指定の公示について(指定番号第180号)
更新日:令和6年12月20日
担当:輸出・国際局 知的財産課
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の地理的表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。 |
West Wales Coracle Caught Salmon(ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン)
1 | 指定年月日 | 令和6年12月20日 |
2 | 指定番号 | 第180号 |
3 | 締約国の名称 | グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国) |
4 | 農林水産物等の区分 | 第4類 水産物類 魚類(サケ) |
5 | 農林水産物等の名称 | West Wales Coracle Caught Salmon(ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン) |
6 | 農林水産物等の生産地 | イギリス ウェストウェールズのタイウィ川(Tywi)、タフ川(Taf)、テイフィ川(Teifi)で、3つの川のそれぞれについてのコラクル網制限令に記載されている通り、合法的にコラクル漁(coracle fishing)が許可されている地域は次のとおりです。 タイウィ川:ナショナル グリッド リファレンス(NGR:National Grid Reference)SN 420205にある旧ブリキ工場近くの鉄道給油所からタイウィ川をまっすぐに横切る虚線 と、NGR SN 394137でタイウィ川をまっすぐに横切る虚線の間にある川の一部。 テイフィ川:カーディガン(Cardigan)橋とスレフリド(Liechryd)橋の間にある川の一部。 タフ川:カーマーゼン(Carmarthen)とペンブローク(Pembroke)を結ぶA477の主要道路橋から、ワーレイ(Wharley)ポイントからジンスト(Ginst)ポイントまでタフ川をまっすぐに横切る虚線までの約1.6km下流に位置する川の一部。 |
7 | 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 | (1)特性 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」とは、古代ウェールズからの伝統的なコラクル(網代舟)で漁獲されたSalmo Salar種 の魚に付けられた名前です。 新鮮なコラクル・コート・サーモンは鮮やかな銀色で、背中は濃い青色、黒い斑点が側線の上にあり、通常は尾びれに斑点はありません。身はしっかりしていて、濃厚な食感と独特のピンク/赤色をしており、コラクル舟の漁師が「スイカ」に似ていると表現した、新鮮な魚の香りがします。 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、川の低水域や潮汐水で、海から河系に入ったところを捕獲されます。サケは一度川に遡上してしまうと、特徴的に不活性になるため、身の栄養が枯渇する前に捕獲します。鮮度が良く、身がしっかりしていて、筋肉が発達しているため、タンパク質と脂質が多く、しまった食感があります。海での長い回遊と、そこにある豊富で高品質の餌を食べてきた結果、過度の脂肪沈着がなく、目に見えて長細いスポーティーな体をしています。 その野生の性質のため、「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は人工添加物や着色料を一切含まず、魚の大きさも異なります。しかし、網目の大きさが10cmと制限されているため、小さい魚は網から逃れることから、「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」の最小サイズは1kgとなります。「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」の最大サイズは15kgです。 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、他の種類のサケとはっきり区別できます。その見事な模様と、無傷のウロコ、身が程よくしまっており、しっかりとした食感があり、尾、ヒレ、頭に歪みがないのが特徴です。また、尾びれがよく発達しており、伸ばすと凹状になり、尾びれの付け根が狭く、付け根の尾びれ側がはっきりと広がります。サーモンのあごは目の後縁より手前に伸びており、雄の天然サケは顕著な「くちばし」を持っています。コラクル漁では、一度に何匹も一緒に漁獲するのではなく1匹ずつ漁獲するため、「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」には、他の養殖サケや流し網で漁獲されたサケのように、体の傷や身の損傷・歪みなどがありません。