更新日:平成27年11月5日
穀類中の遊離アスパラギン
穀類加工品に含まれるアクリルアミドは、主として、120℃以上で、原料穀類に天然に含まれている遊離アスパラギンと還元糖が加熱されると化学反応して生成します。
小麦加工品のアクリルアミド濃度と、原料小麦の遊離アスパラギン濃度との間には正の相関があるため、遊離アスパラギン濃度の低い原料を用いることで、加熱した時にできるアクリルアミドの生成量を減らすことができる可能性があります。
穀類中の遊離アスパラギンの含有実態について
農林水産省は、食品事業者の皆様がアクリルアミド低減対策を検討する際の参考にしていただけるよう、平成25年度に穀類中の遊離アスパラギンの含有実態を調査しました。
小麦を原料とする穀粉/小麦以外の麦類を原料とする穀粉/米を原料とする穀粉/その他の穀粉
今回の調査では、同じ品目の穀類を原料とする穀粉の中で、果皮・種皮(ふすま、麦ぬか、米ぬかなど)や胚芽を除いた穀粉は、果皮・種皮や胚芽又はこれらを含む穀粉よりも遊離アスパラギンの濃度が低い傾向にありました。
また、果皮・種皮、胚芽を除いた穀粉については、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)よりライ麦粉の方が遊離アスパラギン濃度は高い傾向にあり、小麦粉より精米粉の方が遊離アスパラギン濃度は低い傾向にありました。
小麦を原料とする穀粉
種類 |
試料 |
定量限界1 |
定量 |
遊離アスパラギン濃度 |
果皮・ |
|||
最小値 |
最大値 |
平均値3 |
中央値4 |
|||||
薄力粉 |
45 |
20 |
0 |
21 |
92 |
52 |
52 |
除去 |
中力粉 |
42 |
20 |
0 |
23 |
130 |
61 |
56 |
除去 |
準強力粉 |
15 |
10 |
0 |
70 |
180 |
110 |
110 |
除去 |
強力粉 |
48 |
10 |
0 |
50 |
290 |
120 |
110 |
除去 |
全粒粉薄力粉 |
15 |
20 |
0 |
94 |
440 |
190 |
170 |
含有 |
全粒粉中力粉 |
15 |
20 |
0 |
62 |
370 |
210 |
200 |
含有 |
全粒粉準強力粉 |
5 |
10 |
0 |
100 |
240 |
180 |
220 |
含有 |
全粒粉強力粉 |
15 |
10 |
0 |
140 |
650 |
300 |
260 |
含有 |
小麦胚芽 |
10 |
10 |
0 |
620 |
4000 |
2000 |
1650 |
含有 |
小麦ふすま |
10 |
10 |
0 |
260 |
930 |
620 |
605 |
含有 |
1 適切な精度で濃度を知ることができる最小の濃度をいいます。
2 調査した試料のうち、定量限界未満のものが何点あったのかを記載しています。
3 平均値は、定量限界未満の試料数が全試料数の60%以下の食品は以下に示す平均値1を、定量限界未満の試料数が60%を超える食品は平均値2及び平均値3を算出し、掲載データではこれらの平均値のうち、平均値1又は平均値2を記載しています。
平均値1:定量限界未満の濃度を定量限界の2分の1として算出。
平均値2:検出限界未満の濃度を検出限界とし、検出限界以上かつ定量限界未満の濃度を定量限界として算出。
平均値3:定量限界未満の濃度をゼロとして算出。
4 複数のデータを、数値が小さい方から順番に並べた時、ちょうど中央にくる値のことです。50%を超える試料が定量された場合についてのみ記載しています。
小麦以外の麦類を原料とする穀粉
種類 |
試料 |
定量限界1 (mg/kg) |
定量限界 |
遊離アスパラギン濃度(mg/kg) |
果皮・種皮や |
|||
最小値 |
最大値 |
平均値3 |
中央値4 |
|||||
大麦粉 |
10 |
20 |
0 |
77 |
330 |
130 |
93 |
不明 |
麦こがし4 |
