指定の公示について(指定番号第135号)
下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課
Lough Neagh Eel(ローク・ネイ・イール)
1 | 指定年月日 | 令和6年2月29日 |
2 | 指定番号 | 第135号 |
3 | 締約国の名称 | グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国) |
4 | 農林水産物等の区分 | 第4類 水産物類 魚類(ウナギ) |
5 | 農林水産物等の名称 | Lough Neagh Eel(ローク・ネイ・イール) |
6 | 農林水産物等の生産地 | イギリス 北アイルランド ネイ湖、バン川下流、ネイ湖の北岸からコールレーンのカッツ地区まで |
7 | 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 | (1)特性 「ローク・ネイ・イール」とは、指定地域で捕獲されるヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)で、黄ウナギ(地元では茶色として知られている)と成熟した銀ウナギの両方の天然ウナギであり、新鮮なウナギのみを対象とする。 本産品には次のような特徴がある; -特大サイズ(長さ40cm以上、重さ150~600g) -他地域のウナギよりも脂質量が高い(成熟した本産品の脂質量は約23%) -若い茶/黄ウナギは茶色/黄色がかった濃い緑色をしている -成熟した銀ウナギは銀色がかった黒色をしている -本産品は頭が細く、尾は短く、体は丸みを帯びている -調理された新鮮なウナギの身は、白くて柔らかく、ふっくらとしていて、土の香り がする。 (2)生産方法 ネイ湖のウナギ漁業は、ヨーロッパでも最大規模となる商業用天然ウナギ漁業で、ネイ湖のウナギ漁の独占権を持つネイ湖漁業協同組合によって運営されている。漁業協同組合は、州による規制に加えて、基準を満たし持続可能な漁業を徹底するために、独自の規制管理制度を導入している。これらの規則には、漁業に使用される釣り針、網、船の大きさの制限、持続不可能で環境に有害な漁法(トロール漁等)の禁止、漁業を行うことができる日時を管理する等、明確な規則が含まれている。 ネイ湖のウナギ漁法には合計3種類あり、黄ウナギは2種類、銀ウナギは1種類の方法で漁を行っている。 〇黄ウナギ ネイ湖で、黄ウナギを合法的に漁獲できる期間は5月1日から翌年1月8日までである。 ネイ湖で黄ウナギを漁獲するための漁業権はネイ湖漁業協同組合によって毎年漁師に付与される。船(全長8.6m以内に制限)には、漁業権を持つ船所有者と漁業権を持つ船員が乗船している必要がある。さらに船体の両側には、漁師の漁業権番号が記されてなければならない。漁師は2種類の漁法を用いる。 ・延縄漁法 約1.6kmの長さのナイロン製縄を最大4本設置し、各縄に約400本の枝縄をたらすように取り付け、この縄を翌朝の早朝に「吊り上げ」る。手作業で縄を船上に巻きあげ、獲れたウナギの死亡率を最小限に抑えるために、淡水で満たされた樽内で保管する。 漁獲物は岸に運ばれ、ネイ湖漁業協同組合の規制に基づいて、長さが16インチ(約40cm)未満のウナギは、将来の持続可能な水産資源を確保するためにネイ湖に戻される。 ・地引網漁法 最大で長さ90ヤード(約82.3m)、深さ18ヤード(約16.5m)の網を手で引き上げて漁獲する漁法で、網に取り付けられたロープを引っ張る際には油圧ウィンチが使用されるが、網自体は船で牽引するのではなく手で引っ張る必要がある。ウナギのトロール漁は、ネイ湖の湖底を保護するために禁止されている。 漁師は、様々な環境条件や気象条件の下で最高の漁獲量を得るために、ネイ湖に関する深い知識と経験を頼りに漁を行う。 水揚げされたウナギは等級付けされ、40cm未満のものはネイ湖に戻される。 