令和6年度食品の安全性に関するリスク管理検討会 議事概要
日時
令和7年2月26日(水曜日)09時33分~12時02分
場所
中央合同庁舎第4号館 全省共用108会議室及びWeb会議(Microsoft Teams)
出席者
常に参加するメンバー
阿部氏、島原氏、天坊氏、早川氏、平野氏、廣田氏、森田氏、山口氏
農林水産省消費・安全局 坂田審議官
食品安全政策課 新川課長、浮穴室長、漆山課長補佐、吉田課長補佐、今村課長補佐、勝田企画官
農産安全管理課 三浦課長補佐
畜水産安全管理課 塩田課長補佐、和田課長補佐、吉戸課長補佐
各議事の概要
1.議題と主な議論
議題1:令和6年度食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画の実施状況及び今後の対応について
資料4に基づき、令和6年度食品の安全性に関する有害化学物質、有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画の実施状況及び今後の対応について、農林水産省(漆山課長補佐)から説明。主な意見や議論の内容は以下の通り。
- はちみつ中のピロリジジンアルカロイド類のサーベイランス
(森田氏)はちみつのピロリジジンアルカロイド類のサーベイランスについて、本来は令和6・7年度に実施予定であったが、先送りとなっている。今後の見通しを教えてほしい。
(塩田補佐)はちみつのピロリジジンアルカロイド類については、試料の収集に時間を要したことにより、当初計画より遅れているが、既に分析は開始しており、令和7年度中には完了予定。
- 農畜水産物中のPFASのサーベイランス
(森田氏)麦類中のかび毒の調査については、病害虫発生予察情報等を受けて、特定の産地の追加調査に柔軟に対応しているものと感じた。農産物中のPFAS調査のコメの30点の追加は、同様の状況で特定の地域の試料を追加しているのか、統計的な解析に必要な試料を増やすためか、考え方を教えてほしい。
(漆山補佐)サーベイランス・モニタリング計画に基づくPFASの実態調査は、日本全国の濃度分布の実態を把握することが目的であり、市販の流通品を対象としており、特定の産地に着目したものではない。追加調査分の試料についても同様。なお、環境中の水の調査が各自治体で進む中で、環境中濃度が高い地点が判明してきており、研究事業において、一部の自治体に協力いただき、少ない点数ではあるがケーススタディとして、土壌や水中のPFAS濃度が高い場合の農産物への移行・蓄積についての調査研究も別途実施している。
(森田氏)PFASについては、国民の関心が高いため、コメ・牛乳・鶏卵・マイワシ・マダラの調査点数の追加も含めて、サーベイランスの手厚い実施はよいことと考える。一方で、令和3・4年度の調査では、ウナギや二枚貝など海外で高い濃度で検出されている品目について、調査点数を当初計画よりも縮小していたものと承知。令和6年度に調査が行われたアサリは海外でも高濃度の検出の報告があるため、二枚貝は手厚い調査を行うのがよいが、マイワシとマダラの調査点数を追加した理由は何か。また、牛乳や鶏卵についても、海外でも検出事例があるものと承知しており、追加調査の実施は妥当。農畜水産物それぞれで、調査点数の追加など迅速に対応している点はよいことだが、品目選定の考え方を教えてほしい。
(漆山補佐)PFAS調査における具体的な対象品目の選定の考え方は、令和7年度の調査計画の議題の中で事務局から説明し、議論させていただきたい。
- 水産物中のダイオキシン類のサーベイランス
(山口氏)水産物中のダイオキシン類の調査について、これまで魚種を変えて分析を実施してきた経緯は承知しているが、カタクチイワシを選定した理由は何か。また、カタクチイワシについては、シラスやアンチョビのような、様々な形態、サイズがあり、乾燥品や蒸したものなどもある。今回の調査では、生鮮品と加工品のいずれを対象としたのか。併せて、産地はどこか。
(和田補佐)過去の調査でダイオキシン濃度が高かった魚種11品目をローテーションで分析。ダイオキシンの調査では、水揚げされた生鮮品を対象としている。産地は、漁獲量を勘案して選定している。
