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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第154号)

下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和6年2月29日
担当:輸出・国際局 知的財産課

Yorkshire Wensleydale(ヨークシャー・ウェンズリーデール)


1 指定年月日  令和6年2月29日
2 指定番号  第154号
3 締約国の名称 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分 第6類 畜産加工品類 酪農製品類(ナチュラルチーズ)

5 農林水産物等の名称 Yorkshire Wensleydale(ヨークシャー・ウェンズリーデール)
6 農林水産物等の生産地 イギリス

ノースヨークシャー ウェンズリーデール
生産地の範囲の詳細は別添のとおり。(別添(PDF : 54KB)
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
「ヨークシャー・ウェンズリーデール」は、牛乳から製造されるハードチーズである。新鮮な牛乳、生乳及び低温殺菌牛乳のいずれかで製造することができる。
チーズは乳白色で、粗くてポロポロとした舌触りがある。本物の手作りチーズ(特に布で縛られたチーズ)の場合、チーズの外観はより黄色くなる。これは、手作りチーズの証であり、大量生産されたウェンズリーデールチーズには、このような特徴は見られない。しっかりしていると同時にポロポロとした舌触りは、スターター培地、手作業工程、使用する牛乳の組み合わせにより生まれる。本産品は、他の同類のチーズよりももろく、密度が低くなっているが、しっかりした食感がある。マイルドでさっぱりした、やや甘い風味があり、蜂蜜のような味が後に残る。熟成が進むにつれて、より豊かで深い風味を帯びる。

チーズの物理化学的性質
 — pH:4.4~5.4
 — 固形分重量:54%以上
 — 脂肪分:固形分重量の48%以上
 — 塩化ナトリウム:2.2%以下

チーズの特性
 — 粘度:しっかりしていて、詰まっているが、ややパサパサした食感もある
 — 色:白色から象牙色の間
 — 香り:熟成が進んだチーズでは、全体に乳酸や酸味の香りが強くなる
 — 風味:かすかな酸味、まろやかな甘みや蜂蜜のような後味があるが、熟成が進んだものはそれらが強くなる。心地良い、独特な後味である
 — 外観:乳白色で少しざらざらしている
 — 食感:しっかりしているが、ややポロポロ、パサパサしている

微生物規格基準
 — 大腸菌:100コロニー/g未満
 — 黄色ブドウ球菌:100コロニー/g未満
 — サルモネラ菌:25g中に存在しないこと

本産品には、重量が500gから21kgの範囲の従来の円筒型/円柱型と、20kgのブロック型がある。2週間という短い熟成期間で販売することができるが、必要に応じて、最長で12か月間熟成することもできる。

(2)生産方法
新鮮な生乳は、搾乳後数時間以内に乳製品製造所に運ばれる。牛乳はチーズ生産者の敷地内で低温殺菌されるが、低温殺菌しないチーズの場合、この工程は省略される。牛乳はチーズバットに移されたのち、バルクスターター培地が添加され、「熟成」期間を通して攪拌される。レンネットを添加して、牛乳を凝固させる。カードを乳清(ホエイ)から分離するために、凝固物をカットする。カードとホエイにバットの側面からの熱により加温した後、カードが安定し、ホエイが排出されるまで攪拌する(「ピッチング」という。)。次に、カードを「ブロック化」(大きな断片にカット)し、ひっくり返してから、再度カットして攪拌する。これは、本来の食感を実現するために、チーズ職人のスキルに大きく依存している非常に重要な工程段階である。カードへの加塩は手作業で行われ、これも塩が均一に行き渡るようにするために熟練を必要とする工程である。加塩したカードをより細かいサイズに砕き、チーズの型に充填する。
本産品の製造に使用される型は、20kgまでの非常に大きな伝統的な円柱形から、小さな円筒形まで多様である。チーズを充填した型を12~48時間プレスすると、最終的な形状になる。チーズを型から取り出したら、モスリンに包み、乾燥室の棚に置く。そこで乳製品製造所自体が持つ風味が加わる。これらのチーズを手作業でひっくり返しながら、最低1週間から最長12か月間熟成させる(店に並べる前に、プレス後に直接梱包するチーズもある。また、6~12か月熟成させる厳選チーズもある。)。