上記2種類の漁法で、市場の需要と、水産資源の維持の観点から、漁師は一日の漁獲割当量(通常は112ポンド(約50kg))が割り当てられている。各船の漁獲物は、漁師の漁業権番号が記載された曝気槽に入れ、トゥーム(%トゥームブリッジ)にある漁業協同組合の工場に運び、そこでウナギの大きさをもとに等級付けを行う。ウナギは、死亡率を減らすため、空気穴を開けた氷入りのビニール袋に入れられ、袋ごとダンボール箱に入れられる。その後、ウナギを入れたダンボール箱は空輸される。その日に獲れたウナギは翌朝に加工され、同日の午後には販売することが可能となる。 〇銀ウナギ 銀ウナギはネイ湖で成熟したウナギで、本能に従い、繁殖のためにサルガッソ海に向かうため、海岸を目指して北上し移動を始める。 銀ウナギは6月1日から翌年2月末までしか捕獲できない。 銀ウナギは、北岸のネイ湖出口にあるトゥーム(トゥームブリッジ)と、ネイ湖から北に約15マイル(約24km)離れたバン川下流のキルレアにある固定堰で漁獲される。 銀ウナギは暗闇の中でしか移動しないので、夜になると堰堤に大きなコグヒル網を降ろして漁獲する。捕獲したウナギを入れるために、網は川の中に設置された貯蔵タンク近くに降ろされる。変動する降雨量に応じて変わる川の水位に合わせて、タンクは上下する。 その後、銀ウナギは、黄ウナギと同様にネイ湖漁業協同組合の工場に運ばれ、等級付けされた後に空輸される。 〇持続可能性と水産資源の管理 ヨーロッパウナギは、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書IIに掲載されている。さらに、理事会規則(EC)1100/2007では、ヨーロッパウナギの資源回復のため、「ウナギ管理計画」を策定することを提案している。 ネイ湖/バン川流域のヨーロッパウナギ資源の持続可能性を確保するために、ネイ湖漁師協同組合と共同で、開発・運営されているウナギ管理計画が実施されている。水産資源を維持するためにいくつかの対策が講じられており、これらの対策はネイ湖漁業協同組合が運営する漁業権制度でなければ実質的な管理は難しい。漁業権の申請資格に関しては特に制限はない。ネイ湖漁業協同組合の会員資格は、漁業権を申請する際の前提条件とはなっていないが、漁業権が付与されたら漁師は協同組合の会員になることができる。 ネイ湖漁師協同組合は、下記対策を通じてウナギ漁業の持続可能性を管理している。 ・漁業権発行の管理 - 漁業協同組合は毎年約180件の漁業権を発行している。漁業権を持つ船所有者は、漁が行われている間、常に乗船していなければならない。 ・漁法の管理 - ウナギ漁は、延縄漁法%地引網漁法でしか行うことができず、幹縄に設置する枝縄の数や船の大きさ、網の大きさに制限がある。 ・漁獲割当量 - 船ごとに一日の漁獲割当量が決められており、湖で乱獲ができないように管理されている。 ・最小漁獲サイズ - 40cm未満のウナギは湖に戻さなければならない。未熟なウナギが工場に送られた場合は、ウナギは工場から湖に戻され、漁師に罰則が課せられる場合もある。 ・禁漁期間の設定 - 黄ウナギと銀ウナギの漁は、水産資源を確保するために、1年のうち特定期間の間漁獲が制限されている。 ・漁業保護 - 漁業権を持つ漁師のみがウナギ漁を行えるよう、24時間漁業保護監視活動を行う。 ・捕獲と運搬 - バン川を遡上してネイ湖に向かうシラスウナギの移動を促すために、多くのシラスウナギを鰻筒で捕獲し、タンクでネイ湖へ運び、毎年ネイ湖に来るシラスウナギの数を増やす。 ・伝統的なわら縄 - 手作りのわら縄をシラスウナギの通り道に設置することで、ウナギが流れを遡ってネイ湖へ移動するのを促す。これにより、ネイ湖への内方移動の成功率が高まる。 ・銀ウナギ堰の「クイーンズギャップ」を確保 - 銀ウナギが捕獲されるウナギ堰では、川幅の10%ほどのすき間(クイーンズギャップ)を設け、水産資源の一部がサルガッソ海の繁殖地に戻れるようにする。 