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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第136号)

下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課

Lough Neagh Pollan(ローク・ネイ・ポーラン)


1 指定年月日  令和6年2月29日
2 指定番号  第136号
3 締約国の名称 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分 第4類 水産物類 魚類(サケ科淡水魚)
5 農林水産物等の名称 Lough Neagh Pollan(ローク・ネイ・ポーラン)
6 農林水産物等の生産地 イギリス

北アイルランド、ネイ湖
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「ローク・ネイ・ポーラン」は、ネイ湖にいる天然魚として漁獲されるサケ科コクチマス属(Coregonus pollan)の淡水魚であり、本産品を捕獲できるのは、生産地(ネイ湖)のみである。
ポーランは脊椎動物(魚類)で、アイルランドのみに生息している。また、本産品はヨーロッパで唯一市販されているポーランであり、本産品の風味と食体験は、生産地でのみ楽しむことができる。本産品の見た目は、明るい銀色で、背の色は濃く、ひれは淡い色をしている。イギリス国内の他のサケ科コクチマス属とは以下の点で物理的な違いがある;
 ・下顎が突き出ていない
 ・41~48本の鰓耙(魚のエラに付いているトゲ)
 ・74~92枚の側線鱗(魚の側線上の鱗)

本産品種は成長が早く、1年目の終わりには平均で140mmになり、2年目の終わりには170mm、3年目には200mmになる。アイルランドのその他の魚と比較して寿命が短く、大部分の生存期間は3~4年である。
本産品種は、成熟するのが早く(2年で164~185mm)、12月にネイ湖の浅い湖底の砂利又は岩の上で産卵する。
関連漁業法で設定されている本産品の最小捕獲サイズは、体長205mmで、このサイズの魚は通常、生後3~4年で、重量は76~210gである。
本産品は、内臓処理した全身又は切り身を、新鮮な状態又は冷凍で販売される。本産品は、新鮮な土の香りの風味を持ち、身は白くて柔らかく、ぱさぱさとしており、白身を調理すると、繊細な風味と素晴らしい香りが醸し出される。

(2)生産方法
本産品は、伝統的な地引網と刺し網(地元では三重刺し網と呼ばれる)を使用して漁獲される。これら漁法は、湖が浅く、(この地域の特殊な特徴である)湖底の地形が非常に水平であるため、効果的な漁獲方法となりうる。ネイ湖で使用される漁船の大きさは、通常長さ8.6mで幅2.7mである。漁船は標準的な設計図から造るのではなく、職人が地域の伝統に従って、そのコミュニティの伝統と使用される環境の特質に合った漁船を造る。そのため、漁師が使用する漁船には、地元の造船会社が好む木材やガラス繊維が使われることが多い。ネイ湖の漁船は、より大きいサイズ、より強力なエンジン、より新しい材料が入手可能となっても、伝統的な特徴が変更されることはない。一方、船のよろい張りの部分やボルスター部分、舷外張り出し材、櫓杭には、最新のガラス繊維が設計に組み込まれている。

〇地引網漁法:
地引網漁法の仕様に関する関連規定は国の規制により定められており、網の目(メッシュ)サイズ、網全体の寸法などは以下のように規定されている;
 ・テールメッシュの結び目間は6mm以上
 ・地引網の長さは120m以下
 ・ウィング部分の地引網のメッシュの結び目間は21mm以上
地引網漁法は、長さが80~100ヤード(73.2~91.4m)、深さが14~20ヤード(12.8~18.3m)の複数の網を同時に使用する方法で、漁師は自身の経験と湖に関する深い知識を頼りに、変動する環境と気候条件の下で最適な漁獲スポットを判断する。地引網を使用した本産品の漁獲は、通常、水深20~30フィート(6.1~9.1m)で行われる。
網を仕掛ける際には、目印となる浮き、網の杭、及びアンカーを最初に約80ヤード(73.2m)の「ヘッドロープ」に取り付けて降ろす。網は最初に直線に仕掛け、網を2本の木杭に取り付ける。これにより、漁船で半円を描きながら引っ張る際でも、網は開いたままの状態に保たれる。網が破れないように湖底が砂になっている場所を選んで行う。漁船を目印の浮きの位置まで戻し、ヘッドロープの取り付けられた木杭から網を外す。船尾に立ち、船首と船尾のロープを引く2人の漁師によって網を引かれ、網の中にいた魚は狭くなった方の端で捕獲される。現在では一般的に、網に取り付けられたロープを引っ張る際には油圧ウィンチが使用されるが、網自体は船で牽引するのではなく手で引っ張る必要がある。本産品のトロール漁は、本産品の生息環境を保護するために禁止されている。

