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お米と環境

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お米と環境(PDF : 2,579KB)
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持続可能な暮らしに「お米」が果たす役割

未来のことを考え、何かを選んだり判断したりするとき、今や「持続可能性」は避けては通れないものになっています。農業・林業・畜産等から排出される温室効果ガス(GHG)は、人の活動由来の20%強(*1)を占め、食料生産・供給も地球環境に大きな負荷がかかる活動です。

毎日の食事、その一つ一つの材料についても、すべての人の暮らしに関わることだけに、食料こそが持続可能な社会、暮らしの実現を左右するものと言っても、大袈裟ではないかもしれません。

お米を主食とする日本の食料事情における「持続可能性」にはさまざまな要素があります。その食品が安定的に手にはいるものなのか、生産現場での環境負荷はどうなのか、収穫量が将来も保たれるのか、生産者がずっと続けられる状況にあるのか等、考えなければいけないことは多種多様です。

  • *1 IPCC 「土地関係特別報告書」の概要 2020年度 p.27丨環境省

海外の資源や環境問題と日本の食料

日本の場合、農業由来の温室効果ガス排出量は全排出量のわずか3.9%です。しかし、これは注意深くみなくてはならない数値です。日本は、農産物の輸入額から輸出額を引いた純輸入額では中国に次いで世界第2位(*2)であり、輸入額では4位(*3)となっています。

つまり、日本の食料需要を賄うには海外の資源(水、土地、肥料など)が大量に必要な状況です。そのため、海外での水不足や水質汚濁、干ばつなどの環境問題は、日本にとっても喫緊の課題と言えるのです。

また、日本国内で生産されるお米や野菜、食肉、乳製品の消費量を増やし、地産地消の取り組みをより一層進めることは、食料生産による環境負荷の低減にもなります。環境問題という点でも、食料の海外資源への依存度を減らすことが不可欠なのです。

「お米を食べること」と「フード・マイレージ」

日本はお米以外の食料の多くを輸入しています。そして、運搬・輸送で多くのエネルギーを消費しています。船や飛行機で運ばれる際の消費だけでなく、港や空港で積み替えられてトラックや鉄道で各地に届くまでのすべての段階での燃料消費だけでも、地球環境や社会の持続可能性に影響がありますが、そこで排出されるCO2の量、気候変動への影響まであわせて考える必要があります。

生産国から消費する国に届くまでに費やされるエネルギー消費やCO2排出量をできるだけ少なく抑えることが、持続可能な世界の実現につながるという考え方は、世界の共通認識となっていますが、食料品の輸送におけるCO2排出量を考えるうえで目安にできる 「フード・マイレージ」 という指標では、残念ながら日本は世界で群を抜いて高い状況です。食料輸送のための燃料消費やCO2排出量が世界一多いということは、地球環境に大きな負荷を与えてしまっていることを意味します。

フード・マイレージ=食料の輸送量×輸送距離

フード・マイレージ=食料の輸送量×輸送距離
フード・マイレージとは:輸入相手国別の食料の輸入量に、当該国から日本までの輸送距離を乗じ,その数値を累積することにより求められるもので、単位はt・km(トン・キロメートル)で表示される(出典:フード・マイレージ資料室)

各国のフード・マイレージの比較(総量、品目別)

各国のフード・マイレージの比較(総量、品目別)
2001年の数値で日本と諸外国のフード・マイレージを比較すると、総量では、韓国と米国は日本の約3~4割、イギリスおよびドイツは約2割、フランスは1割強となっている。また、人口1人当たりでは、韓国は日本に近い水準であったが、イギリスは約5割、フランスおよびドイツは約3割,米国は1割となっている(出典:フード・マイレージ資料室)


私たちが食料品を得るために支払うコストは、もはや単にその購入価格だけでは価値判断できなくなっています。単に「美味しいものがより安く食べられる」ということだけで、今のように輸入に多くを依存する状況を続けていいのか考えてみるべき段階にあります。

こうした状況を改善していく手立てとして、「地産地消」をもっと促進することが有効なのです。国という単位で考えれば、食料自給率を全体的に高めることになりますが、一朝一夕に変えられるものではなく、地道な取り組みを継続的に進めていくしかありません。

国内で自給可能なお米は、この点でも重要な役割を果たすことができます。

「国内で生産され、流通するお米をもっと食べる」という行動変容を実現できれば、日本の食料生産・流通の全体で、燃料消費やCO2排出量を減らすことにつながるからです。

水田の多面的な機能

四季の移ろいによって表情を変える水田の景色が、日本の原風景、代表的な景色のひとつであることに異を唱える人はあまりいないと思います。海外で制作される映画やドキュメンタリー映像では、山に囲まれた平地に霧が漂うシーンが象徴的に使われることがよくありますが、「霧が立ち込める景色」にも「お米」とのつながりがあります。霧は豊かな水の存在が必要で、水田の機能が関係しているのです。

