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農林水産省

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指定前の公示(第193号)

更新日:令和7年8月1日
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の名称について、指定前の公示をしたのでお知らせします。

Ġbejna tan-Nagħaġ(ジュベイナ・タン・ナーチュ)


1 指定前の公示の番号  第193号
2 指定をした場合に締約国の名称として公示されることとなる国の名称  欧州連合
3 農林水産物等の区分  第6類 畜産加工品類 酪農製品類(チーズ)
4 農林水産物等の名称  Ġbejna tan-Nagħaġ(ジュベイナ・タン・ナーチュ)
5 農林水産物等の生産地  マルタ

 マルタ諸島全体
6 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
 「ジュベイナ・タン・ナーチュ」は、マルタ島、ゴゾ島、コミノ島を含むマルタ諸島で登録されている「マルタ」種の羊(Ovis aries)及びそのフリース種又は他の品種との交配種又はその他の交雑種からの成分無調整の生乳(Whole raw milk)で生産されるフレッシュチーズである。
 フレッシュなもの (「ジュベイナ・タン・ナーチュ」フリスカ)、自然乾燥したもの (「ジュベイナ・タン・ナーチュ」ニエクスファ)又は酢漬けにして胡椒をかけたもの (「ジュベイナ・タン・ナーチュ」タルブザール) が販売される。
 3種のジュベイナ・タン・ナーチュ ー「フリスカ(friska)」、「ニエクスファ(niexfa)」及び「タルブザール(tal-bżar)」(要約でまとめてグループ化したが、必要に応じて例外を示す) ー は、以下の特性を有するものでなければならない。

産品の説明
- 高さ:1.5 cm ~ 5 cm
- 重さ:30 g ~ 110 g
- 底面の直径:5 cm ~ 7 cm
- 上面の直径:2.4 cm ~ 5.5 cm
- 「タルブザール」は、表面に様々な量の挽かれた黒胡椒が付着している。

外観
- リンドレス(表皮が無い)
- 側面がさまざまな程度に傾斜した切頭円錐形に見える
- 上面は平坦又はわずかに凹んでいる
- 側面は斜めに凸状
- 表面は、型枠のモチーフに基づいてクロスハッチングされる(線が斜め方向に交差して描かれている)場合がある
- 外観:「フリスカ」は光沢があり、柔らかく、しっとりしているように見える
          「ニエクスファ」は乾燥して見えるか脂っぽく見える
          「タルブザール」は表面が湿っている
- 色:  「フリスカ」は白色、「ニエクスファ」は象牙色から麦わら色、「タルブザール」は淡い麦わら色から黄土色

内部の様子
- アンダークラストは無い
- 「ニエクスファ」及び「タルブザール」には穴が開いていることがある
- マーブル模様は無い
- 「ニエクスファ」及び「タルブザール」には、時折わずかな亀裂が存在する
- 乾燥期間と条件によって、半硬質から硬質の構造(構造がクリーミーで、柔らかく、湿気があり、少し脂っこい「フリスカ」を除く)
- 芯の色:「フリスカ」は白色、「ニエクスファ」及び「タルブザール」は象牙色から麦わら色
- 「ニエクスファ」の場合、外周から芯にかけて色が異なることがあり、芯の方がわずかに色が薄い

官能特性
- 芳香は弱い。「フリスカ」は新鮮な乳の香りとわずかな羊の匂い、「ニエクスファ」はわずかに酸味のある特徴、「タルブザール」はスパイシーな(黒胡椒の)香りを有する
- 味:「フリスカ」は甘く、軽い塩味があり、「ニエクスファ」は甘味~弱酸性、「タルブザール」は中程度~強酸性でスパイシーな口当たり
- 食感:「フリスカ」は湿気があり脂っこい、「ニエクスファ」は可溶性~わずかな粘着性、「タルブザール」は湿潤~粉っぽく崩れやすい
- 味覚の持続性:「フリスカ」は低く、「ニエクスファ」は中程度~強酸性、「タルブザール」は強酸性で胡椒が効いている