- 飼料原料中のダイオキシン類のサーベイランス
(山口氏)飼料原料中のダイオキシン類の調査について、調査対象の魚粉や魚油は、国産品よりも輸入品が多いものと認識している。今回の調査では、国産品と輸入品のいずれを対象としたのか。
(吉戸補佐)輸入の割合も考慮し、輸入品と国産品の両方を調査対象としている。
- 調査結果の公表の仕方について
(平野氏)農産物に関して、調査データの公表資料には、産地の名前等も入るのか。また、調査にあたっては、JA等が協力して、試料の提供を行っているのか。調査結果は、都度、農水省のウェブサイトに公表するのか。
(三浦補佐)基本的には産地ごとの値は公表しない。日本全体の傾向として、濃度分布等に関する結果を公表。調査試料の収集方法は調査により異なるが、例えば麦類中のかび毒の調査ではJAから産地段階の試料を提供していただき分析している。調査によっては市場流通品を購入するケースもある。公表方法も調査により異なり、特定の調査単独で結果をウェブサイトに掲載するケースもあれば、定期的に農林水産省が編纂している実態調査結果のデータ集に掲載するケースもある。
(森田氏)平成30年度分までの調査結果は、農林水産省のウェブサイトの調査結果のページに掲載されていることを確認した。一方で、例えば、昨年度に実施されたトランス脂肪酸の調査結果は、トランス脂肪酸のページに掲載されている等、消費者として最新の調査の結果を見つけにくい。年度ごとの調査結果のとりまとめは行っていないのか。
(漆山補佐)個別のハザードごとの調査結果のとりまとめの他に、データ集として調査したハザード全体を定期的にとりまとめ、整理して公表している。個別のハザードごとの情報発信ページでは、最新の調査結果を掲載しているため、データ集を掲載しているページに相互リンクを貼る等、情報発信の方法は工夫したい。
議題2:食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング中期計画の実施状況について
資料5に基づき、食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング中期計画の実施状況について、農林水産省(漆山課長補佐)から説明。主な意見や議論の内容は以下の通り。
- 中期計画の優先度について
(山口氏)中期計画について、「優先度A」の方が、優先度が高いという理解でよいか。
(漆山補佐)「優先度A」のものは、現行中期計画期間内に確実に調査を実施することとしており、「優先度B」よりも調査の優先度が高い位置づけである。ただし、中期計画策定当時の状況である点にはご留意いただきたい。
- かつおの削りぶし中の多環芳香族炭化水素類(PAH)のサーベイランス
(山口氏)かつおぶしの製造時には、薪で焚き上げて燻す工程があるため、どうしてもPAHはかつおぶしの表面に付着する。EUではPAHについて厳しい最大基準値を設けているが、米国や東南アジアでは最大基準値を設けていない中で、そもそもPAHがハザードなのかどうか疑問に思っている。荒節、枯節、本枯節のいずれを分析するのかによっても異なると考えるが、高濃度で検出されるので、EUの規制への対応は現実的に難しい。
(漆山補佐)PAHについて、EUで最大基準値が設定されていることは事実であるが、その基準の妥当性の評価は難しい。国際的なリスク評価では、食品からのPAH摂取によるリスクが決して高いわけではないと評価されているが、一方で、コーデックス委員会においては、燻製食品や直火調理食品については、製造工程の改善により濃度を低減できる余地があるため、できる限りPAHの付着を抑えるような製法に取り組むべく、実施規範が作成されている。日本のかつおぶし関係の事業者団体においても、できる限りPAHを低減するための観点から、自主的なガイドラインを策定している。こうした取組の状況について検証していくことを目的として調査を計画している。なお、EUの基準値を目標としてリスク管理を実施しているわけではない。
