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  • aff07 JULY 2021
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フリーズしてドライ? 宇宙でも活躍するフリーズドライ食品

写真

保存食としてはもちろん、手軽に本格的な風味を楽しめることから、現代の食生活の中に定着しているフリーズドライ食品。その製造方法や特徴、また日常食だけでなく、非常食、宇宙食といった幅広い活用シーンについて紹介します。

凍らせて乾燥させる?
フリーズドライの
メカニズム

フリーズドライ製法の大きな特徴は、“昇華”という「固体が液体にならずにそのまま水蒸気になる現象」を利用して、食品中の水分を限りなくゼロに近い状態まで減らす点です。まず、調理した食品を-30度程度で凍らせます。この時、食品中の水分は氷に変化します。次に、真空に近い状態まで一気に減圧し、その後、昇華に必要な最小限の熱を加えることで、食品中の氷は水蒸気となって抜け出ていきます。なぜ減圧するのかというと、圧力を下げると沸点が下がり、低い温度でも沸騰し、気体になるからです。

例えば水は通常100度で沸騰しますが、山頂など気圧が低いところでは100度よりも低い温度で沸騰し気体になります。フリーズドライ製法は、減圧することで、食品中の氷(水分)を気体に変化させ、乾燥させているのです。そして、水分が抜け出た後は、スポンジ状に穴が開いている状態になります。お湯を注ぐと、この穴に再び水分が入り込み、フリーズドライ前の状態に戻ります。

凍結前(左):素材の中には多くの水分が含まれています。
凍結後(中央):凍結(フリーズ)させて素材の中の水分を氷に変え、凍らせたまま真空状態で乾燥(ドライ)させます。
乾燥後(右):氷が気体に変化し、素材の水分が抜けた状態(フリーズドライ)に。

フリーズドライ食品の
メリットとは?

カップラーメンの具材やインスタントコーヒーといったお馴染みの食品から、医薬品、宇宙食まで様々な分野で活用されているフリーズドライ技術。その理由を4つのメリットに沿ってご紹介します。

  • 特徴 1

    復元性に優れている

    製造の際に昇華によりできた空洞にお湯が入ると、素早く簡単に元の状態に戻すことができます。お湯を注ぐだけですぐ食べられるといった簡便な調理方法が特徴です。

  • 特徴 2

    味や香り、栄養価の
    損失が少ない
    ※調理後の状態と比較して

    高熱を加えて乾燥させる製法ではないため、熱により変化しやすいビタミン類や栄養価の損失を最小限に抑えることができます。風味が損なわれにくい利点もあるので、コーヒーや紅茶、緑茶などで活用されています。

  • 特徴 3

    持ち運びに便利

    軽量でかさばらないので携帯に便利。毎日のお弁当やピクニック、ハイキングなどにも気軽に持っていけます。登山やキャンプといった本格的なアウトドア、また海外旅行にも適しています。

  • 特徴 4

    常温で長期保存が可能

    常温での長期保存が可能です。食品に含まれる水分量がとても少ないので微生物の繁殖や酵素の働きが抑制されるため腐敗しにくく、災害備蓄にも適したアイテムとなっています。

フリーズドライ食品
保管のポイント

フリーズドライ食品の品質を劣化させる1番の原因は、高温にさらされることです。例えば、直射日光のあたる場所にフリーズドライ食品を放置してしまうと化学変化が起き、劣化の原因につながってしまいます。また、一度開封したフリーズドライ食品は、空気中の水分を吸収することを防ぐために密封した容器に入れ、高温多湿の場所を避けて保存し、賞味期限に限らずなるべく早く食べるようにしてください。

監修

アサヒグループ食品(株)

さまざまな場面で活躍!フリーズドライいろいろ

様々な食品に活かされているフリーズドライの技術。日常的に食べられる食品から、災害時に活躍する食品、さらには宇宙食という特殊な条件の課題をクリアして開発された食品まで、幅広く活用されています。フリーズドライ技術を使った商品を紹介します。

  • 1

    災害時にも活躍!

    業務用災害備蓄用フリーズドライご飯

    調理時間がお湯で3分、水で5分と短く、白飯以外にもわかめ味、カレー味など色々な味があります。水加減で好みの食感に調整でき、時間が経っても硬くなりにくいという特徴も。調理せずスナック感覚でそのまま食べることも可能。また、8年間の長期保存が可能なため、災害時の備蓄食にも適しています。
    取材協力:(株)永谷園ホールディングス 広報部

  • 2

    郷土料理を手軽に!

    奄美大島 鶏飯

    奄美大島を代表する郷土料理である鶏飯を、簡単・手軽にすぐに食べたいというリクエストが誕生のきっかけ。ご飯の上にかける、味の決め手となるスープをフリーズドライすることで、鶏の旨味たっぷりでヘルシーなスープを再現しています。鶏肉、しいたけ、ゆず、錦糸卵などの具材が入っていて、ご飯の上にのせてお湯を注ぐだけで食べることができます。
    取材協力:(株)奄美大島開運酒造

  • 3

    和食を手軽に!

    いつものおみそ汁 なす

    フリーズドライならではの風味や食感に優れた具材と、具材に合わせて相性のいい味噌とだしを選ぶことで、作り立ての美味しさにこだわった味噌汁。トロッとした食感が魅力のなすの味噌汁は、まろやかな合わせ味噌と、かつおと昆布だしの味わい。1杯から手軽に作れるため、時短にもなり、人気を集めています。
    取材協力:アサヒグループ食品(株)

  • 4

    宇宙でも活躍!

