このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

1 食品ロス削減を目指した国民運動の展開


平成23(2011)年の国連食糧農業機関(FAO)の算定によれば、世界の食料生産量の1/3にあたる13億トンの食料が毎年損失・廃棄されており、これが世界の穀物需給を逼迫させる主要因の一つとなっている中、平成27(2015)年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下「2030アジェンダ」という。)において、持続可能な開発目標の一つに「持続可能な生産消費形態を確保する」ことが掲げられ、その中で「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」こととされました。また、「2030アジェンダ」を受けて、平成28(2016)年4月に開催されたG7新潟農業大臣会合や、5月に開催されたG7富山環境大臣会合等においても、食品ロスが重要な課題として位置付けられました。

我が国では、まだ食べられるのに廃棄されている食品ロスが、平成25(2013)年度の推計で632万トン発生しています。その内訳は、事業系で330万トン、家庭系で302万トンとなっており、「2030アジェンダ」で掲げられた目標を世界全体で達成していくためには、事業者だけでなく、国民一人一人の意識と行動が求められています。

事業者についてみると、我が国では、環境負荷の少ない、循環を基調とした経済社会システムを構築するため、食品リサイクル法に基づき、食品の売れ残りや食べ残し及び食品の製造過程において発生している食品廃棄物等について、食品の製造、流通、消費等の各段階において、発生の抑制に優先的に取り組んだ上で、食品循環資源について飼料化や肥料化等による再生利用を推進しています。

平成28(2016)年度においては、関係省庁が連携して、食品ロスの一つの要因となっている納品期限(いわゆる1/3ルール(*1))等の商慣習について、商慣習見直しの取組の効果や実施に当たってのポイント等を分析・整理し、他の事業者による食品ロス削減の実践を促す取組を行いました。

生産・流通・消費などの過程で発生する未利用食品を食品企業や生産現場などからの寄付を受けて、必要としている人や施設等に提供するフードバンク活動が全国各地で広がりつつあり、まだ十分に食べられる食品について有効に活用されることにより、食品ロスの削減を図るとともに、食品の支援を必要としている人々へつなぐ架け橋として、今後、その活躍が期待されているところです。

一方、フードバンク活動に対する社会的な理解がまだ十分でないことに加え、食品の衛生的な取扱いやトレーサビリティの観点からフードバンク活動団体側の体制を懸念する声があり、食品関連事業者等が安心して食品の提供を行える環境が十分整っていない状況にあることから、食品の提供者である食品関連事業者等の信頼性向上を通じてフードバンク活動団体における食品の取扱いを促進するため、農林水産省は、平成28(2016)年11月に「フードバンク活動における食品の取扱い等に関する手引き」を作成・公表するとともに、フードバンク活動団体と食品関連事業者との情報交換会を、平成28(2016)年11月から平成29(2017)年2月にかけて、全国8都市(札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、福岡)で開催しました。

また、関係者への情報発信の一環として、食育推進全国大会や3R推進全国大会、各種セミナー等において、食品リサイクルと食品ロスの削減について普及啓発活動を行いました。

食品ロスの削減に関連する関係省庁等の連携を図り、消費者自らが食品ロスの削減を意識した消費行動等を実践する自覚を形成するための普及啓発方策について検討・協議する場である「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」(構成員:消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省)において、平成28(2016)年度の取組状況等について情報共有及び意見交換を行いました。

政府広報オンラインに掲載した「おすすめ動画」

政府広報オンラインに掲載した「おすすめ動画」

主に消費者向けの取組として、「食品ロスの削減」をテーマとしたBSテレビ番組、ラジオ番組、音声広報CD、モバイル携帯端末サイト広告及び政府広報オンライン上の「お役立ち記事」、「おすすめ動画」を3R推進月間(*2)である10月に合わせて制作し、政府広報を活用して様々な媒体により幅広い対象に向けた周知啓発をしました(消費者庁、農林水産省、環境省共同制作)。