(山口氏)日本からEUに輸出可能なかつおぶしを2社が製造し、EUの最大基準値の遵守が可能であるが、通常のかつお節の燻製と方法が異なっており、風味が異なる。水産加工品について、「かつおのたたき」についても、香りづけの藁や薪の種類や焚き方によって、PAHの発生状況が異なる。加工品の調査では、燻製に用いるチップ等に着目するとよいと感じている。
(漆山補佐)農林水産省において、過去に食品中のPAHの低減に資する研究事業を実施しており、薪の種類や水分含量によりPAHの発生状況が異なることを確認している。こうした情報を関係業界とも共有しながら、取組を進めてまいりたい。
- リステリア・モノサイトジェネスについて
(森田氏)スプラウト等のサーベイランスは実施済であるが、直接消費用(RTE)の調理食品のサーベイランスは未実施とのこと。消費者庁で、現在、賞味期限表示のガイドラインの見直しの検討会を実施しており、安全係数をできる限り1に近づけ、賞味期限を延ばし、食品ロスの削減を図ろうとする動きがある。その中で、微生物の専門家からは、リステリア・モノサイトジェネスは4℃などの低温でも増殖するため、安全係数を上げてしまって問題ないか、との懸念の声があり、冷蔵の温度をより低くするべきである、とも提言されている。検討中のガイドライン案でもリステリア・モノサイトジェネスについては注意喚起が予定されている。食品ロス削減の観点から賞味期限が延びてしまう流れによる影響を心配しており、RTE食品について最新のリステリア・モノサイトジェネスの汚染実態調査をいずれかのタイミングで行うべきではないか。
(阿部氏)リステリアによる食中毒は、他の病原微生物と異なり発症に時間がかかるため、食中毒統計上で把握が難しい可能性があり、症例や汚染の実態が不明な状況のままではよろしくない。できる限り早くRTE加工食品のサーベイランスを実施してほしい。惣菜製造事業者の中でも、問題意識を持っており、分析機関への問合せもあると聞き及んでいる。消費者と食品事業者の双方にとって関心の高い案件であるため、令和7年度とは言わないが、調査の実施をぜひ検討してほしい。
(今村補佐)農林水産省においても情報を収集し、対応方針を検討したい。
- 加工食品中のアクリルアミドのサーベイランス
(廣田氏)令和5年度までの実態調査で、統計的に低減が確認されていることは承知。スナック類や菓子類には一度区切りをつけ、令和6年度は乳幼児用穀類加工品に対象を拡大しているのか。調査対象には、乳幼児用のミルクやベビーフード、幼児用おやつ等も含むのか。
(勝田企画官)御指摘のとおり、ポテトスナック類については、業界の努力もあり、ここ10年でアクリルアミドの濃度は半減している状況。一方で、諸外国の動きとして、乳幼児用加工食品の実態調査や基準値の必要性が議論されている。そうした中、限られた予算の中で、低減が確認されているポテトスナック類よりも、乳幼児用加工食品の調査を優先すべきと判断し、令和6年度に実施した。具体的な調査対象品目として、乳幼児用のミルクは含まれず、菓子類や麺類、パスタ類、シリアル類を調査対象としている。
議題3:令和7年度食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画(案)について
資料6-1~資料6-3に基づき、有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画の考え方及び有害化学物質、有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画(案)について、農林水産省(漆山課長補佐、三浦課長補佐、吉田課長補佐、今村課長補佐)から説明。主な意見や議論の内容は以下の通り。
有害化学物質
- モニタリングについて
(天坊氏)調査の実施方法について、モニタリングをFAMICに限定している意図は何か。
(漆山補佐)モニタリングは、基準値が設定されている飼料を対象とした検査となるため、基本的にはFAMICが実施する。一方で、飼料についてもサーベイランスは、民間分析機関に委託することもある。
- 農産物中の重金属のサーベイランス