    スペースからあげクン

    宇宙でもお肉が食べたいという宇宙飛行士の声から、約3年4ヶ月の開発期間を経て誕生。無重力の条件下で、細かな粉が飛び散って機械に入り込まないように、一口サイズで食べやすい工夫がされています。開封したらそのまま食べることができて、フリーズドライならではのサクサクとした食感、噛めば噛むほど美味しさが口の中に広がる味わいが特徴です。
    取材協力:(株)ローソン 広報部

日本の味を宇宙へ!
JAXAに学ぶ宇宙日本食

宇宙飛行士に宇宙でも日本の味を楽しんでもらい、最高のパフォーマンスを生み出してもらいたいという思いから誕生した「宇宙日本食」。宇宙飛行士の健康管理を担当するJAXA・宇宙飛行士健康管理グループの佐野智さんに「宇宙日本食」の現状とこれからについて伺いました。

-宇宙食/宇宙日本食とはどのようなものですか?

宇宙食というと、NASAやロシアが開発して国際宇宙ステーション(ISS)で食べられているものをISS標準食と呼んでいますが、ISSに滞在する日本人宇宙飛行士を精神・栄養面から支え、パフォーマンスの向上を図る目的として、JAXAが2007年から新しく認証し始めたのが「宇宙日本食」です。食品メーカーが開発する食品に対し、JAXAが宇宙日本食認証基準に照らし認証しており、2021年7月現在47品目(その内、フリーズドライ食品は1品目。一部にフリーズドライが使われているものを除く)の宇宙日本食があります。

宇宙でも日本の味を楽しむことができる宇宙日本食。
©️JAXA

-宇宙食ならではの特徴・求められる条件にはどのようなものがありますか?

まず求められる条件としては保存性です。宇宙飛行士は6ヶ月程度、宇宙に滞在、宇宙食の海外輸送やロケットへの積み込みなどの期間も考慮する必要があるため、1.5年の常温保存を条件として求めています。次に、衛生面。微生物や異物などが入らないように工程を監視するHACCP(ハサップ:Hazard Analysis Critical Control Point、NASAが宇宙食開発のために構築したシステム)と呼ばれるアメリカや日本の食品業界でも幅広く導入されている工程管理システムをベースにしたものを求めています。そして、無重力ならではの条件として粘性があること。食べる際に液体などが飛び散って機械に入ったりしないよう、例えば、スープにとろみをつけたりという工夫が求められます。

宇宙日本食のしょうゆラーメンを食べる油井宇宙飛行士。ラーメンは飛び散らないように粘性を高めている。
©️ JAXA/NASA

-宇宙日本食の中で、フリーズドライ食品ならではの魅力とは何ですか?

食品の形態でみると、レトルト食品や缶詰が多く占めていますが、水分がないのでフリーズドライ食品には軽量で体積が小さいというメリットがあります。ISSに1キログラムの荷物を積むのに330万円程度費用がかかるので、フリーズドライ食品が多くなれば、食べ物だけでなく実験装置や実験サンプルなども多く積めるようになります。ただ、食材がフリーズドライに適しているか、1.5年後も味が変わらないか、酸化しないかなど、トライアンドエラーで様々なデータを取り、開発につなげるには手間暇がかかるためか、あまり種類がないのが現状です。宇宙日本食でもからあげクンやカップラーメンの具材といった程度ですが、レトルトや缶詰とは違った食感や味わいが楽しめたり、鮮度を保ったまま美味しく食べられるので、さらにバリエーションが増えていけばと思います。

宇宙日本食(しょうゆラーメン)。
©️JAXA

-今後の宇宙食について教えてください。

2024年に有人月面着陸、2028年に月面基地の建設を目指すというNASAのアルテミス計画に日本も参画する予定で、今後は同計画に宇宙日本食を提供するための活動にも注力していきたいと思っています。さらに、NASAは2033年に火星有人探査を実現することを目標としています。
そこで、JAXAでは、月や火星探査に必要な健康管理技術を識別しており、栄養関連では、野菜や果物を宇宙で育てる技術や、培養肉技術などをあげており、これらの技術をお持ちの企業や研究機関と連携しながら研究を進めていきたいと思っています。

宇宙日本食の山菜おこわ、おにぎり 鮭と野口宇宙飛行士。
©️JAXA/NASA

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール写真

宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙飛行士健康管理グループ 主任研究開発員

佐野 智さん
(さの さとし)

JAXA入社以来、食品・製薬業界等と連携した宇宙実験に取り組み、宇宙での機能性食品や睡眠、排泄、鍼灸などの生活系研究会も推進。現在、宇宙食/生鮮食品・健康管理技術担当。
週末は畑で有機野菜を育て、たくあん作りにも奮闘中。

冷凍食品とフリーズドライ食品

編集後記

6歳くらいの時、北九州のスペースシャトル展みたいなものに連れて行ってもらった記憶がうっすらあります。打ち上げの様子を大画面で再現したショーは足と首が疲れたし、未舗装の土の臨時駐車場は会場から遠かったしで、今でも語り草には事欠かないのですが、土産で買ったフルーツ味の宇宙食がイマイチだったのは一番強烈に覚えています。アレは本物でなく、お土産用に作られた宇宙食だったのでしょうか?(広報室YT)

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お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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