級の棚田「丸山千枚田」。
日本の棚田百選にも選ばれた、国内最大級の棚田「丸山千枚田」。
写真提供/(公社)三重県観光連盟

暑さを和らげてくれる

都市部では、周辺の郊外に比べて気温が高くなるヒートアイランド現象が顕著になってきています。東京の100年当たりの平均気温上昇は3.2度で、日本の平均気温上昇を2倍以上、上回っています。

水田には、水面からの水分の蒸発や、作物の蒸散により空気を冷やす効果があります。この冷涼な空気が周辺の市街地の気温上昇を抑えてくれます。

さいたま新都心に近接する見沼田んぼ付近で、水田は市街地に比べ、1.32度低く、周囲より気温の低いクールスポットが形成されていた。
さいたま新都心に近接する見沼田んぼ付近で、水田は市街地に比べ、1.32度低く、周囲より気温の低いクールスポットが形成されていた。
出典:埼玉県環境科学国際センター「埼玉県ヒートアイランド現象対策事業調査報告書」(2009年)

その他のめぐみ

農業・農村の有する多面的機能には、その他にもさまざまな働きがあります。

全国各地には五穀豊穣(ごこくほうじょう)祈願や収穫を祝うものなど、稲作をはじめとする農業に由来する伝統行事や祭りが多く、地域において永きにわたり受け継がれています。

また、体験学習や教育の場としての働きも。農村で、動植物や豊かな自然に触れることで、生命の大切さや食料のめぐみに感謝する心を育むことができます。

壬生(みぶ)の花田植
「壬生(みぶ)の花田植」は、2011年にユネスコの無形文化遺産にも登録された広島県北広島町で行われる稲作儀礼。
写真提供/(一社)北広島町観光協会

これまでに紹介したさまざまな働きは、どれもかけがえのない大切なものです。このような価値はお金に換えがたいものですが、一部の機能は貨幣評価も行われていて、足し合わせると年間8兆円以上になるという試算結果もあります。

水田の用水路で生き物調査をしている様子。
水田の用水路で生き物調査をしている様子。

今回紹介したもの以外の働きについては、下記をご覧ください。

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