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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第130号)

下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課

Conwy Mussels(コンウィ・マッスルズ)


1 指定年月日  令和6年2月29日
2 指定番号  第130号
3 締約国の名称 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分 第4類 水産物類 貝類(ムール貝)
5 農林水産物等の名称 Conwy Mussels(コンウィ・マッスルズ)
6 農林水産物等の生産地 イギリス

ウェールズ、コンウィ川河口
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「コンウィ・マッスルズ」は、ウェールズ北部のコンウィ河口に生息する一般的なムール貝又はムラサキイガイである。本産品は、毎年9月1日から4月30日までの漁期の間に、手作業で収穫する伝統的な漁法によって指定地域で漁獲される。
本産品は、濃い黒色又は茶色がかった硬い殻をもち、楕円形で一端が尖っている。通常、漁獲された場所によって、外観が滑らかであったり、フジツボが寄生したりしている。たとえば、河床のいくつかの場所では、ムール貝が泥の中に埋まっており、フジツボが寄生していない場合もあれば、河口の砂や岩の部分で漁獲されるムール貝にはフジツボが比較的簡単に寄生できるため、フジツボが寄生した状態で漁獲される場合もある。
ムール貝のサイズは4.5cmから10cmの大きさで、最低2年 ものとなっている。
本産品は、漁獲時に他のムール貝よりも成熟したムール貝であるため、身が大きく、肉厚で、殻に対して身の比率が高く、さらに、ジューシーでコクのある塩味と、歯ごたえのある肉質が特徴である。また、漁獲されたばかりの本産品は臭いがないという特徴も有する。本産品は大きく成熟したムール貝であること、海水と川の淡水が混ざり合った環境で成長することで、風味が他の貝と異なるものになっている。

(2)生産方法
全ての「コンウィ・マッスルズ」は、生産地内のコンウィ河口の種苗床で自然に成長し収穫される。ムール貝は、足糸で砂浜の海底の岩や石に付着し、凝集した塊の中で成長する。これらの足糸は密度の高い液体として分泌され、水に接触することで固くなり、ムール貝を所定の位置に保持する役割をもつ。
ムール貝は春に卵から孵り、幼生の頃は水中を浮遊し、新しい生育場所に定着してコロニーを形成する。ムール貝は足糸を再吸収し、理想的な場所が見つかるまで周辺を動き回ることができるが、成長したムール貝はめったに動くことはない。
水温が高い夏の間、ムール貝は繁殖又は産卵するために生育場所から離れる。そのため、産卵期間にあたる、5月1日から8月31日までは、ムール貝の漁獲を禁止する休漁期間となっている。休漁期間を設けることで、重要な産卵の時期に産卵個体群に与える影響を減らすこととなる。休漁期間中に本産品を漁獲することは刑事犯罪に問われることとなる。なお、産卵期間中は、ムール貝の殻の中の身は筋っぽくなり、サイズは小さくなる。
ムール貝は、海水を吸い込むことで、海水中の餌やプランクトンを摂取し、きれいな水を吐き出す。水中にいるバクテリアはムール貝の胃の中に残るため、水の精純度が非常に重要となる。
プランクトンの発生量は、気候条件と水中の栄養素によって変わる。また、水深が深いほど、ムール貝の餌となるプランクトン等が多くなるので、ムール貝は大きく、健康的で、強く育つ。これらの要素が組み合わさることで、本産品の特徴である独特で繊細な風味がもたらされる。
ムール貝の漁獲期(9月1日から4月30日まで)の間、ムール貝は小さな船から長い熊手を使用する伝統的な漁法により河床から漁獲される。この決まりによって、船は、15m未満の長さである必要があり、大型浚渫船を使用して本産品を漁獲することはできない。伝統的な漁業に使用されるのは、小型で喫水の浅い漁船で、これらの小型船は「ドーリー(dory)」と呼ばれ、1隻につき1人の男性が操作する。ムール貝の漁獲は手作業で行われ、訓練が必要で、世代を超えて技術が受け継がれている。

