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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第137号)

下記の地理表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課

    Melton Mowbray Pork Pie(メルトン・モーブレー・ポーク・パイ)


1 指定年月日  令和6年2月29日
2 指定番号  第137号
3 締約国の名称  グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分  第6類 畜産加工品類 食肉製品類(ポークパイ)
5 農林水産物等の名称  Melton Mowbray Pork Pie(メルトン・モーブレー・ポーク・パイ)
6 農林水産物等の生産地  イギリス

 メルトン モーブレーの町、及び以下隣接する周辺地域の一部:
 ノッティンガム市、グランサム、スタンフォード、ノーザンプトン
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「メルトン・モーブレー・ポーク・パイ」は、全体を包むパイの皮の側面は丸みを帯びており、特徴的な丸い形をしている。パイの皮はきつね色で、豊かな食感である。中に詰められた豚肉は直火で焼かないため、ローストポークのような灰色をしており、口当たりはしっとりしていて、肉の食感が感じられる。製品全体に対する肉の量は30%以上でなければならない。中身の肉と側面のパイの皮の間は、ゼラチン層がある。
パイの皮は風味豊かに焼き上げられており、中に詰められた肉は主にコショウで味付けされ、パイに人工着色料や人工調味料、保存料を使用することはできない。様々な大きさや重さがあり、伝統的な精肉店やスーパーマーケット、デリカテッセン、飲食店等様々な販売経路を通じて販売されている。

(2)生産方法
本産品製造のための原材料は以下の通り;
〇必須の原材料 - 以下の原材料は必ず使用しなければならない。
 -未加工の豚肉
 -塩
 -ラード及び/又はショートニング
 -小麦粉
 -豚肉のゼラチン及び/又は豚骨スープ
 -水
 -香辛料

〇任意の原材料 - 以下の原材料の使用も可能。
 -卵又は牛乳(艶出しにのみ使用)
 -パン粉又はラスク
 -でんぷん

上記任意の原材料を使用する場合、最終的な製品の全重量の8%を超えてはならず、艶出し用材料は1%未満、パン粉又はラスクは2%未満、でんぷんは5%未満にそれぞれ制限される。上記材料及び成分以外、いかなる材料も本産品の製造に使用してはならない。

製造方法は以下の通り;
 -パイの皮の材料を混ぜ合わせ、パイ製造に先立ち、ビレット(外側の筒状部分)と蓋を作る。
 -豚肉を小間切れ状又は挽肉にし、その他の詰め物の材料と混ぜ合わせて、パイの詰め物を作る。
 -パイの皮のビレット部分は、ポークパイ用の輪を使うか、木製の「ドリー」と呼ばれる専用の型等を使って、筒状に仕上げる。
 -パイの詰め物を筒状のビレットに入れ、パイの土台に乗せる。切れ込みの入った、又は、シート状にしたパイの皮の蓋をパイに乗せ、ひだを作って閉じる。型を使わずに手でパイの皮を筒状に成型して作るタイプもあれば、飾りのひだを手で作って仕上げるタイプもある。
 -その後、型を使用した場合は型から外し、型の無い状態でオーブントレーに乗せる。この状態で冷凍して保存し後から焼くタイプや、家庭で焼けるように冷凍のまま販売されるタイプもある。
 -パイは、必要に応じて艶出しを行い、パイの皮がきつね色になるまで焼く。その後、冷めてから隙間にゼラチンを流し込む。
 -最後に、8℃未満になるまでパイを冷やす。
パイが冷めたら小売販売用に包装し日付を表示する。未包装で置いておくことも可能である。パイは冷蔵庫の棚に陳列して販売可能であり、また、ゼラチンを流し込んでから4時間以内であれば温かい状態で販売することも可能である。パイは大手スーパーマーケットから生産者個人の店まで、様々な小売店で販売されている。

各製造者は検査機関によって割り当てられた個別の認証番号を販売する製品のパッケージやその他販売に関係する資料等の任意の場所に記載する。本認証番号を用いることで、販売された製品から直接製造者に遡ることができる。
英国食品基準庁から製造者に対して衛生マーク(Health Mark)が発行され、日付データとの組み合わせによって、製品の販売場所や製造パッチ、各原料の認定供給業者の情報まで追跡することが可能となる。
メルトン モーブレー ポーク パイ協会は、各製造者に付与した認証印の使用も管理しており、この認証印も販売する全製品及び販売に関係する資料等に使われている。

