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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第145号)

下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課

Traditional Ayrshire Dunlop(トラディショナル・エアシャー・ダンロップ)


1 指定年月日  令和6年2月29日
2 指定番号  第145号
3 締約国の名称 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分  第6類 畜産加工品類 酪農製品類(ナチュラルチーズ)
5 農林水産物等の名称  Traditional Ayrshire Dunlop(トラディショナル・エアシャー・ダンロップ)
6 農林水産物等の生産地 イギリス

ダンロップの伝統的な教区周辺。地理的領域の境界は別添のとおり。(別添(PDF : 44KB)
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「トラディショナル・エアシャー・ダンロップ」は、エアシャー牛の生乳又は低温殺菌全乳から作られたハードチーズである。エアシャー牛乳に起因する自然な淡黄色をしており、チーズをカットすると、表面は滑らかで手触りはしっとりしている。これは、チーズの水分含有量が高いことによる。円筒形で、硬くて薄い金色の皮があり、斑点は目立たない。
完成間もない本産品には、非常にマイルドなナッツのような香ばしさと、滑らかで緻密な食感がある。熟成するにつれて、香ばしさと風味が増し、食感は滑らかでわずかな弾力性が出る。熟成期間が短いほどチーズはマイルドで、熟成するにつれて風味が強くなる。このチーズの最も短い熟成期間は6か月、最も長い熟成期間は18か月だが、最も人気のある熟成期間は10~12か月である。チーズは、マイルド(6~10か月)、マチュア(10~12か月)、エクストラマチュア(12~18か月)に分類される。熟成期間が長くなると、時間の経過とともに水分が失われるため、より乾燥した食感になる。
チーズの平均水分含有量は39~44%の範囲である。牛乳の乳脂肪含有量は3.9~4.4%の範囲で、これがチーズの高脂肪含有量につながる。エアシャー牛乳の脂肪球が小さいため、カードへの脂肪の取り込みが容易になり、このような高脂肪含有量が実現する。
このチーズは伝統的に次の3つのサイズで生産されている。直径7インチ×深さ4.5インチのチーズ(重さ3kg)、直径14~16インチ×深さ9インチのチーズ(重さ約20kg)、及び直径3.5インチ×深さ3インチの小型チーズ(重さ350g)である。ただし、特定の顧客の要件を満たすために他のサイズのチーズの生産にも対応している。
チーズは、くさび形にカットしたものを真空密封した状態、又は全形の状態(ホール)を布で包みさらにパラフィン紙で包んだ状態で販売される。

チーズの特性は次のとおりである。
 ・粘度:適度に硬い状態
 ・色:自然な淡黄色
 ・香り(アロマ):清潔感があり、腐敗臭や悪臭が無いこと
 ・フレーバー:マイルドなナッツの風味で、熟成するとナッツの風味が強くなり、クリーミーな風味が生まれる
 ・外観:乳白色で若干裂け目がある
 ・食感:滑らかで緻密な食感があり、熟成期間が短い時は弾力性がある。熟成期間が長くなると滑らかになる。

