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aff 2022 SEPTEMBER 9月号
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廃校再生プロジェクト

廃校再生プロジェクト

第4回 若狭町みさき漁村体験施設みさきち[福井県三方上中郡若狭町] 第4回 若狭町みさき漁村体験施設みさきち[福井県三方上中郡若狭町]

地域と大学が連携し
若者や
子どもを呼び込む交流拠点に

福井県若狭町の旧岬小学校・三方中学校岬分校は、廃校の翌2018年、「若狭町みさき漁村体験施設」、愛称「みさきち」に生まれ変わりました。地域外から多くの若者や子どもが訪れるようになり、漁村にかつてない活気が生まれています。

海と山がすぐそこにある
抜群のロケーション

定置網漁が盛んな若狭湾に面している

旧岬小学校・三方中学校岬分校があるのは、若狭湾の中ほどに突き出た常神(つねがみ)半島の西浦地区。美しい海と山に囲まれた自然豊かなエリアです。地域住民の多くが営んでいるのは漁業や民宿業。新鮮な海の幸が楽しめるのも魅力です。そんな恵まれた環境を活かし、廃校を漁村体験施設に活用する構想が生まれました。

目の前の山は、県の名勝「神子(みこ)の山桜」で知られる

次世代を担う若者や子どもを呼び込み、過疎化が進む西浦地区に元気と賑わいを創出したい。そんな想いから、若狭町が協力を要請することにしたのは、福井工業大学などを擁する学校法人金井学園です。2017年6月の廃校から3カ月後の同年9月、若狭町と金井学園が相互連携協定を締結、さらに西浦地域づくり協議会を含めた3者で西浦地区交流促進協定を締結し、廃校再生プロジェクトがスタートしました。

学生のアイデアを取り入れて
リノベーション

学生が黒板アート(上)や
施設内のサイン(右)を制作

教室や職員室などを食堂、宿泊室、浴室、洗濯・乾燥・ロッカー室、談話室、セミナー室、体験調理場、バーベキュー施設などにリノベーションしました。総事業費は1億119万2000円(うち農林水産省による支援 農山漁村振興交付金3,815万円)。基本設計を担当したのは、福井工業大学環境情報学部デザイン学科の藤田大輔准教授とその研究室の学生たちです。地域住民の学校への愛着に配慮し、できるだけ元の学校の雰囲気を残しました。施設内のサインをデザインするなど、学生のアイデアが随所に取り入れられています。

竣工式で風船飛ばし
オープン記念イベントの1つ、科学実験キャラバン

オープンは2018年4月。竣工式には地域住民と福井工業大学の教職員・学生が多数参加し、オープン記念イベントを繰り広げるなかで、大いに交流・親睦を深めました。協議を重ねて決定した施設の愛称「みさきち」が発表されたのは、この日のこと。「旧岬小学校・三方中学校岬分校を多彩なイベントや情報の発信基地に」という想いを込めて名付けたそうです。金井学園が指定管理者となり、福井工業大学の社会連携推進課を窓口に、運営がスタートしました。

忘れられない
体験ができる

魚さばき体験
SUP(サップ)体験
キャンプ体験

「遊んで・学んで・泊まれる体験施設」を標榜する「みさきち」には、さまざまな体験プログラムがあります。たとえば、地元の若手漁師が丁寧に指導してくれる魚さばき体験や、SUP(=スタンドアップパドル)、シーカヤック、シュノーケリングといった水上アクティビティ体験。波音を聞き、星空を見上げながらグラウンドでキャンプするのもおすすめです。

福井工業大学生の合宿風景

元教室を畳敷きにした宿泊室は6つあり、合計50名まで宿泊できます。このため学校のクラブやセミナー、スポーツ少年団、子ども会の合宿など、大人数の利用が多いのが特徴です。映画のロケ隊が滞在したこともあるとか。新型コロナウイルス感染症の影響が出る前のサマーシーズンは、平日を含め毎日数十人規模の予約で埋まっていたそうです。利用者は福井県内に限らず、岐阜、大阪、京都、石川など他県からも来訪。利用人数(延べ人数)は2018年2,739人、2019年2,724人に上りました。

