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農林水産省

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山ノ内米研究会

主体概要・取組概要

山ノ内町は、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的に「保全機能」、「経済と社会の発展」、「学術的研究支援」の3つの機能を持つ「ユネスコエコパーク」として登録されている地域になります。また、中山間地域にあたり、急傾斜の農地も多く、広い面積で大規模に米を生産し、販売することはできません。そこで、全国の米産地と議論し、おいしいお米をつくり、販売していくにはどうしていくべきか考え、平成27年2月に「人と環境にやさしい安心・安全で高品質な山ノ内米の生産」を目的に「山ノ内米研究会」を設立しました。

取組内容

検証事例

農業者紹介

事業概要

沓野区地区の農業者の高齢化、担い手不足に伴い、農業振興、農地保全、農家所得向上を目的に営農組織として平成27年設立、平成30年には株式会社となり新たな事業を展開しています。

今後の展望

実際に収穫した米が「付加価値のある販売」に結びつかないと、経営的なメリットは出せません。販路拡大の取り組みが課題であると認識し、そちらにも取り組んでいきます。

取組の全体概要

中山間地域にあたる山ノ内町内で異なる環境条件下(標高等)で実証を行い、当地域に適する技術導入の検証を行っています。環境負荷低減の取り組みとして、プラスチック被覆肥料対策の実施、秋耕の実施、中干し期間の延長の実施、側条施肥田植機の検証。省力化の取り組みとして、 高密度播種育苗の実施、側条施肥田植機の検証を行いました。

秋耕の実施の検証

メタンガスは湛水等還元条件下で有機物が分解することで発生が増えます。従来春にすきこんでいた稲わらを秋にすきこむことで来春の水張り前に分解が進み、メタンガスの発生が削減されると言われます。早期に分解が進むため、湛水時のガスわきが減り、初期生育の確保につながると考えられます。当地域は豪雪地帯で気温の低下が早いため、秋耕のタイミングや効果を検証します。

農業者の意見

Q. 秋耕の効果は?
メタンガスは目に見えずよくわからないところもあります。おそらく来年の栽培においてガスわきが減り、生育がよくなると考えられるので、今後生育や秋耕のタイミングについて確認していきたいです。
Q. 秋耕の苦労している点は?
山ノ内町は冬の訪れが早く、気温が下がってしまうと稲わらの分解は進まなくなります。お米を収穫した後できるだけはやく秋耕できればよいのですが他の作業もあり、両立させていくのが課題です。

プラスチック流出防止対策の検証

肥効調節型肥料のプラスチック被膜殻は肥料成分が溶出された後、河川等に流出されることが問題となっています。そのため、水田の排水口に網を設置し、プラスチック被膜殻の流出状況の確認と流出削減効果について検証しています。

農業者の意見

排水口に網の柵を設置することで、プラスチック被膜殻の流出状況の調査を行いました。一回目の代掻きをした際は、プラスチック殻が浮いているのが目に留まりましたが、浅水で二回目の代掻きをして田植えの時期になると、どこにもプラスチックの殻が見当たりませんでした。調べてみると、水田のヘリ・畦の部分にプラスチック殻が寄せられて乗り上げており、結果として被膜殻は溜まりませんでした。

中干し期間の延長の検証

中干しを実施することで水田の還元状態が解消され、メタンガスの発生が減少すると言われています。特に慣行に対して1週間程度延長することで、メタンガスの発生がより減少すると言われています。また、中干しにより、根の張りがよくなり、倒伏が減少したり、米の登熟歩合の向上やたんぱく質含量の低下など品質向上にもつながります。そのため、今回は中干しを20日程度実施し、土壌の還元状況の確認について検証を行いました。

農業者の意見

試験ほ場において、酸化還元電位の推移を調査したところ、水張りをした6月1日から徐々に還元状態が進んでいるが、中干しを実施した6月23日以降少しずつ還元状態が解消しており、メタンガスの発生が抑制されたと考えられます。

側条施肥移植機導入の検証

側条施肥田植機の導入により、施肥量を減らすとともに、移植・施肥を同時に行うことによる作業時間の軽減について検証しています。施肥量が目に見えて減らせるので、コストメリットを実感できますが設定調整を習得するための経験が必要だと考えています。

高密度播種育苗の検証

使用苗箱数を削減することで、育苗に係る作業時間、及び、田植作業にかかる時間の短縮効果を検証しています。田植作業にかかる時間の短縮が顕著であり、こちらも省力化によるコストメリットを実感しています。

普及指導員・関係者からの視点

農業者さんの声にある通り、コストメリットは手ごたえを感じています。地域として労働力不足ですので、省力化・省人化 にもつながる高密 度播種育苗は、試験研究の結果を見ながら、各々のほ場に合わせ、農業者さんと一緒になって進めていきたいと考えています。環境負荷低減の取り組みは、今までにある既存技術を組み合わせて実施する中で、さらなるメタンの抑制とマイクロプラスチック流出防止に繋がればと考えます。今年度内で検証を終え、来年度から本格的に普及に取り組みたいです。従来の検証と比較し全く問題がなく、成績が良ければスムーズにいくと思います。今回の取り組みは単純に「取り入れれば確実に収量が上がる」ということではなく、「品質や収量が従来の方式と同じ結果になるのであれば、環境にやさしい栽培をみなさん取り組みましょう」ということで普及していくことになります。そうした取り組みのマニュアルは、改善・改良を繰り返し、3年ぐらいかけて作り込んでいくことになると考えています。

お問合せ先

農産局技術普及課

担当者:新技術班
代表:03-3502-8111(内線4799)
ダイヤルイン:03-6744-2218