

日々進化を遂げ、おいしさと鮮度を長期間保つ「冷凍食品」。おいしく食べるための解凍・調理の方法や、家庭での保存方法など、すぐに活用できる情報の紹介とともに、冷凍食品工場の製造工程の紹介を通して、そのおいしさの秘密に迫ります。
冷凍食品とは?

そもそも冷凍食品とはどのようなものなのでしょうか? 冷凍食品は一般的に次の4つの条件を満たすようにつくられています。
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条件 1
商品を-18度以下の
温度で保管していること生産・貯蔵・輸送・配送・販売の全ての段階において、常に商品の温度が-18度以下に保たれるように管理されています。
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条件 2
前処理をしていること
新鮮な材料を選び、丁寧に洗浄した上で、不可食部分を取り除いたり、必要な調理を行うなど、消費者に代わってあらかじめ前処理が行われています。
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条件 3
適切に包装していること
消費者に届くまでに、汚れたり、形がくずれたりしないように包装されています。包装には、調理方法や取扱い方法のほか、アレルギー表示や、法律で定められた項目など、様々な情報が表示されています。
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条件 4
急速凍結していること
凍結する時に食品の組織が壊れて品質が変化しないように、非常に低い温度で急速凍結されています。
急速凍結とは?

食品を凍らせた場合、-1度程度から凍り始めて-5度でほぼ凍結します。食品中の水分は、この温度帯で氷結晶となりますが、この温度帯を通過する時間が長い緩慢凍結の場合は、食品中で氷結晶が大きくなり、食品の組織が壊れてしまいます。急速凍結は、この温度帯を急速(ほぼ30分以内)に通過させ、組織の損傷を極力少なくする凍結方法です。
食材に応じた解凍・
調理方法でよりおいしく!
冷凍食品をおいしく楽しむには、それぞれの食材に合った解凍・調理をすることが大切です。
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(魚介類や肉類など、生のまま凍結し、
解凍すると元の状態に戻るもの)半解凍状態になったら、すぐに調理。解凍しすぎないことが大切です。水産冷凍食品は表面に氷の膜がついているので、水っぽくならないようにペーパータオルなどで水気を十分に拭き取ってから調理しましょう。
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凍ったまま直接加熱しましょう。ほとんどの冷凍野菜はブランチング(急速凍結する前に、生鮮品を調理する場合の7割から8割程度の加熱処理を行うこと)してあるので、加熱時間は生野菜の2割から3割の時間で十分です。
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冷凍果実は、涼しいところで自然解凍し、解凍しすぎない状態で食べましょう。外気に触れると酸化してビタミンなどの栄養分が失われるため、なるべく包装のまま解凍します。生の果実より品質変化が早いので、食べる時間に合わせて必要な分だけ解凍しましょう。
失敗しない
冷凍食品の保存方法
冷凍食品をおいしく食べるために、保存する際に気を付ける5つのポイントを紹介します。

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-18度以下の冷凍室で保存して下さい。そうすることで、細菌の繁殖を抑えるとともに、酸化や酵素反応などによる品質変化を抑制し、元の品質を長期間保つことができます。
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冷凍室内は隙間を少なくしましょう。凍った食品自体が保冷剤の役目を果たし、お互いを冷やしあうため、8割から9割くらい詰めることが望ましいです。隙間がある場合には、保冷剤などを活用するのもよいでしょう。
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扉の開閉時間はできる限り短くしましょう。冷凍室内の温度上昇を防ぎ、電気代の節約にもつながります。
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一度開封したら、食品の乾燥や酸化を防ぐため、しっかり空気を抜いて口を閉め、手早く冷凍室へ戻し、早めに食べましょう。
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一度溶けた冷凍食品を再凍結しないようにしましょう。品質が損なわれている可能性があります。
そうだったのか!
冷凍食品Q&A
冷凍食品に関する疑問にQ&A形式でお答えします。

食品を冷凍すると
栄養が損なわれませんか?

急速凍結することにより、栄養の損失は最小限にとどめられます。また、-18度以下で冷凍保存中の栄養価は長期間維持されます。

冷凍室に入れておいた
冷凍食品のパッケージが
パンパンに膨らんでいます。
食べても大丈夫ですか?

冷凍室のドアを開け閉めする際に、冷凍室内の温度が変動することによって、食品に付いた微細な氷が昇華(氷から水にならずに、直接気体になる現象)し、パッケージ内の空気の体積が増加することで膨らむことがあります。この場合は、品質に問題ありません。しかし、袋に穴が開いたりして解凍され、腐敗している場合にも同様にパッケージが膨らむことがありますので、その場合は利用しないでください。
冷凍食品ができるまで!
製造工場レポート
おいしさも利便性も常に進化している冷凍食品。おいしさと冷凍技術の裏側を探るべく、冷凍食品製造工場を取材。こだわりの工程を通して、出来立てのおいしさの秘密に迫ります。

宮崎県産ほうれん草を
おいしく冷凍

太陽をたっぷり浴びた宮崎県産野菜の冷凍食材を手がける「(株)ジェイエイフーズみやざき」。同社の7割の売り上げを誇るという一番人気の商品「宮崎育ちのほうれんそう」に注目し、その製造工程とおいしさの秘密について教えていただきました。
採れたてほうれん草の
おいしさを食卓へ