地域を盛り上げる
祭りを開催

第2回みさき祭の実行委員メンバー
豚汁のふるまい屋台
留学生による自国紹介スタンプラリー

これまでの「みさきち」最大のイベントといえば、みさき祭です。2018年11月に第1回、2019年11月に第2回が開催され、各回とも大盛況でした。実行委員を務めた福井工業大学の学生たちが、地域の子どもたちに喜んでもらいたいと、ユニークな企画をいろいろ発案。第2回みさき祭では、レゴブロックを使ったロボットプログラミング教室や、留学生による自国紹介スタンプラリーなどが行われました。若狭町、西浦地域づくり協議会の関係者と、企画段階から密接に連携して成し遂げた思い出深い祭りです。新型コロナウイルス感染症が収束し、再び開催される日が待ち望まれています。

夏休みこども教室
海岸清掃

福井工業大学と地域の絆は、「みさきち」を通して一層深まっています。大学が地域の子ども向けイベントを企画・開催したり、学生と地域住民が一緒に海岸清掃を行ったり。インバウンドの増加に向け、留学生たちが外国人目線で若狭町の観光資源を発掘調査し、それぞれの母国語で観光パンフレットや観光動画を制作するといったことも行いました。地域に喜ばれるこうした活動は、学生たちにとっても、通常の学生生活では得られない貴重な社会勉強になっています。

自治体、地域住民、指定管理者が
理想的な関係を築く

上左から/髙木吉男さん、松本弘康さん、齋藤佳之さん、
下左から/岩﨑誠さん、塩谷正人さん、齋藤有司さん

今回お話をお伺いした6人の方々から、コメントをいただきました。

●若狭町観光商工課の岩﨑誠さん

「福井工業大学の学生たちが、わざわざ福井市から来てくれて、地域住民との間に良い交流が生まれているのをうれしく思います。今後、少子化で町内に廃校が増えていきますが、『みさきち』は活用のモデルケースのひとつになるでしょう」

●福井工業大学社会連携推進課の齋藤有司さん

「教職員や学生のアイデアを、これからも地域の課題解決に役立てていただきたい。我々も地域の方々と交流を重ねるなかで、いろいろな学びを得て成長できます」

●福井工業大学学務課の齋藤佳之さん

「普段は電子機器に囲まれている学生たちが、自然豊かな環境で非日常体験を楽しめるのは『みさきち』のおかげです。見ていると、一度訪れた学生は必ずリピーターになりますね」

学生たちと干物を食べながら談笑する松本さん

●西浦地域づくり協議会元会長・現支援員の松本弘康さん

「自治体、地域住民、指定管理者がどれだけ仲良く円滑に連携していけるかが、廃校活用のカギだと思います。我々は理想的な関係を築いており、視察に来る自治体の方々からいつも羨ましがられます」

●西浦地域づくり協議会会長の塩谷正人さん

「魚さばき体験は、その日の朝、定置網漁でとれたばかりの新鮮な魚をさばきます。みんな真剣にチャレンジしてくれるので、教えがいがあります」

●若狭町西田公民館館長の髙木吉男さん

「常神半島は町の中心部から遠く、なかなか地域外から人が来てもらえないエリアでした。『みさきち』ができ、みさき祭などで大勢の学生と触れ合えて、地域の活性化を実感しています」

岬援隊(こうえんたい)の救助講習
ワーケーションにも対応

「みさきち」は漁村体験施設であるだけでなく、西浦地域づくり協議会の活動拠点として、また防災拠点(避難所)としても重要な施設です。地元有志が結成した共助組織「岬援隊(こうえんたい)」も、ここを拠点に活動しています。「廃校にはなったけれど、廃墟にはなっていません。こうしてきちんと管理されている施設だから、さまざまな活動に使えるのです」と松本さん。元図書室にオンライン会議システムやパソコン、プリンターを導入し、ワーケーション利用できる環境も整えました。地域の魅力発信基地であるとともに、地域の心のよりどころでもある。そんな廃校再生事例を紹介しました。

若狭町みさき
漁村体験施設
みさきち

(PDF:15,791KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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