この工程は、次の下記の点おいて独特である。
  ・熊手に使われている松は、折れずに曲がり、乾きが良く、あらゆる天候で使用できる優れた素材である。また、松製熊手は割れづらく、使用する漁師にとっても安全である。熊手の長さは最低3mあり、4.5cm未満の小さなムール貝を誤って漁獲しないように、先端には等間隔に配置された鋼製の歯が取り付けられている。各漁師は、定期的に熊手の先端部分を点検し、ムール貝を河床から漁獲するのに適切なサイズであることを確認する。
 ・この方法でムール貝を漁獲するには時間と手間がかかる。この漁獲方法は、長年にわたって受け継がれてきた技であり、完璧に習得するまでには何年も要する。漁獲可能な時間は、いわゆる「潮だるみ」の時間帯で、干潮の1時間半前から干潮の1時間半後までの約3時間であるす。長い熊手では、潮が満ちてくる上記の時間帯以外で、ムール貝を漁獲することは物理的に不可能である。
 ・この伝統的な熊手は、4.5cm未満の長さのムール貝は熊手の櫛の隙間からこぼれるよう設計されているため、小さなムール貝は水中で成長し続けることができる。ムール貝が収穫できるサイズに達するには2年かかる。したがって、本産品は最低2年ものとなり、漁獲時には身は大きく肉厚となった状態になっている。
 ・また、手作業で収穫する漁法は持続可能な方法である。適切なサイズのムール貝だけを熊手の先端部分で集めることができ、小さいムール貝は河底にこぼれ落ちてしまうので、成熟していないムール貝は河床から漁獲されることがない。また、熊手はムール貝の種苗床にもたらす影響は最小限であり、休漁期間の間に早く回復することができる。

漁獲されたムール貝は、処理するために洗浄プールに移されるまで、地元では「キャロット サック(carrot sacks)」と呼ばれる綿製のムール貝用の袋に入れられて、筏に乗せて保管される。筏では、最初にムール貝を塩水で洗浄して、漁獲している途中で混入した泥や雑草などの残骸を取り除く。
洗浄する前に、ムール貝を籠に入れ、計量し、浄水で再度洗浄しから、洗浄工程に送られる。洗浄工程を完了するのに最低42時間かかる。洗浄工程では、大型の鋼製タンクの中に最大750kgのムール貝と海水を入れる。海水は紫外線照射によって水中の有害なバクテリアを殺菌しながら、水槽にポンプで送られる。ムール貝自身が水をろ過すると同時に、フィルターシステムによって水を循環させる。42時間にわたり、ムール貝と紫外線を当てながら水を殺菌し循環させることで、水の清純度は高まり、ムール貝の胃からバクテリアが完全に除去される。
洗浄することで、ムール貝を傷つけたり風味を変えたりすることなく、きれいな状態で安全に食べることができる。洗浄が終ると、ムール貝はわずかに開き、ムール貝から出た空気の泡の薄い層がタンクの上部に現れる。

新鮮な生のムール貝を検査し、4.5cm未満のムール貝、死んだムール貝、殻が壊れたムール貝、又は50%以上をフジツボで覆われたムール貝を手で取り除く。次に、残ったムール貝を計量して、顧客の要望に応じてさまざまなサイズの袋に詰める。日付、品種名、洗浄工場の名前/番号など、本産品を生で販売する際に必要となる情報を全てラベルに表示する。最後に、新鮮な生のムール貝は、販売されるまで摂氏1~5℃の温度下で冷蔵保存される。