水産資源の自然な補充を促進するため他地域からのシラスウナギの購入 - 近年、ネイ湖へのシラスウナギの自然な移動が減少しているため、ネイ湖漁業協同組合は他の地域からウナギを購入し、ネイ湖で成熟するよう放流している。その後、このシラスウナギがネイ湖で成熟し、本産品独特の特徴を持つことになる。 〇ラベリングルール 個々の漁獲物を計量し、その重量に対し漁師の名前と照合して記録する。その後、ウナギは本産品の名称が記載されたラベルが付いたダンボール箱に詰められ、航空貨物として販売業者や燻製業者、加工業者へと輸送される。箱には、原産地証明書、請求書、サプライヤー証明書(Secure Supplier Declaration)が添付される。 (検査機関) Agri-food and Biosciences Institute for Northern Ireland (3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由 〇飼料の豊富な成長をもたらす地理、地形、気候条件 ネイ湖はイギリス諸島最大の湖で、面積は150平方マイルに及び、ヨーロッパでも5番目に大きな湖である。数多くの川が流れ込んでおり、湖の北岸にあるバン川下流を経由して海へと流れている。 シラスウナギは、サルガッソ海から大西洋を横断するメキシコ湾流に乗って北上し、そして、北大西洋海流に沿ってアイルランドへと向かう。北アイルランドの北海岸にあるバン川の潮の流れに乗ってコレインに到達し、そこで捕らえられてトラックで運ばれるか、ネイ湖を目指して上流へ泳いで遡る。ネイ湖に着いたら、サルガッソ海に戻って産卵する準備が整うまで、ネイ湖に留まり餌を食べて成長し、完全に成熟すると餌を食べなくなり、本能に従って産卵場に戻る。ウナギは唯一の直行経路であるバン川下流を通って海へと戻る。 ネイ湖に流れ込む河川の数が多いため、湖の中には土砂が多く堆積しており、沈泥物や粘土、有機物、珪藻類の殻等が集まってできた堆積物は非常に暗い色をしている。沈泥物と粘土は主に河川から運ばれる浮遊物質に由来しており、一方、有機物の一部は貯水池から、他は湖内で生成された物質に由来する。この堆積物の性質と大きさは、多数の無脊椎生物、特に湖の底生生物に影響を及ぼし、かつウナギの餌の大部分を占めるといわれる、ユスリカ幼虫に適した生息地を形成する。「ローク・ネイ・イール」が極めて脂質を多く含んでいるのは、この栄養価の高い餌のおかげである。 ネイ湖は栄養分が豊富で(過栄養状態)、循環する風によって絶えず空気が送り込まれるため、暖かい時季でも湖に含まれる栄養成分が多く、酸素が大きく欠乏することもない。 この餌の量と酸素量の組み合わせによって、多くのウナギがネイ湖で生息し続けることができるのである。 〇長く続く伝統と高い評価 ネイ湖はイギリス諸島最大の淡水湖である。神話によると、巨人の戦士フィン・マックールが一握りの土をすくい上げ、ライバルであるスコットランドの巨人にその土を投げつけた時に穴ができた際、海に落ちた土からマン島が誕生し、巨人が作った穴に水で満たされてネイ湖になったと言われている。 考古学者は、3~4千年前の集落で発掘された遺骨をもとに、青銅器時代からネイ湖で天然のウナギ漁が行われていたと考えている。紀元前2000年頃から、トゥームブリッジの北にあるバン川下流域のクロスキーズで、ウナギの商業漁業が行われていた証拠が存在する。 590年、聖コルマンはネイ湖のほとりにあるアードボエに修道院を設立し、ここでウナギを釣ったという言い伝えがある。現在ここで漁をする漁師たちは、自分たちの漁業技術は聖コルマンのおかげだと考えている。 ネイ湖とバン川におけるウナギ漁の漁業権は、1640年にチャールズ1世がドネガル伯爵に居城、土地、ウナギ漁の権利を許諾したことに由来する。このとき、チャールズ1世の顧問であったラウド大司教は、「今まで見た中で最も太っていて最も美しいウナギだ」と称賛したと言われる。 1893年、アイルランドの首席秘書官は当時の庶民院に対し、「おそらくチャールズ2世(1630~1685年)の治世以来、国民は湖でウナギを釣る権利を行使してきた」と述べた。 