(平野氏)令和7年度の農産物中の重金属の調査計画において、バレイショやホウレンソウ等を対象とした背景を教えてほしい。
(三浦補佐)平成21~26年度の国産農産物中のカドミウムの実態調査(前回調査)から10年以上が経過しており、今後カドミウムの国際基準値の見直しが行われる可能性もあるため、順次情報収集を行いたい。コメについては令和6年度までに調査を実施し、調査終了を予定しているが、その他の農産物中にもカドミウムが含まれていることが知られている。そこで、前回調査の結果でコメ以外に主要な摂取源と推定されたもののうち野菜類の4品目と、指定野菜のうち前回未調査の2品目を令和7年度の調査対象品目として選定した。なお、調査の効率的な実施の観点から、カドミウムに加えて、食品中のハザードとして知られている他の金属元素についても同時に分析しデータを取得したい。
(天坊氏)調査対象品目のレタスを結球レタスに限定しているのはなぜか。
(三浦補佐)日本国内での生産量に応じて、調査を計画しており、結球レタスは非結球レタスに比べて圧倒的に生産量が多いため選定した。なお、結球レタスと非結球レタスで、根からの重金属類の吸収に大きな差はないかもしれないが、農薬の残留傾向は大きく異なることが知られており、こうした調査では葉菜類は結球と非結球で分けて考えることが基本。
(平野氏)コメではカドミウムの基準値を超過し、流通停止となるケースがあるが、前回調査の結果に鑑みて、コメ以外の農産物でカドミウムの基準値を超過し流通停止となるようなケースは想定されるのか。
(三浦補佐)日本国内において、カドミウムの基準値が設置されているのはコメのみであるため、流通停止の可能性があるのはコメのみ。なお、国際基準値は、様々な野菜類にも設定されているが、前回調査においては、ほとんどのサンプルが国際基準値よりも低い濃度であった。
- 農畜水産物中のPFASのサーベイランス
(阿部氏)水道水や製造用水は、活性炭やイオン交換樹脂等により処理されており、PFAS類が低減されているが、自然の河川水や地下水で栽培している農産物の実態を調査することは意義深いと考えている。統計調査的なサーベイランスに加えて、低減対策やメカニズム等のリスク管理措置についても並行して考えなければならない。実態調査データの公表に加えて、レギュラトリーサイエンス研究等も含めたリスク管理上の施策等についても、併せて公表してほしい。
(浮穴室長)年次計画に基づくサーベイランスとしては、全国の実態調査として、日本人が通常食している農畜水産物中のPFASの濃度分布を調査しているが、別途、レギュラトリーサイエンス研究としては、環境中から比較的高濃度のPFASが検出されている地域で、自治体にも協力いただきながら農作物の栽培試験を進めている。得られたデータは、順次、わかりやすく消費者や生産者の方に情報提供しながら、PFASのリスクへの理解を深めていただきつつ、対策の必要性について、データに基づき検討してまいる。PFASの作物への吸収メカニズムや低減対策についても、国内で知見が非常に限られているため、現在研究を推進しており、それらの結果も踏まえながら、必要があれば現場で実施可能な対策に結び付けていく。
(早川氏)PFASについては、現在は水が中心であるが、生協の組合員からの問合せも多く、今後、国民の関心が食品に移る可能性がある。次年度の調査対象品目の候補の中に小麦があるが、これは国産の小麦を対象とするのか。
(漆山補佐)小麦に限らず、農畜水産物いずれも、まずは国産品を対象としたPFASの含有実態調査の実施を考えている。
(早川氏)日本人のPFAS摂取量の状況全体の把握のためには、農林水産省の所掌ではないかもしれないが、小麦のような輸入品の割合が多い食品の実態はどのような状況なのか、輸入品も含めた調査を進めてほしい。輸入品の調査事例はあるのか。
(漆山補佐)農林水産省としては、たくさんの調査候補品目がある中で、対策も含めてまずは国産品に焦点を当てている。一方で、PFASに関しては関係府省庁と連携して対応していく必要があり、輸入品の実態調査や日本人全体のばく露評価を、いずれの組織でどのように今後実施するか、リスク管理検討会の場で意見があったことも含めて、関係府省庁と協議していきたい。現状としては、ミネラルウォーター以外の輸入品の調査は行われていないと承知している。
