令和7年度食品の安全性に関するリスク管理検討会(第1回) 議事概要
日時
令和7年8月28日(木曜日)10時00分~12時09分
場所
農林水産省共用第1会議室(本館7階 ドアNo.767)(web併催)
出席者
常に参加するメンバー
島原氏、田中氏、天坊氏、早川氏、平野氏、森田氏、山口氏、(廣田氏は欠席であったがコメントを事務局に提出)
構成員以外の有識者
浅見氏、畝山氏、鈴木氏、堤氏、松井氏
農林水産省消費・安全局 尾﨑参事官
食品安全政策課 浜谷課長、阪本室長、漆山課長補佐、勝田企画官
農産安全管理課 三浦課長補佐
畜水産安全管理課 星野課長、塩田課長補佐、和田課長補佐
各議事の概要
1.議題と主な議論
議題1:食品中のPFASをめぐる情勢
資料3に基づき、食品中のPFASを巡る情勢について、農林水産省(漆山課長補佐)から説明。
議題2:令和6年度国産農畜水産物中のPFAS含有実態調査の結果について
資料4に基づき、令和6年度国産農畜水産物中のPFAS含有実態調査の結果について、農林水産省(漆山課長補佐)から説明。メンバー、有識者から以下の意見、情報をいただき、農林水産省から回答した。
- 調査結果についての質問
(田中氏)水産物について、養殖・天然、淡水魚・海水魚、遠洋・近海といった属性の違いにより、濃度差はあったのか。
(漆山補佐)今回の調査は、全国実態を把握することを目的としており、属性の違いや地域の差を比較するような調査設計になっていない。そのため、今回の調査結果からそれらによる差について考察することは難しい。
(平野氏)農畜産物のいずれも高い濃度ではなかった点は理解しているが、その中では鶏卵のPFOS濃度が若干高くなっている。この要因は何が考えられるか。
(星野課長)まだデータ数が少なく、要因についてコメントできる段階にない。今後も鶏卵については調査を継続していく。
(田中氏)分子種によって、農畜水産物中の濃度の違いがありそうな結果であるが、移行、蓄積が異なるとの知見はあるか。
(漆山補佐)分子種によって物理化学性は異なり、移行、蓄積性が違う可能性はある。ただ、移行、蓄積性の違いなのか、環境中の存在実態の違いによるものなのか、今回の結果からは判断できない。分子種ごとの違いについて、有識者から何か知見はあるか。
- 調査結果の受け止め
(島原氏)小売業として、健康への影響が生じる状況にないと理解し安心した。ただ、問題ないにも関わらず高濃度の魚の産地情報等が洩れると、風評被害が発生しかねないため、情報管理はしっかりとしてほしい。なお、スーパーマーケットの現場では、食品中のPFASに関する問い合わせは無いが、ミネラルウォーターに関して、数件の問い合わせがあるような状況。
(天坊氏)地域が特定された場合には風評被害が発生することを懸念。調査結果の公表については誤解の無いようによくよく注意していただきたい。
(山口氏)食品中PFASの国際的な基準値が無いという話があったが、EUで基準値が定められている。その中でイワシ類は他の海産魚より高い基準値が設定されており、海外でも濃度がかなり高いことが知られている。調査結果の示し方については、魚だけが特別高い濃度が出ているように見えてしまうので、消費量を踏まえた実際の摂取量も含めての説明となるように留意いただきたい。
(漆山補佐)食品中のPFASの国際基準は設定されていないが、EUでは水産物を含む一部の食品に基準値が設定されている。今回の調査結果は、EUで設定されている基準値と比較しても高いという結果ではない。
(畝山氏)EUの基準値は実態調査結果に基づくもので、安全性の目安となる基準値ではなく、管理目標といった意味合いと考えるべき。EUの基準値との比較ではなく、TDIとの比較による農林水産省の調査結果の説明の方が、科学的であると考えている。
(森田氏)過去に農林水産省で実施された調査結果と比較して、今回の調査結果をどう評価するか。特異的に高い値についての説明もあったが、農産物、畜産物、水産物の全体感で結果を示すことが重要ではないか。消費者庁が実施したミネラルウォーターの実態調査で目標値を超えるサンプルがあった際には、メディアが製品の特定に動いた事例がある。最大値での摂取量推計も出しており、今回の資料では全てデータを出しているので、全体をみて大丈夫ということがわかり安心した。これをどのように伝えていくかが重要だと考えている。