これが、「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」が持つ、身がしっかりとした濃厚な食感の理由です。 調理すると、甘みが強い独特の「フレッシュ」な味わいと、ほのかな油っぽさが口の中に広がり、身がしっかりとした濃厚な食感が特徴です。「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」にはタンパク質と脂質が多く含まれています。 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、まるごと1本で販売されており、ほとんどが獲れたてのものですが、冷凍で販売される場合もあります。 (2)生産方法 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、サケのシーズンにコラクル舟の漁師が漁獲します。シーズンは、漁獲場である川によって異なります。 サケのコラクル漁シーズンは、釣りをする川によって異なります。 • タイウィ川:6月1日から7月31日まで • テイフィ川:6月1日から8月31日まで • タフ川:6月1日から7月31日まで コラクル舟 コラクルとは、小さな楕円形の舟で、真ん中に板を挟んで座れるようにデザインされています。灰と柳の枝を使って手作りで作られており、籠のような形になっています。コラクルは一人乗りで、片側だけでオールをこぐスタイルです。 コラクル漁では、一対のコラクル舟が協力して、その間に網を張って釣りをします。産卵場所へ戻るサケが、コラクル舟の影や網が近づく様子を見て逃げてしまわないように、この方法による釣りは主に夜間に行われます。 網 網は伝統的に亜麻糸や麻ひもを使って手作りで、コラクル漁のために特製されています。コラクル舟の製造と同様に、ナイロンの登場により、網作りの技術やノウハウも進化しました。 網は、開口部が45cmで12m幅に制限されている1層の漁網です。コラクル網の法定最小の網目サイズは10cmです。 時期によって使用するネットは2種類あります。 春には、通常15cmの網目サイズの網を使用します。この時期は一般的に魚が大きいため、その時点で1.8kg以下の魚は網の目を逃れます。 初夏は法定最小の網目サイズの網に変更します。これにより、すべての稚魚または1kg以下の魚を逃がすことができます。これはつまり、コラクル漁が持続可能な漁法であることを示しています。 釣りの方法 2隻のコラクル舟の間に網を張って釣ります。これは、漁業で最も一般的に知られているトロール漁の初期形態です。サケは、河川の河床とその等高線に沿って産卵場に移動します。この知識は、何世紀にもわたってコラクルの漁師たちによって蓄積されてきました。 コラクル漁は、タイウィ川、タフ川、テイフィ川の感潮区域の中でのみ許可されています。境界線は漁業細則に記載されています。鉛の重りを付けた網を使って底引きで釣ります。網は川底から最初の18インチ(46センチ)の深さでしか魚を捕らえることができません。その深さより上にいる魚は、網の上を泳いでいるので、捕獲を逃れることができます。コルクの浮きがあるため、網の頭を前方で弧を描くような形状を保ち、2隻のコラクル舟が網の口を開けたままにできます 生産段階 I) サケは、手作りの網を使ったコラクル漁で捕獲します。コラクル漁では、上記のように一対のコラクル舟が協力して、その間に網を張って釣りをします。 II) コラクルの舟上で、捕獲したサケのエラにプラスチック製のタグを付けます。このタグは、魚を水揚げする前にエラに装着することが義務付けられています。各タグは、その魚を捕獲したコラクルに関連付けられています。 III) サケをコラクル舟で岸に水揚げします。その後、サケは水揚げ時の重さを測り、ライセンスを所持している各コラクル漁師に発行された航海日誌に記録されます。 IV) サケは保管場所に運ばれ、クーラーボックスに入れて氷漬けにするか、0℃~4℃の温度で冷蔵庫に保管されます。 V) 主に地元のレストランやホテルなどに、地元・地域の旬の食材として、獲れたての魚をまるごと1本で販売しています。また、魚の卸売業者や地元の魚屋、燻製用に魚の加工業者にも販売されています。 [原産地証明] 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」が漁獲される3つの川には、それぞれでコラクル漁に関する厳しいガイドラインがあります。このガイドラインでは、特定の感潮区域の中でのみ、コラクル漁が許可されています。 コラクル網の使用は、次の範囲で許可されています。 • 特定のエリアで決められた数の釣り網のみ使用する。 • 禁漁期、週ごとの禁漁時間(週末のコラクル漁は不可)、使用可能な釣具の種類と網のサイズを守る。 川に出るコラクル舟にはそれぞれ番号が発行され、シーズンの初めには、各ライセンス所持者に自身の舟用の航海日誌とタグが発行されます。 ライセンス所持者は毎日、航海日誌に記入する必要があります。