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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第168号)

更新日:令和6年12月20日
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

New Forest Pannage Ham(ニュー・フォレスト・パンネージ・ハム)


1 指定年月日  令和6年12月20日
2 指定番号  第168号
3 締約国の名称  グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
4 農林水産物等の区分  第6類 畜産加工品類 食肉製品類(ハム類)
5 農林水産物等の名称  New Forest Pannage Ham(ニュー・フォレスト・パンネージ・ハム)
6 農林水産物等の生産地  イギリス

ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムはニューフォレスト地方(地図参照)で育てられ、放牧シーズンにニュー・フォレストで放牧された豚のみを使用しています。けれども、ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムの生産者は、ハンプシャー(Hampshire)、ドーセット(Dorset)、ウィルトシャー(Wiltshire)諸州に所在する場合があります。
 ニューフォレストの境界及び近隣諸州の地図
      ニュー・フォレストの境界及び近隣諸州

7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項
(1)特性
ニュー・フォレスト・パンネージ・ハム (New Forest Pannage Ham)は、とくに50日以上の「放牧シーズン中」ニューフォレストで放し飼いされた豚から取れる豚肉から作る、風乾したハムです。 この時期、豚は大量のドングリとブナの実を食べますが、これは豚肉を香ばしくする有益な効果を持ちます。ドングリを食べていない豚と比べて、この様な豚の肉は、より芳醇なナッツの香りを持ち、色はより黒っぽく、野性味があります。この豚肉は数十年にわたりニュー・フォレスト地方で珍重されてきた季節の特産品です。
このハムは、膝上の骨付き脚肉の皮を取り、しずく型に成型して作られています。硝酸塩や亜硝酸塩を含む塩漬塩で塩漬し(完成ハム中の塩化ナトリウム成分は5%以下、硝酸塩/亜硝酸塩値は200ppm以下と定められています)、黒コショウ、白コショウ、フェンネルシードを合わせた薬味で風味づけしています。
 
官能特性
色と外観: 色は暗紅色から紫がかった赤色で、切った時の外観はマーブル状です。
風味と香り: 繊細なナッツとバターの風味に僅かにハーブとスパイスの香りが加わっています。強い塩味や甘味は有りません。風乾ハムにフェンネルの風味が加わった、特徴的で快い香りがあります。
触感: 固く締まった組織で、繊維質ではありません。
脂質: 色は光沢のある黄白色で、香味と溶けるような組織を持ちます。密度は食餌中のドングリの比率によって異なります。
完成品中の水分活性(aw)は0.85以下とされています。


