第6章 食文化の継承のための活動
食生活が多様化する中で、地域の郷土料理や伝統食、食事作法等の食文化を大切にし、次の世代への継承を図るには、地域の食生活改善推進員など国民の生活に密着した活動を行っている食育ボランティアや、高度な調理技術を備えた専門調理師等の役割が重要。
事例:食生活改善推進員による食文化継承の取組
○小学校で「ほうとう」づくり教室(山梨県協議会)
忍野村食生活改善推進員会は、忍野小学校の4年生に郷土料理「ほうとう」づくり教室を実施。かつてはどの家でも日常的に作られていたが、今では自宅で作る人が減っている。郷土料理を自宅で簡単に作れるようにと、教育委員会や小学校と相談したところ、4年生が学校農園でかぼちゃを育てていたことから、これを活用して「ほうとう」づくり教室を行うこととした。
「ほうとう」の由来や歴史を説明して料理を開始。試食の時間には朝食を食べることの大切さや栄養バランスについても説明。
○「だし活」で減塩(青森県協議会)
青森県食生活改善推進員連絡協議会では県と連携して「だし活」を普及。青森県産の煮干しや昆布を麦茶ポットやペットボトルなどに入れ、一晩冷蔵庫に寝かせてだしをとる「水出し」を、スーパー等で来店者が試飲。
また、市町村の乳幼児健診において「だし活」を紹介し、塩分控えめの「だし活味噌汁」等の試食を実施。味覚が発達する幼少期から、塩分控えめの食生活を身につけると、大人になってもうす味を好み、塩分を摂り過ぎない食生活につながることなどを説明。
○京丹後の百寿レシピ(京都府協議会)
京丹後市は、百寿者(100歳以上の長寿の方)が全国平均の2.7倍。丹後の風土が生んだ伝統的な郷土料理として「丹後ばら寿司」が有名。食生活調査を実施したところ、百寿者がよく食べていたメニューの一つとして普及。
京丹後市食生活改善推進員協議会では、食文化伝承事業において、小学生・中学生・高校生や一般の方に「丹後ばら寿司」づくりの講習会を実施。地元のラジオ局「FMたんご」主催の婚活イベントでも講習会を実施するなど、地域活性化の一翼を担っている。
事例:シェフが小学校で体験型・参加型の食育授業を実施
全日本司厨士協会は、各地の保育所・幼稚園・小学校での親子料理教室などのイベント開催や福祉施設での継続的な慰問活動など、総合的な食育の推進・普及を実施。
また、全日本司厨士協会総本部では、世界のシェフ団体と連携し、毎年10月20日をシェフズデイとしており、2016年の世界共通テーマ「ART ON A PLATE」に沿って活動。一般社団法人ニュートリション運動推進会議子どもの健康づくり委員会との共催により、平成28年10月18日に、東京都目黒区の小学校4年生2クラスの合計43名に対して、体験型の食育授業を実施。
授業では、協会会員の都内大型ホテルのシェフとともに児童が自ら特製ソースで野菜のテリーヌに彩りを付け、一方向ではなく参加型の授業として楽しみながら食育を実践。テリーヌに使った根セロリやポロネギ等は、児童に食材を身近に感じてもらうため、見てもらうだけでなく実際に触ってもらった。テリーヌとは何か、どのようなものか、といったことなどの説明から始まり、調理手順や調理の際にゴム手袋をする理由、手洗いのコツなども説明。
切り分けたテリーヌが配られると、児童たちはあらかじめ用意した3種類のソースとミニトマトやグリーンアスパラガスなどの付け合わせで自由に飾り付けをし、完成後に試食。
一般社団法人和食文化国民会議(略称:和食会議)など産学官が一体となって、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」の保護・継承の取組を推進することが重要。
農林水産省では、次世代を担う子供たちへ和食文化を伝えていくため、全国63名の和食料理人が参加する「和食給食応援団」の協力を得て、学校給食を通して和食文化を伝える取組を推進。
地域の食文化を継承していくためには、伝統的な郷土料理や食文化を支えてきた地域の食材等の特徴を理解し、伝えていくことが大切。農林水産省では、地域において市町村や民間団体、JA、生協等が、子供達や子育て世代をはじめとする消費者を対象に実施する地域の食文化や地場産物等への関心を高める取組を推進。
事例:「和食給食応援団」の取組について
「和食給食応援団」は、ご飯と汁物、おかずを基本とした一汁三菜の献立や、年中行事の行事食、地域の郷土料理などの和食文化を、給食を通じて子供たちへ伝えていきたいという熱意を持った和食の料理人や食品企業等による団体(現在、63名の料理人と76社の企業が活動に参加)。
和食料理人等が全国各地の小中学校を訪問して、各校の栄養教諭等と協力しながら、地元の食材を活用した和食給食献立の開発や、だしの取り方などの和食に関する授業を実施しており、授業を受けた子供たちからは、「初めて自分でだしを取ったけど、いい香り」、「『いただきます』と『ごちそうさま』は感謝を込めて言いたい」といった声も上がっている。
平成28年度は「年中行事」をテーマとして、お正月にはお雑煮、冬至にはかぼちゃを使った献立などを提供し、子供たちへ伝統的な食文化を継承していく取組を展開。また、栄養教諭等を対象とした調理実演会も開催し、和食給食の一層の普及を推進。
事例:「第1回全国子ども和食王選手権」開催!
農林水産省では、日本の伝統的な食文化である「和食」やふるさとの「郷土料理」に対する子供達の関心と理解を育むことを目的に、全国の小学生を対象としたイベント「第1回全国子ども和食王選手権」を開催。
小学校4~6年生を対象とした「和食王部門」では、3人一組のチームで和食の知識と技を競った。全国の小学校から約300組を超える応募があり、その中から全国8ブロックの地区予選を勝ち抜いた8組が、平成28年11月20日の全国大会に出場。初代「和食王」に輝いたのは、東北地区代表の秋田大学教育文化学部附属小学校6年生のチーム。
また、小学校1~3年生を対象とした「お絵かき部門」には、全国から500件を超える応募があり、郷土料理や和食の料理を囲む人々の楽しそうな様子などが生き生きと表現された素晴らしい作品が揃った。審査の結果、九州・沖縄地区代表の那覇市立天妃小学校3年生の作品「重箱料理」が金賞を獲得。
事例:地域の食文化の継承(第31回国民文化祭・あいち2016)
文化庁では都道府県等と共催で、国民の文化活動への参加意欲に応えるとともに、文化活動の水準を高めるため、国民一般が行っている各種の文化活動を全国的規模で発表、競演、交流する場として国民文化祭を昭和61年度から毎年開催。
平成28年10月29日から12月3日までの36日間にわたり開催された「第31回国民文化祭・あいち2016」では、碧南市において、地元で生まれた調味料である白しょうゆ・白だしを使ったレシピコンテストを開催。
また、文化庁主催シンポジウム「食文化を考える!~生きるための“食”からおいしい“食”の話まで~」を、国民文化祭・あいち2016の一環として東京で開催。
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