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農林水産省

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4 地域等において、みんなで一緒に食べる食事の状況と取組


(地域等で共食したいと思う人が共食する割合は、増加)

このような状況の中、家族と食事を共にすることは難しいが、誰かと一緒に食事を共にすることにより食を通じたコミュニケーション等を図りたい人にとって、地域や所属するコミュニティ(職場等を含む)等を通じて、様々な人と食事を共にする機会を持つことが重要です。第3次基本計画においても、「地域等で共食したいと思う人が共食する割合」を増やすことを目標とし、平成27(2015)年度に64.6%となっている割合を、2020年度までに70%以上とすることを目指しています。平成29(2017)年度は72.6%と増加しており、目標を超えていました。

地域等での食事会に参加した人の感想としては、「コミュニケーションを図ることができた(86.1%)」「楽しく食べることができた(75.3%)」の順で多く挙げられました。

(地域等での食事会は、参加しやすい身近な場所で)

地域等での食事会に参加していない人に、今後参加する条件を尋ねたところ、「食事会等が参加しやすい場所で開催されること(47.8%)」、「友人や知人からの呼びかけ、誘いがあること(46.1%)」、「食事会等が参加しやすい時間に開催されること(42.1%)」の順で多く挙げられました。地域等での食事会を更に推進するためには、参加者にとって、身近な場所や時間で機会を設け、身近な人からの声かけがあることが重要です。

事例:全社員テレワークの会社は共食でコミュニケーションを促進

シックス・アパート株式会社(東京都)

ウェブサイト構築のためのソフトウェアを開発するシックス・アパート株式会社は、平成28(2016)年から、出社不要のワークスタイル「SAWS(シックス・アパート・ワーキングスタイルの略)」を開始。社員は、自宅やカフェ、外出先の近くのコワーキングスペースなどで働き、必要な時のみオフィスに集まります。

このように、顔を合わせる機会が少ない社員をつなぐコミュニケーションの重要なポイントが、共食です。

隔週の金曜日に10名程度の社員が集まるランチ会は、料理好きの社員手作りのおかずと炊きたてのご飯を食べるまかないランチや、たこ焼きパーティー、鍋会、お花見の季節は外でサンドイッチ会など、毎回趣向を凝らし、開催しています。ランチ会の日には、プレゼンの練習と交流を兼ね、持ち回りで社員が興味のある活動について自由に発表する「ミニプレゼン会」も実施。趣味の話や最近の関心事などテーマは様々ですが、共食とざっくばらんな会話で、社員のコミュニケーションが深まります。

四半期毎に開催する全社員が集まる総会も、キッチン付きのパーティースペースで開催しています。会議終了後の懇親会では、CTO(*1)が腕を振るってハーブたっぷりのトスカーナフライドポテトを大量に揚げ、みんなで食べながら交流を深めました。このフライドポテトはシックス・アパート社員の定番レシピになっています。

毎日出社していた時代から、社員が集まってご飯を食べる機会の多い会社でしたが、普段は社員それぞれ別の場所で働いている今は、共食の重要性がさらに高まりました。

また、働く場所や時間が自由になったことで、多くの社員は家族と過ごす時間が増え、家庭での調理や共食の機会も増えました。充実した食生活はQOL(*2)(生活の質)向上に欠かせません。プライベートの時間が充実し生活の質が上がることで、生活の一部である仕事も生産性高く楽しめると考えています。

社員の手作りご飯を集まって食べることは、普段離れて働く社員同士の親交を深める重要な機会です。今後は、シックス・アパートの社員同士だけでなく、その家族、また他社の方とも共食の機会を作っていきたいと考えています。

普段は、隔週にオフィスでまかないランチとミニプレゼン会を開催

普段は、隔週にオフィスでまかないランチと
ミニプレゼン会を開催

全社員が集まる総会で、揚げたてのトスカーナフライドポテトを提供

全社員が集まる総会で、
揚げたてのトスカーナフライドポテトを提供

*1 最高技術責任者

*2 Quality of Lifeの略

(子供食堂と連携した様々な食育の取組が展開)

