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農林水産省

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新体験!ジビエツーリズム

体験してこそわかる!
旅して楽しむジビエ

レストランで食べるだけでなく、現地で楽しむイベントや体験アクティビティも人気になりつつあります。
全国に広がる、旅して楽しむ「ジビエツーリズム」の魅力を紹介します。

広がるジビエ体験

近年、ジビエについて学んだり、体験したりできる施設やツアーが全国で増えており、ジビエへの認知度や理解の広がりを後押ししています。

狩猟体験や解体見学、ジビエ料理を味わうツアーなど、現地に足を運んで楽しむジビエツーリズムが注目を集めています。中には、自分たちで実際に野生鳥獣を解体するなど、日常では体験できないような貴重な経験ができるものもあります。
また、単にジビエを食べるだけでなく、野生鳥獣による地域への被害の実態や"命をいただく"ことの意味について、体験を通じて自分ごととして理解し、考えてもらうきっかけにしてもらうことを目的とするプログラムも少なくありません。野生鳥獣の捕獲に漠然とした不安や抵抗感を持つ人もいるかもしれませんが、実際に体験して正しい知識を得ることで、ジビエや野生鳥獣の捕獲への理解も深めることができます。それは持続可能な農業や環境保全を考えるきっかけにもなっていくはずです。

見る、学ぶ、食べるが、一箇所に

道の駅に隣接。気軽にジビエ体験を

山梨県富士吉田市の道の駅・富士吉田に隣接するのが、富士山ジビエセンターDEAR DEER(ディアディア)。2024年のオープン以来、年間3万人ほどが訪れています。富士山の麓にあるこの地域では、シカによる食害が年々深刻化。ハンターの高齢化や減少も課題となる中、クラウドファンディングで資金を集め、ジビエ処理加工施設としてオープンしました。
ここには、全国的に見ても珍しい特徴が揃っています。まずは道の駅に隣接する便利な立地。「全国にジビエ処理加工施設は800以上ありますが、多くの施設は人目のつきにくい場所に設置されていると思います。日常的にジビエを知ってもらうには人が集まる場所にあることが重要と考えました」と、施設を運営する(株)ふじよしだまちづくり公社の水越欣一さんは語ります。二次加工設備のほか飲食物も楽しめるショップを併設しているのもポイントで、注文を受けてからパテを焼き上げる「鹿肉ハンバーガー」はDEAR DEERの大人気商品です。

富士山ジビエセンター「DEAR DEER」の外観と、施設内でジビエの処理加工を行っている様子を紹介した写真。富士山ジビエセンターDEAR DEERの施設入り口。シカのモニュメントなど、美術館のようなデザインが特徴的。洗浄・剥皮・解体後、加工室でロース、モモ、スネなどの部位ごとに切り分け、真空パック詰めに。骨や腱、余った肉などはペット用に仕分けられます。加工処理室はガラス張りで、外からも見学可能です。写真提供=富士山ジビエセンターDEAR DEER
ジビエを加工したソーセージと、施設内で販売されているジビエ商品の様子を紹介した写真。鹿肉スモークソーセージの出来上がり!食欲をそそる香りが漂います。ハム、ソーセージをつくるこの「燻製室」を含め、施設内部は予約すれば見学可能。搬入後の捕獲獣が食肉になるまでの流れを、実際に学べます。※捕獲と作業状況により実際の作業を見学できない場合もあります。施設併設のショップには、処理・加工したオリジナルのジビエ製品が並びます。様々な味のシカ肉のソーセージや、ジビエに合うおすすめビールやワインも販売。贈答品対応も可能です。
焼き立て熱々が食べられると人気の、「鹿肉ハンバーガー」と「鹿肉ホットドック」。肉はもちろん、野菜も地産地消にこだわっているそう。ワンハンドで食べられる焼き立てソーセージもありました!ハンターとして捕獲も担う、富士山ジビエセンター長・古屋さん

ジビエの意義を正しく知ってもらう場に

DEAR DEERは、「多くの人にジビエを正しく知ってもらいたい」という思いから、教育施設の役割も担っています。屋外の壁面展示、解体や加工が見学できる学習会や研修会の他、2026年7月から団体向けの「キッズプログラム」もスタート。トヨタ自動車(株)の社会貢献活動「ソーシャルフェス」や職業体験型テーマパーク「キッザニア」と連携したプログラムなども実施してきました。富士山ジビエセンター長で現役ハンターの古屋明広さんは、「ハンターとして捕獲した個体の命を無駄にせず活用できるのが、何よりもうれしいです」と語ります。美術館のようなデザイン性の高い建物は、訪れやすくするための仕掛けのひとつ。この中で解体や加工の様子をガラス越しに見学し、"命をいただく尊さ"を体感することができます。今後は捕獲した個体の全頭買い取りや若手ハンターの育成にも力を入れ、全国のモデルとなるのが目標です。

富士山ジビエセンター DEAR DEER
URL https://mtfuji-deardeer.com/[外部リンク]

