1 食育や日本食・食文化の海外展開と海外調査の推進
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、平成13(2001)年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、平成27(2015)年の国連サミットで採択された令和12(2030)年までの国際開発目標であり、相互に密接に関連した17の目標と169のターゲットから成る「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げています。
SDGsアクションプランは、<1>ビジネスとイノベーション、<2>SDGsを原動力とした地方創生、<3>SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメントを3本柱とした「日本のSDGsモデル」を国内実施・国際協力の両面において展開していくために、政府の具体的な取組を示したものです。令和元(2019)年12月、SDGs推進本部は、今後の10年を2030年の目標達成に向けた「行動の10年」とすべく、SDGs達成に向けた日本の中長期的戦略である「SDGs実施指針」を改定するとともに、「SDGsアクションプラン2020」を決定しました。その中で、「食育の推進」は、優先課題<1>「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」のための取組の1つとして位置付けられています。
政府は、我が国の食育の理念や取組等を積極的に海外に発信し、「食育(Shokuiku)」という言葉が日本語のまま海外で理解され、通用することを目指しています。特に近年、「食育(Shokuiku)」に対する各国の研究者の関心は高く、研修や共同研究を通じてその手法や成果を世界に発信しています。
外務省では、海外広報活動の中で食育関連トピックを取り上げています。具体的には、日本の食文化等も取り上げている海外向け日本事情発信誌「にぽにか」を在外公館を通じて配布しています。また、海外のテレビ局で放映され、在外公館でも上映や貸出しを行っている映像資料「ジャパン・ビデオ・トピックス(Japan Video Topics)」においても、日本の食文化や日本食等を紹介しています。令和元(2019)年度は「食育」をテーマにしたジャパン・ビデオ・トピックスを制作しました。
さらに、在外公館等においては、対日理解の促進、良好な対日感情の醸成を目的に各国要人、文化人、飲食・食品業界関係者等に対して日本食等の紹介やデモンストレーションを行うなど、日本の食文化の魅力を効果的に発信する取組を行っています。
農林水産省では、海外の料理学校の生徒・教師や食関連事業者等を対象とした海外での日本食普及セミナーや日本料理講習会において、日本食文化に関するプレゼンテーションや、出汁の引き方・包丁の使い方を始めとした調理の基本、日本産食材の活用方法を学べる調理実演を実施するなど、日本食・食文化の魅力発信に取り組んでいます。また、海外の外国人料理人の日本料理に関する知識・調理技能を習得度合いに応じて認定する「日本料理の調理技能認定制度」を平成28(2016)年度に創設しました。令和元(2019)年度末時点で、前年度に比べて462人増加の1,375人が認定されています。
また、農林水産省の英語版ホームページの、「Promotion of Shokuiku(Food and nutrition education)」で、「食生活指針」、「食事バランスガイド」、「「食事バランスガイド」解説」、「日本型食生活のススメ」の英訳版を掲載しています(*1)。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所では、アジア各国の若手研究者を研究所に招き、研修や共同研究を行っています。令和元(2019)年度国際協力若手外国人研修者招へい事業では、タイ・マヒドン大学栄養研究所の研究者を受け入れました。タイでは、Phulkerdら(2017)の報告(*2)において、食環境の国際評価指標(Food-EPI)を用いて政策が整理されています。本事業では、令和元(2019)年までに更新された食環境に関する政策を整理し、実施状況について再評価を行いました。また、同様の国際評価指標を用いて日本との比較を行いました。食塩摂取の減少に向けた積極的な政策的介入がタイと日本で見られた一方で、日本の「健康増進法」を基にした政策立案や、食育政策のような確立した法律や政策は、タイでは見られなかったことが相違点としてあげられました。
また、スペインとの国際研究において、日本の食育を手本としたスペイン版食育(Eduksano)を推進するため、日本の食育関連の法令、施策、取組とその効果を英語版報告書「Promotion of Shokuiku(Food and nutrition education)-Lessons learned from Japanese context」にまとめました。
*1 Promotion of Shokuiku(Food and nutrition education)(農林水産省):https://www.maff.go.jp/e/policies/tech_res/shokuiku.html
*2 Phulkerd S. et al. Level of implementation of best practice policies for creating healthy food environments: assessment by state and non-state actors in Thailand. Public Health Nutrition. 2017, 20(3), 381-390.
事例:“おにぎり”で世界の貧困問題を解決する「おにぎりアクション」
特定非営利活動法人 TABLE FOR TWO International(東京都)