また、各魚は環境庁のガイドラインに基づいてタグ付けされるため、すべての漁獲物を追跡することができます。固有の識別番号が記載されたプラスチック製のタグをサケのエラに付けます。このタグは、魚を水揚げする前に装着することが義務付けられています。 航海日誌には、次の項目を記録します。 • タグ番号 • 漁獲日 • 魚のサイズ/重量 タグには魚の番号とコラクルの番号が表示されており、それぞれのタグは魚が捕獲された場所からコラクルまで簡単に追跡することができます。これにより、プロセス全体を通して完全な透明性とトレーサビリティが確保されます。タグの付いていない「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」を提供することは違法です。 ライセンス所持者が航海日誌の記録を行っているかどうか、捕獲された魚が記録したものと一致しているかを、保安官が検査します。 シーズン終了時には、航海日誌と残ったタグは環境庁(または同様の執行機関)に返却されます。次のシーズンでは、新しい航海日誌とタグが発行されます。 [検査機関] Natural Resources Wales (3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由 「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」のPGI申請は、以下のような製品の独特な品質に基づいています。 1) 魚が「天然」であること、海で回遊した時間、サケが産まれて繁殖に戻る川の水質の高さに関連しています。 2) ウェールズ独自の伝統的な漁法に関連しています。ウェールズのコラクル漁は、ウェストウェールズのタイウィ川、タフ川、テイフィ川でのみ合法的に許可されている伝統的なサケ漁法です。 サケは淡水(河川)と塩水(海)の両方に生息する回遊魚で、淡水で産卵し、最初の数年間は河川で生活します。毎年春先になると海に戻り、そこで餌を食べて成長します。約2年後、生まれた川に戻り、再びそのサイクルを始めます。通常、メスは産卵時に体重1キログラムあたり平均2000個(900個/ポンド)の卵を産みます。 天然のサケは回遊中にかなりの距離を泳ぎ、海ではエネルギーの元となる高品質の餌を食べてきたため、養殖サケと比べると、天然のサケの筋肉の方が発達しています。そのため、過度の脂肪沈着がなく、しまった食感があります。これらの特徴は、魚が川の低水域や潮汐水で、海から河系に入ったところを捕獲する漁法によって維持されています。サケは一度川に遡上してしまうと、特徴的に不活性になるため、身の栄養が枯渇する前に捕獲するためです。そのため、「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、調理すると、甘みが強い独特な味わいと、ほのかな油っぽさが口の中に広がり、身がしっかりとした濃厚な食感が特徴です。 タイウィ川、タフ川、テイフィ川は非常に水質が高く、環境庁によって定期的にチェック・記録されています。3つの河川の汚染レベルは非常に低く、これらの河川は「自然の生態系を持ち、サケやヒメマスの漁業に非常に適している」ことを示す「一級河川」の等級を与えられています。 コラクル漁は、回遊魚の漁法として古くから行われてきた漁法です。11世紀(およびそれ以前)から記録の残っている昔ながらの舟と技術であり、これが21世紀まで生き残っています。かつてはウェールズ全土で広く使用されていましたが、現在ではウェストウェールズのタイウィ川、タフ川、テイフィ川のみで許可されています。コラクル漁はこれらの川に限定されており、タイウィ川で漁をしているコラクル漁師は、300年以上も前から1つの家族だけです。 コラクル漁は、1800年代にまで遡るウェストウェールズの家内産業です。舟は灰と柳の枝を使って手作りで作られており、籠のような形になっています。コラクル舟のデザインと作り方は何世紀にもわたって変わっていませんが、現代の素材開発にともない、キャラコ、キャンバス 、ファイバーグラスなどを使用するようになりました。 コラクル舟は2種類あり、3つの河川の潮汐特性に合わせて特別に設計されています。タイウィ用コラクルは流線型のデザイン(川幅が広く、より早く川を渡るために流線型が最適)、テイフィ用コラクルは、より急流なテイフィ川の流れの中で釣りをするため、安定したデザインとなっています。 カーマーゼン博物館にある1794年製の版画には、タイウィ用コラクルのデザインと覆いを描写する詩が次のように書かれています。 