 
設立総会の様子

設立総会の様子

地方自治体の取組としては、平成28(2016)年10月に福井県を事務局として、「おいしい食べ物を適量で残さず食べきる運動」の趣旨に賛同する44都道府県及び234市区町村(*3)により、広く全国で食べきり運動等を推進し、以て3Rを推進するとともに、食品ロスを削減することを目的とした、自治体間のネットワーク「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」が設立されました。

*1 小売店などが設定するメーカーからの納品期限及び店頭での販売期限が、製造日から賞味期限までの期間を概ね3等分して商慣習として設定されること。

*2 3R(リデュース・リユース・リサイクル)関係8省庁(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)では、3R推進に対する理解と協力を求めるため、毎年10月を「リデュース・リユース・リサイクル推進月間(略称:3R推進月間)」と定め、広く国民に向けて、普及啓発活動を実施しています。

*3 都道府県数及び市区町村数は、平成29(2017)年3月現在の数。

図表2-5-2 全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会活動内容

また、同月には地方公共団体、食品関連事業者及び消費者を対象とした「もったいないを見直そう~食品ロス削減シンポジウム~」(消費者庁、農林水産省、環境省主催、文部科学省後援)を東京都千代田区で開催しました。先進的な取組を行っている地方公共団体や事業者による事例紹介及びパネルディスカッションを行ったほか、参加団体が作成した食品ロス削減に関するパネルや普及啓発資料等を会場内に展示しました。そして、次回の食品ロス削減シンポジウムは、「30・10運動」(*4)を積極的に推進している長野県松本市において、平成29(2017)年10月に開催する予定となっています。

*4 30・10運動とは、会話やお酒に集中してしまいがちな会食や宴会での食べ残しを減らすため、乾杯後の30分後とお開き前の10分間は席について料理を楽しもうという取組です。

「もったいないを見直そう~食品ロス削減シンポジウム~」の開催概要

【参加者数】

約200人

【事例発表者】

  • 福井県「「おいしいふくい食べきり運動」と
    「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」での全国展開」
  • 長野県松本市「松本市の食品ロス削減の取組み」
  • サトレストランシステムズ株式会社「食品ロス削減シンポジウム事例発表」
  • 株式会社イトーヨーカ堂「食品ロス削減の取り組みについて」
  • 一般財団法人日本気象協会「気象データを活用した食品ロス削減事例のご紹介」

【パネルディスカッション】

「地域で見直す“もったいない”」

「もったいないを見直そう~食品ロス削減シンポジウム~」の様子

「もったいないを見直そう~食品ロス削減シンポジウム~」の様子

学校教育に関する取組としては、給食の時間や関係教科の中で、食物を大事にし、食物の生産等に関わる人々へ感謝する心を持つことや、残さず食べたり無駄なく調理したりすること等を指導しています。また、文部科学省では、小学生用食育教材を作成し、その中で食品ロスの削減について取り上げるとともに、平成28(2016)年度から開始した「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」において、学校給食の提供過程で発生する食品ロスの削減を目指したモデル事業を実施しています(事例:社会的課題に対応するための学校給食の活用事業について 参照)。

環境省では、学校給食における再生利用等の取組を促進するとともに、食育・環境教育を推進するため、学校給食の実施に伴い発生する廃棄物の3R促進に関するモデル事業を平成27(2015)年度から実施しており、モデル事業参加学校での給食の食べ残し量の減少や、児童を通じて保護者にも意識や行動の変化がみられています。平成28(2016)年度は実施地域として2市(京都府宇治市、千葉県木更津市)を採択しました(図表2-5-3)。

図表2-5-3 平成28(2016)年度 学校給食の実施に伴い発生する廃棄物の3R促進モデル事業の内容


ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

消費・安全局
消費者行政・食育課

担当者:食育計画班
代表:03-3502-8111(内線4576)
ダイヤルイン:03-6744-1971
FAX番号:03-6744-1974