(漆山補佐)過去の調査とは調査手法が異なるため、全体像であっても比較することは難しい。ただし、環境省の定点調査では環境中の濃度がPFOS、PFOAに関して下がっていることを踏まえると、食品中のPFOS、PFOA濃度も低減傾向にあるのではと推察することはできる。
(浜谷課長)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づき、PFOS、PFOA、PFHxSは使用・製造が禁止されていることから、環境中の水準は下がっている。食品については継続調査の途中であり、現時点では傾向に関して言及できないが、さらにデータが集まった段階で検討してみたい。そうした比較ができるかどうかについては、また有識者の皆様にご相談したい。情報管理について、今回の調査は食品安全上のリスク管理の実施が必要かどうかを日本全体のデータから判断するための調査であり、結果の解釈については丁寧な説明の上で、個別データの情報管理は徹底する。
(堤氏)当方では厚労科研で食品全体からのPFOS、PFOAの摂取量を推定するためのトータルダイエットスタディを実施。その結果では、保守的に見積もっても、TDIを超える可能性は低く、また、水産物の寄与率は比較的高かった。当方のトータルダイエットスタディの結果と今回の調査結果はおおむね整合している。本調査で使用された分析法については、添加回収率や室内再現精度について、EUなどの分析法の性能規準に関するガイダンスの目標値に収まっており、分析法の性能は十分に確保できていると評価できる。助言するとすれば、内標準法のため、内部標準の回収率も性能評価の重要な部分のため、示しておくとよい。さらに、添加回収試験に加えて、認証標準物質の分析も行うと、よりよい性能評価が可能となる。調査結果の公表は直鎖体とすることは賛同できるが、分析法の情報を見ると分岐鎖もモニターしていると思われる。二枚貝と魚類とでは環境汚染物質の代謝が異なり、分岐鎖の検出状況が異なると考えられるが、分岐鎖に関する情報はあるか。
(漆山補佐)分析法の性能評価に関しては、外部精度管理にも参加していることを情報として補足する。今回の調査試料からも、一部、分岐鎖と考えられるピークが検出されてはいるが、分岐鎖の標準試料の種類が限られており、夾雑物なのか分岐鎖なのかの評価や判断が難しい。今後も有識者の皆様とも意見交換しながら、分析法の改良などに取組みたい。また、分岐鎖を含めて定量すべきかどうかは国際的な整合性も重要であり、そうした情報も踏まえて検討していきたい。
(浅見氏)食品安全委員会が収集した事例や海外の知見と比較しても、全体像としては今回の調査結果の濃度は高い値ではなかったと理解。含有濃度の平均値に関しては、特異的に高い試料に引っ張られてしまうため、参考値としてしか使えないと考えるべき。環境中の濃度が高い地域等への心配の声については、別途、知見の収集が必要と考える。今回の結果から、調査品目全体としての摂取量がTDIと比較して高くないことがよく理解できた。
(松井氏)摂取量推計で使用している国民健康・栄養調査については、11月のある1日の食事摂取量を用いており、摂取量に季節変動のある食品については過小評価とならないように留意が必要である。
(漆山補佐)今回の実態調査の解析では、国民健康・栄養調査のデータに加えて、厚生労働省の食品摂取頻度・摂取量調査の特別集計業務の消費量データも勘案し、過小評価とならないように留意した。ご指摘のように季節性のある品目の摂取量推計においては過小評価にならないよう、今後の調査でも十分注意したい。
- 今後の対応について
(松井氏)鶏卵や一部の水産物について、高濃度になった試料について要因調査していくということだが、飼料の調査を行う必要があると考える。農林水産消費安全技術センターでは飼料中のPFAS分析の立ち上げを行っていると聞いており、そうした取組を推進して、飼料中の調査も積極的に行っていただきたい。今回の調査結果では、全体として濃度が低いが、汚染物質はALARAの考え方に基づいてできるだけ低く管理することが望ましく、様々なものを調査していく必要がある。
