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農林水産省

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指定前の公示(第185号)

更新日:令和7年8月1日
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の名称について、指定前の公示をしたのでお知らせします。

Gailtaler Speck(ガイルターラー・シュペック)


1 指定前の公示の番号  第185号
2 指定をした場合に締約国の名称として公示されることとなる国の名称  欧州連合
3 農林水産物等の区分  第6類 畜産加工品類 食肉製品類(ベーコン)
4 農林水産物等の名称  Gailtaler Speck(ガイルターラー・シュペック)
5 農林水産物等の生産地  オーストリア

 ケットシャッハ=マウテン(Kötschach-Mauthen)、デルラッハ(Dellach)、キルヒバッハ(Kirchbach)、ギッチュタール(Gitschtal)、ヘルマゴル(Hermagor)、ザンクト・シュテファン・イム・ガイルタール(St. Stefan im Gailtal)、ネッチュ・イム・ガイタール(Nötsch im Gailtal)、ファイストリッツ・アン・デア・ガイル(Feistritz an der Gail)及びホーエンツルン(Hohenthurn)の自治体から成る地域

別添 ガイルターラー・シュペック生産地地図(PDF : 271KB)

6 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「ガイルターラー・シュペック」は、プレスされていない骨無しの豚肉から製造された、”raw cured product”(加熱調理せずに保存加工された豚肉製品。以下「ベーコン」という)である。

特徴:
- 基本素材:本産品は、以下の品種の豚の肉のみから生産されている:ランドレース(landrace)、ラージホワイト(large white)、デュロック(Duroc)、スワビアン・ホール・サドルバック(Swabian Hall Saddleback)及びこれらの品種の交配種。さらに、これらの品種と(雄親として)ピエトレイン種(Pietrain)との交配も認められている。

- 成分、レシピ、加工方法:本産品の製造には、プレスされていない自然の形の新鮮な骨なし肉のみが加工に使用される。本産品は、ベーコンの全側面を含む、原則としてどの部位の肉からも製造することができる。ただし、バラ肉(belly)、腰肉(loin)、三枚肉(loin belly)、モモ肉(leg)、肩肉(shoulder)が好ましい。半分の枝肉は、カットされる前に獣医によって食用に適しているかどうかがチェックされ、生産方法の項に記載されている手順に従って、伝統的な塩とスパイスの混合物でマリネ、燻製、熟成 (乾燥) される。

- 外観:黄金色で、脂肪部分は純白ではっきりと区別が可能で、筋肉は鮮赤色をしている。

- 風味と硬さ: わずかにスパイシー(ジュニパーの香は強くはない)で、マイルドな塩の風味があり、しっかり熟成されたスモーキーな肉の風味がある。他のタイプのベーコンと比べると脂肪分が硬いにもかかわらず、本産品は舌の上で柔らかく溶け、噛むと優しく溶ける。外観上や切り口の欠陥がなく、異臭もない。

- マーケティング:本産品は、無包装でも、包装されていても、ホールでも、塊でも、スライスされていても、販売できる。

(2)生産方法
〇原材料
定義された地域で生まれ、肥育された、地域原産の豚(ランドレース、ラージホワイト、デュロック、スワビアン・ホール・サドルバック及びこれらの品種の交配種。さらに、これらの品種と(雄親として)ピエトレイン種(Pietrain)との交配も認められている)の肉を使用する。ただし、本書に記載された品種に属する子豚であれば、最大体重31kgまでは異なる原産地の子豚であっても購入は認められる。
豚の肥育、肉の切断及びベーコン自体の生産(マリネ、燻製、熟成)は、地理的地域内の登録された施設で行われなければならない。