物理化学的特性:
 ・pH:5.2~5.4
 ・固形分重量:31.3%
 ・脂肪分:52.1%
 ・塩化ナトリウム:1.6~1.8%

微生物学的制限:
 ・大腸菌:10コロニー/g以下
 ・黄色ブドウ球菌:10コロニー/g以下
 ・サルモネラ菌:25g中に存在しないこと

(2)生産方法
このチーズはエアシャー牛の全乳を使用して生産される。 牛乳は約72℃に加熱され、その温度で15秒間低温殺菌される。その後、30℃に冷却され、バットに移される。そこで、スターター培地R.A.Range(牛乳及び牛乳ベースの直接バット注入用の凍結乾燥濃縮乳酸菌スターター)を追加し、1時間熟成させる。
エアシャー牛の牛乳は、他の品種の牛乳よりも脂肪球が小さいため、カードへの脂肪の取り込みが容易である。他の品種の牛乳によく見られる大きな脂肪球は、カードから押し出されやすく、乳清(ホエイ)の中で失われたり、カードの隙間を埋めたりして、脂っぽいまだら効果を発生させる傾向がある(これにより、必要な全脂肪が不足し、チーズは、その望ましい特性を達成することができなくなる)。
次にレンネットを加え、混合物を40~50分間凝固させる。混合物内で得られる固形カードは、バット内でナイフを使って手作業で1/4インチの立方体にカットされる。この工程には熟練が必要である。カットまでの正しい時間(通常、レンネットを追加してから45~60分後)は、チーズ生産者のスキルによって決まる。
バット内の温度を38°Cに上げ、混合物を攪拌してカードを表面に浮かせる。攪拌に必要な時間の長さを決定するために、チーズ生産者の経験が活かされる。攪拌には60~90分かかる場合がある。その後、混合物を静置する。
沈殿が発生すると、液体乳清(ホエイ)はふるいを通って流れ落ち、バットに残っている固形カードの中心を通って流路(チャネル)が作られる。このカードはチーズ生産者によってカットされる。スラブはバットの側面に置かれた状態で回転する。
カードの酸性度が0.55~0.65%になったら、ペグミルに通してカードを細かく砕き、塩を加える準備ができたバットに戻す。海塩を手で加え、カードに混ぜ、5~20分間溶解させる。その後、カードを型に入れて一晩プレスする。
添加する塩の量は、牛乳100ガロン毎に約1kgだが、これはカードのバッチ毎に、わずかに異なる場合がある。正しい量の塩(最終製品に対して1.6~1.8%)がカード全体に均等に分配されるようにするには、経験とスキルが必要になる。
350g、3kg、20kgの3つサイズの伝統的な円筒形の型が使用される。
一晩プレスした後、チーズを熱湯処理する。小さいチーズは熱湯に浸す。大きいチーズには熱湯を注ぎかける。次に、熱湯処理したチーズを包帯状の布で包む。熱湯処理によりチーズの皮を均一にすることができる。また、包帯状の布により、チーズの形を維持し、皮の厚さを減らし、熟成後に包帯状の布を取り除くとチーズの外観をよりきれいに仕上げることができる。
次に、チーズを型に戻し、包帯状の布を押しつける。翌日、チーズを型から取り出し、乾燥させてから、チーズ店の木製の棚に置く。チーズを定期的に監視し、その熟成度と品質を判断する。これは、経験を通じて学び、伸ばす必要のあるスキルである。
この熟成の長さは、顧客が要求する味の強さによって異なる。チーズの最低熟成期間は6か月で、マイルド(6~10か月)、マチュア(10~12か月)、エクストラマチュア(12~18か月)に分類される。熟成期間が長くなると、時間の経過とともに水分が失われるため、より乾燥した食感となる。
事前にカットし包装されたくさび形のチーズは、チーズを説明するラベルが付いた密封された真空ポーチに入れられる。ホールチーズは、チーズの名や状態、製造日、バッチ番号が記載されたラベルが縫い付けられ布にくるまれ、自然な状態で販売される。

(検査機関)
East Ayrshire Council

(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由

生産地では、何世紀にもわたって酪農が伝統的に行われてきた。この生産地の穏やかな湿った気候と重い粘土/ローム土壌が組み合わされることにより、豊かな緑の草とクローバーを含む自然植生が生まれた。これは伝統的な草種を含む牧草地となり、放牧と保存の両方に理想的な飼料を提供することになった。湿った重い粘土質の土壌に草が生い茂り、そこにエアシャー牛を放牧することで「トトラディショナル・エアシャー・ダンロップ」の生産に必要な高乳脂肪含有量の濃厚でクリーミーな牛乳が生み出される。エアシャー牛から生産される牛乳に含まれる小さな脂肪球と、その放牧地域でエアシャー牛が食べる特定の草により、本産品は、他の種類のチーズよりも水分を豊富に含んでいる。この地域の湿った気候により、チーズは湿った空気の中で熟成するため水分を保持し乾燥を防ぐことができるので、カット時に滑らかで弾力のある表面とクリーミーなナッツの風味を本産品に与えることができる。
この地域が属するスコットランド南西部は、イギリス諸島内における地理的位置により、西部からの気象と大西洋湾流からの気象の両方の影響を受けている。これにより、酪農に最適な牧草地を生み出す、穏やかな西部気候が形成される。ダンロップが位置するこの地域では、酪農の歴史を200年以上前までさかのぼることができる。