ジビエに関する学習・展示スペースの様子を紹介した写真。(上)デッキテラスに面したガラス窓にはイラストとともに肉の部位名も!食肉加工に関する資格を持つ専門家たちが中で作業する様子を見学できます。(下)テラスの壁面に展示されたパネル。日本における野生鳥獣被害の現状と環境保護のための捕獲の必要性や富士山ジビエセンターDEAR DEERが取り組んでいる、捕獲した野生鳥獣の尊い命を無駄にしないための工夫が学べます。
真空パック詰めされたペット用のジャーキー。大量に購入する愛犬家もいるそう。DEAR DEERでは、解体から食肉加工、製品販売まで一貫して行うことができるのが特徴です。
偶然居合わせたお客様、オモチちゃん。デッキはペット連れも可です。

撮影=田子芙蓉

命を尊び、無駄にしないサイクル

ジビエ体験の中でも人気を呼んでいるのが、野生鳥獣の狩猟とジビエ加工が体験できるツアーです。先駆的な岩手県大槌(おおつち)町での取り組みの背景とその意義を伝えます。

岩手県大槌町でも、シカやイノシシによる鳥獣被害は地域の大きな課題となっています。三陸海岸に面した大槌町の森はミズナラやクリなど木の実が豊富で、ここで育つシカは大型化する可能性が高くなります。それが、農業被害増大の一因になっているのです。この課題を町の財産に変えようと2017年に始まったのが、有志による大槌ジビエ勉強会でした。40回を超える議論を重ね、行政と民間が連携した「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」が誕生。この取り組みは、2021年度、第5回ジャパンSDGsアワード特別賞を受賞するなど、小規模自治体のロールモデルとしても高く評価されています。2021年からは、狩猟や解体を体験できる「大槌ジビエツーリズム」も本格始動。食肉加工を担うMOMIJI(株)とNPO法人おおつちのあそびが共催し、参加者に現地でのリアルな体験をしてもらうことで、鳥獣被害への理解を広げることを目指しています。

鳥獣害を町の財産に変える

「大槌ジビエサイクル」が生む地域の好循環

大槌ジビエソーシャルプロジェクトの取り組みの基盤となる考え方が、「大槌ジビエサイクル」です。シカを捕獲するハンターから、食肉は処理加工を担うMOMIJI(株)へ、革や角はクラフト作家へと橋渡しする仕組みです。ここから生まれた商品や作品は、大槌町のストーリーとともに通販サイトなどで消費者のもとに届けられます。さらにスタート直後から人気を呼んでいる大槌ジビエツーリズムでは、狩猟同行ツアーに年間約300人が参加。全国から大槌町へ観光客が訪れることで、宿泊施設や飲食店など地域全体に経済的メリットをもたらしています。他にも若手ハンターの育成、地域と都市部の交流が増えて関係人口も増加するといった好循環も生まれつつあります。こうした先行事例に学ぼうと、視察に訪れる自治体や企業も少なくありません。

大槌町のジビエ活用を、捕獲から消費まで循環させる取り組みを示した図。捕獲によって農業被害の解消と里山の安全確保を図り、食肉の処理・加工で新たな名産品の開発や廃棄処理費用の削減につなげる。商品流通では地域経済の活性化と雇用創出、ECサイトでは地域情報の発信と地域外市場の拡大、消費ではリピーター創出と地域ブランド化、体験塾・ツアーではハンター体験や育成、観光需要の創出を目指す。鹿革の製品化や卸売も含めた「大槌ジビエサイクル」の全体像を表している。
森林で行われるハンター体験と、屋外でのジビエ料理体験の様子を紹介した写真。(上)現役ハンターが教える「プチ狩猟体験」。山に入ってシカの痕跡を探したり、エアガンでの射撃体験などができます。(下)「ハンター直伝!解体体験とジビエBBQ」では、シカ一頭を丸々解体し、その肉をBBQでいただくプログラムです。本物のハンターと交流できるのも魅力のひとつです。写真提供=MOMIJI(株)

リピーター続出。命に向き合う狩猟体験

大槌ジビエツーリズムは、ベテランハンターに同行する「狩猟同行」、シカ1頭をさばく「解体体験&ジビエBBQ」、若手ハンターとの「プチ狩猟体験」など、多彩なプログラムが揃っています。都会から非日常を求めて参加する人の他、(株)雨風太陽が主催する親子地方留学プログラムとも提携して子どもたちも多数参加。リピート率も高く、体験者の3分の1にものぼります。「狩猟同行では、なぜシカを狩るのかを最初に丁寧に説明し、食害の実態や狩猟の意義、命への感謝を共有してから猟場へ行きます。参加した子どもたちから手紙をもらうことも多く、家に帰ってからも『(命を)いただきます』を大事にしていると言ってくれるのが、うれしいですね」と、大槌ジビエツーリズムのハンター兼澤(かねさわ)幸男さんは顔をほころばせます。

