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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第134号)

下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課

London Cure Smoked Salmon(ロンドン・キュアー・スモーク・サーモン)


1 指定年月日  令和6年2月29日
2 指定番号  第134号
3 締約国の名称  グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分  第7類 水産加工品類(スモークサーモン)
5 農林水産物等の名称  London Cure Smoked Salmon(ロンドン・キュアー・スモーク・サーモン)
6 農林水産物等の生産地 イギリス

タワーハムレッツ、ハックニー、ニューアムのロンドン特別区
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「ロンドン・キュアー・スモーク・サーモン」は、岩塩とオーク材の燻煙の組み合わせのみを使用して、塩漬け及び燻製されたサーモンである。本名称は、高級養殖サーモンと天然サーモンの両方に使用することが可能である。養殖サーモンの場合、本産品には伝統的に通常グレードのサーモンや大量生産されたサーモンではなく、スコットランド産の高級サーモンだけが使用される。高級サーモンとは、大きな欠点や欠陥のない一流の製品を意味する。サーモンの表面に光沢があり、目立つ鱗の脱落がなく、表面に損傷があったり、腹身や筋組織部分にも開いた傷口や打撲、損傷があったり、筋組織部分にメラニンの斑点が見られたりしてはならない。また、腹身についている膜がしっかりしており無傷でなくてはならない。更に、魚は自然な流線形でなければならない。サーモンの身の色は、オレンジ色又はピンク色のみで、光沢のある滑らかな質感を持つ。燻製すると、燻煙とサーモンの香りはどちらかが強いということはなく同じくらいで、ほど良いバランスの取れた香りとなる。天然サーモンの場合も、伝統的にスコットランド産が使用される。使用するサーモンは、生け捕りしたことがわかり、しっかりと身が締まった生きた状態で、エラは赤く、目は濁りが無く、鱗には光沢がなくてはならない。天然サーモンの色は、浅黒い色から淡紅色までばらつきがあり、質感はなめらかで、養殖よりも身が詰まっており、重量感がある。燻製すると、燻煙と魚からの香りが同等に香ってくる。

「ロンドン・キュアー」という名称は、全身や、不要な部分を切り取っていない半身、不要な部分を切り取った半身、縦にスライスした切り身(バンケットスライス)、骨に対し直角にカットした切り身(Ⅾカット)の状態に対して使用できる。魚の最小サイズや最大サイズに関する規定はない。本産品の風味は優しくて繊細である。塩漬けにする目的は、岩塩と軽い燻製を行うことで、サーモン本来の味を損なわず、最高品質のサーモンの風味を高めることにある。


(2)生産方法
〇生のサーモン
繊細な塩漬けと軽い燻製を行う際に欠かせない新鮮さを確保するために、使用されるサーモンは漁獲から48時間(最長5日)以内に生産地に到着させることが理想的とされる。このため、伝統的にスコットランド産のサーモンが使用されている。魚の品質と新鮮さがスコットランド産サーモンに匹敵する場合に限り、他の場所のサーモンを使用することができる。

〇燻製前の卸し工程
塩漬け処理を行う前にサーモンを2つの半身にさばく。サーモンは包丁を使ってさばかれるため、身が崩れず、品質も優れている。伝統的に、包丁で表面にペニー硬貨程の形の大きさ(1~3インチ)を開けることで、次の工程で塩や燻煙が浸透しやすくなる。肉を調理するときと同様に、骨があった方がよく燻製されるため、本産品を燻製する際には腹骨と小骨は取らずに残しておく必要がある。

〇乾燥・塩漬け工程
サーモンを燻製する前に塩をふる。新鮮なサーモンの切り身を塩漬け用棚に静置し、岩塩を振りかけてから、大きさ次第では最長で24時間程寝かせる。この工程の間で、いくらか重量が減り、塩濃度は3~4%となって、サーモンを美味しくすることとなる。

〇燻製・乾燥処理
塩漬けにした切り身を洗い、窯の中で吊り下げるか棚に置くかの方法で、オーク材の燻煙を用いて最長13時間の間、サーモンを燻製し乾燥させる。塩漬けされた切り身の重量は更に減少し、温風により外皮が固くなる。これをペリクルと呼ぶ。