(検査機関)
Product Authentication Inspectorate Limited


(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
16世紀以降、メルトン モーブレーの街の周辺で土地の囲込みが多く発生した。これにより土地が開墾され、開放耕地が無くなり、東部ミッドランドの農地の特徴である生垣に囲まれた「囲い込み地」と呼ばれる農地が開発された。その結果、主な農業活動は開放耕地で行われていた羊の放牧から、管理された家畜飼育へと変わった。余った牛乳は、特にブルー スティルトン チーズの生産に使われた。チーズ製品の副産物として生じるのが乳清で、糠と混ぜることにより優れた豚の餌になる。酪農家は豚小屋を建て、チーズの製造により生じた余り物を食べる家畜を育てるようになった。
レスターシャー州では、囲まれた農地の境界を定めるために、セイヨウサンザシ(サンザシ属)が植えられた。サンザシは約2メートルの高さにまで成長すると、層状になり、境界の溝の側面に沿って侵入不可能な境界となる生け垣が形成される。この生け垣はキツネにとって理想的な通り道となり、その結果、キツネの数が増加した。キツネの数の増加具合を調べるため、猟犬の群れがキツネを追い詰めるために使用されるようになり、猟犬の制御は乗馬の騎手により行われたため、これが秋・冬のスポーツとしてのキツネ狩りに発展した。18世紀半ばから、狩猟の季節になると訪れるキツネ狩りのハンター達は、メルトン モーブレーの街を狩りの中心地とし始めた。秋と冬には、豚が屠殺されポークパイが作られるので、キツネ狩りをする富裕層の召使い達は、ポークパイをポケットに入れて持ち歩き、キツネ狩りをする主人に合わせて馬を移動させる際のおやつとして食べられるようになった。このシンプルで美味しい農家のパイは、キツネ狩りをする富裕層の目にも留まり、彼らもポーチやポケットに入れて持ち運んで狩りの最中に食べるようになった。
キツネ狩りを楽しむ富裕層は、朝食に出されたこの素晴らしいパイをとても気に入り、次第にロンドンでも食べたいと思うようになった。1831年、エドワード・アドコックは、リーズからロンドンへの駅馬車を使い、ポークパイをメルトン モーブレーからロンドンに毎日運び販売し始めた。こうして、本産品の商業化と販売促進が始まったのである。
鉄道の時代が、この産業に更なる変革をもたらした。毎日駅馬車を使ってロンドンやその他の主要都市に本産品を運ぶのではなく、鉄道輸送が担うことになり、特別な車両が導入された。メルトン モーブレー駅の近くにパイ焼き場が作られ、本産品はイギリス中に、更には各国に帰船する貨物船の冷蔵コンテナに載せて、オーストラリアやニュージーランド、南アフリカにまで輸送されるようになった。本産品の評判は広がり、1870年代から20世紀の初めまで、この業界は一大ブームを享受した。本産品の評判が高まった結果、大手メーカーの中には模造品からの本産品の名称を守ろうとする努力をやめる会社も出てきた。

地域の歴史学者によると、本産品が初めて商業ベースで生産された19世紀初頭から半ばにかけては、地理的障壁と経済的障壁により、本産品の生産はメルトン モーブレーの街とその周辺の区域に制限されていたが、年月の経過とともにこれらの障壁が低くなり生産地域が広がったということが論証された。このため、本産品の生産は、メルトン モーブレー周辺の地域で100年以上にわたって行われてきたと考えられる。
やがて、第一次世界大戦により輸出取引が全滅し、業界の衰退が始まった。しかし、この20年間で、本産品の汎用性の高さによって需要が高まり、業界は復活の兆しを見せている状況にある。指定地域で作られた本産品は、いまや多くの大型スーパーマーケットで販売され、再び海外にも輸出されるようになっている。
最近では、本産品は様々な地域から注目を集めており、海外旅行のガイドブックである「Lonely Planet」は、メルトン モーブレーの街を「世界一のポークパイをもたらした」街として紹介している。1996年には、グロスター公爵が生産者の店を訪問した際に、本産品を試食している姿が新聞に取り上げられ、このパイの人気が再燃した。

本産品は、販売におけるパッケージやデザイン、販売戦略において、他のポークパイとは明らかに一線を画している。また、市場の他のポークパイに比べ、10~15%高い特別価格が付いているが、他のパイとは明らかに異なり特別価格を払ってでも食べる価値が十分にあると高く評価されている。1998年には、本物である本産品を確実に保護し、製品の原産地に関する認知度を上げるという目的で、生産地域内の全ての生産者を取りまとめるメルトン モーブレー ポーク パイ協会が設立された。

8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234