近年、地域住民等による自主的な取組として無料又は安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂等が広まっており、家庭における共食が難しい子供たちに対し、食事を共にする機会を提供しています。農林水産省では、子供食堂と連携した地域における食育の推進を図るため、平成29(2017)年度に子供食堂の現状や課題、支援ニーズについて、全国の子供食堂の運営者を対象としたアンケート調査を行いました。主な活動目的として、「多様な子供たちの地域での居場所づくり」や「子育てに住民が関わる地域づくり」が多く意識されていましたが、「子供たちにマナーや食文化、食事や栄養の大切さを伝えること」や「高齢者や障害者を含む多様な地域の人との共食の場の提供」を意識している(「とても意識している」又は「どちらかといえば意識している」)と回答した子供食堂も、それぞれ約7割ありました。

また、提供する食事で意識していることとして、「主食・主菜・副菜をそろえている」(72.6%)、「旬の食材を使用している」(71.2%)と回答した子供食堂が、約7割でした。

また、子供食堂において、子供の食に関する体験活動や、食に関する知識を深めることにつながる食育の取組として、「子供に対し温かな団らんのある共食の場を提供している」(86.5%)が最も多く、次いで、「子供に配膳の手伝いをしてもらっている」(56.2%)、「食材の旬や栄養などについて話して聞かせている」(36.9%)の順でした。

その他にも、食事のマナーや健康、郷土料理等について話して聞かせたり、調理の手伝いや体験の場を提供している子供食堂が約2~3割、農林漁業に関する体験の場を提供している子供食堂が約1割と、ほとんどの子供食堂で食育の取組が行われていました。

コラム:子供食堂と連携した地域における食育の推進活動

子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集

子供食堂と地域が連携して進める
食育活動事例集

子供が一人でも来られる無料又は安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂は、子供にとって食卓を囲み食事を共にする貴重な場であるとともに、地域コミュニティの中での子供の居場所となるといった重要な役割を果たしています。そこで、農林水産省では、地方自治体や地域における食育関係者が、食育推進の観点から、子供食堂の活動の意義を理解し、適切な連携が図られるよう、子供食堂と連携した地域における食育の推進に関連する情報を整理し、ホームページで公表しています。

また、民間のNPOや個人の善意に基づき、発足、運営されている子供食堂の取組を後押しするために、子供食堂における優れた食育の取組について、食育活動表彰により、農林水産大臣賞等を授与しています。

さらに、平成29(2017)年9月から、子供食堂や食育に詳しい有識者、子供食堂やそのネットワークに携わる実践者、地方公共団体の担当者の協力を得て、子供食堂と地域とが連携して食育に取り組む事例の収集や普及啓発に関する検討を実施しました。アンケート調査や子供食堂のヒアリングにより、子供食堂の現状・課題、地域との連携状況を取りまとめるとともに、地域が子供食堂と連携している具体的な事例を、課題や食育の取組ごとに整理した事例集を作成しました。

調査結果から、子供食堂の立ち上げや運営には様々な課題が生じていること、地域住民の方々をはじめ、自治体や社会福祉協議会といった公的な団体・機関、教育機関、NPO法人等の民間団体、町内会や民生委員等の地域組織、民間企業等と連携しながらこうした課題の解決に取り組んでいることも分かりました。

〈アンケートで得られた課題のうち、主要なもの〉
  1. 来てほしい人や家庭の参加
  2. 資金の確保
  3. スタッフの負担、スタッフの確保
  4. 地域との連携
  5. リスク管理
  6. 会場の確保
セミナーでのパネルディスカッション

セミナーでのパネルディスカッション

これらの調査結果も踏まえ、子供食堂の事例を通して、地域で支えるこれからの食育について、食の専門家や子供食堂の実践者、支援者らが語り合うセミナー「地域から広がる食育の環~子供食堂の事例を通して考える~」を平成30(2018)年2月17日に開催しました。セミナーでは、子供食堂を拠点として地域がつながっていくことの重要性等が確認されました。