本産品は、バーバラ・ギルモア(Barbara Gilmour)により、1690年頃に初めて生産された。バーバラ・ギルモアは一時的にアイルランドから追放された際に、アイルランドから持ち帰ったレシピを使ってこのチーズを生産した。彼女はダンロップ村に定住し、そこでチーズの生産技術を教え、そのチーズは最終的にはダンロップとして知られるようになった。
このチーズは、以前はバター生産の副産物である脱脂乳から生産されていたため、全乳から作られている。
バーバラ・ギルモアのオリジナルチーズに使用されていた牛乳は、彼女が飼育していたダンロップ牛の牛乳であった。ダンロップ牛は降雨量が多いために豊かに生い茂る地元の牧草を食べ、クリーミーな牛乳を生産していた。ダンロップ牛の評判がこの地域に広まるにつれ、ダンロップ牛の名前は最終的にはエアシャー牛として知られるようになった。この名前は今日でも知られており、1790年代の古い教区の記録にも、この地域で生産されているチーズがダンロップチーズであったと記載されている。
多くの農場は伝統的にチーズを自家用に生産し、余ったチーズを地元で販売していた。19世紀半ばに鉄道が導入されると、グラスゴーとエジンバラの市場でチーズを販売するべく送るようになり、これらの農場が発展した。本産品は、ハードタイプでしっかりとした風味があり、グラスゴーとエジンバラの市場にも輸送することができた。本地域の農場で生産される他のチーズは、グラスゴーの市場に輸送することができない柔らかいチーズであったため、本産品は、その独特の個性で好評判を獲得するようになり、それは今日まで続いている。
この取引は19世紀半ばまで続いたが、大規模なチーズ加工産業の出現により、小規模なチーズ職人の数は急速に減少し、そのほとんどが姿を消した。
19世紀の鉄道システムの発展により、小規模な農場でのチーズ生産から、大規模な生産施設への移行がさらに進み、チーズは国中に簡単に輸送できるようになった。その結果、第二次世界大戦までに、農場でチーズが作られることはほとんどなくなった。
本産品の生産は1989年に復活し、現代の衛生規制の要件を考慮しながら、昔のレシピを忠実に再現している。現在でも、チーズはオープンバットで生産され、カードは手でカットされている。これらは50年前に使用されていたのと同じ方法である。チーズには包帯状の布が巻かれ、木製の棚で熟成される。その結果、現代的な生産方法では存在し得ない皮がチーズに形成される。
本産品生産の成否このチーズが成功するかどうかは、チーズ生産者メーカーの技術と経験に左右される。チーズ生産者は生産工程全体を通して産品を判断し、最終製品の一貫性を確保する。これらの技術は、牛乳の変化に適応した経験から学び、習得されてきた。チーズを監視し製品の品質管理を行うには、現場で学び、経験を通じて技術を習得する必要がある。チーズ生産者は、牛乳の季節による違いや周囲気温、空気中の水分量の季節変化を考慮に入れて品質管理を行い、生産工程全体で製品を評価するための技術と知識が必要となる。これらの技術により、チーズ生産者は望ましい水分と酸性度を適切に判断し、外観、風味、食感が安定した完成品を生産することができる。

本産品は、特にファーマーズマーケットや専門のデリカテッセンやチーズショップで人気商品となっている。また、その評判と独自性は、スコットランドの食品業界及びホスピタリティ業界全体で認められている。
本産品は次の賞を獲得している。1991年から1996年の間に開催されたロイヤルハイランドショー(Royal Highland Show)で、1位及び2位を複数回獲得した。ブリティッシュ チーズ アワード(British Cheese Awards)では、銀賞(1999年)、金賞(2001年)、銅賞(2004年)を獲得した。また、ナントウィッチ インターナショナル チーズショー(Nantwich International Cheese Show)では、1位(1992年)、金賞(2005年)を獲得した。


8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234