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農林水産省

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事業者へのインタビュー:味の素株式会社

sdgのロゴ 事業者へのインタビュー

味の素株式会社
味の素取材風景
取材日:2019年1月29日  
(味の素株式会社本社にて)
インタビューで取り上げたSDGs
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   味の素グループは、「うま味」の発見を起点に、同社は、「おいしく食べて健康づくり」という創業の志のもと、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでおり、事業で産み出す未来の価値を、経済価値とSDGsで表わされる社会価値双方で表わすことを重視しています。
   この度、企業のCSV活動とSDGsの取組について、味の素株式会社の環境・安全・基盤マネジメント部長、田中清さんと食品事業本部食品統括部スタッフグループシニアマネージャー、井上公司さんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。

写真左:環境・安全・基盤マネジメント部長 田中 清さん
写真右:食品事業本部食品統括部スタッフグループシニアマネージャー 井上 公司さん

味の素の社是

原点はASV(Ajinomoto Group Shared Value)

   当社は、日本人の栄養状態が非常に悪かった時代に、欧米に追いつこうと、健康づくりや栄養改善のために、うまみ調味料(味の素)を世に出した会社です。創業以来、一貫して事業を通じた社会課題の解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創造することで経済価値を向上し、成長につなげることを目指しています。この取組をASV(Ajinomoto Group Shared Value)と称し、味の素グループ”Our Philosophy”の中核に位置づけています。
   ASVについて当初は、「どのように取り組んだらよいのか」、「CSRと何が違うのか」という現場からの声が多く、理解を深めるべく様々な教育、啓発の機会を設けました。2016年から社内表彰制度をASV観点で見直し、「ASVアワード」としたのもこの一環です。

ASVアワード
取組の紹介
ASVアワード大賞
   2016年度のASVアワード大賞は、「ベトナムにおける栄養改善への取組」でした。
ベトナムでは、栄養教育が発展していない状況で、甘い食べ物やジャンクフードが普及してしまい、子供の肥満が社会問題化しています。こうした状況を改善するために、味の素では、食育活動や小学校給食の品質改善を総合的にサポートしています。味の素が給食センターを立ち上げ、調味料は自社製品を使用していますので、ボランティアではなく、事業活動としての取組です。
   現在では、同様の活動をタイやインドネシアでも展開しています。
ベトナムにおける栄養改善への取組

SDGsはASVを外の世界に伝えるための共通言語

   味の素の取組を表すASVですが、社外に対しては、なかなか理解してもらうことができませんでした。その課題を解消してくれたのがSDGsです。SDGsは国連によってオーソライズされたものであり、味の素が世界の一員として示していくべき価値を伝える手段としてとてもわかりやすく、ASVの方向性の「ものさし」にもなってくれるのではないかと考えました。
   SDGsについて議論を始めた当初は、17の目標・169のターゲットのすべてに取り組むべきかなど悩み、議論もしました。その結果、SDGsの個々のターゲットを細かく考えるよりも、誰も取り残さず、地球全体がいい社会になるようにというアジェンダ2030の理念を重視して、我々が事業の中で特に重視することを選びました。

グループ方針

SDGsは目指すべき未来

   味の素では事業で産み出す未来の価値を、経済価値とSDGsで表わされる社会価値双方で表わすことを重視しています。
   具体的には、商品の売上などの経済価値KPIに加え、それによって社会にどのような価値が生まれるかという社会価値KPIの目標もあわせて設定しています。これらのKPIは現状でできることの積み上げではなく、将来、味の素グループが目指すべき世界を実現するための目標として、バックキャスティングで設定しました。目標達成に向けては、まず現状とのギャップを認識し、その上でロードマップを描くこと、そして節目の段階では再度ギャップの有無を示し、なぜギャップが生じているか、ギャップ解消の施策を開示していくことが重要だと考えています。
   また、こうした目標を立てることは、従業員一人ひとりが社会への貢献を明確に意識することにつながります。例えば調味料販売は、野菜や肉摂取量増加、栄養バランス改善につながる、ということがはっきりと意識できます。
   SDGsで目指す社会の達成には、一企業だけの努力だけでなくより多くの企業、ステークホルダーとの連携、協働が必須です。例えば食品ロスであれば、まずは当社が担う製造工程での目標設定、達成ですが、最終的にはバリューチェーン全体、流通・お客様の段階での廃棄・リサイクルについても考えなければ問題は解決しません。自社だけではできない問題について、どのように働きかけ、どのような解決策を見出していくかということが、これからの課題です。

