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農林水産省

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令和5年度(2023)乳幼児用食品中の鉛等の含有実態調査の結果について

2024年12月23日公表

調査の背景と目的

環境中に存在する鉛は、大気、土壌、水等を通じて農畜水産物を汚染することが知られています。また、食品加工に用いる機械、器具等に含まれる鉛も、食品の汚染につながることがあります。

少量の鉛に継続的にばく露することは、人の健康、特に子供の神経発達に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、多くの国が環境中の鉛を低減するための排出源管理や食品製造時の汚染防止対策を実施しています。日本でも、排出源対策により環境中への鉛の放出は抑制されており、環境中の鉛濃度は減少していますが、人がばく露する量を可能な限り少なくするには、排出源対策に加え、合理的に達成可能な範囲で食品に含まれる鉛を減らすことが重要です。

そこで農林水産省は、国内で製造・販売されていた乳幼児用食品中の鉛、カドミウム、水銀、ヒ素の濃度を予備的に把握し、食品中の鉛等の低減対策の必要性を確認するため、含有実態調査を行いました。

調査した食品及び試料の入手方法

国内で製造・販売された乳幼児用食品*1:計180点
<内訳>
 ・ドライタイプの乳幼児用食品2:30点
 ・ウェットタイプの乳幼児用食品3:59点
 ・乳幼児用菓子類:31点
 ・乳幼児用飲料:30点(そのまま飲用する(RTD)製品20点、希釈用・粉末10点)
 ・乳幼児用調製乳:30点(粉末状20点、液状10点)
*販売者が国内事業者であり、国内で製造され、容器包装等で乳幼児用であることを標榜している食品。なお、飲料については乳幼児用であることを標榜していないものも含みます。
*2 乳幼児用の乾麺、シリアル、粉末スープ、ふりかけ、フリーズドライ等。
*3 乳幼児用のレトルトパウチ、瓶詰、弁当、冷凍食品等。

2023年度に、同一製品の重複を避け、製造者が偏らないように多様な製品を小売店で購入しました。(液状の調製乳は、製造ロットの異なる同一製品を重複して購入しています。)

調査対象とした物質及び分析法

<鉛・カドミウム・総水銀・総ヒ素>
試料を均質化後、硝酸と過酸化水素水を加えてマイクロウェーブ分解装置を用いて湿式分解し、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて分析しました。
<無機ヒ素>
試料を均質化後、希硝酸を加えて加熱抽出し、高速液体クロマトグラフ-誘導結合プラズマ質量分析計(HPLC-ICP/MS)を用いて分析しました。

表1 検出下限・定量下限(単位:mg/kg)
分析種 固体の試料 液体の試料
検出下限 定量下限 検出下限 定量下限
0.002 0.006 0.001 0.003
カドミウム 0.002 0.007 0.001 0.004
総水銀 0.003 0.007 0.001 0.003
総ヒ素 0.003 0.009 0.001 0.003
無機ヒ素 0.003 0.008 0.001 0.004

分析法の詳細や妥当性確認の結果はこちら(PDF:264KB)をご覧ください。

乳幼児用食品の調査結果

調査した乳幼児用食品180点の鉛濃度は、151点の試料で定量下限未満の濃度でした。

カドミウム、総ヒ素、無機ヒ素濃度は半数以上の試料で、総水銀濃度はほぼ全ての試料で定量下限未満の濃度でした。

なお、調査対象とした食品には、食品衛生法に基づく重金属類の規格基準が設けられているものもありますが、本調査は、食品衛生法の規格基準への適否を判断することが目的ではなく、分析法も食品衛生法で定められた方法とは異なります。このため、本調査結果から食品衛生法の規格基準への適否を判断することはできません。


表2 乳幼児用食品中の鉛濃度
品目 点数 定量下限
未満の数
最小値1
[mg/kg]
最大値1
[mg/kg]
平均値2
[mg/kg]
中央値3
[mg/kg]
ドライタイプの乳幼児用食品 30 25 - 0.054 0.005-0.010 -
ウェットタイプの乳幼児用食品 59 57 - 0.009 0.000-0.006 -
乳幼児用菓子類 31 19 - 0.044 0.005-0.008 -
乳幼児用飲料(RTD) 20 19 - 0.004 0.000-0.003 -
乳幼児用飲料(希釈用・粉末) 10 7 - 0.029 0.005-0.009 -
乳幼児用調製乳(粉末)4 20 14 - 0.015
(0.0021)
0.003-0.007
(0.0004-0.0010)
-
乳幼児用調製乳(液状) 10 10 - - 0-0.003 -