1959年、北アイルランド高等裁判所でウナギの独占的漁業権について争われ、その判決では、Toome Eel Fishery (NI) Ltdに軍配が上がった。この決定に従い、ネイ湖周辺の漁師は同社に漁の許可を求めなければならず、同社が課す厳しい規制を遵守しながら、漁獲物を同社に販売する必要があった。 地元の漁師たちは、ネイ湖で漁をするのは道徳的権利であるとして、これらの規制に異議を唱え漁業協同組合を形成した。1965年にネイ湖漁業協同組合は、同社の漁業権20%を購入し、1971年に残りの80%を購入した。 それ以来、ネイ湖でのウナギ漁はネイ湖漁業協同組合によって管理されている。同組合は、漁師の投票により選出された運営委員会と理事会によって運営されており、現在は、漁業の全利益は漁師と同組合のメンバーにより、地域全体で共有されている。 ネイ湖漁業協同組合とその活動は、自助の原則をもとに設立された地域企業を通じて、以前は不利な立場にあった地域社会ができることは何かを示すこととなった。 漁師たちは今でも、代々引き継がれてきた伝統漁法の多くを用いている。例えば、ネイ湖漁業協同組合は、シラスウナギが川の流れを遡ってネイ湖へ移動する手助けとして、ウナギの通り道に手作りのわら縄を設置している。これにより、シラスウナギが堰堤などの障害物の周りを楽に移動できるようになった。わら縄には、耐久性に優れたオーツ麦のわらを使用している。現代の機械では、わら縄を作るには藁を細かく切りすぎてしまうため、昔ながらの機械で収穫された藁を収穫している。ネイ湖漁業協同組合は、伝統的な収穫方法を実演しながらなどから、わら縄作りに適した藁を収穫している。W・トンプソンは『アイルランド自然史(The Natural History of Ireland)』(1834年)で、次のように記述している; 何千もの若いウナギが、バン川の河口で流れを遡って泳ぐ姿は興味深い光景である。岩場の上には、ウナギが楽に障害物を乗り越えられるように、わら縄が設置されている。 延縄漁法は、何世代にもわたって伝えられてきた網を手で引き上げて漁獲する伝統的漁法である。 こういった記述は、ネイ湖とその周辺地域で行われるウナギ漁の重要性と高い評価を示している。ノーベル賞受賞者のシェイマス・ヒーニー氏は、1969年に漁師たちに捧げる詩集「ネイ湖の延縄(Lough Neagh Sequence)」を出版し、ウナギの生態や漁師の仕事についても記述し、延縄の「仕掛け」や「回収」等の工程についても具体的に説明している。ジョン・コールマンやオーウェン・トアル等地元の詩人も、1920年代から1930年代にかけて、湖で漁をする漁師たちについての詩を書いている。 現在、ネイ湖の北岸にあるトゥーム市外に、この地域の歴史と遺産を反映した彫刻が建てられ、ウナギが泳ぐ姿にインスピレーションを受けている。 本産品は、ほとんどがアイルランド国外で販売されており、一部はロンドンのビリングスゲートへ空輸され、大部分がオランダやドイツ北部へ運ばれ、そこで燻製にされる。 本産品は高脂質なため燻製に最適で、オランダの貿易業者は、世界で最も燻製に向く品種と分類している。そのため、本産品は非常に人気が高く、養殖ウナギや他のどの地域のウナギよりも高値で取引されている。 |
8 | 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 | |
(1)商標権者の氏名又は名称 | - | |
(2)登録商標 | - | |
(3)指定商品又は指定役務 | - | |
(4)商標登録の登録番号 | - | |
(5)商標権の設定の登録の年月日 | - | |
(6)専用使用権者の氏名又は名称 | - | |
(7)商標権者等の承諾の年月日 | - |
お問合せ先
輸出・国際局知的財産課
担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234