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1
材料投入
コンテナに入れ、異物や状態の悪い材料を取り除きます。
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2
ドラム選別
穴の空いたドラム(筒)に入れ、回転させることで小さな異物や虫などを飛ばします。
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3
ブロア洗浄
泡立てた水で葉の汚れを洗い落とします。
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4
手作業によるライン選別
ベテランのスタッフが目視で原料の状態を見極めます。
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5
ブランチング(加熱処理)
100度弱のお湯で茹でます。ほうれん草に含まれる酵素の働きが失われ、変色を防ぐことができます。
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6
冷却
冷水で冷やします。
7
カット
食べやすい大きさにカットし、脱水します。
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8
ほぐし作業
手作業でバラバラにほぐします。
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9
ライン選別
再度目視で状態をチェックします。
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10
凍結
トンネルフリーザーに入れて-30度で3分間急速凍結し、おいしさと鮮度をキープ。バラ凍結にすることで、解凍時間が少なくなり食感も向上。洗う・切るの手間もなく、好きな分だけ使える利便性も追求しています。
冷凍後、選別作業をしている様子。
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11
包装
バラバラのまま袋へ入れ、包装します。
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12
検査
金属探知機による検査、重量の検査、X線での異物検査、目視による最終チェックを経て、段ボールに梱包します。
ここがポイント
1
3分という短い時間で急速凍結することで、ほうれん草の中の組織が壊れることなくおいしさや鮮度を保ったまま冷凍することができます。周辺20km圏内の指定農場で原則、その日に採れたほうれん草を収穫後30分以内に工場に持ち込み、新鮮なまま冷凍するので、採れたてのおいしさをいつでも手軽に味わっていただけます。
ここがポイント
2
GLOBAL GAPやFSSC22000を取得し、安全で持続可能な農業を実践するとともに、食品衛生の国際規格に準処した衛生管理を実施しています。
工場の方の声
「宮崎育ちのほうれんそう」は2018年に冷凍野菜として初めて機能性表示食品として認められました。おいしさはもちろんですが、健康や美容といった観点での魅力も広めていきたいです。
取材協力
手軽にパリッと焼ける!
冷凍餃子の
製造工場を訪問
国産の肉、野菜を使用してつくられる冷凍餃子はどの様につくられているのでしょうか?製造工程と、そのおいしさの秘密に迫ります。

おいしさをとことん追求した
製造工程

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1
原料受け入れ検査
鮮度や異物のチェックなど厳しい検査を行い、合格した原料のみを使用します。
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2
原料保管
受け入れた原料は、適切な温度・湿度で保管します。
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3
選別・下ごしらえ
ニラのチェックを行っている様子。
傷つきやすいニラは手作業で選別。キャベツの堅い芯の部分は人の手作業でカットし、玉ねぎ、ネギ、ニンニクとともに熟練したスタッフの目視で異物や変色をチェックします。
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4
具をつくる
左:肉のミンチ。 中:玉ねぎのみじん切り。 右:調味料と具材をこね合わせている様子。
左:肉のミンチ。 右:玉ねぎのみじん切り。
下:調味料と具材をこね合わせている様子。肉はミンチに、野菜は水洗い後に持ち味が出るように均一にカットし、ミキサーで調味料と具材をこね合わせます。食材のカットはトレンドを意識して、野菜の食感や肉のごろごろ感を出すようにしています。
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5
皮をつくる
皮を薄く伸ばしている様子。
小麦粉、塩、水を手でこね合わせるようにし、皮をつくります。減圧されたミキサーの中でムラなく均一に混ぜ合わせること(真空混合)によって、コシのある皮ができます。
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6
具を皮で包む
機械で具材を包んでいきます。
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7
蒸す
包んだ餃子をトレイにのせて蒸し加熱します。
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8
冷凍
あら熱をとり、その後、急速凍結することで味が安定します。
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9
包装と検査
左:パッケージングする様子。 右:X線写真。
自動でフィルム包装し、問い合わせ番号を印字。 X線写真も含め、商品ごとの問い合わせ番号で製造時間や原料の詳細などを徹底管理しています。
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10
箱詰め
フィルム包装された餃子を箱詰めします。
11
重量検査
重量検査をし、適切な規格に準じているか確認します。
12
出荷
-25度以下に管理された倉庫から、専用の輸送車で運びます。
ここがポイント
それぞれの食材の食感を活かすため、素材をカットするサイズ、具材の混ぜ合わせや調味料の投入順といった全工程において、おいしさを追求しています。そのおいしさを保持する鍵が急速凍結。-30度から-35度以下の冷凍庫で1時間程度の短時間凍結することで、調理した際に最高の状態で味わえることを目指しています。
工場の方の声
付加価値を一層高めるためにおいしさはもちろん、健康・栄養と楽しさを追求し、環境にも配慮したモノづくりをしていきます。作り立て、出来たてのおいしさを瞬間凍結できること、栄養価を保てるなど、冷凍食品の価値を、もっともっと伝えていきたいです。
取材協力
味の素冷凍食品(株)

執行役員 関東工場長
中島豊さん
(なかじま ゆたか)

関東工場
開発導入グループ長
田代伸次さん
(たしろ しんじ)

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編集後記
簡単においしく調理できる冷凍食品。若い頃、冷凍チャーハンが好きで、いつも食べていたことを思いだします。ところで、自宅の冷蔵庫の扉にはいろいろなスイッチが付いているのですが、その中の「急速冷凍」スイッチが、野菜を冷凍保存する際に使うものだということにやっと気づきました。休日に野菜をまとめ買いして冷凍保存しているので、以来この機能をちゃんと活用するようになりました。(広報室SD)
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
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