(星野課長)PFASの含有実態調査は継続中であり、畜産物や水産物についても、さらに点数を増やして調査を実施していく予定。それらの結果を踏まえ、今後必要な調査などご意見をいただきながら、対応を進めていきたい。
(鈴木氏)水産物については他の品目に比べてやや高い傾向があるようだが、TDIと比較すると、安全性について問題があるとは考えられないため、安心をしたところ。アユについては特異的に高い値が出ているということで、要因調査が進むことを期待。水産物は種によって蓄積性が異なる可能性があり、二枚貝についてはアサリを調査しているが、カキ、ホタテ等の主要な貝類についても調査を進めていただきたい。現時点では難しいかもしれないが、可能であれば室内ばく露試験により、水産物の蓄積性についての研究実施を期待する。
(星野課長)アユの高い値であった試料については、深堀りの調査を進める。生産量や消費量を勘案して、カキ、ホタテについては今年度に調査を行う。
(早川氏)今回の調査結果やEUのリスク評価を見ると、淡水魚のPFAS濃度が高いようだが、食品摂取量が少ない品目についての調査を進めていっても、全体として見た際のPFAS摂取量への影響は小さくなる。調査目的を明確にして、今後の調査の対象品目選びをしてほしい。
(漆山補佐)目的はリスク管理措置が必要かどうかを把握することであり、国内において生産量、消費量が多いものを優先して調査していく。現時点では、高い濃度の可能性があるからといって、マイナーな品目の調査は優先度が低いと考えている。
(畝山氏)リスク管理が必要かどうかを検討するための調査であり、食品からのPFOS、PFOAの摂取量がTDIより十分に低いことを踏まえると、PFASに関してリスク管理措置をとる優先度は低いという印象。
(廣田氏)調査の実施と取りまとめに感謝。TDIとの比較で大きな懸念材料のないことは理解する一方で、特にアユなど、特定の検体で特異的に高い値が現れている点が気になる。30点中1点という比率は少ないわけではなく、数値の幅も大きいので、なぜそのような結果が出ているのか、背景や要因の分析などがあれば、消費者も安心できると考える。調査品目が拡大されることについても賛成。今後も引き続き、実態の把握に努めてほしい。PFASへの消費者の関心が高まっていることと比例して、正確ではない情報や、過剰に危険な認識を煽るようなメディアの発信もあり、消費者はよくわからないまま不安が高まっている状況もあると考える。そのため、適切な手段での正しい情報発信をお願いするとともに、理解しやすい言葉でのQ&Aの充実をお願いしたい。(事務局よりコメント紹介)
- 情報発信について
(畝山氏)表よりも図(絵)に目が行くため、TDIと摂取量の比較に関しても文字情報だけでなく、円グラフや棒グラフのようにして提示するとわかりやすい上に、メディアも活用できてよいのではないか。
議題3:農業環境中のPFOS、PFOAのコメへの移行、蓄積性について
資料5に基づき、農業環境中のPFOS、PFOAのコメへの移行、蓄積性について、農林水産省(阪本室長)から説明。メンバー、有識者から以下の意見、情報をいただき、農林水産省から回答した。
- 研究結果についての質問
(田中氏)PFASの分子種の違いが気になる。土壌からの移行、蓄積に差がある等の情報があれば教えて欲しい。仮に、水稲がPFASを吸収している場合、品種間差や生合成経路や代謝経路などのメカニズム研究が進んでいれば教えて欲しい。
(阪本室長)PFASの分子種により移行、蓄積の程度が異なることを示唆する結果は得られているが、それがどのような要因によるかは現時点ではわかっていない。水稲や他の農産物でも試験研究を進める過程で知見が得られた場合には共有する。
- 今後の対応について
(平野氏)玄米中では思いのほかPFOS、PFOAの濃度が低いことが分かったが、そもそも水稲が吸収しないのか、吸収はしているが子実には蓄積されないのか、今後、解明されたら教えて欲しい。