〇スライス処理
さばく前に、小骨とペリクルを手作業で取り除く。本産品は、必ず包丁でさばくため、一貫して高い品質の製品が仕上がる。さばいた調理人本人によって魚をチェックし欠陥がないことを確認する。その後、顧客の要望に応じてサーモンを切り分ける。包丁で切り分けるため、切り身のカット断面は平らではないが、包丁で切り分けることで、表面は高い品質のまま保持され、機械でカットして滑らかな表面のサーモンと比べ、風味が豊かになる。

〇包装
出荷作業中や保管、輸送中のサーモンが傷つかないように保護するため、食品の保管に適した箱や容器に詰められる。サーモンの完成品は、全身、不要な部分を切り取っていない半身、不要な部分を切り取った半身、又はⅮカットかバンケットスライスにした小売り用パックの形態で提供される。切り身で販売される場合、サーモンの切り身は通気性を良くするため、1枚ずつ食品用の穿孔セロファンで隔てて包装される。サーモンは顧客の要望に応じてさまざまな重量で包装される。0-5℃の条件下で温度管理し、厳格な衛生標準に従って保管されながら顧客の元に届けられる。

(検査機関)
Tower Hamlets Trading Standards


(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
「ロンドン・キュアー・スモーク・サーモン」の特徴は、伝統面、評価面、1905年以来ほとんど変わらない燻製工程、工程に携わる人々の技術面において、地理的地域に関連しており、これらの技術は世代から世代へと受け継がれてきたものである。

ロンドンにおけるサーモンの燻製は、19世紀末にロンドンのイーストエンドに移住した東ヨーロッパの移民が、冷蔵保管が普通となった時代に魚を保存する方法として始めた。イギリス国内のユダヤ人の人口は1880年の46,000人から、1919年までには約250,000人に増加し、主に大規模工業都市に(特にロンドンやマンチェスター、リーズ)に多く住んでいた。ロンドンでは、ユダヤ人は主に波止場に近いスピタルフィールズやホワイトチャペル地域に住み、イーストエンドはユダヤ人の地域として知られるようになった。ユダヤ人が、東ヨーロッパからイギリスにやって来た際、自分たちの伝統的な食品を当地でも食べるため調理法もともに伝わってきたのが始まりで、イーストエンドに最初の燻製場ができたのである。
ロンドンのイーストエンドでサーモンが燻製されていたことを示す逸話や写真は今でも残っており、例えば、デレク・テイラーは自著「Thank You For Your Business」の中で、イーストエンドでのサーモンの燻製について次のように記述している;多くのユダヤ人が、オーク材を屋内で焚いて、その上にサーモンを吊るして、塩漬けサーモンを燻製にしていた。また、クローディア・ローデンは自著「The Book of Jewish Food」の中で、ユダヤ人の食生活において、燻製サーモンも含め貯蔵した魚の重要性について説明しており、イーストエンドのサーモン燻製業者について次のように述べている;燻製サーモンは、イギリスの中流階級が見出だすよりもずっと前から、ロンドンのイーストエンドに住むユダヤ人達によって食されていた。今日もなおこの地域で製造されている本産品は、もともとのコミュニティと昔の世界との最後のつながりを表すものの一つと言える。

燻製を始めた当初、東部ロンドンの燻製業者は、夏にはスコットランドから天然サーモンが手に入ることを知らずに、バルト海からサーモンを輸入していた。彼らはビリングズゲート市場でスコットランド産のサーモンを見つけたとき、天然ものを使用する方がより簡便で、完成品の味も優れていることに気付づいた。本製品を軽く燻製することで、料理人達はメニューに使用できるようになり、西欧諸国で人気を博すこととなった。歴史的には、スコットランド産の天然サーモンは、遅くとも19世紀以降にはビリングズゲート市場に送られるようになっている。スコットランド産のサーモンは世界的にも評判が高く、本産品は類いまれな原材料により、優れたスモークサーモンとして生産され続けている。