〇 製造工程
肥育
 完全なトレーサビリティのために、一頭の豚の肥育全体、すなわち子豚からと畜までの肥育は、定義された地域内の一つの登録施設のみで行われなければならない。つまり、個々の豚の肥育を複数の施設に分けることはできない。
 これらの家畜は、緩やかな成長に資する飼料でのみ飼育することができる。肥育期間中に定められた1日最大増体重750グラムを超えてはならない。液体飼料(湿ったトウモロコシや大豆など)は禁止されている。大豆は乾物の20%未満、トウモロコシは乾物の10%未満という少量しか与えてはならない。豚に給餌する際には、いかなる場合も成長促進剤、同化作用剤、ホルモン剤を添加してはならない。また、肥育開始時(すなわち、生体重が31kgになった時)からは、化学物質や抗生物質の成長促進剤の使用も中止しなければならない。豚の生体重が120kg以上になってはじめて、と畜の準備が整う(と畜できる)。

[以後の工程(切断、マリネ、燻製、乾燥)は、すべて同じ施設で行わなければならない。]

と畜及び切断
 と畜は、関連する肥育施設に最も近く、特定のケースに対応可能で、適切な設備を備え、法定の衛生、獣医学及び動物保護の規定に準拠している、と畜場でのみ行うことができる。半枝肉は、生産する施設によって切断され、骨が取り除かれ、トリミングされ、直ちに規定のプル-アップ・シール (不正防止のためのセキュリティシール、pull-up seals)が貼られる。本産品の生産には、このように密閉された肉の切り身のみが使用される。
別添 セキュリティシール(PDF : 115KB)

マリネ(塩漬け、熟成)
 肉の切り身は、プレスされていない状態で、乾燥による熟成製法(dry-curing process)を使用して最高10℃までの温度でマリネされる。この目的のために、塩(調理用、キュアリング用(curing)、海塩又はこれらの混合物)、胡椒、ニンニク及びジュニパーを肉に加える。さらに、ジンジャー、コリアンダー、キャラウェイ、ローリエ、オールスパイス、パプリカ、ローズマリー、砂糖を含むスパイス及びハーブを加えることもある。
 塩の作用で肉から水分を抽出し、有害な微生物の繁殖を抑える。マリネ作業は、熟成用の槽とプラスチック製又は高級スチール製のテーブルの上で行われる。肉は冷たい状態でも温かい状態でもマリネすることができ、塩味が強くなるまで塩漬けにしておくのであるが、漬け込む材料の厚さによって1~4週間を要す。適正な所要時間の見極めは、生産者たちが代々受け継いできた技の一部である。
 漬け込みの工程が終了したら、余分な塩を取り除き、燻製の準備として、つまり完全に乾燥するまで、材料を吊るす。注入加工(injection marinating)や注入後のタンブリング加工(肉を機械等で攪拌し液を全体に浸透させる方法、tumbling methods)及びプレス加工は許可されていない。

燻製
 ガイルターラー・シュペックは、常に低温燻製(8℃から24℃)されている。使用される燃料は、ブナ材又は広葉樹チップで、そこにジュニパーベリーを加えて、発生した煙に香りづけする。伝統的な農業モデルと操業方法に従って構築された燻製室は、断続的に煙を発生させるために加熱される。つまり、燻製プロセスは、ベーコンを冷却し、燻製室を換気するために数回中断される。ベンゾピレンの生成を回避するために、このプロセスの間に、燻製のための火の点火時と再点火時に発生する初期の煙が、燻製される産品に接触しないようにする必要がある。
 燻煙室内に冷却装置が無い場合、外気温が25℃以上の時には、ベーコンの中心温度が全工程にわたって24℃を超えないことを繰り返し確認しなければならない。燻製工程を中断している間の外気温が冷却に寄与しない場合、従来の冷燻に匹敵する最終結果を達成するために、産品を燻煙室から取り出して冷却する必要がある。このタイプの製造における燻製工程の中断時間は、肉の中心温度に依存しなければならない。
 燻製工程の中断中は、燻製室は新鮮な空気で換気される。換気はアロマの形成を促進し、結露の発生や樹脂による汚染を防ぐことを目的としている。換気は、燻製室のドアを開けるか、エアフラップ、あるいは近代的な加工場の設備では自動換気システムによって行われる。
 新鮮な空気を入れる正確なタイミング、燻製の間隔とそれぞれの正確な長さは、各生産者の経験と習得した技術によって決定づけられ、これらのタイミングは本産品の香りのために重要である。
 近代的な燻煙室では、技術によって温度が一定に保たれ、換気間隔が自動的に実装されているため、燻製工程は継続的に実行することもできる。このような近代的な施設では、点火、煙の投入、温度から換気までの燻煙工程は、プログラムを使用して設定されている。このプログラムは、伝統的な燻煙室での燻煙(の方法)に基づいている。これらの設置では、結露の発生は排除され、樹脂による汚染を防ぐためにフィルターが設置されている。