#OnigiriActionロゴマークと
「おにぎりアクション」の仕組み
特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International(以下「TFT」という。)は、世界の肥満と飢餓を解決する日本発の社会事業として、開発途上国における貧困や飢餓の撲滅、子供たちへの教育機会の提供などSDGsの達成に向けた取組を行っています。先進国に住む人々と開発途上国の子供たちが食事を分かち合うというコンセプトの下、社員食堂や飲食店でTFTヘルシーメニューを購入すると代金の一部が寄附となり、飢餓に苦しむ世界の子供に給食1食分を提供する取組を行っています。これまでに、企業や官公庁、大学、病院など約720団体が参加し、給食約7,000万食をアフリカやアジアの開発途上国の子供たちに届けています。
平成27(2015)年度から開始した「おにぎりアクション」は、国連が定めた「世界食料デー(10月16日)」を記念し、毎年秋に約1か月半開催しています。おにぎりに関連する写真に「#OnigiriAction」を付けてFacebookやInstagram、Twitter等のSNS、又は「おにぎりアクション」の特設サイトに投稿すると、1枚の写真投稿につき給食5食分に相当する寄附を協賛企業が提供し、アフリカやアジアの子供たちに給食を届ける取組です。
5回目の開催となった「おにぎりアクション2019」は、令和元(2019)年10月7日から11月20日まで開催され、合計約30万枚のおにぎりにまつわる写真の投稿があり、約8,000人の子供たちに1年分の給食(約160万食分)が届けられることになりました。身近な食べ物をシンボルとした写真投稿で世界の食料問題解決に参加できる仕組みを構築したことで、幅広い層に対し、世界の貧困・飢餓問題について学ぶ機会を提供しています。学校や家庭においては、おにぎりアクションを機に協賛企業が提供する商品や教材を活用し、世界の課題についての知識を深める食育の機会ともなっています。また、日本語と英語の両方で情報発信・啓発活動を行っており、世界約50か国からおにぎりの写真が投稿され、米国では親子でおにぎりを作るイベントも開催されるなど、日本の食育・食文化を世界へ発信することにもつながっています。このほか、アクションの趣旨に賛同した約50の企業が、協賛・寄附、寄附付き商品の販売、サービスの提供など、SDGs達成に向けた啓発活動を実施しました。
このような取組は、飢餓問題の解決に留まらず、給食提供を受けた開発途上国の子供たちの学校出席率が飛躍的に改善した地域が見られるなど、教育機会の提供にも直結するものとなっています。
令和元(2019)年12月には、顕著な功績が認められ「第3回ジャパンSDGsアワード」SDGs副本部長(外務大臣)賞を受賞しました。
事例:諸外国の食育施策-フードガイドの紹介
我が国には、「食生活指針」を具体的な行動に結びつけるものとして、「食事バランスガイド」があります。他の国でも同様に、健康的な食生活を実践するためのフードガイドが作成されています(*1)、(*2)。
【米国】

「My Plate」
農務省(Department of Agriculture:USDA)及び保健福祉省(Department of Health and Human Services:HHS)が作成した「アメリカ人のための食生活指針2015-2020」に基づき、健康的な食事パターン実践のための一般向けツールである、「My Plate」が作成されています。
赤:果物、緑:野菜、紫:たんぱく質、茶色:穀物、青:乳製品と色分けし、望ましい食事内容のバランスを面積で表しています。
【英国】

「Eatwell Guide」
保健省(Department of Health)が作成した「Eatwell Guide」は、健康的でバランスのとれた食事のために何をどのくらい摂取すればよいか、5つの食品群の割合で示しています。例えば、果物・野菜は1日5ポーション(単位)以上の摂取が推奨されています。イラストを用いて分かりやすく表現するとともに、「容器包装の表示をチェックしましょう」等のメッセージも記載されています。
【韓国】

「Food balance wheel」
2016年に保健福祉部(Ministry of Health and Welfare)が、農業畜産食品部(Ministry of Agriculture, Food and Rural Affairs)、食品医薬品安全処(Ministry of Food and Drug Safety)とともに作成した指針に基づいて、韓国栄養学会(The Korean Nutrition Society)が作成した「Food balance wheel」は、自転車のイラストを用いて、5つの食品群の推奨量を示しています。バランスのとれた食事と定期的な運動の重要性を表しています。
*1 Food-based dietary guidelines(国連食糧農業機関(FAO)):http://www.fao.org/nutrition/education/food-dietary-guidelines/en/(外部リンク)
*2 他の国ではどんなフードガイドを用いているの?(農林水産省):https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/evidence/gaikoku.html
ご意見・ご感想について
農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。
白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
送信フォームはこちら。
お問合せ先
消費・安全局
消費者行政・食育課
担当者:食育計画班
代表:03-3502-8111(内線4576)
ダイヤルイン:03-6744-1971
FAX番号:03-6744-1974