10 |
20 |
6 |
<20 |
74 |
21 |
- |
不明 |
麦芽粉末5 |
5 |
20 |
0 |
460 |
550 |
510 |
520 |
不明 |
ライ麦粉 |
15 |
20 |
0 |
120 |
800 |
360 |
300 |
除去 |
全粒粉ライ麦粉 |
15 |
20 |
0 |
420 |
830 |
570 |
550 |
含有 |
オートミール6 |
3 |
10 |
0 |
440 |
600 |
530 |
550 |
不明 |
オートブラン7 |
2 |
10 |
0 |
670 |
700 |
680 |
685 |
含有 |
4 大麦を炒って粉にしたものです。
5 原材料が大麦麦芽又は麦芽粉末のみのものです。
6 原材料がエン麦(オート麦)又はカラス麦のみのものです。
7 原材料がエン麦(オート麦)又はカラス麦のふすまのみのものです。
注)麦こがしは加熱しているため、遊離アスパラギンが別の化学物質(アクリルアミド等)に変わっている可能性があります。
米を原料とする穀粉
種類 |
試料 |
定量限界1 (mg/kg) |
定量限界 |
遊離アスパラギン濃度(mg/kg) |
果皮・種皮や |
|||
最小値 |
最大値 |
平均値3 |
中央値4 |
|||||
玄米粉(国産) |
10 |
20 |
4 |
<20 |
76 |
38 |
41 |
含有 |
胚芽米粉(国産) |
5 |
20 |
1 |
<20 |
100 |
40 |
21 |
含有 |
精米粉(国産) |
30 |
20 |
22 |
<20 |
38 |
18 |
- |
除去 |
上新粉8 |
5 |
20 |
2 |
<20 |
56 |
27 |
24 |
除去 |
白玉粉9 |
5 |
20 |
5 |
<20 |
- |
10 |
- |
除去 |
道明寺粉10 |
5 |
20 |
5 |
<20 |
- |
10 |
- |
除去 |
米ぬか |
10 |
20 |
0 |
400 |
1100 |
690 |
715 |
含有 |
8 うるち米を精白してから、水洗い、乾燥させてから粉にしたものです。
9 もち米を精白してから、水洗いして、石うすで水びきし、沈殿したものを乾燥させたものです。
10 もち米を精白してから、水にひたしておき、これを蒸してから乾燥させ、粉にひいたものです。
その他の穀粉
種類 |
試料 |
定量限界1 (mg/kg) |
定量限界 |
遊離アスパラギン濃度(mg/kg) |
|||
最小値 |
最大値 |
平均値3 |
中央値4 |
||||
そば粉 |
20 |
20 |
1 |
<20 |
140 |
73 |
62 |
トウモロコシ粉 |
10 |
20 |
0 |
56 |
350 |
110 |
83 |
片栗粉 |
20 |
20 |
20 |
<20 |
- |
10 |
- |
農林水産省委託事業における調査の概要
試料の購入時期:平成25年12月~平成26年2月
試料の収集方法:市販の対象食品を全国の小売店舗やインターネットによる通信販売において、同一製品の重複を避けて購入。購入品の100 g以上を1検体として試験室試料とし、粉末状でないものについては、フードミルを用いて均質化・微粉砕したものを分析に使用しました。
分析法:HPLC-MS又は高速アミノ酸分析計を用いて分析しました。分析法及びその妥当性確認の結果は、こちら(PDF:271KB)をご覧ください。
関連情報
- 農林水産省は、アクリルアミドに関してこれまで収集した情報や調査研究で得られた知見を整理し、食品関連事業者向けに食品中のアクリルアミド低減対策の指針としてまとめています。
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課
担当者:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674
FAX:03-3597-0329