2 海外における食生活の改善等
世界では現在、約8億人が栄養不足に苦しんでおり、その大半が開発途上国で暮らしていると推計されています。
このような窮状を改善するため、我が国は、様々な形で取組を行っています。政府としては、食糧不足に直面している開発途上国からの援助要請を受け、食糧援助規約に基づき食糧援助を実施しており、令和元(2019)年度には二国間及び国際機関との連携で80.5億円(平成30(2018)年度は95.0億円)の支援を実施しました。また、我が国は、国連食糧農業機関(FAO(*1))に対して、令和元(2019)年度には約53億円の分担金を拠出するとともに、国連世界食糧計画(WFP(*2))に対して、難民や被災者に対する緊急食料支援等を行うために、令和元(2019)年度には約197億円を拠出しました。
我が国は、平成29(2017)年12月に「UHC(*3)フォーラム2017」を開催しました。本フォーラムでは、水・衛生分野とともに栄養分野をUHC達成のための重要な基礎分野として取り上げ、我が国において栄養サミットを開催することを発表しました。
さらに、官民連携による栄養改善の取組の国際展開を推進するため、平成27(2015)年3月に健康・医療戦略推進本部の下に栄養改善事業の国際展開検討チームが設置されました。検討の結果、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて世界的な栄養改善の取組を強化するために、平成28(2016)年9月に官民連携「栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP(*4))」が設立されました(*5)。設立以降、NJPPP には約70の民間企業及び団体が加入し、営利事業として持続可能なモデルを構築することを目指して一体的に活動しています。
平成30(2018)年度に引き続き、令和元(2019)年度には、インドネシアにおいて「職場給食のメニュー改善を通じた栄養改善」プロジェクトが実施されています。具体的には、モデル事業導入工場で働く工員に対して、我が国の給食提供業者が健康的な食事メニューを提供するとともに、ボゴール農科大学が栄養教育を実施し、工員の栄養に関する知識や行動の変化が起きるかを実証する試験を実施しました。また、カンボジアにおいては、平成30(2018)年度に実施した若年女性工場労働者約180人に対する栄養強化米導入及び栄養教育を実施する介入試験の実証結果を踏まえ、令和元(2019)年12月から、スマートフォン向けアプリを活用し、工員の栄養リテラシー向上及び食生活に関する行動変容を推進する栄養啓発プロジェクトを開始しました。
加えて、我が国は、平成28(2016)年8月に開催された TICAD VIにおいて、「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA(*6))」を立ち上げました(図表2-8-1)。本イニシアチブは、マラボ宣言及びSDGs(目標2及びその他)の掲げる「飢餓の根絶と栄養状態改善」を考慮し、アフリカにおける飢餓と栄養不良の克服を図るために必要な国際社会の取組を加速化するものです。我が国は、本イニシアチブを通じて農業・食料アプローチに焦点を当てた現場でのマルチセクターの栄養改善の取組を他ドナーやボランティアなど多くの関係者とともに推進しており、令和元(2019)年8月に開催されたTICAD7では、アフリカの5歳以下の子供2億人の栄養改善に向けて、これまで培ったIFNAの経験・知見をアフリカ全土に拡大することを表明しました。
*1 Food and Agriculture Organization of the United Nationsの略
*2 United Nations World Food Programmeの略
*3 Universal Health Coverageの略
*4 Nutrition Japan Public Private Platformの略
*5 栄養改善事業推進プラットフォーム(栄養改善事業推進プラットフォーム):https://njppp.jp/(外部リンク)
*6 Initiative for Food and Nutrition Security in Africaの略

コラム:オリンピック・パラリンピック栄養プロセス
平成24(2012)年、英国にてロンドン・オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されました。英国政府はこの機会を利用して、国際社会における栄養改善への取組を加速させるために、国際的な取組として「オリンピック・パラリンピック栄養プロセス」を開始しました。このとき開催された「オリンピック飢餓サミット」は英国政府のみならず、次回オリンピック開催国であったブラジル政府も共催として加わり、平成28(2016)年までに発育阻害 (stunting)の子供の数を2千5百万人まで減らすことを、各参加国、国際機関等とともに約束しました。
我が国は、この「オリンピック・パラリンピック栄養プロセス」に平成25(2013)年から参加しています。この年、英国が議長国となったG8ロック・アーン・サミットのサイドイベントとして、「成長のための栄養(N4G(*1)):ビジネスと科学を通じた飢餓との闘い」が開催されました。本イベントの成果文書として「成長のための世界的な栄養コンパクト」が作成され、令和2(2020)年までに、少なくとも2千万人の子供を発育阻害(stunting)から守り、170万人の命を救う、という目標が設定されました。我が国は、このとき、官民連携の下、世界の栄養改善に取り組むことを約束しました。
平成28(2016)年にブラジルで開催されたリオ・デ・ジャネイロ・オリンピック・パラリンピック競技大会では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催国である我が国も加わり、ブラジル政府、英国政府とともに「N4G:全ての人々の健康な食へのアクセス促進のための行動で栄養不良に対する進捗を加速させること」を共催しました。また平成29(2017)年には、以前から栄養問題に関心を払ってきたイタリア政府が、本プロセスに賛同し、G7ミラノ保健大臣会合のサイドイベントとして、「国際栄養サミット」を開催しました。
我が国は東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催国として、東京で栄養サミットを開催する予定です。これまでの栄養サミットでは、飢餓や低栄養を中心に議論が行われてきましたが、今回は、肥満や生活習慣病の原因となる過栄養を加え、低栄養と過栄養の双方が存在する状態である「栄養不良の二重負荷」をも対象とした上で、これらの課題の解決に向けて、「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進にも資する議論が行われる予定です。本サミットを機に、国、国際機関、産業界、学術界、市民社会等の幅広い関係者が栄養改善の現状と課題を正しく理解し、課題解決のためのコミットメント(誓約)を表明した上で、それを確実に遂行していくことが期待されています。
*1 Nutrition for Growthの略
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