2020年度
統合目標
(例1)
社会価値
KPI
社会価値KPI_01
経済価値
KPI
うま味調味料+約10万トン
風味調味料+約9万トン
2020年度
統合目標
(例2)
社会価値
KPI
社会価値KPI_02
経済価値
KPI
コスト削減  ▲100億円

商品を通じた日本型食生活の
改革~「勝ち飯®」~

   味の素では、多彩な商品群を活用し「勝ち飯®」「減塩」など具体的なレシピ提案でASVとSDGsの実現を目指しています。
  「勝ち飯®」とは、「何を食べるか」ではなく、「何のために食べるか」を考えながらおいしく食べて、カラダづくりやコンディショニングを行う栄養プログラムのことです。「勝ち飯®」には朝食、昼食、夕食の3食の「食事」と、必要な栄養をタイミングよく摂る「補食」の2つの要素があります。
近年では、栄養管理のアドバイスや合宿時のメニュー開発、海外遠征先での食事提供など、活動内容は進化を続け、多岐に渡ったトップアスリートの強化支援に取り組んでいます。オリンピック・パラリンピックおいても「勝ち飯®」で選手をサポートしています。また、東京オリンピック・パラリンピックにおいては、東京2020オフィシャルパートナー(調味料、乾燥スープ、アミノ酸ベース顆粒、冷凍食品)として、日本代表選手団を応援するとともに、コーポレートスローガンである“Eat Well, Live Well.”の実現を目指します。
  「勝ち飯®」はこれまでの知見を凝縮し、健康・栄養情報や無理なくおいしく作ることのできるテーマ別献立を「勝ち飯®」として量販店の店頭やWeb上で発信し、生活者のからだづくりを応援しています。

勝ち飯のイメージ

SDGsを踏まえたマテリアリティの改定~社内の変革~

   味の素では、2015年に重点課題(マテリアリティ)のマッピングを行いましたが、SDGsの採択などの社会動向を踏まえて2017年に見直しました。この中では、職場や従業員に関する事項を「事業活動の基盤」として明確に位置づけています。
   実際に職場の変化も実感しています。特に、社員の年間総実労働時間が1,800時間以下となることをめざして、「どこでもオフィス」(テレワーク)の推進や、コアタイムなしのフレックスタイム制度の導入、本社での8時15分始業・16時半終業への変更、水曜日の17時退社の徹底などによって、一人ひとりの働き方や暮らし方の意識を変える取組を行っています。
   また、「より質的な改革」の実現に向けて、会議などおける紙媒体資料の使用を控え、タブレットや映像モニターを積極的に活用することによって、ペーパーレスを推進し、資料作成等の時間削減に加え、紙の使用量も各段に減少しました。

マテリアリティのマッピング
取組の紹介
第18回テレワーク推進賞「会長賞」
外部サテライトオフィス首都圏を中心に外部サテライトオフィスと契約
   味の素(株)は、2014年にワークライフバランス向上・生産性向上を目的にテレワーク制度を導入。2017年にはテレワークの実施場所や利用回数の上限を大幅に緩和して、よりフレキシブルな勤務制度「どこでもオフィス」に変更し、経営トップ自らが働き方改革を率先垂範、テレワークの対象者を全社員3,500人に拡大しました。日本テレワーク協会主催の第18回テレワーク推進賞においては、テレワークの実践事例と促進事例が評価され、第18回テレワーク推進賞会長賞を受賞しました。

SDGsがASVを進化させる

   われわれは、創業の志を受け継ぎ「食」と「アミノサイエンス」の事業を通じて人と地球の健やかな未来に貢献する、持続的成長力のある「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」の実現に取り組んでいます。そのマイルストーンとして、グローバル食品企業トップ10クラス入りに挑戦しています。
そのためには事業展開、財務的な指標はもちろんのことSDGs等の国際的目標に適合したESG目標と実行計画でイニシアティブを発揮することが必須と捉えています。
   ESGに関する社会の関心も加速しており、最近は、パーム油の問題や食資源の確保などのお問い合わせが非常に増えていると感じています。特にミレニアル世代は意識が高く、SNSを通じて必要情報の積極的入手が顕著です。こうした世代が消費の中心になっていく時にもきちんと応え、実現させる力を持ち続けられるようASVを更に進化させていきます。

味の素株式会社の皆様、
インタビューのご協力ありがとうございました。
※インタビューで扱った内容は
企業が取り組むSDGsの一部です。

お問合せ先

大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ

代表:03-3502-8111(内線4139)
ダイヤルイン:03-6744-2065