(早川氏)食品安全委員会の評価書においても、早急に食品の濃度分布のデータ収集を進めるべきとされているため、よろしくお願いしたい。
(森田氏)PFASは消費者の関心も高く、水道水やミネラルウォーターの基準値についても、鋭意議論されている。食品安全委員会においても、大気・水・食品由来のばく露のうち、食品由来のばく露量が多いと評価されている。これまで調査点数も増やしつつ、農畜水産物中のPFASの実態調査を実施していることに感謝したい。
(山口氏)水産物中のPFASの調査対象品となっている、ギンザケ・クロマグロ・ブリ・ニジマス・コイは、日本では養殖が多いと考えられるが、来年度は養殖に焦点を当てる方針なのか。また、二枚貝については、カキ、ホタテガイが計画されており、よろしくご対応をお願いしたい。
(和田補佐)魚種の選定については、養殖を含めた生産量や消費量などを勘案し、順次実施している。御指摘のとおり、ギンザケ・クロマグロ・ニジマス・コイについては、養殖品の調査を想定している。
- 農畜産物中のPFASのリスク管理
(森田氏)分析法の検証・開発に関しては、今回、新たに計画もされているが、既に農林水産省のウェブページで農産物の標準手順書が公表されている状況と認識。土壌から農作物へのPFASの移行、蓄積に関するレギュラトリーサイエンス研究は、令和9年度までと長期間を要する。取組や計画の全容がわかるように、農林水産省におけるPFASのリスク管理のロードマップを示してほしい。現時点では国産農畜産物の調査が行われているが、海外では加工食品においてPFASが高濃度で検出された事例もある。
(漆山補佐)PFASについては知見が不足しており、どういった品目を優先して調査すべきかも含めて不明な中でサーベイランスを開始しているが、今後、令和6年度の調査結果やレギュラトリーサイエンス研究の成果等が集まり、どういった品目に移行、蓄積しやすい可能性があるのか等の知見が充実していく。こうした成果も踏まえて、PFASのリスク管理のロードマップや、どういった部分にリスク管理の焦点を当てるべきかについては、別途意見交換の機会を設けたいと考えている。
- 海藻加工品中の重金属のサーベイランス
(森田氏)健康食品で海藻を濃縮したような商品があり、汚染物質の濃度が高い可能性を心配している。海藻加工品としてそうした健康食品は調査対象として想定しているか。
(和田補佐)生産段階のもので、水揚げし、乾燥等させたものを想定しており、健康食品の調査は想定していない。
- 油脂中の3-MCPDE及びGEのサーベイランス
(森田氏)3-MCPDE及びGEについて、消費者としてもリスクが低減されていることがサーベイランスで確認できてよかった。新たに中鎖脂肪酸油の調査を行うとのこと。中鎖脂肪酸油は健康食品としてよく見るようになったが、先日公表された調査結果や手引きに中鎖脂肪酸油に関する情報は含まれていたのか。
(吉田補佐)令和5年度調査の計画策定時点では、市場における中鎖脂肪酸油のシェアはそれほど大きくなく、調査対象としていなかった。今回の調査で知見の不足が明らかとなったため、追加で調査を行いたい。現時点では中鎖脂肪酸油に特化した対策は行っていないが、調査結果を踏まえてその必要性を検討していく。
(早川氏)中鎖脂肪酸油を調査対象として選定した理由は、シェアに対してデータの蓄積が少ないからか、もしくは、中鎖脂肪酸油の特徴として製造工程や構造により3-MCPDEやGEが発生する可能性について既に知見があるからなのか。
(吉田補佐)調査設計の経緯としては、これまでの調査では中鎖脂肪酸油に特化してサンプリングをしていなかったところ、令和5年度調査で中鎖脂肪酸油を含むものが1点サンプリングされた。その際、これまでに中鎖脂肪酸油に関するデータや知見の蓄積がない一方、市場におけるシェアの高まりが認められたため、データの取得が必要と考えた。また、中鎖脂肪酸油の製造工程から考えると、トリグリセリドから中鎖脂肪酸を分離・選別し、再度結合させる場合がある点が通常の植物油の製造工程とは異なるが、3-MCPDEやGEが生成しやすいとされる高温下の工程があることは同じであり、同様に3-MCPDE等が発生している可能性が考えられる一方、他の油と同様に適切な対策が講じられていることで低い値となっていることに期待しているところ。調査結果から低減対策の必要性を検討していく。