〇刺し網漁法:
刺し網漁法は、ネイ湖の標準的な漁船で網を仕掛けて回収する受動的漁法であり、ネイ湖で使用される最も一般的な漁獲法である。刺し網は、結び目間となるメッシュサイズが27mm以上、又は各メッシュの全周が108mmと定められている。網の上端をコルク製の浮きに合わせ、網の下端は上端に合わせて仕掛ける。通常、各網の長さは50ヤード(約45.7m)以下で、奥行は1~4ヤード(約0.9~3.7m)となっており、一般的に、最大10枚の網を結び合わせて一連のつながった網として、25~40フィート(7.6~12.2m)の深さの泥底上から漁獲する。
刺し網は仕掛けてから適切な期間配置した後、引き上げられて、網にかかった魚を捕獲する。水温が10oCを超える場合は毎日網を引き上げることもあるが、最長2日間網を配置することもある。

本産品を漁獲できるのは、生産地のみで許されている。品質を保証するため、洗浄、温度管理等含む事前処理を生産地内で行う。本産品は、顧客の要望に応じて内臓を処理した全身又は切り身の2通りの方法で加工される。

〇全身
 ・内臓を処理した全身の加工には、鱗取り、内臓処理、及び洗浄が含まれる。
 ・加工後、冷蔵の場合は2℃未満、冷凍の場合は-18℃で保管する。

〇切り身
 ・定められた手順はなく、切り身にする作業は包丁で行うか、大量に加工する場合は機械を使用してもかまわない。
 ・一般に行われる手順では、鱗を取り、ヒレを取り除き、頭部を切り落とすかエラの下を切断した後、上のヒレと下のヒレを取り除き、両方の半身から腹部の小骨を抜く。その後、切り身を洗浄して、冷蔵(氷)又は冷凍(急速冷凍)し包装する。
 ・加工後、冷蔵の場合は2℃未満、冷凍の場合は-18℃で保管する。

〇販売
本産品は、漁師から漁場の所有者であるLNFCS(Lough Neagh Fishermen’s Co-operative Society Ltd)、又は委任代理店から販売され、全ての販売先は販売事業者として登録する必要がある。販売業者は、漁獲された魚の重量、漁獲者、本産品のその後の販売の詳細を記録することが求められる。販売業者が記録した登録一覧表は関連政府機関の内陸漁業部門に提出され、委任代理店からLNFCSに情報共有される。

(検査機関)
Agri-food and Biosciences Institute for Northern Ireland


(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
ポーランは脊椎動物に属し、アイルランドの以下5つの湖にのみ生息している。
 ・アリン湖
 ・リー湖
 ・ダーグ湖
 ・アーン湖(下アーン湖)
 ・ネイ湖
ただし、ネイ湖以外の湖にはごく少数のポーランしか生息していないため、商業漁
業に十分なポーランを漁獲できるのはネイ湖のみである。