化学的特性
- 総タンパク質:14% - 40%
- 総脂肪:15% - 40%
- pH:4.7 – 5.3
- 総固形分:37% - 56%
 
(2)生産方法

飼料及び原材料について
 地理的地域外から調達される飼料の最大割合は、年間ベースで乾物45%である。降雨量が少なく、利用可能な土地が限られているため、地理的地域内から飼料の100%を調達することは技術的に不可能である。
 羊は、少なくとも摂取量の55%を地元で調達したマメ科植物及び穀類植物の乾草(大麦、ロリウム、小麦、ベッチ(vetches)、ソラマメ(fava)、トウモロコシ、ソルガム、アルファルファ、ライグラス、クローバーなどを含む)を与えられ、それに加えて、主要な飼料工場が原料から製造して配布する濃厚飼料を与えられる。入手状況に応じて、羊には地元で調達したキャロブやウチワサボテンの葉状茎などの植物も与えることができる。本産品の味は、このような地元産の飼料の使用に関連している。
 本産品の原材料である羊の生乳は、3つの種類すべてについて、特定の地理的地域から完全に調達されている。マルタ島、ゴゾ島、コミノ島で登録された「マルタ」種の群れとその交配種からの生乳である。

 当該の生乳は、以下の化学的特徴を持っている。
  - pH:6.4~6.7
  - 脂肪含有量:4.5%~8.0%
  - タンパク質含有量:5.0%~6.5%
  - 乾物含有量:15.0%~18.0%

特定の地理的地域で行われなければならない生産工程
  - 牧畜(マルタ種の羊と交配種の繁殖、飼育、搾乳)
  - マルタ種の羊と交配種の羊の生乳からのチーズ製造
  - 「ジュベイナ・タン・ナーチュ」の熟成

工程
 本産品は、加工を最小限に抑えたシンプルなチーズである。すべての添加物(例:酢、胡椒)は、生産後と表面的な加工の際にしか使用されない。
 雌羊から搾乳したら、その後、乳の温度を適正に保つことも重要な基準である。そうしないと、「フリスカ」の柔らかさが失われ、「ニエクスファ」や「タルブザール」では穴や裂け目が増えてしまうからである。凝固酵素を希釈し、最良の伝統的な方法で乳をまとめたものに加えることで、正しい食感を確保することができる。酵素の添加量が多過ぎると、凝乳が硬くなり過ぎて、3種とも形が崩れてしまう。凝乳の形成を待つ時間と、凝乳の適切な硬さを見極めることも重要である。型の中でチーズを裏返すのに時間がかかり過ぎると、「フリスカ」は型の形に沿わなくなり、「ニエクスファ」や「タルブザール」では穴や裂け目が増えてしまうからである。正しい水切りの工程が、チーズの形を維持する。生産者は経験を積むことによって、「タルブザール」の特徴である強い酸味と胡椒の風味を維持するために最適な漬け込みの時間がどれほどになるかを学ぶ。
 熟成期間は短く、チーズ職人の農場の屋上にある特注のキャビネットで可能な限り自然乾燥される。チーズ製造の工程に関わるすべての手順は、通常、チーズ職人が長年継承してきた専門技術により実施している。これらには、搾乳、濾過、必要に応じて乳を再加熱すること、凝固酵素の添加、凝固、型に入れること、裏返し(回転)、水切りが含まれる。これらは熟練を要する生産工程であり、通常、世代から世代へと引き継がれていく。
 熟練したチーズ職人は、本産品の乾燥に適した日を選ぶことに長けており、この技術は、世代から世代へと経験を継承することによって習得される。この経験を通じて、生産者はまた、湿度の高い南風や砂漠の雨が予報されている場合には、「ニエクスファ」と「タルブザール」の半硬質から硬質の構造と象牙色から黄土色という特徴を維持するために、別の方法で乾燥させることを知っている。
 製造工程についての具体的な手順に関する記録は文書化されておらず、チーズ製造の具体的な方法に関する知識と経験は、世代から世代へと受け継がれてきた。本産品の製造に関する調査で確認されたように、「ジュベイナ・タン・ナーチュ」は本産品の指標である。年配の世代の経験は、主に家族の中で関心を持つ人たちの教育の基礎となる。年配の世代の経験は、本産品の3つすべての種類に共通する特異性に貢献している。これらの実践事例を学ぶことで、この伝統的な産品の品質の継続性と一貫性が確保される。