稲作には常に水が必要です。今、分かっている範囲でも日本における水田稲作の歴史は約3千年、その間、繰り返されてきた水を確保するための営みが、現在の日本の国土の姿、私たちの生活環境の形成に関係していると考えられています。

世界でも多雨地帯に分類される日本は、年降水量がおよそ1,700mm、世界平均の約2倍あります。しかも、季節ごとに激しく変動し、梅雨期と台風期に集中し、河川の多くは急流です。

【保水・土壌保全】
大量に降った雨水を一旦溜め込み、ゆっくりと流す役割を水田はもっています。毎年、手入れが繰り返されることで保水能力が維持される水田は、実は「自然」ではなく、「人工」の存在と言ってもよいかもしれません。川の流れを調整・安定させ、土砂の流出を防ぎ、洪水を抑制する、ダムのような役割を果たして私たちの暮らしを守り、支えてくれているのです。また、土砂の流出や洪水を減らすことで、水田は海の生態系の保全にもつながっています。

【浄水・空気清浄】
水田には様々な生物が生息し、彼らはきれいな水に大切な存在です。土壌にいる微生物は水中の窒素(アンモニアや硝酸)を窒素ガスに分解してくれます。水田の水はその一部が地下に浸透していきますが、その過程で微細なゴミや細菌、水が含有している重金属イオンなどが除去されます。水田には浄水場のような機能も備わっているのです。

【気温安定】
水田の水は常に蒸発しています。稲からの蒸散(葉から水蒸気を出すこと)もあり、その際、大気から熱を奪うため、気温の上昇を防ぐ役割も水田は果たしてくれています。こうした機能があるから都会や街中よりも水田地帯のほうが涼しいのです。

【美しい景観の維持】
水田は日本の原風景のひとつです。誰もが美しいと感じる、山の斜面に作られた階段状の棚田を例に考えてみましょう。棚田でのお米作りは、生産効率は必ずしも高くありませんが、「棚田米」を選ぶ人がいることで農家の人たちは生産を続けることができます。

水田がある多くの地域で高齢化や過疎化が進んでいますが、お米を食べることで地域を支えることができます。景観の保全に貢献することにもなります。お米を食べることは、SDGsの「15 陸の豊かさも守ろう」にもつながる行動なのです。

水田にはこのように多面的な機能があり、「お米を食べること」は、地域の生態系維持や里地・里山の保全、フード・マイレージを減らすことになる等、SDGsにつながることがたくさんあります。お米が果たしてきた重要な役割を知り、考えてみましょう。

より詳しく知りたい方はコチラも

クボタのたんぼ 「田んぼがもつ役割」

(外部サイトに移動します)

「環境保全型」 のお米作り

定められた基準に則って、より手間ひまを費やして、自然環境や生態系の豊かさにより配慮した稲作に取り組む生産者もいます(トンボやカエル、クモ、ドジョウやメダカだけでなく、希少生物も生息する田んぼの担い手です)。こうした、農業の持つ物質循環機能を生かして環境負荷の軽減をはかる、環境保全型の生産方式でつくられた「環境保全米」を選ぶ人がもっと増えていけば、生産者も増えていく好循環が生まれます。

メタンガス発生量を減らす栽培方法や、農業用ドローンや衛星画像のデータ等を活用しながら農薬・化学肥料を削減する「スマート農業」に取り組む生産者も現れています。水田は温室効果ガスであるメタンガスを発生しますが、中干し期間の延長や、稲わらを土壌にすき込む時期を早めるとメタンガスを抑制する効果があるという研究報告もあり、メタン発生量を抑え、農薬・化学肥料の効率をあげて使用料を減らす稲作が普及していけば(そういうお米を選ぶ消費者が増えれば)、地球温暖化の抑制や生態系の保全にもつながると考えられています。

消費者が「何を食べるかの選択」が、持続可能な社会の実現につながっていることを知って頂きたいと思います。

より詳しく知りたい方はコチラも

特定非営利活動法人 環境保全米ネットワーク

(外部サイトに移動します)

環境負荷の少ないお米って、どんなもの?

