「食の未来、総力でひらく」鼎談レポート
食の未来、総力でひらく
鼎談レポート
日本の食が様々な課題に直面する中、食料の生産と消費をつなぐ食料システムの重要性が一段と高まっている。2025年6月食料システム法※が成立し、26年4月に全面施行する。農林水産省の河南健総括審議官が、味の素冷凍食品の寺本博之社長とライフコーポレーション(日本スーパーマーケット協会会長)の岩崎高治社長を迎えて鼎談(ていだん)を実施。日本の食の未来に向け、食料システムに関わるすべての人や企業が考え、行動することが必要との認識を共有した。
※食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律
※食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律
1. 我が国の食が直面する様々な課題
河南日本経済は約30年にわたるデフレ下にあって、食料品の価格はほとんど上昇せずに推移してきました。しかし国際情勢が激しく変化する中、原材料費や光熱費など生産コストが高騰とも言える上昇に転じ、日本の農林水産業、食品産業は大きな影響を受けました。それでも関係者の努力によって、食料の供給は維持されてきましたが、それも限界に近づきつつあります。
岩崎確かに日本経済はデフレからインフレへと変わりました。今、企業業績は堅調で、景気は決して悪くありません。しかし食料品などの値上げが続く中、消費者の節約志向は着実に強まっています。加えて第1次産業従事者の減少や気候変動、円安など、日本の食は様々な課題に直面しており、その持続性確保は重大な局面を迎えています。
また、これまで小売業は規模のメリットを生かした調達を通じて消費者に安定して安価な食料品を届けてきました。しかし今、卵や牛乳など安定調達が困難な食料品が増えるなど、環境は大きく変わりつつあります。
寺本日本の食品産業が抱える課題は3つあります。
1つ目が「国内市場規模の縮小」。高齢化と人口減少によるマイナスの影響は大きいです。2つ目が「海外依存の拡大」。低い食料自給率と労働力不足から、多くの原材料は輸入に頼らざるを得ません。昨今の地政学リスクも加わり、海外依存とバランスを取ることの重要性は一段と高まっています。そして3つ目が「食料システムの持続性」です。原材料費の高騰に加え、物流費や人件費も高騰しており、食料システムを支える事業者の収益を圧迫しています。
岩崎確かに日本経済はデフレからインフレへと変わりました。今、企業業績は堅調で、景気は決して悪くありません。しかし食料品などの値上げが続く中、消費者の節約志向は着実に強まっています。加えて第1次産業従事者の減少や気候変動、円安など、日本の食は様々な課題に直面しており、その持続性確保は重大な局面を迎えています。
また、これまで小売業は規模のメリットを生かした調達を通じて消費者に安定して安価な食料品を届けてきました。しかし今、卵や牛乳など安定調達が困難な食料品が増えるなど、環境は大きく変わりつつあります。
寺本日本の食品産業が抱える課題は3つあります。
1つ目が「国内市場規模の縮小」。高齢化と人口減少によるマイナスの影響は大きいです。2つ目が「海外依存の拡大」。低い食料自給率と労働力不足から、多くの原材料は輸入に頼らざるを得ません。昨今の地政学リスクも加わり、海外依存とバランスを取ることの重要性は一段と高まっています。そして3つ目が「食料システムの持続性」です。原材料費の高騰に加え、物流費や人件費も高騰しており、食料システムを支える事業者の収益を圧迫しています。

味の素冷凍食品
寺本 博之氏
1965年生まれ。関西大学社会学部卒。89年4月味の素入社。海外食品部長、執行役員東京支社長、執行理事東京支社長を経て、2022年6月味の素冷凍食品代表取締役社長に就任。

2. 合理的な価格形成と食品の付加価値向上
河南食料供給サイドが直面する課題は、食料を購入する消費者の課題でもあります。そこで食料安全保障の観点から、25年6月に食料システム法を制定しました。その目的は2つです。食料の生産から販売までの各段階におけるコストを適切に考慮した取引を促進する「合理的な価格形成の実現」と、食品の付加価値向上を通じた「食品産業の持続的な発展」です。
食料システム法をどのように受け止めていますか。
