4パーミル・イニシアチブ普及推進協議会

主体概要・取組概要

4パーミル・イニシアチブとは、世界の土壌の表層の炭素量を年間0.4%(4パーミル)増加させることで、人間の経済活動によって発生する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにすることができるという考え方に基づく国際的な取り組みになります。日本の都道府県としては山梨県が2020年4月にはじめて参加し、果樹産地である山梨県の特徴を活かした取り組みを実践しようとしています。
構成員:山梨県農業技術課、山梨県中北農務事務所、山梨県峡東農務事務所、JA南アルプス市、JAフルーツ山梨、JAふえふき、総合農業技術センター、山梨県環境科学検査センター、農業者
取組内容
検証事例
農業者紹介
事業概要
過去は稲作だったが、祖父母の代から果樹へと転換、現在は農園にて販売を行う。有機物と微生物を活用して化学肥料を一切使わない土作りをし、植物を強くすることで農薬を減らす栽培に取り組む。
今後の展望
環境に良い取り組みをして良い土壌を作ることで、美味しい作物を作ります。この循環を続けるとともに、周りにも広げていきたいと考えています。
剪定枝のバイオ炭の土壌への炭素貯留

山梨県内の果樹園で発生する剪定枝の多くは、焼却または粉砕し耕転して土壌に還元しています。焼却は二酸化炭素の発生源となるほか、粉砕した場合も数年間で微生物に分解され二酸化炭素として大気に放出されます。そこで、果樹園で発生する剪定枝を炭にして土に貯留することと不耕起草生栽培と有機物投入によって炭素を土の中に貯留する取り組みを検証しています。
農業者の意見
- Q. 検証の背景は?
- 当園では、有機栽培と環境保全に以前から力を入れていました。剪定枝は毎年発生するので、それをどうにかできないか、という課題意識もあり、検証を行うことにしました。
- Q. これまで行ってきたことは?
- 剪定枝を粉砕してチップにし、土に還すということは続けていました。
- Q. 剪定枝のバイオ炭の活用に期待していることは?
- 環境維持(4パーミル・イニシアチブ)の観点に加えて剪定枝のバイオ炭は土壌の炭素量が増えて微生物の住処になる点等、土作りの観点からも良い効果があります。また、土壌が良くなることで、樹が元気になって病気も発生しにくくなることに期待しています。
- Q. 土壌の炭素量を増やす取組によって感じている効果は?
- 果樹自体が病気に強くなっていると感じるのは、葉っぱの落ちにくさがあります。虫が入っても葉っぱがギリギリまで落ちないでいる様子を見ると効果を感じます。また、畑に入った時の「呼吸のしやすさ」も感じます。果樹だけでなく人間にとっても良い取り組みだと思います。炭のいいところは、分解されにくいため土壌に炭素を貯留することができる点です。炭にして土壌に撒くことは日本でも昔からずっと続いていたことなので、昔の人も感覚として理解していたと思います。
- Q. 追加で発生するコストや作業、注意点は?
- これまでも剪定枝は焼却していたので、作業自体は変わりません。無煙炭化器の購入コストはありますが、大きいもので12万円ほどです。炭にするために最後ちゃんと水をかけて火を消さないと灰になってしまうので、作業方法を正しく理解することは必要です。
普及指導員からの意見
- Q. 炭化する際に二酸化炭素は発生しないのか?
- 枝自体が、空気中の二酸化炭素を吸収したものなので、燃やすことで二酸化炭素は排出されますが、カーボンニュートラルになります。焼却で完全に灰にしてしまうと全て大気に戻ってしまいますが、炭にして土壌に撒くことで土壌の炭素量を増やすことができます。
- Q. 県としての今後の展望は?
- これまで二酸化炭素の排出量を減らして栽培した生産者の農産物を認証する「やまなし4パーミル・イニシアチブ」は果樹のみが対象でしたが、野菜・水稲での基準を追加しました。今後も4パーミル・イニシアチブに関しては積極的に取り組んでいきたいと考えています。
不耕起草生栽培

果樹園に下草を生やす園地管理法で、刈り取った下草を敷き草にすることで有機物として土壌に炭素を蓄積する栽培方法です。草生栽培を何度も繰り返すことで土壌に炭素が蓄積していきます。また、水はけが良くなったり生物多様性も維持できることがメリットとして挙げられます。
お問合せ先
農産局技術普及課
担当者:新技術班
代表:03-3502-8111(内線4799)
ダイヤルイン:03-6744-2218