(森田氏)今回の結果をみて安心した。PFOSやPFOAの濃度が比較的高い環境にある地域の生産者が農産物の作付けを心配している様子がこれまでメディアでも多く取り上げられており、そのことが消費者の生産物に関する不安にも繋がっていた。今回の結果は、そういった環境中の濃度が高い地域で試験し、コメのPFOS、PFOA濃度が低いことを示した貴重なデータだと考える。土壌が汚染されていても、農作物は汚染されていないという今回のデータは、たくさんの人にぜひ知っていただきたい。メディアの方たちには上手に報道して欲しい。水産物などでPFAS濃度が高くなる要因についてのメカニズム研究についてはコストがかかるとは思うが、消費者の安心のためにも、調べていただきたい。
(堤氏)玄米へのPFOS、PFOAの移行性が小さいことをデータで示した点で有意義。玄米の濃度が示されているが、とう精や洗米が、PFAS濃度にどの程度影響を与えるか、可能であれば研究していただくと良い。
(阪本室長)精米の影響についても可能な範囲で研究事業により明らかにしたい。ただし、かなり低濃度のものを分析することとなるため、分析法の性能面で評価に限界があるかもしれない。
議題4:食品中のPFASに関するQ&Aについて
資料6に基づき、農林水産省のウェブページで公開する食品中のPFASに関するQ&Aの更新案について、農林水産省(漆山課長補佐)から説明。メンバー、有識者から以下の意見をいただき、農林水産省から可能な限り意見を反映した上で公開する旨を回答した。
- (森田氏)試験研究成果に関するQ20~22への回答についても、「詳しくはこちら」のような詳しい情報への案内を追加すべきではないか。また、特に、環境中のPFAS濃度が高い条件下で実施した試験である点についても回答で触れてほしい。作付け制限などが必要ないことだけでなく、土壌等の浄化は必要ないといった情報も加えるべき。実態調査結果に関するQ11の回答に関しては、14品目による摂取量がトータルダイエットスタディと誤解されないように、食品全体の消費の約3割である点を加えるなど、記載を工夫すべき。
(堤氏)Q11への回答は、食品摂取の全体を評価しているように見えるため、Q11のみを読んでも誤解を与えないように、Q12での記載と重複するが、同様に、食品全体の消費量の約3割ということを追記すべき。
(畝山氏)Q6は「水や食品を通して」との質問になっているので、飲料水を含めて日本人として全体でどの程度PFASを摂取しているか分かる記載とすべき。食品安全委員会の情報発信にも期待したいが、今後、農林水産省のウェブページが一番充実することになると思うので、可能であれば対応して欲しい。
(漆山補佐)厚生労働科学研究で実施中の最新のトータルダイエットスタディのデータが公開されれば当省でも紹介していきたい。
(島原氏)小売りの現場では、消費者からの「安全なのか」という問に対して「安全である」という回答があることは大変ありがたい。今後、消費者からの問合せがあれば、農水省のQ&Aを紹介するようにしたい。
全体を通じて
- (田中氏)是非、消費者や食品事業者などに対しても対面でのリスクコミュニケーションを実施してほしい。
(漆山補佐)我々としても、公表後のリスクコミュニケーションが重要だと考えており、事業者や消費者の皆様に直接伝えることができる場があれば有難いと考える。メンバーや有識者の皆様にも御協力いただきながら、事業者や消費者の方に説明する場を設けていきたい。
議題5:その他の報告事項
食品安全の観点での有害化学物質に対する関心についてのアンケートについて、農林水産省から情報提供。
2.今後の予定
本検討会における調査研究の結果の整理や今後の対応については妥当との判断を受け、後刻、プレスリリースを実施。また、Q&Aについても、本検討会の意見を踏まえて修正の上、後刻、ウェブページに公表。
次回の検討会は、有害化学物質の優先リストの見直しと、次期中期計画の策定に向けた議論を目的に、9月下旬以降の日程を調整の上で開催予定。
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課
担当者:リスク管理企画班
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674