岩崎労働力不足や環境対策など食料の安定供給に関連する課題の解決には、消費者を含む食料システム関係者が一丸となって取り組む必要があります。消費者からすると、同じ商品であれば安い方が良いのは当然であり、小売業者が商品を安く提供する努力をするのは大前提です。ただ人口が減少する中で、価格競争だけを行っていては、市場のシュリンクを招き、自分たちの首を絞めかねません。私は商品に付加価値を付ける競争へと主軸を移さないと、小売業に未来はないと考えています。
こうした背景から、食料システム法の2つの目的を一体的に取り組むこととしている点について賛同します。
食料システム法をどのように受け止めていますか。
岩崎労働力不足や環境対策など食料の安定供給に関連する課題の解決には、消費者を含む食料システム関係者が一丸となって取り組む必要があります。消費者からすると、同じ商品であれば安い方が良いのは当然であり、小売業者が商品を安く提供する努力をするのは大前提です。ただ人口が減少する中で、価格競争だけを行っていては、市場のシュリンクを招き、自分たちの首を絞めかねません。私は商品に付加価値を付ける競争へと主軸を移さないと、小売業に未来はないと考えています。
こうした背景から、食料システム法の2つの目的を一体的に取り組むこととしている点について賛同します。

ライフコーポレーション
岩崎 高治氏
1966年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。89年4月三菱商事入社。99年ライフコーポレーション取締役を経て、2006年3月同社代表取締役に就任。23年6月日本スーパーマーケット協会会長就任。

寺本合理的な価格形成を土台に、食品の付加価値向上や新しい取り組みを支援する計画認定制度を設けていただいたことにとても感謝しています。当社では社会的意義のある取り組みに挑戦し、社員がそれを誇りに思えることは大きなメリットだと感じており、制度を積極的に活用していきたいと考えています。
そこで先日、計画認定制度が対象とする4つすべての活動で認定を受けました。認定取得を社会に発信することで、当社の取り組みへの認知、理解が進み、最終的には食品産業の持続的な発展にも寄与できると考えています。
そこで先日、計画認定制度が対象とする4つすべての活動で認定を受けました。認定取得を社会に発信することで、当社の取り組みへの認知、理解が進み、最終的には食品産業の持続的な発展にも寄与できると考えています。

農林水産省大臣官房総括審議官
河南 健
1969年生まれ。東京大学法学部卒。93年農林水産省に入省。林野庁林政部企画課長、大臣官房秘書課長、水産庁漁政部長などを経て、2025年7月に農林水産省大臣官房総括審議官(新事業・食品産業)に就任。河南食料システムの意義を認め、積極的な制度活用に加えて、社内の士気高揚にもつなげていただいていると伺って、とても心強く感じました。具体的な取り組みについて紹介していただけますか。
寺本「生産者との安定的な取引関係の確立」では宮崎県及びえびの市などと連携して、資源循環スキームを構築しました。九州工場から出る食物残渣(ざんさ)を堆肥・肥料化したものを生産者に提供し、そこで生産された冷凍餃子の主原料であるキャベツやニラを九州工場で使用しています。今後、他の3工場にも拡大し、生産者の収益安定と地域農業の振興につなげていきます。
「流通の合理化」では、北陸エリアに新たな物流センターを設けることで、在庫管理と輸配送の適正化を進め、モーダルシフトの推進も継続します。また「環境負荷の低減」では、国内6工場でフリーザー用冷凍機を自然冷媒に変更することでフロンを全廃。都市ガスへの転換や蒸気エネルギーの再利用により二酸化炭素(CO2)排出削減を進めています。
寺本「生産者との安定的な取引関係の確立」では宮崎県及びえびの市などと連携して、資源循環スキームを構築しました。九州工場から出る食物残渣(ざんさ)を堆肥・肥料化したものを生産者に提供し、そこで生産された冷凍餃子の主原料であるキャベツやニラを九州工場で使用しています。今後、他の3工場にも拡大し、生産者の収益安定と地域農業の振興につなげていきます。
