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農林水産省

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指定前の公示(第191号)

更新日:令和7年8月1日
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の名称について、指定前の公示をしたのでお知らせします。

Irish Grass Fed Beef(アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフ )


1 指定前の公示の番号  第191号
2 指定をした場合に締約国の名称として公示されることとなる国の名称  欧州連合
3 農林水産物等の区分  第2類 生鮮肉類(牛肉)
 第3類 その他畜産物類(内臓肉)
4 農林水産物等の名称  Irish Grass Fed Beef(アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフ)
5 農林水産物等の生産地  アイルランド及び北アイルランドからなるアイルランド島(小島を含む)
6 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
 アイリッシュ・グラス・フェッド・ ビーフは、骨付き及び骨無しの牛肉の生鮮品並びに冷凍品に与えられた名称で、枝肉、四つ切肉、骨付きカット、骨無しのプライマルカット、それらのミンチ肉及び小売用パック肉などが含まれる。
本産品は、(i) 全体的な脂肪レベルが低い (ii) 脂肪の均等な分布 (筋肉間の霜降りとして);(iii) はっきりとしたチェリーレッド色の肉;(iv) 脂肪のクリーミーさと黄色みが強い。濃厚で複雑な、草のような風味を有するジューシーな肉で、牛肉本来の風味があり、柔らかい。

 枝肉は、次の2つのカテゴリーのものでなければならない。
   (1) 36ヶ月までの去勢牛及び未経産牛で、O-(オー・マイナス*)より良好なコンフォメーションを有し、脂肪スコアが2+から4+のもの;
   (2)月齢120ヶ月までの肉牛で、O+より良好なコンフォメーションを有し、脂肪スコアが2+から5のもの。
 カテゴリー(1)に属する本産品は、チェリーレッドの肉の色、クリーム色か黄色の脂肪の色、外部脂肪レベルに関して、記載されているとおりにすべての特性を示している。
 カテゴリー(2)に属する本産品は、脂肪の黄色がより鮮明で、肉色は去勢牛や未経産牛よりも赤みが深い。平均脂肪レベルはカテゴリー(1)よりも高い。高 pH(>5.8)の枝肉は識別され、除外される。

 *[参考:EUROP classification system: EUにおける格付け基準]
 ア)コンフォメーション(形状)
       E (excellent)
       U (very good) ・・・高い(+)か低い(-)かを示すために細分化されている。
       R (good)
       O (fair)  ・・・・・・高い(+)か低い(-)かを示すために細分化されている。
       P (poor) ・・・・・・高い(+)か低い(-)かを示すために細分化されている。

 イ)脂肪スコア
       1(脂肪が少ない)~5(脂肪が非常に多い)までの5段階

(2)生産方法
 本産品は、以下の条件を満たす牛のみを含む。
a) 飼料摂取量の少なくとも90%を牧草から得ている。これは主に放牧を行って食べさせる牧草であり、冬期は保存された牧草を与える。
b) 生涯を通じて、年間最低220日を牧草地で過ごす。毎年、条件が整い次第、「アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフ」の牛は牧草地に送られ、最長で10ヶ月間、1日中牧草を食んで過ごす。通常、天候や地面の状態が活発な牧草の成長や放牧を促進しなくなる11月下旬から12月初旬に牛を畜舎へ入れる。天候、土壌の状態、その他の環境条件又は動物福祉への配慮が阻害要因であると定義される緩和的状況により、40日までの許容が認められている。

 保存された牧草は、飼育期間中 (最長145日間) のみ給餌される。保存された牧草の栄養品質は、すべての生産者によって評価される。牛には、牧草以外の飼料(例:藁;飼料用ビーツ;トウモロコシ;その他の穀物)と濃縮飼料を与えることができるが、これは牛の一生を通じて最大10%の飼料摂取量に制限されている。これらの牧草以外の飼料は、離乳時、冬期、異常気象時、最終仕上げの時期など、必要な場合にのみ使用され、牧草又は牧草飼料の栄養品質が最適な食肉品質を保証するには不十分な場合に限る。すべての保存牧草は、地理的地域内で収穫されなければならない。