〇包装、スライス、すりおろし
 3種類の「ジュベイナ・タン・ナーチュ」(以下「本産品」という)は、すべてそのままの形で(丸ごと)販売されている。
 本産品の「フリスカ」は数量売りのみであるが、「ニエクスファ」と「タルブザール」は重量売り又は数量売りのどちらもある。
本産品は、生産者や顧客の要求に応じて、単独又は異なる数量で様々な透明プラスチックあるいはガラスの容器にパックされ、それぞれに帯状のシールとラベルで密封されている。
 通常、24時間ドリップ法を用いた1kgの本産品は、季節や食事や飼料に応じて6.8から8リットルの羊乳から製造される。これは、羊乳1リットル当たり24時間ドリップで125gから147gの本産品として計算される。
 本産品は3種類とも皮が無いため、市場に出す前に生産地域内で包装する必要がある。皮の無い本産品を生産地域以外で取り扱うと、微生物汚染につながる。
 本産品は、チーズの鮮度ともろさを考慮すると、繊細な構造を保護するために包装が必要である。また、取り扱いによって製品の風味と香りが損なわれてしまわないために漬け込みと、表面を湿らせる、挽いた(砕いた)黒胡椒の塗布の観点からも包装が必要である。
 スライスは、一個あたり120g未満というサイズを考えると、3つの製品すべてについて受け入れられておらず、実用的でもない。
すりおろしは、本産品の「ニエクスファ」にのみ適している。製品特有の味と香りを保持し、その原産地を確認できるようにするために、すりおろしは生産地において生産から6週間以内に行わなければならない。

〇ラベル表示
 製品には、「Ġbejna tan-nagħaġ」(ジュベイナ・タン・ナーチュ)という用語が記載された長方形のラベルに加えて、次のようなイタリック体で記述する。
  - 「friska」(フリスカ)、「niexfa」(ニエクスファ)又は「tal-bzaf」(タルブザール)
  - 認証管理機関のロゴ
  - EU品質シンボル

(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
 
自然的要因
 マルタ諸島は地中海のほぼ中央に位置し、特徴的な亜熱帯地中海性気候を持っている。マルタとその周辺では、蒸発量が降水量を大きく上回っているため、海水の比重は(大西洋より高い)1.0300で、表面温度は比較的暖かい。島々を取り囲む海は気候に大きく影響し、大陸の内陸部に比べて涼しく、湿度が高い。海の熱容量が大きいため、島々の周囲温度の大きな変動が少ない。マルタの気候は、春の予測不可能な天候、すなわち、暑く、乾燥し、一般的に雨の降らない夏と、短い秋、寒気の波を伴う穏やかで湿った冬が特徴である。年間平均気温は18.6℃で、冬の12.4℃から夏の26.3℃まで幅がある。局地的な降水の最も一般的な形態には、雨、雹、露、軟らかい霧氷などがある。平均総降水量は553mm、標準偏差は157mm。平均相対湿度は、7月の最低61%から1月の最高87%まで変化する。年間平均風速は16.3km/時で、月平均にはかなりのばらつきがある。卓越風の60%は西から北西に吹くが、暑い日にはサハラ砂漠から赤い砂を運んでくる‘ジブリ’が吹き、南風に助けられる。
 マルタ諸島の典型的な乾燥した地形は、羊は他の農業目的には適さない限界農業地域を利用できるので、羊の飼育と餌やりに適している。湿度、周囲の海、島の低い地形 (最高地点は121m)、予測不可能な強い風がしばしば吹くことにより、空気中の味が塩辛いことが頻繁にある。植物の表面に対流圏の塩分が沈着することによって起こるこの塩辛さは、3種類の本産品を風乾している最中に周辺環境が産品に及ぼす影響を説明している。
 植物相は、この地域及び同様の地質構造を持つ遠洋性の島々に典型的なものである。マルタには川も淡水湖もない。谷や渓谷は乾燥した川床と表現され、降雨の時期に水で満たされる。夏は高温で乾燥するため、この期間の自然の植物相は存在せず、放牧は不可能である。マルタの土壌はpH8以上の石灰質岩に由来する。マルタ諸島の植物の分布は、その地質と地形とに密接に関係している。飼料として栽培される耕地作物には、ひよこ豆(Cicer arietinum)、スッラ(Hedysarium coronarium)、大麦(Hordeum vulgare)、レンリソウ(Lathyrus ochrus)、グラスピー(Lathyrus sativus)、レンズ豆(Lens culinaris)、シャクトリムシマメ(Scorpiurus muricatus)、パンコムギ(Triticum aestivum)、ビッター・ベッチ(Vicia ervilia)、ヤハズエンドウ(Vicia sativa)がある。これらの作物は、在来の雑草、特にマメ科の多様な三葉植物が多く生息する、非常に栄養分の低い狭い地域に播種され、他の播種作物の残りと一緒に収穫される。ソラマメを供給するために栽培されているVicia faba(マメ科ソラマメ属の一年草)も収穫され、乾燥され、夏の飼料として使用される。また、羊の飼料には、ウチワサボテン(Opuntia ficus-indica)とキャロブ(Ceratonia siliqua)の葉も用いられる。この植物相は、本産品の風味と構造に反映されている。この甘味は、主に「フリスカ」と「ニエクスファ」で感じられ、チーズ職人達は、本産品にこの甘味を出すために、適切な飼料の組み合わせの経験と知識を過去の世代から習得している。