表3 乳幼児用食品中のカドミウム濃度
品目 点数 定量下限
未満の数
最小値1
[mg/kg]
最大値1
[mg/kg]
平均値2
[mg/kg]
中央値3
[mg/kg]
ドライタイプの乳幼児用食品 30 6 - 0.40 0.051-0.052 0.031
ウェットタイプの乳幼児用食品 59 45 - 0.048 0.003-0.008 -
乳幼児用菓子類 31 6 - 0.11 0.029-0.031 0.018
乳幼児用飲料(RTD) 20 18 - 0.008 0.001-0.004 -
乳幼児用飲料(希釈用・粉末) 10 7 - 0.015 0.004-0.008 -
乳幼児用調製乳(粉末)4 20 13 - 0.013
(0.0018)
0.004-0.008
(0.0005-0.0011)
-
乳幼児用調製乳(液状) 10 10 - - 0-0.004 -

表4 乳幼児用食品中の総水銀濃度
品目 点数 定量下限
未満の数
最小値1
[mg/kg]
最大値1
[mg/kg]
平均値2
[mg/kg]
中央値3
[mg/kg]
ドライタイプの乳幼児用食品 30 27 - 0.012 0.001-0.007 -
ウェットタイプの乳幼児用食品 59 59 - - 0-0.007 -
乳幼児用菓子類 31 31 - - 0-0.007 -
乳幼児用飲料(RTD) 20 20 - - 0-0.003 -
乳幼児用飲料(希釈用・粉末) 10 10 - - 0-0.007 -
乳幼児用調製乳(粉末)4 20 20 - - 0-0.007
(0-0.0010)
-
乳幼児用調製乳(液状) 10 10 - - 0-0.003 -

表5 乳幼児用食品中の総ヒ素濃度
品目 点数 定量下限
未満の数
最小値1
[mg/kg]
最大値
[mg/kg]
平均値2
[mg/kg]
中央値3
[mg/kg]
ドライタイプの乳幼児用食品 30 14 - 8.6 0.65-0.65 0.021
ウェットタイプの乳幼児用食品 59 22 - 0.44 0.043-0.047 0.021
乳幼児用菓子類 31 16 - 0.79 0.074-0.078 -
乳幼児用飲料(RTD) 20 15 - 0.018 0.002-0.004 -
乳幼児用飲料(希釈用・粉末) 10 9 - 0.011 0.001-0.009 -
乳幼児用調製乳(粉末)4 20 8 - 0.069
(0.010)
0.014-0.018
(0.0020-0.0025)
0.011
(0.0015)
乳幼児用調製乳(液状) 10 6 - 0.005 0.002-0.004 -

表6 乳幼児用食品中の無機ヒ素濃度
品目 点数 定量下限
未満の数
最小値1
[mg/kg]
最大値1
[mg/kg]
平均値2
[mg/kg]
中央値3
[mg/kg]
ドライタイプの乳幼児用食品 30 18 - 0.80 0.043-0.047 -
ウェットタイプの乳幼児用食品 59 56 - 0.17 0.006-0.013 -
乳幼児用菓子類 31 19 - 0.095 0.022-0.027 -
乳幼児用飲料(RTD) 20 17 - 0.012 0.001-0.005 -
乳幼児用飲料(希釈用・粉末) 10 10 - - 0-0.008 -
乳幼児用調製乳(粉末)4 20 13 - 0.047
(0.0071)
0.007-0.013
(0.0010-0.0017)
-
乳幼児用調製乳(液状) 10 6 - 0.004 0.002-0.004 -

1.定量下限未満の試料がある場合、最小値は記載していません。また、全試料が定量下限未満の場合、最大値は記載していません。
2.平均値UBとLBを算出し、その範囲を記載しています。
 平均値UB:定量下限未満の濃度を「定量下限値」として、平均値を算出。
 平均値LB:定量下限未満の濃度を「ゼロ」として、平均値を算出。
3.試料の半数以上が定量下限未満の場合、中央値は算出していません。
4.括弧外の数値は、粉末状態の製品当たりの分析値です。括弧内の数値は調乳後の推定値(粉末状態の各製品の鉛濃度を、各製品に示されている希釈倍率で除した値。単位はmg/L)です。

まとめ・今後の対応

今回の調査の結果、国内で製造・販売された乳幼児用食品中の鉛、カドミウム、総ヒ素、無機ヒ素は半数以上の試料で、総水銀についてはほぼ全ての試料で、定量下限未満の濃度であることが分かりました。

人の一生において乳幼児用食品の摂食機会は一時期のみに限られる上に、これらの食品に含まれる鉛等の濃度も十分低いことが確認されました。このことから、日本人が乳幼児用食品から摂取する鉛等について、食品全体から継続的に摂取する鉛等の量に占める割合は小さく、リスク管理措置を講じる必要性は低いと考えられました。

今回、調査対象とした鉛等の汚染物質については、合理的に達成可能な範囲で食品中の濃度をできる限り低くすることが重要であることから、農林水産省は、製造事業者への情報提供等を通して、食品中の鉛等の濃度の低減に貢献していきます。

なお、鉛は大気中に存在しており、大気中の鉛濃度の変化等によって、食品の原料となる農畜水産物の汚染状況が変化する可能性があるため、一定期間が経過した後には最新の実態を把握することとします。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)
ダイヤルイン:03-3502-8731