(2)生産方法
 脚はスネ部分(膝より下の脚下部) を切断し、トンネル骨切除法で腿とイチボの骨を取り除きます。 脂肪は肉に残したまま脚の皮を取り、肉をトリミングして緩い部分を取り除きます。
その後、骨を抜いた脚肉のトンネル部分にキュアリングソルトを追加し、乾燥熟成します。この時点で特許のバクテリア発酵培養液及び風味づけ(黒コショウ、白コショウ、フェンネルシード)も追加されます。この培養液はハムの色と風味を向上するために使われますが、最も重要な目的は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)などの有害なバクテリアによる汚染の可能性を防ぐことにあります。キュアリングソルトの量は、風乾したハムの完成品における塩成分が4%~5%になる様に調整します。塩漬は冷蔵温度(2°C~5°C)で行われ、脚肉のサイズにより 2~4週間の期間を要します。2kgの脚肉の塩漬期間は2週間ですが、5kg以上の大型脚肉の塩漬期間は4週間です。重量に基づく適切な比率の塩分が脚肉に添加されていれば、この期間内に十分な塩漬が行われます。
塩漬後、肉をネットで固定するか糸で巻いて、特徴的な「しずく形」の形状を作ります。その後、以下の条件で風乾します: 
温度範囲 10°C~16°C
相対湿度 70%~80%
風量は、乾燥がゆっくりと進むよう 1.5ms-1 以下に調整されます。風量がこの速度を超えると、表面が硬化して水分が蒸発しにくくなります。
塩漬開始から風乾段階が完了するまでの期間は、10ヶ月以上とされています。これは、肉が十分に乾燥し、ハムの風味が十分に引き出されるために必要な期間です。脚肉が非常に大きいときは、十分に乾燥するまでに10ヶ月以上を要することがあり、その場合、この期間は必要なだけ延長できます(上記「説明」の最大水分活性に関する要件を参照)。脚肉の正確な乾燥期間は、温度、相対湿度、風量、肉に付着している脂肪分、筋肉内脂肪分など多くのファクターによって左右されるため、規定できません。肉が十分に乾燥した時点を判定するのは生産者の役目であり、その時は、水分活性をチェックしてその値が0.85以下であることを確認する必要があります。この値を超えると、肉の室温保管の安全性に支障をきたします。
このハムは脚肉丸ごと、あるいは、すぐに食べられるようスライスした状態で販売されます。
[原産地証明]
豚はニュー・フォレスト地方(地図参照)の定められた地理的地域内で飼育される必要があります。ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムに使用できる豚は、放牧シーズンの期間(具体的日付は森林委員会及びニュー・フォレスト森林管理官によって定められる)に50日以上森で放牧された豚で、放牧用として森で飼育するための登録がなされていることを示す標示レシートがなければなりません。農家はこの標示レシートを豚のと殺から3年以上保管する義務があります。畜殺場から戻ってきた食肉がと殺された個体と同一のものであることを確認するため、と殺前にスラップマーク又はその他の識別方法で豚を識別する必要があります。
事例証拠(anecdotal evidence)によると、ドングリ食により生まれるこの豚肉の風味は、生成されるまでに一定の期間を要します。ドングリの風味がピークになるのはドングリ食を止めて約6-8週間後の時点です。そのため、 ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムに使用する予定の豚は放牧シーズンが終わってから8週間以内にと殺することになります。
放牧シーズン以外の期間は、豚は特製豚用飼料で飼育されます。その成分は一般に小麦、大麦、醸造用穀物 (ビール醸造に使用された麦芽大麦とその廃品)、大豆と糖蜜で構成されています。
放牧豚の脚肉を ニュー・フォレスト・パンネージ・ハム生産者に提供する場合、農家は以下を記載した「適格証明書」を提供せねばなりません: -供給する脚肉の本数; -ニュー・フォレストで放牧された放牧豚の脚肉であること; -販売用に放牧された豚全頭のマーキング料金を支払い済みであること; -定められた期間内にと殺されたこと; - ニュー・フォレストの指定地域内で飼育されたこと (付録 A参照)。
放牧豚の脚肉を販売する農家と ニュー・フォレスト・パンネージ・ハム生産者は、検査機関が要求する検査に備えて、生産の全段階に関するトレーサビリティ記録の保存が義務付けられています。
適格証明書は農家とハム生産者の双方によって最低3年以上の期間、 保存されることになっています。
[検査機関]
Dorset Council Trading Standards


(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムという名称は、このハムの風乾工程に由来する品質と特性に基づいており、この工程によってこの放牧豚のナッツとバターの風味が保たれ、強調されています。
ニュー・フォレストは1079年に征服王ウィリアムの王室お狩場として創設されました。 オークとブナを原生樹とする森です。
ニュー・フォレストのオークやブナの一部は昔からのものですが、17世紀、18世紀に多くの大木は王室海軍の船を造るために伐採され、19世紀初期に新たに植林が行われました。イングランド南部の穏やかな海洋性気候は、成長の遅いオークの木が育ち、秋に多くのドングリの実を落とすのに最適な気候です。
豚が家畜化されて以来、豚を森に放牧して、自然飼料(ドングリ、ブナの実、クリの実等)で飼育する方法が引き継がれてきました。イギリスでは紀元前30年にも遡るケルト時代に、イングランド南部のウィールド地方で、庶民がその放牧豚を「獰猛な犬」で守っていたことを示す資料があります。この時の放牧シーズンは8月末から1月半ばと思われます。アングロサクソン族が到来した時、彼らはこの木の実を飼料とするために豚を放牧する方法を denberis (複数形: denbera)と呼びました。これは「豚の森」という意味です。11世紀にノルマン人がイングランドを征服すると、このやり方は「パンネージ」と呼ばれました。この言葉は古フランス語のpansnage (「豚の飼料代として領主に料金を支払う」の意)に由来すると考えられています。言い換えれば、中世時代、豚を森に放牧する権利は、アングロサクソン族の下で定められた飼育システム自体よりも、むしろ「庶民が支払う代金」という形で知られていました。 
イングランドでどの様に放牧が行われていたか分かるのは、概ねノルマン人のおかげと言えます。当時、一部の入会権 (薪集めがその典型)は万人が行使できる権利であり、特に記録にするほどの価値もありませんでした。しかし、ドングリやブナの実は依然として領主の所有物であったため、結果的に、領主がどの位の量を庶民に売ったかを記録した法規・財務関連の記録が数多く残されています。例えば1086年の土地台帳には、放牧が de herbagioと記録されており、それが庶民の経済にとって重要事項であったことがわかります。実際に森林の監督は入念に行われ、放牧できる豚の頭数によって、「豚1頭分の木立」「豚10頭分の森林地」「豚100頭分の森」という様に分類されていました。中世には、放牧がと殺まで豚を肥育する手早い方法と見なされていたことは確実であり、比較的少額の出費で妥当な見返りが得られる方法と考えられていました。1883年、ニュー・フォレストのBramshaw Estate領主であったGeorge Briscoe Eyreは、「庶民にとって放牧の価値は、堆飼の質(=どの位の木の実が落ちるか)と、『早期かつ安価に』可能な限り多くの豚を買い入れる資金の双方によって決まる」と記しています。
「森林飼料が良好な年は、この様に支払われた5ポンドが3ヶ月で倍額になる … 零細農民が豚によって年間20ポンドを稼ぎ出すことが知られている。」
ニュー・フォレストの住人には森で動物に給餌する権利がいくつか認められていました。その中には、牧草地入会権(家畜、ポニー、ロバ、ラバを放牧する権利)、森林飼料入会権(放牧期間中に豚を森に放牧する権利)が含まれます。ニュー・フォレストの放牧シーズンは、森林委員会が森林管理官との相談の上で60日以上と定められています。1964年のニュー・フォレスト法以前は、放牧シーズンは9月25日から11月22日までと定められていました。放牧シーズンは、その年のドングリとブナの実堆飼の量によって、しばしば延長されます。
森林飼料入会権には2つの重要な存在理由があります: 

