旅する農業遺産

農業遺産は、特徴的かつ伝統的な農林水産業を営む地域であり、世界農業遺産と日本農業遺産の2種類があります。世界農業遺産は国際連合食糧農業機関(FAO)により、日本農業遺産は農林水産大臣により認定されます。今回は、世界農業遺産の一つである和歌山県の「みなべ・田辺地域」をご紹介します。
※世界農業遺産認定地域数は78地域(うち日本国内認定地域数15地域)、日本農業遺産認定地域数は24地域
みなべ・田辺の梅システム
梅生産地として知られる和歌山県のみなべ・田辺地域。その歴史は、1600年ごろに当時の紀州藩田辺領主・安藤直次が梅の栽培を奨励したことにさかのぼります。急斜面の土地を生かすために、山頂付近に炭の原木となる薪炭林(しんたんりん)を残し、中腹に梅林を開墾しました。これにより、薪炭林の土壌が雨水を吸収して山崩れを防ぐとともに、山に生息するニホンミツバチは梅の受粉に大きな役割を果たします。また、梅林に生えた草が土壌の流出を防ぐ一方で、刈り取った草は梅の肥料として活用。こうして生み出された「南高梅」に代表される梅、そして薪炭林からつくられる最高級炭「紀州備長炭」は地域の基幹産業となり、人々の暮らしを支えています。400年以上前から続く画期的な農法と、梅産業から広がる文化・景観が評価され、2015年12月に「みなべ・田辺の梅システム」として世界農業遺産に認定されました。

和歌山県は梅の収穫量が全国第一位で、6万4,400トンと全国の収穫量(9万6,600トン)の約7割を占めます(令和4年産作物統計調査・概数)。なかでも、和歌山県南部に位置するみなべ町及び田辺市の一帯は、県内で最も梅の生産が盛んな地域。全国的に知られるブランド梅、「南高梅」は、みなべ町が誕生の地です。






梅の体験イベント
みなべ町内の梅農家では、梅干しづくりや梅ジュース・ジャムづくり、梅はちみつ漬けなど、様々な体験ができます。梅の花の見ごろは2月上中旬ごろですが、毎年6月上旬には、梅のもぎ取りや梅拾いなどの収穫体験も実施。農家に直接訪問して教わることができるので、貴重な経験が得られます。
情報提供:みなべ観光協会

カフェ・ド・マンマ
溶岩ピザ窯で焼いたナポリ風ピッツァが楽しめるオーシャンビューの絶景カフェ。紀州備長炭パウダーを練り込んだ生地にみなべ産の紀州南高梅やはちみつをトッピングした「黒ピッツァ フルーツ」(写真)、白干梅かはちみつ梅を好みで選べる「ベーコンときのこの梅のピッツァ」が人気です。
URL:https://www.pluman.net/cafe/
アクセス:JR「南部駅」下車、徒歩約20分

みなべ町うめ振興館
梅の歴史や特徴に加え、みなべ町の歴史や文化財についても学べる複合施設。約150年前の梅干し実物展示や梅林を再現したパノラマなど、見どころが豊富。梅干しや梅加工品などの特産品が並ぶ物産コーナーもあり、お土産探しにもぴったりです。
URL:http://www.town.minabe.lg.jp/docs/2013091100182/
アクセス:阪和自動車道「みなべIC」から車で5分

道の駅 紀州備長炭記念公園
備長炭発祥の地、田辺市の秋津川にある道の駅。併設の「備長炭発見館」では、木炭の歴史や文化に関する資料が展示されているほか、実際の炭焼きの様子を見学できます。紀州備長炭のBBQ(要予約・4月から10月)や梅ジュースづくりのワークショップ(要予約)など、体験も楽しめます。
アクセス:阪和自動車道・紀勢自動車道「南紀田辺IC」から車で20分

秋津野ガルテン
旧上秋津小学校の廃校舎を利用した、体験型グリーンツーリズム施設。梅やみかん・野菜の収穫やお菓子づくり体験に加え、地産地消の料理をバイキング形式で味わえるレストランも人気です。和洋の客室を備えた「宿泊棟」もあり、週末のレジャーにも利用可能。
アクセス:JR「紀伊田辺駅」下車、龍神バス「龍神方面」でバス停「上秋津」下車、徒歩5分
阪和自動車道・紀勢自動車道「南紀田辺IC」から車で10分

鬪雞神社・藤巌神社
熊野三山の別宮的存在で、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている鬪雞(とうけい)神社。その境内には、徳川家康の側近として活躍し、梅の栽培を奨励した安藤直次公がまつられている藤巌(とうがん)神社があります。樹齢1200年とされる、楠の御神木は必見です。
URL:https://www.tanabe-kanko.jp/view/kumano-kodo/toukei-jinja/
アクセス:JR「紀伊田辺駅」下車、徒歩5分
広大な梅林に出かけよう
梅の季節に訪れるなら、ぜひ足を運びたいのが広大な梅林です。なだらかな斜面に見渡す限りの梅花が広がる「南部梅林」と、すり鉢状に梅畑と里山を望むロケーションが魅力の「紀州石神田辺梅林」は、どちらも日本屈指のスケール。名物グルメの店が並ぶほか、様々なイベントも行われ、賑やかな雰囲気に包まれます。
※南部梅林は2月上旬から、紀州石神田辺梅林は2月中旬頃から下旬までが見ごろ。開園時期は気候によって異なります。


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