未来へつなぐ和食

第一線で活躍する和食の達人から将来を担う子どもたちへ想いをつなぐ連載企画「未来へつなぐ和食」。
今回は、幅広い層に人気の日本料理店「鈴なり」の主人・村田明彦さんにうかがいます。聞き手は、料理が好きで、たまご焼きに挑戦中という村木ひらりさんです。
表情豊かな和食を作るために
村木ひらりさん (以下、村木)私はたまに家族に料理を作って喜んでもらうとすごくうれしいのですが、村田さんも子どものころから料理が好きだったんですか。
村田明彦さん (以下、村田)好きでしたね。母の実家がフグ料理屋を営んでいて、母も働いていたので、幼少期から手伝うことがありました。将来はその店で働くつもりだったのですが、祖父が200年くらい続いている日本料理店「なだ万」をすすめてくれて、高校を卒業してから13年間、そこで働きました。お客様を大事にする良い店で、そういったことも丁寧に教わりました。
村木こちらの「鈴なり」ではどんな料理を出されているのですか。
村田旬の食材を大事にする。温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいままお出しする。こうした基礎を大切にしつつ、自分なりのアレンジを加えて表情豊かな和食を提供しています。
村木どのようなアレンジをされるのですか。
村田日本料理の素材としては珍しいキャビアやチーズ、ワインを使うこともあるのですが、例えばスペイン産のイベリコ豚やラトビア産の干したクランベリーで煮物を作るうち、日本にもイベリコ豚を育てている生産者がいることを知りました。また、国産の乾燥したキイチゴがクランベリーの代わりに使ってもおいしいことが分かったので、国産の食材に切り替えてみるなど、工夫次第で和食の可能性が広がっていくのが楽しいです。

料理はどのようにして
勉強されたのですか。

先輩に教えてもらうだけでなく、マンガも含めて料理に関する本を手当たり次第に読んだり、お客様の話を聞きながら、気になったことがあれば、自分で詳しく調べるようにしてきました。
たまご焼きの作り方のコツは
村木たまご焼きを練習中なんですが、私も食材の味を生かせる基本的な作り方を学びたいです。
村田では、甘い味のたまご焼きの作り方を実演しましょう。たまご3個をボウルに割り入れ、しっかり混ぜ、砂糖小さじ3、醤油小さじ1を加えます。味は好みに合わせて調整してください。
村木上手に焼くためにはどうすればいいですか。
村田たまご焼き器に油を入れ、中火で熱してからキッチンペーパーなどで余分な油をふき取り、卵液を3分の1ほど薄く流し込みます。──気泡ができたら潰してあげましょう。まわりが固まってきたら折り畳み、たまご焼き器の空いたところにまた薄く油を塗り、卵液を3分の1流し込みます。これを繰り返し、両面に焼き色がついたら、巻き簾(す)で四角く形を整え、しばらく待ってから切り分ければできあがりです。
村木きれいな形になりましたね。
村田すった山イモを入れればフワフワの食感になります。明太子を入れてもおいしいですが、この場合、砂糖をやや少なめにしてください。基礎がしっかりしていると、こういったアレンジも楽しめるようになります。
村木試してみたいです!

たまごは火を入れすぎるとボソボソになるので、火加減に気をつけてください。砂糖が入ると、特に焦げやすくなります。卵液をザルでこしてあげると均一な黄色に焼き上がりますよ。

和食の料理人は箸で巻きますが、返し(ヘラ)を使うと巻きやすいでしょう。
だし巻きたまごで難しいこと
村田次にだし巻きたまごを作ってみましょう。溶いたたまご3個にカツオと昆布の合わせ出汁90ミリリットルとみりんを少し加えます。淡口醤油は小さじ1より少なめにします。
村木醤油はたまご焼きのときより少なくていいんですか。
村田はい。塩みが出汁の香りや味を引き立ててくれます。旨みを強くしすぎてしまうと塩みを感じにくくなります。出汁を使うときは、この調整が難しいですね。──だし巻きたまごは巻き方も少しハードルが高くなりますから練習が必要かもしれません。出汁を多く入れれば、食感はプルプルになりますけど、より巻きにくくなります──。卵液を4分の1くらい入れて、スクランブルエッグ状にしたら、これを巻いて芯になる部分を作り、たまご焼きと同じように周りに薄い層を巻いていきます。──はい、完成です。

だし巻きたまごも、甘辛く炊いた鶏のそぼろを入れたり、ウナギやシラスを入れたり、色々アレンジが利きます。シンプルに大根おろしを添えてもいいですね。

だし巻きたまごはトロトロしていてとってもおいしいです。
和食を広められれば、という思いから
村木村田さんはテレビなどでも料理の作り方を紹介されていますね。
村田和食を少しでも広められれば、という思いから頼まれれば出演するようにしています。とにかく多くの方に試していただきたいので、出汁を引く代わりに市販の麺つゆを使うなど手軽に和食に挑戦できるレシピをお教えすることもあります。
村木和食について私たちの世代が知っておくべきことはどのようなことでしょうか。
村田2013年に日本人の伝統的な食文化として和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのですが、このとき、日本で独自に発展したカレーライスやラーメンも和食に含まれるかという議論がなされ、私たち料理人が、和食とは何かということを改めて考える機会になりました。もちろん基本の型は大切ですが、決まった型にはまらないようにしていけば、日本料理の世界はどんどん広がり、発展し、基礎である和食文化の伝統も受け継がれていくはずです。醤油、味噌、酢、カツオ節などの発酵食品を使い、健康にもいい和食は世界に誇れる文化です。次世代の皆さんに大切に守っていってほしいですね。

むらた・あきひこ●1974年、東京都出身。老舗日本料理店「なだ万」に入社。13年間修業を積み、2005年、東京都新宿区荒木町に「鈴なり」開店。2015年のミラノ万博に和食の料理人として参加。
むらき・ひらり●2011年、東京都出身。趣味イラストを描くこと、コラージュ制作、ものづくり。特技ダンス(HIPHOP、K-POP)、2025年開催、大阪・関西万博の応援ソングを演奏することが決定。
「にっぽん伝統食図鑑」は、日本の各地域が誇る伝統食を体系的に整理したデータベースWebサイトです。普段からよく食べている地元の伝統食のいわれを学んでみたり、旅先の気になる伝統食を調べてみたりと楽しむことができます。
伝統食は、全国各地域で古くから存在している地域の食材を基に、気候・風土など地域の特性を活用し、保存性、食味などを工夫しながら長年製造されてきた食品及びそれを活用した料理です。「にっぽん伝統食図鑑」では、右の項目を伝統食の選定基準とし、17種類の分類で紹介しています。
伝統食は、全国各地域で古くから存在している地域の食材を基に、気候・風土など地域の特性を活用し、保存性、食味などを工夫しながら長年製造されてきた食品及びそれを活用した料理です。「にっぽん伝統食図鑑」では、下記の項目を伝統食の選定基準とし、17種類の分類で紹介しています。

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