人的要因(文化、歴史など)
 「Ġbejna tan-nagħaġ」(ジュベイナ・タン・ナーチュ)という名称は、マルタ語によってこの地域と結びついている。EUの27の加盟国の中で、マルタ語は非常に特殊な言語として際立っている。30文字のローマ字で書かれたセム語系の起源を持ち、マルタ語特有の子音がいくつかあり、そのうちの二つ(すなわち、'għ'と'ġ')は本産品の名称にも使われている。本産品の名称はまた、いくつかのマルタ語の表現や慣用句(例えば、「のんびりする」という意味の'qisek ġbejna')にも使われており、「Ġbejna tan-nagħaġ」(ジュベイナ・タン・ナーチュ)とマルタ文化の結びつきを強調している。
 「ジュベイナ・タン・ナーチュ」は、マルタの食文化遺産の不可欠な一部であり、いくつかの伝統的なマルタ料理のレシピに含まれている。「フリスカ」はマルタのチーズケーキ(パスティッツィ、pastizzi)、塩味のパイ(トルタ・タル-ジュベイニエット、torta tal-gbejniet)、ラビオリの詰め物として、あるいはまた、ソッパ・タル-アルムラ(soppa tal-armla)やクスクス(kusksu)のようなマルタの冬のスープにも使われた。「タルブザール」は、マルタのウォーター(卵や牛乳不使用の意)・クラッカー(ガレッティ、galletti)やマルタのパン料理(ホブス・ビゼイト、hobz biz-zejt)と一緒に前菜として供される。
 歴史的な記録によると、マルタ諸島には中世の時代から放牧されていた羊がいた。一方、チーズ製造に関する最初の報告は15世紀から17世紀にまでさかのぼる。チーズの製造は、特に温暖な気候条件下では、乳を長期間保存するための理にかなった方法であった。特に、一般的なカトリックの文化や伝統を考慮すると、乳製品は肉食の日にしか食べることができなかったのである。様々な時代において、羊は主に各家庭に属する非常に小さな群れで飼われ、彼らの生活に必要な乳や乳製品を供給していた。また、同じ方法論を用いてまったく同じ典型的な産品を製造し、商業的に販売するために、より大きな群れも世代を超えて飼われてきた。これらの商業的な群れは、島々で起こっている大規模な都市化と本産品の需要を考えると、現代ではより重要になってきている。過去20年間は限定的な近代化が前提条件であったが、ほとんどの生産者は小規模な家族経営を続け、羊の群れとの個人的なつながりを維持しているため、過去の世代の伝統は守られてきた。 
 
7 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -
8 公示の年月日  令和7年8月1日
9※ 意見書提出期間
(公示開始日から3か月間)
 令和7年11月4日まで
※縦覧及び意見書提出についてはこちら

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234