フラン及びフラン化合物とは

1.フラン及びフラン化合物とは

• フランは4つの炭素と1つの酸素が環状に結合した五員環を有する芳香族炭化水素です。フランの4つの炭素のうち1つ又は複数にメチル基やエチル基などの炭化水素の側鎖を有する化学物質をここでは「フラン化合物」^※と称します。
  ※アルキルフラン（alkylfuran）と呼ばれることもあります
• フランは沸点の低い揮発性の物質です。フラン化合物の場合は、側鎖が長くなる又は増えることにより分子量が大きくなるほど、沸点は上がり、揮発性が下がります。
  
  
  
  

2.汚染物質として注目されるようになった経緯

フランは、アミノ酸と還元糖の化学反応であるメイラード反応の生成物として加熱した食品中に微量に存在することが1979年に報告されており、食品に含まれる化学物質であることは知られていました。
2004年に米国食品医薬品局（FDA）が、焙煎コーヒーや缶詰など広範囲の加熱加工した食品中に、それまで考えられていたより高濃度でフランが含まれることを発表し、食品安全の観点からも注目されるようになりました。

その後、フランだけでなくフラン化合物についても様々な加工食品中に含まれていることが報告され、一部の国・地域では食品中のフラン及びフラン化合物の含有実態や毒性に関するデータの収集が進められています。

農林水産省でも、これまでに市販品におけるフラン含有実態調査やフラン化合物の分析法開発などを行ってきました。引き続き、フラン及びフラン化合物に関する調査・情報収集を行っていくこととしています。
（参考：農林水産省の取組）

3.食品中のフラン及びフラン化合物の生成経路

食品中のフランは食品の加熱処理、発酵、熟成などの過程で、アミノ酸と還元糖によるメイラード反応、炭水化物やアミノ酸の熱分解、アスコルビン酸やカロテノイド、不飽和脂肪酸の酸化など、様々な前駆体から、様々な経路で生成されると考えられています。食品中のフラン化合物の生成経路はあまり解明されていませんが、フランと同様に、アミノ酸やリノレン酸（不飽和脂肪酸の1種）等を前駆体として食品の加熱処理の過程で生成されることが示唆されています。

4.フラン及びフラン化合物に懸念される毒性

• 体内に吸収されたフランは、肝臓において反応性の高い別の化学物質に代謝されます。その代謝物は、動物実験等の結果により、肝毒性や遺伝毒性の発がん性を有することが報告されています。
• FAO/WHO食品添加物専門家会議（JECFA）は、食品中のフランについて、動物実験の結果に基づく毒性評価と推定摂取量から暴露幅（MOE）を算出して評価した結果、遺伝毒性の代謝物を通して作用する可能性がある発がん物質としては、暴露幅が小さく、人の健康への懸念があると評価しています。
• フラン化合物のうち2-メチルフラン、3-メチルフラン、2,5-ジメチルフランは、毒性に関する情報は限られているものの、代謝の過程で反応性の高い代謝物が生成することが報告されています。欧州食品安全機関（EFSA）は、肝毒性についてフラン、2-メチルフラン及び3-メチルフランを相加的に考慮するのが妥当と判断し、フラン単体での暴露を考慮したときと比べ、2-メチルフラン及び3-メチルフランとの複合暴露は肝毒性の懸念を高める可能性があると評価しています（2017）。
• 食品から摂取するフラン及びフラン化合物によるヒトの健康影響についての情報は限られており、引き続き更なる情報収集を行うことが必要です。

5.健やかな食生活を送る上での留意点

フランやフラン化合物は、様々な種類の食品に含まれている可能性があり、含有実態についても十分に分かっていません。フランやフラン化合物が含まれる可能性があるからといって、むやみに特定の食品を食べるのをやめたり、量を減らしたりすれば、健康の維持や増進に必要な栄養を摂取できなくなる可能性があります。バランスの良い食生活を心がけましょう。

参考文献

米国食品医薬品庁（FDA）2004
Furan in Food, Thermal Treatment; Request for Data and Information(PDF:156KB)（外部リンク）

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議（JECFA）2011 第72回会議
Safety evaluation of certain contaminants in food. WHO Food Additives Series:63（外部リンク）

欧州食品安全機関（EFSA）2017
Risks for public health related to the presence of furan and methylfurans in food（外部リンク）