子供食堂が抱える課題の解決や食育の取組の充実に向けて、行政・団体関係者や地域の方々に活用してもらえるよう、事例集の普及啓発を図ることとしています。

事例:生産者と連携して地産地消に取り組む子供食堂

特定非営利活動法人 NPOホットライン信州・信州こども食堂ネットワーク(長野県)

信州こども食堂ネットワークは、特定非営利活動法人NPOホットライン信州(以下「ホットライン信州」という。)が事務局を務める、長野県全域の子供食堂をつなぐネットワークです。平成28(2016)年1月にホットライン信州(松本市)が長野市内で開催した子供食堂がきっかけとなり、平成30(2018)年1月までに長野県内で50か所ほどの子供食堂が発足し、月1~4回程度、各地で定期的に開催されています。ホットライン信州では、各地の子供食堂に対して、フードバンクに寄付された食料品の配布等の支援を行っているほか、子供食堂を開きたい人を対象としたセミナー開催や、各地の子供食堂の活動をまとめた「信州こども食堂ネットワーク便り」の発行など、情報発信にも取り組んでいます。

JA中野市が提供したきのこに子供は大喜び

JA中野市が提供したきのこに
子供は大喜び

子供食堂を開催するに当たり、「子供たちに栄養のある食事を提供したい」という思いから、生鮮食品へのニーズが高いため、ホットライン信州では、個別生産者や地区農協(JA中野市、JAグリーンながの)から農産物の提供を受け、生鮮食品のフードバンク活動も行っています。生産調整や天気の影響で出荷できない農産物や、規格外の農産物が出たとの連絡が入ると、ボランティアが車で出向いて受け取り、必要としている個人や子供食堂に配布しています。さらに、平成29(2017)年度からは、子供食堂が地元の農産物直売所やAコープで購入した生鮮食品を中心とした食材等の費用を、JAながのが長野県みらい基金と協力し、キャッシュバックする制度を開始したため、一部の子供食堂ではその制度を活用しています。このように、生産者や関係団体と連携することで、地場産物を多く使った食事を提供し、地産地消に取り組んでいます。「子供のために何かしたい」という熱意を持つ生産者は多く、子供食堂への支援を行う若手農家グループを作りたいという声もあり、地域の支援の輪が広がっています。

また、信州こども食堂ネットワークでは、地産地消を意識した食事を一緒に食べるだけではなく、肉を提供してくれる企業の方から肉の部位や「命をいただく」ことについての話を聞いたり、旬の食材を使った一汁三菜の和食を日本古来の箱膳でいただいたり、地域の方々とお正月に餅つきをしたり、インターナショナルスクールの高校生と野外キャンプ場で炊飯をしたりといった多様な取組が行われています。このように、子供食堂での様々な人との交流を通じて「食の楽しみ」を感じるとともに、食に関する知識・自ら学ぶ経験を得て、子供が自分の世界を広げられる居場所となるよう心がけています。

生産者の話「命をいただく」を聴く

生産者の話「命をいただく」を聴く

箱膳で和の礼儀作法を学ぶ

箱膳で和の礼儀作法を学ぶ

また、子供食堂といっても、参加対象者は、子供だけではなく、子供に付き添う親や高齢者、それ以外の大人(18歳以上)を対象としている所も多く、幅広い世代に対する取組が行われていることもわかりました。

事例:農業と食を通じて、多様な世代や暮らしの人々の居場所を作る「畑食堂」

特定非営利活動法人 眞知子農園(島根県)

農作業の様子

農作業の様子

島根県安来市(やすぎ)にある眞知子農園は、広さ約100アールの畑で、無農薬有機農法にこだわった環境にやさしい安心で安全な野菜や果物の栽培を行っています。また、畑や民家を改装した事務所では、不登校や引きこもりなど社会に出にくい子供や若者に対する学習支援や居場所作りの取組のほか、しまね田舎ツーリズム(*1)の一環として農業体験や田舎料理の料理体験を提供するなど地域貢献の取組も行っています。