(外部サイトに移動します)

イノベーションで実現する「持続可能な食料・農林水産業」

気候変動に伴う異常気象とその食料・農林水産物への影響が世界各地で顕在化し、農林水産業や地域の将来も見据えた持続可能な食料システムの構築が急務となっています。日本も2021年5月に食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定し、取り組みを進めています。

より詳しく知りたい方はコチラも

「みどりの食料システム戦略」

お米を食べることと耕作放棄地のカンケイ

耕作放棄地の増加は、農作物への獣害、不法投棄の温床になったり、火災の発生や炎症を引き起こしたりと、環境や地域への悪い影響を与えてしまいます。景観の悪化は、地域の観光産業や移住促進といった農業以外への悪影響も考えなければなりません。また、耕作放棄地は3年も放置すると木が生えてしまい、元の田畑に戻そうとしても、多大な費用と手間がかかります。

そこでも、お米が果たせることがあります。お米をはじめとした穀物は土地利用型の農業に分類されており、単位面積あたりの収益である土地生産性は低いものの(例:お米10万円/10a、イチゴ1,000万円/10a)、作業の機械化が進んでいるので、一人あたりが生み出す収益である労働生産性の伸び代は非常に高く(例:お米15ha/人、イチゴ10a/人)、お米は耕作放棄地の解消に適した作物でもあるのです。

私たちが国産のお米をもっと食べることは、耕作放棄地を減らし、観光産業や、地域の活性化にも、とても良い影響を与えてくれる筈です。

お米を作り続けるための「環境・人・地域」を維持する取り組み

持続可能な食料システムを構築するためには、お米の消費量を上げることも重要ですが、これまでの食生活を突然変更することは簡単ではないことも現実です。耕作放棄地を減らし、お米作りにかかわる人や地域を支える取り組みとしては、以下のようなものもあります。

食用に適さない古米、米菓メーカーなどで発生する破砕米など、 飼料としても処理されず、廃棄されてしまうお米を活用し、バイオマスプラスチックにアップサイクルできれば、水源の涵養*や土砂流出の防止など、里地里山の国土保全機能の低下などの社会課題解決に寄与します。

  • 水が地中に浸透して地下水として蓄えられる働き

実際の事例としては、2019年に始まった、南魚沼市及び三条市、浪江町、飯館村の耕作放棄地などを活用したバイオプラスチックの原料となるお米の作付けがあります。3年経った現在では、4か所(新潟県2か所、福島県2か所)、約30haにまで拡大し、減少の一途を辿る米の生産状況への歯止めとなり、遊休地や休耕田の解消につながる取り組みとなっています。

お米には無限の可能性があります。お米を食べること、お米を活用した新しい商品を応援することで、持続可能な食料システムの構築、日本の豊かな田園風景・水源の維持につながります。

お米が「環境」のミライに貢献できること

冒頭で取り上げたように、お米の自給率がほぼ100パーセントのお米を食べるという選択は、輸入品を食べることに比べて、フード・マイレージ=輸送段階でのCO2排出量の大幅な抑制になります。お米は生産(生育)段階でCO2を吸収するので、「お米を選ぶ(もっと食べる)」ことは、今後30年ほどの間に全世界で目指す 「社会全体で温室効果ガスの排出をゼロにする=カーボン・ニュートラル」 という目標達成にも貢献します。

また、お米には連作障害(同じ作物を同じ土地で作り続けると収量が落ちたり、病気になりやすくなる現象)が無く、何千年でも同じ場所で作り続けられるという強みがあります。

水田は多様な生物が互いに支えあう豊かな生態系を支え、保水・調整、洪水抑制、土壌保全、浄水、気温安定などの機能で、実は私たちの生活環境に深く広く関係しています。

環境に配慮し、負荷の軽減をはかる「環境保全米」に取り組む生産者や、農業用ドローンや衛星画像のデータ等も活用する「スマート農業」という変革も進んでいて、そうした動きが持続可能となり、生産者に広がっていくためには、消費者が「お米とその由来を意識して選び、食べること」が支えとなります。

お米は美味しいだけでなく、「食べること」 を通じて、生産者と消費者が相互に支え合い、持続可能な未来の実現や課題解決に貢献することができる食料なのです。

もう少し、お米を食べてみようと思いませんか?

本記事の監修者(順不同)

  • 齊藤 三希子

株式会社スマートアグリ・リレーションズ 社長執行役員

早稲田大学大学院で環境経済学を学び、総合コンサルティングファームを経て現職。 地域資源を活用した持続可能な地域モデルの創出や、Agri-Food Tech、カーボンニュートラル、バイオエコノミーなどの事業創出に従事している。

齊藤 三希子

  • 中森 剛志

中森農産株式会社 代表取締役

東京農業大学在学中から青果店などの経営を手がける。2017年に埼玉県加須市で、農作業のデジタル化により少数の人員で米、麦、大豆などを大規模に生産する中森農産を設立。数年で国内有数の規模に拡大している。

中森 剛志

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お問合せ先

農産局穀物課米麦流通加工対策室

代表:03-3502-8111(内線4772)
ダイヤルイン:03-6744-2184

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