熟成
 燻製工程が完了したら、ベーコンは、温度8℃~16℃、相対湿度60%から80%の間の換気の良い熟成室に吊るされる。望ましくないカビの発生がないかどうかを継続的に確認しなければならない。必要に応じて、ベーコンをブラッシングして除去し、さらに燻製にかけることでカビの繁殖を防ぐ。理想的な熟成度を得るためには、脂肪含有率25%での乾燥による損失は、新鮮重量の30%から40%でなければならない。以下に示す熟成期間は、カットの違い(とりわけ、肉の厚さによる)により、遵守する必要がある。
  - バラ肉のベーコン:4週間以上
  - 腰肉のベーコン:8週間以上
  - 三枚肉のベーコン:6週間以上
  - 肩肉のベーコン:4週間以上
  - もも肉のベーコン又はシンケンシュペック:12週間以上
  - 丸ごとのベーコン:12週間以上

〇ラベル表示
 包装された製品にはラベルを貼付しなければならない。ラベルの窓には、必要なEUマークに加えて、本産品の名称と生産者の登録番号を明記しなければならない。

〇監視機関
agroVet GmbH
Königsbrunnerstrasse 8
2202 Enzersfeld
ÖSTERREICH

(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由

自然的要因
 カリンシア州のガイル渓谷は、一部の例外を除き、中央ヨーロッパの温帯気候帯に属している。周囲の山々は西と東の方向に走っており、日当たりの良い側と日陰のある側、風上の側と風下の側が顕著に形成されている。同時に、山々はガイル渓谷を気象擾乱から守り、西から到来する前線を弱めている。その結果、ガイル渓谷の日照時間は年間を通して50%以上と、カリンシア州の他の地域と比較して平均を上回っている。しかし、ガイル渓谷は秋と冬に最も有利である。それに応じて、ガイル渓谷の湿度条件も年間を通じて非常にバランスがとれている。
 定義された地域の平均気温は、通常、例えばクラーゲンフルト盆地(Klagenfurt basin)よりもわずかに低い。ガイル渓谷の標高がより高いため、平均気温の変動も少ない傾向があり、極端な変化はあまり見られない。
 全体として、西から東へ走る渓谷の向き、バランスのとれた一定の温度と湿度の条件、日照時間の長さとそれに伴う低い雲量率、冬の霧のない条件、さらに天候を回復させる南からの特徴的な風が、ガイル渓谷におけるベーコンの生産、特に熟成に理想的な条件を作り出している。

人的要因
 ガイル渓谷の住民は、9世紀にまでさかのぼるベーコンの生産に関する伝統を文書に記録しており、ガイルターラー・シュペックのような高品質で間違いのない洗練された産品を生産するためには、原材料(許容される家畜の品種、緩やかな成長を目的とした給餌)の生産に関する一定の手順を遵守することによって、そして地域の気候特性を生かして、いつ生産できるか、どのような場合に、どのように生産すれば良いのかについて、経験に基づく包括的な知識を有している。本産品の品質に影響を与える様々な要因(特に、悪影響、品質の変動の理由、環境要因による原材料の特性の変化及びそれらへの対処方法)に関する何世紀にもわたるこの実践的な経験は、一定の高品質の製品を生産する上で決定的なものである。