(検査機関)
ENVIRONMENTAL HEALTH WALES

(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
「コンウィ・マッスルズ」の風味と外観は、ムール貝が育つ独特の環境によって決まる。ムール貝の餌となるプランクトンの発生・混在状態は、生産地の気候条件、栄養素、生物環境、及びミネラル含有量に大きく左右される。
コンウィ川河口は水深が深いため、本産品は大きく育つ。水深が深いほど、ムール貝の餌となるプランクトンやその他の餌が多くなるため、ムール貝は大きく健康に強く成長することとなる。また、水深が深い河口においては、水が循環するだけでなく、潮の流れの変化が起きる。そのため、塩分の多い海水と塩分を含まない淡水が存在するという特異な環境となっている。
コンウィ川は、環境庁により定期的に水質が検査されている。また、ヨーロッパの中でも最も水のきれいな川の一つとして認識されており、過去多くの生態学的研究も行われてきた歴史をもつ。以下3つの要因が組み合わさった結果、コンウィ川はその集水域も含め全ての流域で非常に高い水質を誇っている。

 ・第一の要因として、この地域には工業地域がないことが挙げられる。大都市に比べ、交通機関や工場から排出される煙が最小限であるため、主要都市を流れる川に比べて水質ははるかに良好である。 
 ・第二の要因としては、川岸に沿って営まれている農地では、主に環境に配慮した農業であることが挙げられる。従来の集約的農業で行われている土地からのリン酸塩や硝酸塩の流出を最小限に抑えるため、川沿いには緩衝地帯が設けられている。さらに、コンウィ川は広大な森林地帯に隣接しているため、森林も緩衝材として機能し、周囲の土地から汚染物質が川へと流出されるのを最小限に抑える役割を果たしている。
 ・第三の要因として、河口での漁獲活動が最小限であることが挙げられる。コンウィ河口は船の出入りが激しい港ではなく、大型船の通行も最小限に抑えられている。したがって、ムール貝の種苗床は、人間活動による影響を受けずに済んでいる。また、河口ではムール貝の漁獲以外に川底をさらいあげるような作業や商業漁業は行われていないため、ムール貝の種苗床は、そのような活動による影響も受けずに済んでいる。

コンウィ河口は海につながっており、本産品は海水とコンウィ川からの淡水が混ざり合う、長さ約800の区域で育つ。海水とコンウィ渓谷の上流からの淡水が混ざり合うことにより、本産品にジューシーで独特の風味がもたらされる。
ムール貝の種苗床は、高品質の海水と淡水が混合するコンウィ河口で自然に形成され、この場所で、ムール貝はその一生を過ごし、最終的には漁獲される。このような自然環境により、本産品は、人工の採苗ロープで育てられたムール貝と比較して、風味が強く、固い殻を持つことになる。本産品は漁獲時に最低でも3年経過したもので、より成熟したムール貝であるため、ロープで育てて収穫したムール貝よりも大きく、肉厚となる。
これら全ての要因の組み合わせによって、本産品は独特でかつ繊細風味をもちうるのである。

コンウィ地域では、伝統的なムール貝漁法による漁業権を4つの家族が独占し、150年以上にわたり代々受け継がれてきた。
生産地と本産品の強いつながりは歴史的な記録からも明らかであり、コンウィ河口は500年以上にわたり、ムール貝の漁獲の中心地であり続けている。第二次世界大戦前には、コンウィ地域でのムール貝の漁獲免許は74通発行されていた。ムール貝の多くは、かつてはノッティンガムやバーミンガムなど、ミッドランド地方の大都市で販売されていた。しかし、スーパーマーケット等が増えるにつれムール貝が輸入されるようになり、本産品の需要は減少していった。現在、コンウィ地域でのムール貝漁獲免許の発行件数はわずか12通だけとなっている。

高品質な商品としての「コンウィ・マッスルズ」という名前の使用は、本製品の開発グループの努力により実現した。本製品は、英国のみならず世界中の食品業界で高い評価を得ている。また、多くの有名シェフに愛され、その名前はメニューの中に食材として頻繁に登場している。そして、多くの有名レストランや農産食品企業も本製品を好んで使用している。

8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234