(阿部氏)事業者連携調査について、レギュラトリーサイエンス研究でも委員を担っていたので低減技術の内容は承知しているが、決定的な対策手法のない中で事業者は複数の手法の組合せで3-MCPDE等の低減に対処することになるのだろうと認識。今後も取組を進展させる上で事業者と国が連携して知見を集めることは重要であり、製造業としても本調査の実施を応援する。
- かつおの削りぶし中の多環芳香族炭化水素類(PAH)のサーベイランス
(山口氏)かつおの削りぶしは、そのものを食べるというよりも、削りぶしを熱水抽出して得た出汁として消費されるが、熱水抽出液中のベンゾ[a]ピレンについて調査を実施するのか。
(漆山補佐)過去の調査において、熱水抽出液中のPAHについて検証、公表しており、出汁にはPAHがほとんど溶出しないことを確認済。かつお節のベンゾ[a]ピレンの濃度が高くても、出汁として活用する場合には問題はない。
有害微生物
- 肉用鶏のカンピロバクターのサーベイランス
(廣田氏)肉用鶏の衛生水準の向上等に関する検討会の動向に注目している。生産現場での低減対策をきちんと行っていただいた上で、適切な情報提供が重要だと考えている。カンピロバクターによる食中毒の発生事例が後を絶たない現状がある中で、消費者や外食事業者向けの注意喚起が必要と考えている。令和4年度から令和6年度までは、「成鶏、ブロイラー」と区分けをして調査が行われていたが、令和7年度の計画は「肉用鶏」となっている。これは、今後は、肉用鶏を区分けせずに全般的に広く行うという趣旨なのか。
(今村補佐)「肉用鶏」と記載しているが、令和7年度については、地鶏、銘柄鶏、ブロイラーを対象に調査の実施を検討している。
(阿部氏)昨年度も指摘したが、肉用鶏と採卵鶏では飼育期間が異なり、飼育期間が長くなるとカンピロバクターやサルモネラの感染率が高くなる傾向が考えられる。令和7年度の計画において、対象を肉用鶏に特化した理由がわかりにくい。
(今村補佐)カンピロバクター食中毒の原因は、フードチェーン全体で対策が必要だが、飲食店の生もしくは加熱不十分な状態での肉用としての提供が原因と考えられるため、肉用鶏を対象にした調査をまずは実施することを検討した。御指摘のとおり、採卵鶏についても、成鶏で肉として流通する可能性もある。鶏の飼養期間とカンピロバクターの状況について言えば、飼養期間初期にはカンピロバクターの保菌量が低く、途中のある段階でカンピロバクターの保菌量が高くなる一方で、成鶏くらいの週齢まで飼養するとカンピロバクターの保菌量が低減されることが知られている。
その他のご意見
- その他のご意見
(島原氏)本日の議論全体を通して、日本人が食べている食品について、調査を通じて高い安全性が確保されていることを実感した。サーベイランス・モニタリング年次計画案についても、スーパーマーケット協会として異論はない。引き続き継続して調査等を実施していただければありがたい。
議題4:その他の報告事項
肉用鶏の衛生水準の向上等に関する検討会についてと、次年度のリスク管理検討会の予定について、農林水産省から情報提供。
3.今後の予定
令和7年度食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画について、今回の検討会でいただいた質問・意見も考慮し、再度見直しを行い、国内の関係者や関係府省とも調整した上で、3月中を目途に公表する。
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課
担当者:リスク管理企画班
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674