 本産品の牛は、地理的地域内で生まれ、牧草を食んで育ち、仕上げられ、と殺され、冷蔵され、四つ切りにされなければならない。
 本産品の食味の品質を確保するために不可欠な肉の熟成プロセス(最低3日間、特殊な製造カットの場合は2日間)が、当該の地理的地域内で行われていなければならない。

〇ラベリングルール:
 「アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフ」と表示できる産品は以下の通り。
 - 条件を満たす肉牛の骨付き及び骨無しの肉の生鮮品ならびに冷凍品。枝肉、四つ切肉、骨付きカット、骨無しのプライマルカット及び小売用パック肉が含まれる。
 - 条件を満たす肉牛から調達された牛肉を100%含み、目視で90%以上の赤身牛肉を含むミンチ肉。
 - 条件を満たす肉牛から調達された牛肉を100%含み、目視で90%以上の赤身牛肉を含むミンチ肉製品(例:バーガー)。
「アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフ」‘由来’と表示できる製品
 - 条件を満たす肉牛から調達された牛肉を100%含み、目視で90%以上の赤身牛肉を含む複合牛肉製品。
 - 条件を満たす肉牛から調達された上質な内臓肉(頬肉、テール(Tail)、サガリ(Thick-Skirt)、タン)。

(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
 アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフと生産地域との間の因果関係は、一貫して高い食味に基づいており、それが定評につながっている。本産品は、ヨーロッパの消費者、小売業者、シェフ、ジャーナリスト、オピニオンリーダーの間で評判を確立している。それは、牧草放牧と牧草飼料の生産システムに基づいており、厳格なプロトコルに従って適切なカテゴリーの牛肉を育て、「仕上げ」することで、差別化された外観と定評のある食味の肉を生み出す。

地理的地域の特殊性:自然要因とノウハウ
 アイルランド島は、牧草をベースとした農業に独自に依存しており、その牧草栽培の可能性は何世紀にもわたって認識されてきた。牛の飼育は、アイルランド経済にとって不可欠な部分であると長い間認識されてきた。
 当該の地理的地域は温暖な気候で、冬は穏やかで厳しい霜は稀であり、夏の気温も高い。メキシコ湾流の暖かい海水から吹く湿った偏西風がこの島の気候を顕著な海洋性の気候にしており、雨が頻繁に降り(年間降水日数は最大246日)、年間の気温の幅は小さい(0℃以下又は25℃以上になることはめったにない)。アイルランドの草地は、ヨーロッパで最も高い非灌漑地牧草収量(年間 12~16トン乾燥重量/ha) を生み出すことができる。
 アイルランドの肉牛は他の牛肉システムとは異なり、伝統的な品種(例:ヘレフォード(Hereford)、アンガス(Angus)、ショートホーン(Shorthorn))と、乳牛種 (強い母性形質を持つ)及びヨーロッパ大陸の肉牛種(例:リムーザン(Limousin)、シャロレー(Charolais)、シンメンタール(Simmental))との交雑の慣行から生まれている。その結果生まれた丈夫な交雑種の動物は、この地理的地域の変化に富んだ気候及び地理的条件に最適に適応している。
 総合的な農業教育と農場での強力な支援により、最先端の科学研究へのアクセスが可能になり、農家は草地から肉牛を生産する際に最大の利益を得ることができる。当該の支援は、すべての農家及び新規就農者が利用できる。この科学的支援は、本産品の食の質を継続的に向上するための重要なインプットである。第一の焦点は、見た目が特徴的で味が優れている牛肉の生産であるが、最近の業界の取り組みとして、本産品の生産者が牛肉事業の二酸化炭素排出量の削減に注力できるように支援するものでもある。
 アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフの農場は、アイルランドの農村景観と地域社会の中心である。歴史的には、この構造は、世代を超えて受け継がれてきた小規模から中規模の住居農場を中心に構築されてきた。この構造により、農場は家畜のための放牧と採食地の中心に位置しており、家畜の定期的な目視評価 (「牧畜」) と、肉食の質に大きく影響する家畜の健康状態に継続的に注意を払うことができる。
 今日まで、この農村のパッチワークはアイルランドの景観の特徴として認識されている。本産品の生産モデルは家族経営農場に限定されてはおらず、新規参入者を排除しているわけではないが、99%以上の農場が「家族経営農場」に分類される。しかし、家族経営農場のような牧草地を基盤としたグラス・フェッド実践の証拠が無い工業的農法を採用した集約的な肥育経営(intensive feedlot operations)は、本産品の生産には適格ではない(対象とはみなされない)。
 本産品の農場では、広範な牧草地での飼育に基づく伝統的な牛肉生産システムが根強く残っている。データによると、1頭あたりの平均的な土地利用可能面積は3,000平方メートルを超える。この農業システムは、何世代にもわたって構築された牛群と、受け継がれてきた牧畜技術に由来している。この過程で、牛肉生産に関する知識と経験が蓄積され、地域の地理的・気候的条件や動物の福祉要件に敏感に反応するようになった。牧草をベースにした牛肉は、以下の3つと国際的に関連付けられている。すなわち、より良い動物福祉、より少ないストレス、より良い動物の健康である。
 さらに、放牧された草と、牧草を主原料とする冬の飼料はすべて、この地理的地域で生産されたものである。
 本産品の生産システムでは、以下のことを優先している。
  - 放牧された草から可能な限り体重を増加させる。
  - 高品質の冬の飼料を生産するために、最適な成長段階 (5月/6月) で余剰の夏草を収穫する。
  - 保存された牧草の乾物消化率 (DMD) を最大化する。これは、牧草サイレージが牛の冬の栄養必要量の大部分を確実に供給できるようにするために不可欠である。
  最近の研究では、アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフは、非牧草飼料システムや低牧草飼料システムに比べると、有益なミネラルやビタミン(カルシウム、マンガン、鉄、亜鉛、セレン、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、リン、ビタミンEなど)の濃度が著しく高いことが確認されている。