 (a) 放牧はニュー・フォレストの環境の重要な一部です - 豚は、家畜やポニーにとって有害な青いドングリやブナの実の堆飼を食べます。例えば、ドングリを食べたことが理由で死亡したポニーや家畜の頭数は次の通りです: 

2006年 - 47 
2010年 - 32
2013年 - 51
2014年 - 90

(b) 放牧は基本的に無料の飼料で豚を肥育してからと殺する、古来からの実用的な方法です。
かつてはイギリス全土でこの様な放牧が行われていましたが、現在はニュー・フォレストでのみ続けられています。19世紀には 5,000-6,000頭の豚が放牧されていました。しかし、現在その数は数百頭であり、衰退しつつある権利と言えます。
豚の自然な習性は、豚を放牧のために森に放すのにとても助けになります。豚は毎朝森に「出かけて」行き、そこでドングリなど積もった木の実を餌として食べるのです。晩になると豚は我が家に戻ります。自分の「快適な」寝床で眠る方がよいので、一晩中、外で過ごすことはありません。豚はまず自分の家近くに堆積しているドングリや木の実を食べますが、それを食べ終えると、当然ながらもっと遠くに餌を探しに行きます。農園から数マイルも離れた場所まで行くことが知られていますが、それでも、つねに毎晩農園に戻ります。
放牧豚肉の塩漬は数世紀にわたりイギリス国内の指定された地域内で行われていますが、それは、と殺後に豚肉を保存する必要があるためです。実際、と殺から数日以内に全ての豚肉を食べてしまうことはできません。また、豚の飼料にするような食物は人間にとっても必要なため、(繁殖用以外で)冬の間ずっと豚を飼っておくことも実際は不可能です。塩漬豚肉は樽の中で保存するか、家の煙突の中で乾燥させてハムやベーコンにしていました。
 ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムは、指定地域でこの古来のハム作りの伝統を引き継いでいますが、過去数世紀の製法と比べて塩分を控え目にする等、品質を重視しています。また、風乾過程も加えていますが、これは、空調型熟成施設が開発される以前のイギリスでは行われていませんでした。
 ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムは 2021年度Great Taste 審査員から次のようなコメントを得ています:「熟成放牧豚肉のすばらしい一品である。脂質は放し飼い動物特有の豊かな色彩を示している。肉は芳醇で、甘味があり、わずかにタンニンの渋みを感じる。絶妙な塩加減で十分に塩漬加工された肉だ。」  そして「口の中でとろけるような見事な脂肪の比率とすばらしい味わい。豚肉の旨味がしっかりと感じられ、甘く、香り高く、豊かな肉質だ。この美味と出来栄えにつられて、ついもう一切れ食べたくなる。」
付録 A 
ニュー・フォレスト・パンネージ・ハムの生産と販売に関する適格証明書 (生産に関する証明書)
農場名

農場所在地
放牧豚の脚肉数
豚のと畜日
豚をと殺したと畜場
私は、この取引対象の豚が放牧期間中ニューフォレストで放牧されていたことを確認します。

はい/いいえ

私は、必要なマーキング料金を支払い済みであり、要請に応じてその記録を提示できることを確認します。

はい/いいえ

私は、この取引対象の豚が放牧期間の終了時から8週間以内にと殺されたことを確認します。
はい/いいえ

署名

日付
PDO PGI 製品規格テンプレート PN09 v2 2022 年 1月19日
8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234