「流通の合理化」では、北陸エリアに新たな物流センターを設けることで、在庫管理と輸配送の適正化を進め、モーダルシフトの推進も継続します。また「環境負荷の低減」では、国内6工場でフリーザー用冷凍機を自然冷媒に変更することでフロンを全廃。都市ガスへの転換や蒸気エネルギーの再利用により二酸化炭素(CO2)排出削減を進めています。


3. 消費者にご理解いただくことが不可欠
河南取り組みを進める上で、大切なことは消費者のご理解です。そこで農林水産省では「売る人にも、買う人にも、育てる人にも。フェアでいい値を、考える。」をコンセプトに「フェアプライスプロジェクト」を展開しています。野菜や豆腐などに自ら値段付けをする体験を通じて、食品の供給について考えるイベント「値段のないスーパーマーケット」をはじめ、ドラマ仕立ての動画発信や学校への出前授業などを行っています。
フェアプライスについてどのようなご意見をお持ちですか。
寺本食品産業は食料品の安全性を担保し消費者の安心を醸成するために、品質管理の徹底や物流の効率化などコストをかけて取り組んできました。こうしたコストを考慮しない価格設定は、サプライチェーン(供給網)のどこかで過度な負荷がかかり、食料システムの持続に支障を来す可能性があります。適切なコストを考慮した価格設定は大変重要です。
しかしフェアプライスの捉え方は立場によって異なります。だからこそ消費者にご理解いただくことが必要であり、啓蒙活動が欠かせません。ただし、その方法には工夫が必要です。例えば、環境貢献に関しても消費者にストレスをかけてしまっている場合も多いのではと感じています。当社では、環境への配慮を生活者の努力や負担に委ねるのではなく、当社の取り組みによって、当社商品をおいしく食べてもらえれば、結果として自然に環境貢献の共創が成立する状態を目指しています。時間はかかるかもしれませんが、計画認定制度「消費者に選ばれるための情報提供」を活用しながら消費者にご理解いただけるよう努力していきたいと考えています。
岩崎再生産を考慮するなど、コスト上昇を踏まえた価格の形成は欠かせませんが、小売業としては「お客様に買っていただける価格」が重要です。フェアプライスも消費者に納得してもらえることが大前提になります。そこで大切になるのが消費者へのご理解を促進する情報の提供です。コスト上昇に関する情報提供は多いのですが、生産性向上やコスト削減、環境配慮などに関する情報の提供が少ないと感じています。スーパーマーケットでは、商品の受発注にAI(人工知能)を活用したり、セルフレジの導入を拡大しています。小売業だけでなく、サプライチェーン全体がそれぞれの段階で実行している様々な工夫と努力についても積極的に情報発信していくことが欠かせないと思います。
小売業の存在意義は、生産者が生産した商品を1億2千万人強の国民の皆さまに安全安心かつ効率よく届けることです。スーパーマーケットに来れば、野菜も肉も魚も加工食品もそろっており、買うことができます。だからスーパーマーケットは絶対なくなりませんし、そうした利便性の価値は不変です。我々の存在意義のためにも、生産性向上やコスト削減の努力を怠らないことが大切だと考えています。
フェアプライスについてどのようなご意見をお持ちですか。
寺本食品産業は食料品の安全性を担保し消費者の安心を醸成するために、品質管理の徹底や物流の効率化などコストをかけて取り組んできました。こうしたコストを考慮しない価格設定は、サプライチェーン(供給網)のどこかで過度な負荷がかかり、食料システムの持続に支障を来す可能性があります。適切なコストを考慮した価格設定は大変重要です。
しかしフェアプライスの捉え方は立場によって異なります。だからこそ消費者にご理解いただくことが必要であり、啓蒙活動が欠かせません。ただし、その方法には工夫が必要です。例えば、環境貢献に関しても消費者にストレスをかけてしまっている場合も多いのではと感じています。当社では、環境への配慮を生活者の努力や負担に委ねるのではなく、当社の取り組みによって、当社商品をおいしく食べてもらえれば、結果として自然に環境貢献の共創が成立する状態を目指しています。時間はかかるかもしれませんが、計画認定制度「消費者に選ばれるための情報提供」を活用しながら消費者にご理解いただけるよう努力していきたいと考えています。