特殊性
 土地、人、家畜のつながりは、本産品を生産する農家が牧畜技術、小規模家族経営農場、地元のノウハウ、草地管理技術を重視していることを示しており、生産される食肉に以下のような特徴を与えている。
 本産品には、非牧草飼料システム又は低牧草飼料システムで生産されるものとは異なる特定の栄養特性があることが判明している。すなわち、本産品は、非牧草飼料システム又は低牧草飼料システムから飼育された牛の肉よりも、飽和脂肪酸値が低く、オメガ3の数値が高い。また、脂肪酸の含有量の違いが、グラス・フェッド・ビーフに独特の牧草の風味と、より複雑で潜在的に「ナッツ」を思わせるような独特の調理品質を与えることも研究により明らかとなった。
 どちらのカテゴリーのアイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフも、非牧草飼料システム又は低牧草飼料システムで生産された牛肉とは、肉と脂肪の色が視覚的に異なる。
 最近の研究で、アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフの皮下脂肪は、穀物濃厚飼料を与えた牛の皮下脂肪よりも約63%黄色が強いことが判明した。黄色みが強いのは、当該の地理的地域の牧草に含まれるカロテノイド(ベータカロチンやルテインなど)の濃度が、穀物濃厚飼料よりも、高いことに関連している可能性がある。
 アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフの筋肉の色は、穀物濃厚飼料を与えた牛よりも濃い(深い赤色)と報告されている。
本産品の濃厚で複雑、草の香りを帯びてジューシーな風味と特性は、主に屋外での伝統的な放牧システムの結果であり、そこでは、牛は年間220日以上を牧草地で過ごし、飼料の90%以上を当該の地理的地域の牧草として消費することに起因している。
肉の柔らかさ(食感)は、消費者にとって食肉製品の受け入れやすさと食の満足度に影響を与える最も重要な官能特性の一つである。   本産品が非常に柔らかいことは、と畜前の牛の取り扱いと、と畜後の枝肉と切り身の冷却と熟成が、アイルランドの農家と加工業者が細心の注意を払って従う厳密な製造の手順に従っているおかげで達成されている。これにより、天然繊維の熟成/分解プロセスが発生し、より柔らかさが増し、牛肉本来の風味が強調される。また、実績ある食肉技術と、柔らかさを高めてコールド・ショートニング(肉の急冷させ過ぎたために発生する肉質の硬化。筋肉の収縮。)のリスクを排除する制御された熟成プロセスのおかげでも達成されている。高pH(>5.8)の枝肉は特定され、除外される。