特異性
 ガイルターラー・シュペックは脂肪分が比較的多く、独特の硬さを有しているが、口に入れると心地よい滑らかな感触を与え、舌の上で柔らかく溶ける。項6 (1)で説明した味わいと相まって、これは目利きにとって間違いのない商品となる。

地域と本産品の特徴との因果関係
 この関係は主に、世代を超えて受け継がれてきた地域の生産プロセスの影響に現れており、これが本産品に特有の特徴を与え、現在の高い評判をもたらしている。
 この地域で培われ、何世紀にもわたって保存され、洗練されてきた知識は、生産のすべての段階に影響を与えている。(以下に詳細)

- 豚の選別及び飼育
 経験に基づいて、緩やかな肥育と許容される種類の飼料とを併用することで、望ましい比較的高い脂肪含有量を確保できる豚種のみが生産を許可される。ガイルターラー・シュペックは天然の産品であり、脂肪含有量は去勢された雌雄間で異なり、また肉の部位によっても異なるため、脂肪含有量の高さをcm単位で測定することはできない。しかし、本産品の生産に使用される豚の寿命が長いこと(1日の体重増加の制限)及びと畜時の最低生体重が高いこと (通常のベーコン生産ではヨーロッパの平均が85kgであるのに対し、最低でも120kgであること)から、本産品の脂肪含有量が同等の産品よりも明らかに高いことがわかる。
 本産品に含まれる脂肪の独特の硬さは、ごく少量のトウモロコシ(欧州の通常の最大70%であるのに対し10%以下)を豚に特別に給与することによるものである。トウモロコシの割合を高くすると、肉のリノール酸含有量(=多価不飽和脂肪酸)が高くなり、ベーコンが酸化し、ひいては腐敗しやすくなる。また、融点も変化する。この結果、ベーコンの食感、典型的な粒状性に影響を与えることになる。

- 製造工程
 香辛料の選択、熟成期間の長さの決定及び一般的な温度と湿度の条件に合わせてダイナミックに調整される燻製工程の方法などは、本産品の外観、典型的なマイルドな塩味とほのかにスパイシーな香り、そしてまた、特有の熟成をしたスモーキーで肉厚な味わいを生む。伝統的な冷燻に加えて既に言及したように、本産品の脂肪分は特別に硬い。燻製室の外気温が高い場合、冷却せずに燻製を行うことができる。柔らかい脂肪は、高い温度でますます多く発汗し、それはスモークのより高い溶解度につながり、結果として味にばらつきが生じる。 
 換気、乾燥、熟成は、地域の気候の上記の利点を利用して行われ、個々の、プレスされていない、したがって様々な厚さのベーコンの理想的な熟度のレベルを見極めるという地元のベーコン生産者の経験に基づく知識と合わせて、製品の一貫性と保存期間を決定的に左右する。
 近代的な空調完備の燻製室でガイルターラー・シュペックを生産する場合、この生産者の経験がプロセス制御のプログラミングに組み込まれ、人間が制御する加工手順に匹敵する結果が保証される。
 ガイルターラー・シュペックの味と食感は、近隣地域の他のベーコン製品とは一線を画し、急速に人気が高まっている。
 これは、例えば、ガイル渓谷の中心に位置する町、ヘルマゴール(Hermagor)で毎年開催される「シュペック・フェスト」(ベーコン・フェスティバル)に現れている。本フェスティバルには、毎年6月の最初の週末に、オーストリア国内外から何万人もの来訪者が訪れ、訪問者は、ガイルターラー・シュペックが生産されているガイル渓谷を訪れ、試食したり、持ち帰ったりする機会を得ている。
 2005年、本産品の原産地が、定期的なマーケティングと観光イニシアチブを展開していることからオーストリアのGenussregion("Gourmet Region"/"Region of Delight")に認定され、本産品がカリンシア州の代表的な産品として重要であることが認められた。

7 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -
8 公示の年月日  令和7年8月1日
9※ 意見書提出期間
(公示開始日から3か月間)
 令和7年11月4日まで
※縦覧及び意見書提出についてはこちら

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234

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