岩崎再生産を考慮するなど、コスト上昇を踏まえた価格の形成は欠かせませんが、小売業としては「お客様に買っていただける価格」が重要です。フェアプライスも消費者に納得してもらえることが大前提になります。そこで大切になるのが消費者へのご理解を促進する情報の提供です。コスト上昇に関する情報提供は多いのですが、生産性向上やコスト削減、環境配慮などに関する情報の提供が少ないと感じています。スーパーマーケットでは、商品の受発注にAI(人工知能)を活用したり、セルフレジの導入を拡大しています。小売業だけでなく、サプライチェーン全体がそれぞれの段階で実行している様々な工夫と努力についても積極的に情報発信していくことが欠かせないと思います。
小売業の存在意義は、生産者が生産した商品を1億2千万人強の国民の皆さまに安全安心かつ効率よく届けることです。スーパーマーケットに来れば、野菜も肉も魚も加工食品もそろっており、買うことができます。だからスーパーマーケットは絶対なくなりませんし、そうした利便性の価値は不変です。我々の存在意義のためにも、生産性向上やコスト削減の努力を怠らないことが大切だと考えています。
静岡県焼津市の焼津中学校で行われた出前授業の様子
4. 「積極的な情報発信」がカギ
河南持続的な食の未来を支える食料システムを構築していく上で、必要なことは何ですか。
寺本消費者のご理解を得ながら、適切な価格設定と価格に見合う付加価値を創出する「価格と価値の健全な循環」の実現です。合理的なコストを考慮することは未来への投資でもあり、事業活動の維持・強化につながります。それには食料システムを支える生産・流通・小売が互いに連携して、競争関係とともに協調関係を見いだすことが重要です。デフレからインフレの時代に変わった現在、取り組み方も変えなければいけないでしょう。
岩崎急激な物価上昇が進んでいる現在、少し前まで供給サイドにたまっていたフラストレーションが消費者側へと移り、節約志向につながっています。消費者に品質と価格のバランスをご理解してもらうためには、正しい情報発信が欠かせません。そして他人の立場を思いやる「利他の心」が大切です。消費者にご理解、納得して購入いただけるように、我々ももっと知恵を絞っていくことが必要だと考えています。
河南お二人のお話を伺って、日本の豊かな食を守っていくには、食料システムに関わる生産・加工・流通・小売、そして消費者まで、あらゆるステークホルダーが考え、行動することが大切なのだと再認識できました。食料システム法は、サプライチェーンに関わる皆さまに集まっていただき、議論を重ねてつくった法律です。しっかり運用して、食料の持続的な供給に向けて、皆さまの活動や努力を支援していきたいと思います。
寺本消費者のご理解を得ながら、適切な価格設定と価格に見合う付加価値を創出する「価格と価値の健全な循環」の実現です。合理的なコストを考慮することは未来への投資でもあり、事業活動の維持・強化につながります。それには食料システムを支える生産・流通・小売が互いに連携して、競争関係とともに協調関係を見いだすことが重要です。デフレからインフレの時代に変わった現在、取り組み方も変えなければいけないでしょう。
岩崎急激な物価上昇が進んでいる現在、少し前まで供給サイドにたまっていたフラストレーションが消費者側へと移り、節約志向につながっています。消費者に品質と価格のバランスをご理解してもらうためには、正しい情報発信が欠かせません。そして他人の立場を思いやる「利他の心」が大切です。消費者にご理解、納得して購入いただけるように、我々ももっと知恵を絞っていくことが必要だと考えています。
河南お二人のお話を伺って、日本の豊かな食を守っていくには、食料システムに関わる生産・加工・流通・小売、そして消費者まで、あらゆるステークホルダーが考え、行動することが大切なのだと再認識できました。食料システム法は、サプライチェーンに関わる皆さまに集まっていただき、議論を重ねてつくった法律です。しっかり運用して、食料の持続的な供給に向けて、皆さまの活動や努力を支援していきたいと思います。
- 当サイト「フェアプライスプロジェクト」は令和4年度円滑な価格転嫁に向けた消費者理解醸成対策委託事業のうち広報事業で作成したものです。
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