因果関係:評判
 牧畜技術、小規模家族経営農場、地元のノウハウ、本産品を生産する農家が実践してきた草地管理技術といった人的要因と、土地、人、家畜のつながりが、アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフを生み出している。
その結果、独特の外観、風味、栄養プロファイルを持つ、差別化された高品質で柔らかい牛肉が生産できる。これらの特性は、消費者、シェフ、食品バイヤーから高く評価されている。
本産品は、地域による料理の違いや好みに基づいて、2つの異なるプレミアム市場を確立している。
 (1) 去勢牛や未経産牛のアイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフは、オランダ、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルクを含む様々な市場で人気を集めている。これらの市場ではプレミアム価格で位置づけられている。
 (2) 条件を満たした牛のアイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフは、成牛の濃厚で風味豊かな牛肉が好まれるヨーロッパの地域 (例: フランス、スペイン北部) で選ばれてきた。この隙間市場(ニッチ)は最近大幅に拡大しており、ヨーロッパの一流シェフの間で‘成熟した’牛(例えばガリシア牛)を好む高級料理の傾向がそれを証明している。

 消費者向けの調査では、アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフと非牧草飼料システム又は低牧草飼料システムで育てられた牛の肉との間では、見た目、味、成分の明確な違いが確認されている。2011年にヨーロッパの三つの市場(ドイツ、オランダ、イタリア)で味覚テストが実施され、競合他社と比較した本産品の食味の質に関する消費者の認識が確立された。本産品は、三つの市場すべてにおいて、味の濃さ、食感、肉の脂肪の被り具合又は霜降りのバランスについて、より高いスコアを獲得した。

 アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフは、様々な専門家によって、差別化された特別の食性を持っていると説明されている。
-「豊かな風味」
-「ジューシー」
-「世界で最もおいしい牛肉の一つだ」

 肉の柔らかさも評価されている。
-「この肉の品質(と)柔らかさに征服された...」
-「肉が極めて柔らかい」

 アイリッシュ・ステーキは、2018年と2019年のワールド・ステーキ・チャレンジ(World Steak Challenge)グラス・フェッド部門で、他のどの国よりも多くのメダルを獲得した。2019年には、25カ国のステーキに対して専門の審査員たちが評価したところ、アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフのサーロイン(striploins)、リブアイ(rib eyes)及びフィレが83個という記録的なメダルを獲得したのだが、その中にはワールド・ベスト・フィレが含まれていた。2021年のワールド・ステーキ・チャレンジでは、さらに85個のメダルを獲得しており、そのうち52個が金賞であった。
 「グラス・フェッド・ビーフの高い霜降り - 素晴らしい。」「柔らかくて風味がよく、ナッツを思わせる軽い風味があり、繊維が短く、酸味が少なく、非常にジューシーだ。Wow。」これらは、アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフがワールド・ベスト・ステーキ・コンテスト(World's Best Steak Contest)を受賞したことに関する審査員のコメントである(BEEF Magazine、2009年)。
 アイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフは、世界中の多くの一流レストランで提供されている。ヨーロッパ及び国際的に9つの支部を持つシェフズ・アイリッシュ・ビーフ・クラブ(The CIBC, Chefs Irish Beef Club。以下「CIBC」。) には、100名以上のシェフが参加しており、彼らは本産品を自分の好みの牛肉として使用し、推奨している。CIBCのシェフとボキューズ・ドール受賞者の国際的な会合(2013年6月) では、本産品を推奨する声が数多く聞かれた。
 -マリオ・コルティ(Mario Corti)、シェフ、ドイツ:「私はグラス・フェッド・ビーフが好きで、私にとってアイリッシュ・グラス・フェッド・ビーフは、実際に見つけることができる最高のものです...」
 -ジャン-ポール・ジュネ(Jean-Paul Jeunet):「私はお客様に最高のものを提供したいと思っています。アイルランドには牧草があり、良い気候もあり、年間を通して肉牛は屋外にいる。 - とても興味深いことです。」

7 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -
8 公示の年月日 令和7年8月1日
9※ 意見書提出期間
(公示開始日から3か月間)
令和7年11月4日まで
※縦覧及び意見書提出についてはこちら

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234

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