使用するサーモンだけでなく、軽い燻製工程も、本産品を特別なものにしている。本産品の特徴は、重々しい燻製の香りを残すことなくサーモンを燻製していることである。その起源から、本産品の長所として、品質と新鮮さを保ちながら魚を保存することができる点を挙げることができる。現在もその品質の高さと新鮮さにより、本産品は、他の大量生産品のスモークサーモンとは一線を画している。機械で加工された大量生産品のサーモンの場合、必ずしも新鮮なサーモンが使われるわけではなく、また、常に最高品質のサーモンが使われるわけでもない。更に、砂糖や、不釣り合いな量の塩、燻製調味料等の材料が添加され、燻製の風味が過剰となることもあり、多くの場合は原材料の品質が低いことを隠すために行われている。本産品の場合、漁獲してから48時間以内に燻製所に届いた最高品質のサーモンのみ使用され、燻製所に届いたらすぐに洗い、包丁を使って不要な箇所は取り除かれる。これに対して、ほとんどの燻製所では機械が使用されるため、魚の身を傷つけ、収量を減らすこととなる。また、機械では新鮮な身の締まった魚を扱うことはできない。包丁でさばいたサーモンの切り身は、風味をよくするため骨を付けたまま手作業で塩漬けにする。長年の経験に基づき、オーク材を摩擦で燃やして、発生する燻煙を注意深く調整し、適正な燻煙量で乾燥と除湿を行う。また、本産品は手作業で加工するため、サーモン自体を慎重に取り扱うことができ、(不要な部分を除去せずに販売する場合を除いて)固いペリクル部分は取り除かれる。切り身で販売される場合、サーモンの繊細な切り身がちぎれることなく簡単にパッケージから取り出せるように、サーモンの切り身は1枚ずつ穿孔セロファンで隔てた形で包装される。本産品は、熟練した従業員が全加工工程において評価及び再評価を行なっているため、最高品質のスモークサーモンだけが顧客のもとに届けられることになる。職人が細かい部分に注意を払いながら処理するので、完成品は新鮮で、かつ燻製の風味が過度になることはない。
イーストエンドでは、サーモンの燻製とスライスの技術が長年の経験により確立され、職人技は4世代にもわたって受け継がれてきた。常に包丁でサーモンをさばいて切り身にし、切り身にした後は必ず検査する。血班や異変が見つかった切り身や要求される基準を満たさないと判断された切り身については、さばく時点で捨てられる。その後、それぞれの切り身を手作業で塩漬けにする。塩漬けを行う作業者は、各魚に完璧に適正量の塩を加える必要があり、サーモンを塩漬けにする時間も各切り身のサイズごとに適切に判断しなければならない。必要な時間分だけ燻製し終えたら、サーモンの燻製された表面を手作業で取り除き、固くて食感の悪いペリクルも完全に取り除く。その後、骨抜き用のピンセットを使い、手作業で32本もの小骨を手際よく抜く。小骨をうまく取り除くには、繊細なサーモンの身を傷めないように、小骨を真上にではなくその軸に沿って引き抜く必要がある。小骨を取り除いた後、サーモンを包丁で切り分けることで風味がさらに向上する。切り分けた表面は平らでなくなるため、より濃厚な風味を醸し出すようになる。サーモンを切り分ける方法として、頭から尻尾の方へと長手方向に行うか(バンケットスライス)、魚を輪切り(Ⅾカット)にする。目視検査での品質管理のもと、工場から出荷する前に、全てのスモークサーモンの切り身が検査される。サーモンを切り身にする基本的な技術を習得するにはかなりの時間を要し、本物の職人技を磨くには相当な年月が必要となる。

1970年代半ばの時点で、ロンドンのイーストエンドにあるサーモン燻製所は僅か十数軒となってしまった。最後に残されたロンドン塩漬け燻製所として、職人たちは本産品生産する伝統的手法を忠実に守り、サーモンの燻製にまつわる全ての伝統的技術を維持しており、この職人技が永遠に失われないように努力を続けている。


8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234