本産品は、様々な形にカットして梱包することができる。また、発送前にワックスで覆う、カスタマイズしたラッピングを施す、真空パックにする、などということも可能である。

◯特色あるバルクスターター培地について
本産品の製造工程の多くは、今でも手作業で行われているため、このチーズに求められる特徴と品質基準を満たす製品を製造するために必要なスキルは、昔と同じように、現在も重要な要素となっている。チーズの製造工程では、チーズの全てのバットを注意深くモニタリングし、時間、温度及び酸度レベルを全て記録し文書化する必要がある。生きている培地を扱っているので、一日たりとも前日と同じ日は無い。生産が早く進む日もあれば、遅くまで時間のかかる日もある。従って、時間をかけて技術を習得したチーズ職人が、外観、食感及び風味の点で最高品質の本産品を生産するために確認を行う必要がある。
本産品の製造工程プロセスで使用されるスターター培地は、完成したチーズの品質を決定する重要な要素となる。使用されるスターター培地は、中温性芳香族培地から培養されたもので、従来の培養菌の種から毎日継代培養し、バルクスターター培地で一晩増殖させたものか、急速冷凍又は凍結乾燥培養から増殖させ、同じバルクスターター培地で一晩増殖させたもの(通常の場合、再構成スキムミルク)を使用する。
初代培地は市販されているが、数か月間は二次培養される。培養菌の種は、凍結乾燥状態から「活性化」させ、そのライフサイクルの中で個々の培地として使用される。18の培養菌の種を3日周期で培養し、6つの培地ずつ、3つのグループに分けて培養する。毎日、それぞれのグループから最高の培地が3つ選択され、大きなタンクで育成される。その後、チーズを作る直前に混合され、日々のスターター培地として使用される。
個々の培地は、牛乳を酸性化するために牛乳に添加されるところまで、個々の培地として成長する。3つの培地は、その日の年齢と活力に基づいて選択される。通常の場合、若い培地、中程度の培地、熟成した培地が選択される。活力と効力を失った古い培地は廃棄され、新しい培地を「活性化」した後に、培地のグループに加える。ただし、活性化させた後、実際にチーズ製造に使用されるまでには数週間から数か月かかる場合がある。これらの培地を別々の培養菌の種として培養することで、個々の特性と強みが生まれ、ファージに対する免疫力を高めていく。これが、本産品の製造において、長い間使用されてきた、独特で複雑なシステムである。
バルクスターターの品質と一貫性は、チーズ製造工程の多くの側面に影響するため、チーズの最終な品質にも大きく影響することになる。低温殺菌牛乳にバルクスターターを添加することで、牛乳の初期の酸性度を上昇させ、レンネットの添加後の牛乳の凝固を促進することができる。
優れたバルクスターターは、レンネットの添加から加塩までのチーズ製造工程を通じて、安定した酸の発生に基本的な役割を果たしている。酸生成菌と風味生成菌の混合物であるバルクスターターは、完成チーズの風味と食感に大きな影響を与える、2つの重要な要素の1つとなる。完成チーズの風味と食感に大きな影響を与える、もう1つの重要な要素は牛乳の品質である。また、スターター培地の作用は、チーズルームでチーズが製造された後もずっと続く。培地は、チーズの熟成工程全体を通して働き続け、風味、食感及び外観に影響を与える。
バルクスターター用の培地を正しく選択・管理することは、完成チーズの長期的な一貫性と品質を維持するために重要となる。一貫性を実現するには、主要な技術スキルを日常的に駆使する必要がある。スターター培地の継代培養は熟練さが必要となる選択プロセスである。ここで培地の視覚的品質及び風味を調べ、最適な酸性度レベルの培地であるかを確認し、継代培養用の様々な菌株を選択する。また、継代培養のために異なる菌株を選択する際にも、熟練さが必要となる。
チーズグレーダーという専門家が、視覚、嗅覚、触覚、感触及び味覚などの感覚を活用してチーズをテスト/等級付けする役割と責任を負っている。チーズグレーダーは、様々なチーズ品種間における個々のチーズの特性を認識できる。また、同じ種類のチーズ内の異なるチーズ特性を認識することも、さらに、ウェンズリーデール チーズがウェンズリーデール乳製品製造所(Wensleydale Creamery)で使用されているスターター培地で製造されているか、それともDVI(Direct Vat Inoculation/直接バット接種)培地で製造されているかどうかも見分けることができる。バルクスターター培地で製造されたウェンズリーデール チーズとDVIスターターで製造されたウェンズリーデール チーズの違いは次のとおりである。
 ・DVIウェンズリーデール チーズには、よりしっかりとした、より密度の高い食感がある。
 ・DVIウェンズリーデール チーズには、より乾燥した味/感触がある。
 ・DVIウェンズリーデール チーズは味/風味が、ウェンズリーデール チーズとは異なる。伝統的なバルクスターター培地で製造されたウェンズリーデール チーズのミルクの味や風味と比較すると、DVIウェンズリーデール チーズは「特徴的で、独特で、豊かな味わい」と説明し得る。ただし、バルクスターターが失敗した場合は、直接バット接種(Direct Vat Inoculation/DVI)培地が使用されることがある。また、DVI培地の特定の株を使用して、バルクスターターを補完することも可能である。