スランギンノルの丘 きらびやかな流れに乗り 勇敢な漁師たちは 対になり、獲物を追いかける 手製のコラクル舟は 小枝を編んでフランネルで覆い タールを3度塗りしたもの 運搬人が荷物を背負うように それぞれが自分の舟を運ぶ (Llangunnor Hill Upon the glittering stream below, Those fishermen of courage bold, In numerous pairs, pursue their trade In coracles themselves have made; Form’d of slight twigs with flannel cas’d O’er which three coats of tar are plac’d And as a porter bears his pack Each mounts his vessel on his back.) 歴史的に、同じ家族が世代を超えて、コラクル釣りを生計の糧としています。コラクルの漁師、コラクル舟と網の製造者の他にも、麻や亜麻の生産者、縄の製造者もいます。かつて、これらの川には約200隻のコラクル舟が出ていました。 1807年、クナルス(テイフィ川沿いの村)には、多くのコラクル漁師がいたことから、当時の監視員は次のように書いています。「この付近で、コラクル舟がドアにぶら下がっていない家はほとんどない」。 1861年、王立委員会の証言によると、タイウィ川のコラクル釣りで捕獲された魚は、「塩漬けにして干物として町で販売したり、その他の地方に出荷された。以前は、漁師の妻たちや漁師自身が、カーマーゼンの通りやタイウィ川沿いの地域で魚を売り歩いていた」。(J・ジェラン・ジェンキンス、『コラクル』) 1939年には、川で使用できる網の数が制限されましたが、今日でも、同じ家族のコラクル舟がサケを釣る姿を見ることができます。 コラクル作りと合わせて、網作りの技術やノウハウも代々受け継がれてきました。昔から、網は麻から作られていましたが、最近でナイロンの登場により網の素材が進化しました。 コラクル釣りや網作りの他にも、もう1つのユニークな技術として、網に取り付ける重りがあります。鉛の重りの数とその重量にも工夫があります。重りの仕組みは複雑で、本質的にフィボナッチ数列を基にしています(1×3個の重り、4×2個の重り、6×1個の重り)。通常は実践で習い、伝承される技術です。 コラクル釣りでは、網の位置をコントロールしながら舟を上手く浮かせ、正確なかじ取りと操作が必要になります。川の流れや水深(水位)、潮の満ち引きや風の状態などを考慮して、どの感潮域で釣れるかなど、川を「読む」能力を身につけることが重要です。 コラクル釣りは、主に夜間の暗い条件のもとで行われることから、その技術の腕が問われます。コラクル釣りは夕暮れから始まります。コラクル漁師はこれをウェールズ語で「clyfwchwr」と表現します。釣りを始めるのは夜になってからです。これは、コラクル舟の影や網が近づく様子を見て逃げてしまうのを防ぐためです。 コラクルの漁師たちの間では、雲ひとつない夜に7つの星が空に現れたら、すぐに釣を始められる、という言い伝えがあります。 ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモンは一流品として、多くの有名シェフや食通たちに愛されており、その名前は頻繁に食材としてメニューに登場しています。コラクル漁の季節になると、地元の有名店のメニューに季節限定の商品として登場し、この地域の住民や観光客の間で人気を集めています。また、魚を燻製し、テリーヌなどの材料としても使用されます。こうした製品は現在、ロンドンおよびイギリス全土の一流食品店で販売されています。「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は現在、ロンドンのハロッズ(Harrods London)とフォートナム アンド メイソン(Fortnum and Mason)の食品売り場で販売されています。 サイモン・ライト(Simon Wright)、料理評論家 『グッド フード ガイド(Good Food Guide)』 より 「ウェールズのこの地域には極めて優れた食べ物がたくさんあるが、「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、ずば抜けて素晴らしい。様々な意味でこの地方の食文化を代表していると言っても過言ではない。 その美味しさだけでなく、それに伴う物語、伝統、歴史のすべてが魅力的である」 「「ウェスト・ウェールズ・コラクル・コート・サーモン」は、調理・燻製した後、濃厚な食感がある。濃いピンク/赤色をしており、脂質が少ない。ただし、色は魚によって若干異なる」 |
8 | 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 | |
(1)商標権者の氏名又は名称 | - | |
(2)登録商標 | - | |
(3)指定商品又は指定役務 | - | |
(4)商標登録の登録番号 | - | |
(5)商標権の設定の登録の年月日 | - | |
(6)専用使用権者の氏名又は名称 | - | |
(7)商標権者等の承諾の年月日 | - |
お問合せ先
輸出・国際局知的財産課
担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234