眞知子農園が開催する「畑食堂」は、みんなで一緒に農作業を行うところから始まります。畑に集まるのは、畑の一部を貸し出している小学校や養護学校の生徒、不登校の子供や引きこもりの若者、大学で農業を学ぶ学生、デイサービスの高齢者、地域のボランティアなど様々です。開催は不定期で、大勢のときもあれば、少人数のときもありますが、一人一人に役割があり、苗を植えたり、草むしりをしたり、野菜を収穫したり、収穫した大豆や落花生の選別をしたり、子供も若者も高齢者も一緒に汗を流します。

小学生が作ったピザ

小学生が作ったピザ

農作業をしたあとは、畑で採れた形が不揃いでも美味しい野菜をふんだんに使った昼食作りです。手作りピザの日は、小学生が育てた大根や養護学校の生徒が育てたサツマイモなど好きな具材を生地に乗せて、畑の脇のピザ釜で焼き上げました。子供たちのピザは、形も乗せる具材も自由な発想で、それを見た大人たちの笑顔がこぼれます。

美味しそうな料理が揃う頃には、みんな腹ぺこです。子供から高齢者まで様々な世代が、大きな食卓を囲み、楽しく昼食をいただきます。その日の農作業や料理の話、地域の昔の話など会話が弾みます。

この「畑食堂」に参加することで、子供たちは多様な大人の中で、農業や食に関する様々な体験ができます。1年間参加した不登校の中学生が料理に興味を持ち、将来を考えて高校に進学したこともありました。

昔は当たり前だった地域の支え合いが希薄になった今、「畑食堂」は子供たちの食育の場であるとともに、社会に出にくい子供や若者が世代を超えた人たちとコミュニケーションを図ったり、高齢者が好きな農作業をしていきいきと過ごせる心地よい居場所として、地域の支え合いの要になっています。

多世代が食卓を囲む昼食

多世代が食卓を囲む昼食

畑で採れた野菜をふんだんに使った料理

畑で採れた野菜をふんだんに使った料理

形が不揃いなにんじん

形が不揃いなにんじん

*1 島根県の農山漁村で、地元の人々との交流を通して、農林漁業体験等を提供する制度。

(食事を共にすることを通じた豊かな食体験の重要性)

子供食堂において、栄養のある食事や温かな団らんを提供することに加えて、様々な食育の取組が行われていることがわかりました。貧困の状況にある子供に対する支援が重要な課題となる中、平成27年度乳幼児栄養調査において、子供の食物摂取頻度について、経済的な暮らし向きにゆとりがない世帯では、魚、大豆・大豆製品、野菜、果物の摂取頻度が低く、菓子(菓子パン含む)、インスタントラーメンやカップ麺の摂取頻度が高い傾向がみられました。この結果から、経済的に暮らし向きにゆとりがない家庭では、健康的な食品の摂取だけではなく、豊かな食体験の機会が少ないこともうかがえます。家庭の努力だけでは、健全な食生活の実践が困難な状況もあり、地域で支えることが更に重要となっています。

(地域の力で、食卓を囲み食事を共にすることから始める食育の環)

家族や仲間など誰かと一緒に食事をすることは、楽しいことです。そして、食卓をみんなで囲むことは、コミュニケーションや豊かな食体験にもつながります。

しかし、家族と一緒に食事をすることは重要であると認識しているものの、自分や家族の仕事の忙しさで、実践が困難な状況があります。また、少子高齢化や世帯構造等の変化で、「孤食」の人は更に増加する可能性があり、特に、高齢者の孤食や貧困の状況にある子供に対する支援などが重要な課題になってきています。

そのような中、子供から高齢者まで幅広い世代を対象とし、地域の力で、様々な人たちが食卓を囲み食事を共にする取組が広がっています。

これらの取組は、バランスよい食事を楽しく食べることに加えて、農業体験等により生産から食卓までの食べ物の循環への理解を深めたり、幅広い世代の交流で、次世代へ食文化や食に関する知識・経験を伝えることにもつながっています。さらには、地域が連携するきっかけにもなっているなど食育の環が広がっています。

食育の環

食育の環



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