◯チーズ製造に関連するスキルと作業
チーズ製造工程はレシピに従って実施され、チーズの全てのバットの工程が文書化され、時間、温度及び酸性度レベルが記録される。ただし、生きている培地を扱っているため、毎日まったく同じように進められるわけではない。従って、時間をかけて技術を習得したチーズ職人が、外観、食感及び風味の点で最高品質のチーズを生産するために確認を行う必要がある。例えば、チーズ職人は、外観、食感及び風味の点で一貫した品質のチーズを製造するために、製造の速度に応じて、熟成時間、必要なチーズの回転回数、熱湯処理の温度、ホエイが放出される速度/率及びカットするカード片のサイズを調整する。チーズ職人はまた、そのスキルと判断力を駆使して、ジャンケットとカードが正しい食感と感触であるかを確認し、必要な調整を行う。こうすることで、外観、食感及び風味の点で一貫性のあるチーズを生産することができる。これらすべての要因により、次のような視覚的及び官能的特性をもつ完成品を製造することができる。すなわち、色はクリーミーな白色で、食感はしっかりしているが、パサパサした粗い舌触り、そして、かすかに甘い蜂蜜の後味が残る。
本産品の品質管理は、視覚、嗅覚、触覚、感触及び味覚などの感覚を駆使してチーズをテスト/等級付けするチーズグレーダーの責任のもとで行われる。彼らのスキルは経験を積むことでしか習得することができない。チーズグレーダーは、キャリアの初期の段階ではチーズ職人として働き、この工程を学んできた者である。経験豊富なチーズグレーダーは、チーズに穴をあけ、チーズアイアンを差し込むとすぐに、その「ヨークシャー・ウェンズリーデール」がどの等級にあたるか分かる。
チーズ製造の全ての段階を通じて、チーズ職人は酸の発生を何度もチェックして、経時的にモニタリングを行い、目的の食感と風味に仕上がるように確認する。ブロック化、回転、カット、加塩を伴う攪拌は、チーズ製造において非常に重要な段階となるが、チーズを本物の食感と風味に仕上げるには、チーズ職人の巧みな技も重要な要素となる。チーズの全てのバットは等級分けされる。特定のチーズの風味/年齢プロファイルを識別するための追加の等級分けは、梱包及び発送前に、顧客向けに行われる。業界及び顧客の基準と仕様が満たされていることを確認するために、細菌及び化学試験も実施される。必要な基準を満たしていないチーズが、本名称を使用して市場に出されることはない。

