群馬県吾妻郡長野原町大規模露地野菜経営体
主体概要・取組概要
群馬県吾妻西部地域の基幹作物であるキャベツ、はくさいでは、土壌病害である根こぶ病の発生リスクの高まりが危惧されており、対策の強化が必要となっています。エンバク、ライムギなどのイネ科緑肥作物の活用は、土壌改良効果に加え、おとり植物として根こぶ病の菌密度低下に有効な対策と報告されています。本事業では、緑肥作物の活用を核として、根こぶ病の防除対策で使用する化学農薬低減及び作業時間低減に寄与する栽培体系の確立に向けた取組を進めています。
構成員:群馬県農政部技術支援課・吾妻農業事務所・農業技術センター、あがつま農業協同組合、長野原町
取組内容
検証事例
農業者紹介
事業概要
酪農から転換して野菜栽培を開始。標高1,000m前後の浅間山の麓で北軽井沢有機ファミリィの仲間たちとこだわりの肥料を使用するとともになるべく農薬を使わないよう多品目の栽培に取り組む。
今後の展望
緑肥作物の活用は手間にはなるが、次世代のために、環境にやさしい持続可能な農業を続けていきたい。
取組の全体概要
ほ場ごとに根こぶ病の発病リスクが違うことや、生産者により所有する機械が異なることもあり、実情に応じて省力化技術を選択できるようにしています。
●環境にやさしい技術・・・緑肥作物の活用
●省力化技術・・・・・・・抵抗性品種の活用、ドローンの活用、根こぶ病原菌密度診断の導入など
個々の技術を検証し、アブラナ科作物の栽培が増加する中でも根こぶ病の発病リスクを低く抑えるための技術導入を支援しています。
緑肥作物(エンバク、ライムギ)の活用
エンバク、ライムギの特性を生かすためには、地域での播種適期を知ることが重要です。地域で緑肥導入する生産者はエンバクを主体にしていますが、9月以降の播種は伸長性に課題があります。そのため、エンバク、ライムギの播種適期や活用による根こぶ病原菌密度の影響を検証しています。
農業者の意見
- Q. 検証を行った背景は?
- レタスからキャベツへの品目転換が進み、根こぶ病のリスクが高まっていたことから、緑肥作物の導入を検討することにしました。既に緑肥作物の効果は実証もされていたので、実施にあたってのハードルは低かったです。
- Q. 緑肥作物活用にあたってのデメリットは?
- 緑肥作物の種子代がかかること、夏の多忙な時期に播種作業を行わなければならなく、労力が増えることが挙げられます。
- Q. 効果はどう感じていますか?
- 化学農薬低減の効果はもちろんのこと、土が柔らかくなっていると感じています。また、エンバクの活用によりダイコンの畑にキスジノミハムシの被害が少なくなり、施肥量の削減にも貢献しています。
ドローンを活用した緑肥播種
緑肥作物(エンバク、ライムギ)活用にあたって、播種作業の労力が増えることから、省力的な体系を実現するためにドローンの活用による作業時間の省力化や播種精度などを検証しています。
農業者の意見
- Q. 検証の背景とドローン活用による効果は?
- 緑肥作物の播種の労力が増えることや、ブロードキャスターでは播種ムラが発生してしまう等の課題があったため、ドローンの活用を検討したところ、緑肥活用での播種精度に問題なくスピーディーに作業ができました。覆土なしで取り組むことは鳥害などの心配もありましたが、今回は問題になりませんでした。
- Q. ドローン活用の課題は?
- 一番の課題はドローンを導入する際の体制です。自分達で所有するには講習受講や機体購入などの負担も大きく、費用対効果も考える必要があります。今回は外部のオペレーターが作業を行いましたが、外部委託する場合は、作業して欲しいタイミングで来てもらえるかなどの不安もあり、検討が必要だと考えています。
検証結果
根こぶ病抵抗性はくさい品種(あきめき)の活用
根こぶ病の抵抗性品種活用として、地域のはくさい栽培での慣行品種として導入されている「秋理想」と品質が類似しており、より根こぶ病に強い「あきめき」との比較を行いました。両品種とも根こぶ病の発生はありましたが、あきめきの活用で根こぶ病の発生が軽減されることを確認しました。
根こぶ病原菌密度診断の導入
根こぶ病の発病を助長する要因は多々ありますが、リスクを知るための重要な項目として病原菌密度があります。ほ場の病原菌密度を事前に把握することで、輪作や作期の変更、薬剤選定など経営面での意思決定にどのように活用できるか検証しています。
普及指導員・営農指導員からの視点
緑肥作物の活用(利用、導入)は、根こぶ病の対策だけでなく、土壌改良の点からも大事なことだと考えています。しかし、昨今の物価高騰もあり農業経営を圧迫するものにもなってしまうので、費用軽減につながる取り組みを一緒に考えながらグリーンな栽培体系を広げていけるようにしたいです。
緑肥作物の取り組みについては、既に有効な結果が出ているデータもありますが、まだ大規模農家での導入が進んでいません。費用面・播種の手間、そういったデメリットを解消できるよう、今回のドローン活用などの検証結果を踏まえ、地域での取り組みを広げていきたいと考えています。
お問合せ先
農産局技術普及課
担当者:新技術班
代表:03-3502-8111(内線4799)
ダイヤルイン:03-6744-2218