大槌ジビエツーリズムURL
https://otsuchinoasobi.com/program#gibier
[外部リンク]

森林で行われるハンター体験と、屋外でのジビエ料理体験の様子を紹介した写真。(上)現役ハンターが教える「プチ狩猟体験」。山に入ってシカの痕跡を探したり、エアガンでの射撃体験などができます。(下)「ハンター直伝!解体体験とジビエBBQ」では、シカ一頭を丸々解体し、その肉をBBQでいただくプログラムです。本物のハンターと交流できるのも魅力のひとつです。写真提供=MOMIJI(株)
密着!狩猟体験ツアー

大槌ジビエツーリズムには、"旅"と"学び"を掛け合わせた親子向けプログラムもあります。夏休みに実施された「ポケマルおやこ地方留学」に密着。岩手プログラムの中の、イチ押し企画「ハンターさんと鹿猟同行体験」をレポートします。

7月31日、日の出前の岩手県大槌町。早朝にスタートした狩猟同行は、私たちが何気なく行っている「食べる」の裏側にある"いのち"を考えるという、かけがえのない6時間半でした。現役ハンターに同行する狩猟体験ツアーは、単にシカを狩るだけではなく、地域が抱える現状を知ることで「狩る」意味も考えることのできる貴重な体験です。その一部始終をお届けします。

am3:50 集合

MOMIJI(株)は、「捕獲」「処理・加工」を行う大槌ジビエサイクルのスタート地点。

MOMIJI(株)入口の写真
am4:10 座学

まずは、ハンターの兼澤幸男さんと俵航海大(たわらこうだい)さんから、シカ被害の現状と捕獲狩猟の意味を学ぶ。この日は小学生4人と、付き添いの親2名+密着取材者1名の、計7名が参加!狩猟中の注意も教わる。

抜き足差し足を実演している写真
座学の写真
抜き足差し足を実演している写真
am6:30 狩猟開始

狩猟前は、必ず神社で「これから命をいただきに山に入ります」と神様にお伝えし、無事も祈願する。「あそこにシカの群れがいるぞ」とハンター兼澤さんが指さす方向には、10頭近くのシカの群れが走っていた。

狩猟の写真
am7:15

「パーン!」と大きな銃声が響く。仕留めたのは、比較的大きな雄ジカ。ただちに放血を行う。倒れたシカをジッと見つめて何を思うのか…。

雄ジカを仕留めた写真

ハンターの俵さんに、シカを狩る意味と、狩った命を無駄にしない大切さを改めて教わる。みんな真剣に聞いている。

ハンターの俵さんの話を聞いてる写真
大槌ジビエは、銃猟が中心。首を狙って仕留めると、シカのストレスが減り、打ち身も抑えられる。それがシカへの礼儀なんです(ハンター兼澤さん)。
am7:40 運搬

「ヨイショ、ヨイショ」。90キログラム超のシカをみんなで力を合わせて運ぶ。大人の力が欠かせない…。

シカを運ぶ写真
am7:55 冷却

トラックに乗せ、みんなでシカに氷をかけて冷却。1時間以内に施設に運び、素早く処理・加工することで新鮮かつ上質なシカ肉になるそう。狩猟後、神社で捕獲の報告と感謝を伝えて、山を下りる。

シカに氷をかけて冷やしている写真
am8:40 搬入

処理加工施設に到着。シカを吊るし、体表を洗浄した後、皮を剥ぎ、丁寧に解体される。

シカを吊るし、体表を洗浄している写真
am9:05 剥皮

皮はぎを体験!力を入れて一気に引っ張って剥がす。「雄ジカは脂のりがいい。脂も無駄にせず、利用するよ」と俵さん。

皮はぎを体験している写真
am9:15 解体

取り出した心臓を手にして、命の重さを実感。自然と"感謝"の気持ちに変わる。

取り出した心臓を手にしている写真
am9:25 実食

重さを体感した新鮮な心臓は、すぐに焼いて提供される。「いただきます」の意味は、命をいただくこと。目の前の料理が、もとはどんな姿をしていて、どう命を奪われたのかを知ることで、食べものにも、命にも心から感謝できるのだと教わる。

実食している写真
am10:30 解散

体験の振り返りを経て、6時間半の狩猟同行体験終了!「食べる」と「命」はつながっている。体験してこそわかる命の大切さ。貴重かつ充実のツアーだった。

「シカの内臓や脚を触ったよ。苦労した後に食べたから、味の感じ方が変わった(小学3年生・Cさん)。」「おいしいお肉を食べるには、誰かの苦労があることがわかりました(小学3年生・Bさん)。」
参加者の集合写真
「シカの内臓や脚を触ったよ。苦労した後に食べたから、味の感じ方が変わった(小学3年生・Cさん)。」「おいしいお肉を食べるには、誰かの苦労があることがわかりました(小学3年生・Bさん)。」

撮影=KEN

イラストレーション=ヤマトアノン

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