(検査機関)
North Yorkshire Trading Standards

(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由

◯生産地の地質と多様な植物相による地元の新鮮な牛乳
生産地は、石灰岩の上に薄い土壌が広がる典型的な高台農地である。北部の気候は寒いうえに湿気も多くなるため、同様の地質構造を持ちながらも、過ごしやすい気候に恵まれている近隣地域とは、植物相が異なっている。多くの場合、様々な農法が採用されているため、畑にはかなり多様な生物が生育している。この地域の土壌の質は、谷に沿った豊かな肥沃なローム層から、高台地域の細かいローム層や粘土質の土壌まで広範囲にわたっている。このため、野生の花が豊富な干し草用の牧草地、谷底の牧草地、ヒースで覆われた原野など、多様な植物が生育することになる。多くの植物種が特定の条件に適応するため、幅広い植物多様性が実現する。
この地域の多くは環境配慮地域(Environmentally Sensitive Area/ESA)に指定されており、化学物質、人工肥料及び窒素の使用が制限されている。ウェンズリーデールには、特別科学関心地区(Sites of Special Scientific Interests/SSSI)があり、そこでは、ヨークシャー デールズ国立公園(Yorkshire Dales National Park)にあるヘイメドウズ(Hay Meadows/干し草の牧草地)の区域など、重要な牧草地が管理されている。本産品の製造に使用される牛乳は、主に当該の国立公園内の地元の農場から調達されている。

◯歴史
「ヨークシャー・ウェンズリーデール」は、長年にわたり、高い評価を受けてきた。このチーズは、ウェンズリーデール地域で何百年も製造されてきたが、この地で最初にチーズを作ったのは、11世紀と12世紀にここに定住したフランスのシトー会修道士であった。1500年代半ばにヘンリー8世によって修道院が解散させられると、チーズの製造技術は地元の農家に受け継がれ、地元の農家は余った牛乳を保存する方法としてチーズを製造し始めた。
生産地は、本産品を製造する伝統的かつ歴史的な地域に基づいている。1930年代には、本産品の主要メーカーが数社存在し、ウェンズリーデール チーズ合同会議(Wensleydale Cheese Joint Conference)として知られる業界団体を結成した。会員は全てこの地域内に居住していたが、今日でも本産品を作っている拠点は、ハウズ(生産地の中心にあるマーケットタウン)とカークビー マルツァードの2か所だけである。
1897年、地元の商人が、ハウズに最初の乳製品製造所を開設し、この地域で最初の市販用チーズ製造業者となった。1930年代の不況期、1966年代半ばの事業売却などを経て、1992年、チーズ製造は1992年11月に再開された。ハウズのウェンズリーデール乳製品製造所(Wensleydale Creamery)は、カークビー マルツァードにある姉妹乳製品製造所とともに、過去112年と同様に、受賞歴のある「ヨークシャー・ウェンズリーデール」を製造し続けている。
本産品は、チーズ事業がなければ存在し得なかった雇用機会を地域に提供している。マーケティング活動においては、長い歴史で培われた強い価値観を伝えることを目指しており、現代の消費者から明確な支持を得ている。

◯受賞歴と評判
「ヨークシャー・ウェンズリーデール」は、多くの賞と称賛を獲得している。ここ数年間だけでも、多くの金賞やクラス優勝を達成している。
2011年11月にナントウィッチで開催されたインターナショナルチーズショー(International Cheese Show)とワールドチーズアワード(World Cheese Awards)では、金賞を獲得している。
本産品と地理的地域とのつながりは、消費者の心理に強く影響している。この製品は、この地域への旅行者向け観光ガイドの多くで紹介されているため、地理的に近い地域だけでなく、あらゆる種類の小売店やレストランにおいて高級チーズと認められ、製品の評判も高くなっている。料理本や歴史書、小説の中でも、本産品について数多く言及されている。
現在、本産品は、イギリス国内の全ての主要小売店、独立系デリカテッセン、及び外食産業全体で購入できる。米国やカナダなどの多くの輸出市場でも需要が増加しており、そこでも、原産地と信頼性が確立した最高品質の付加価値を有するチーズとして認識されている。

8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234

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