ネイ湖の大きさは、151平方マイル(392平方キロメートル)で、平均水深8.9mあり、イギリス諸島最大の湖で、ヨーロッパで5番目に大きい湖である。湖には8つの川が流れ込み、その北端にあるバン川下流を経由して海へと流れる。「ローク・ネイ・ポーラン」は湖だけに生息する種で、周辺の支流には生息していない。
本産品の特徴は生育環境に関連が深く、その特徴を活かした伝統的な捕獲方法が発展した。本産品種の特徴は、その最も近い近縁種である北極海オームリから約20万年前に遺伝的に分岐し、限られた地理的地域に閉じ込められて生き延びてきた種であるという点である。ポーランは、約12,000年前の最後の氷河期の後にネイ湖に住み着きコロニーを形成した。海の温度と塩分濃度が上がるにつれ、ポーランは移住する習性を失い、ネイ湖の淡水環境にだけ生息するようになり、また、温暖な気候にも適応していった。
ネイ湖に流れ込む河川の数が多いため、土砂が多く堆積し、泥沈物、粘土、有機物、珪藻類の殻等が集まってできた堆積物は非常に暗い色をしている。沈泥物と粘土は主に河川から運ばれる浮遊物質に由来している一方、有機物の一部は貯水池から、残りはネイ湖内で生成された物質に由来する。
堆積物の性質により、多くの無脊椎動物にとって住みやすい環境となっている。本産品は、プランクトン、昆虫の幼虫(主にユスリカ)、氷河期から残存している甲殻類の浅海性アミ類(Mysis salemaai)を主な食餌としている。これら無脊椎動物を中心とする餌の入手しやすさが、過富栄養状態及び湖の環境と相まって、本産品の成長は早まることとなる。
ネイ湖は栄養分が豊富に含まれており(過栄養状態)、循環する風によって絶えず空気が送られてくるため、暖かい時季でも、湖の栄養成分が多く、酸素が欠乏することはない。
このように栄養分と酸素レベルが維持されており、ネイ湖では豊かな無脊椎動物の生態が維持され、それを餌とする多種多様な多くの魚の生態系が生息している。本産品は、市販されている唯一のポーランである。したがって、本産品の風味と食体験は、生産地でのみ楽しむことができる。
1900年以前は、本産品の捕獲が湖での漁業活動の大部分を占めていたが、現在でも経済的に重要な魚種であり、時季によっては、本産品が漁獲量の大半を占める。過去15年間には、ネイ湖から年間50~200トンが捕獲されている。本産品は湖全体に渡って幅広く分布しているが、ポーランにとって、望ましい生息環境となっている区域とそうでない区域があり、望ましい環境であるかどうかは、ポーランの成長段階や地形、生息状況、水深、季節等と密接に関連している。北極地方で見られるその他のサケ科コレゴヌス属ホワイトフィッシュとは異なり、ポーランは温暖な水で生息するように進化したのである。

文化、伝統、評価
本産品は、何百年もの間、この地域と人々の食文化と食の伝統において、重要な存在であり続けており、21世紀においても、その独特な風味は高く評価されている。
神話によると、巨人の戦士フィン・マックールが一握りの土をすくい上げ、ライバルであるスコットランドの巨人にその土を投げつけた際、海に落ちた土からマン島が誕生し、巨人が作った穴に水がたまって、ネイ湖になったと言われている。ところが、1188年に、歴史学者ギラルドゥス・カンブレンシスは、ネイ湖は魔法の湧き水から造られたと確認した。
考古学者は、3000~4000年前の集落から発掘した遺骨をもとに、ネイ湖では青銅器時代から漁業が行われていたと考えている。590年、聖コルマンはネイ湖の西側のほとりにあるアードボエに修道院を設立し、ここでポーランを釣ったという言い伝えがある。この地域で先祖代々漁をしてきた漁師たちは、自分たちの漁業技術は聖コルマンのおかげだと考えている。ネイ湖とバン川における様々な権利の所有は、1600年代半ばにチャールズ1世がドネガル伯爵に居城、土地、及び漁業権を与えたことに由来する。
1712年から1713年までの間、政府の測量技師であり技術者であったフランシス・ネヴィル(以前はイギリス陸軍の大佐)は、ロンドンを本拠地としていたクローガーの司祭でもあり王立協会のメンバーでもあった。彼は聖ジョージ・アッシュ宛てに手紙を書いており、その手紙には、自然現象の観察、民間伝承、及び考古学上の発見等、いくつか協会の記録として残されており、その中にネイ湖のポーランに関する記述が残っている。

8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
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