作成日:平成28年3月11日
肉用牛の消化管内・肝臓・胆汁のカンピロバクター分布状況調査
2.3.2.2. 食肉処理加工施設
2.3.2.2.1. 肉用牛の消化管内・肝臓・胆汁の菌分布状況調査(平成23年度)
と畜時の肉用牛の消化管内・肝臓(表層)・胆汁のカンピロバクターの分布を把握するために、3か所のと畜場において以下のとおり採取した試料を対象に、カンピロバクターの調査を行いました。
その結果、消化管の部位別のカンピロバクターの分離状況は、直腸内容物から分離された頭数が最も多く(57頭)、次いで、十二指腸内容物(51頭)、第四胃内容物(12頭)、第一胃内容物(3頭)の順でした。また、肝臓と胆汁も採取した29頭のうち、9頭の胆汁からカンピロバクターが分離され、そのうち5頭は肝臓からも分離されました。別の64頭の肝臓については、15点からカンピロバクターが分離されました。 |
(1) 目的
と畜時の肉用牛の消化管内・肝臓・胆汁のカンピロバクターの分布を把握する。
(2) 試料の採取
平成23年9月~12月に、と畜場1か所(A4)で、解体処理された肉用牛96頭から、第一胃内容物、第四胃内容物、十二指腸内容物、直腸内容物を採取しました。そのうち、29頭の牛からは肝臓と胆のう内の胆汁も採取しました。
また、平成23年8月~12月に、別のと畜場2か所(B及びC)で、解体処理された肉用牛32頭ずつ(計64頭)から、肝臓を採取しました。
4 と畜場名A~Cは、他調査の結果で用いられていると畜場名と関連ありません。
(3) 微生物試験
第一胃内容物、第四胃内容物、十二指腸内容物、直腸内容物、肝臓(表層:36 cm2×深さ1 cm)、胆汁を試料として、カンピロバクターの定性試験(3.1.1.1 (3) 、3.1.1.7)を行いました。これらの試料のうち1点でもカンピロバクターが分離された肉用牛は、陽性(カンピロバクター保有)と判定しました。
分離されたカンピロバクターについては、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli)を同定(3.1.3.1)しました。
(4) 結果
と畜場Aにおいて、カンピロバクターは、肉用牛96頭のうち69頭(72%)から分離されました。消化管の部位別にみると、直腸内容物から分離された頭数が最も多く(57頭)、次いで、十二指腸内容物(51頭)、第四胃内容物(12頭)、第一胃内容物(3頭)の順でした。カンピロバクターの陽性牛69頭のうち12頭(17%)では、直腸内容物からカンピロバクターは分離されませんでした(表27)。
表27:消化管内容物からのカンピロバクターの分離状況
カンピロバクターが分離された部位 |
陽性頭数 |
直腸、十二指腸 |
27 |
直腸のみ |
16 |
直腸、第四胃、十二指腸 |
10 |
直腸、第一胃、十二指腸 |
2 |
直腸、第一胃 |
1 |
直腸、第四胃 |
1 |
十二指腸のみ |
11 |
第四胃、十二指腸 |
1 |
計 |
69 |
菌種別にみると、カンピロバクター陽性の69頭のうち、C.jejuni が分離された牛は55頭、C.coli が分離された牛は30頭でした。C.jejuniとC.coli両方を消化管内に保有している牛は16頭でした。
と畜場Aにおいて肝臓と胆のう内の胆汁も採取した29頭のうち、9頭の胆汁からカンピロバクター(すべてC.jejuni )が分離され、このうち5頭は肝臓からも分離されました。胆汁からカンピロバクターが分離されなかった牛は、肝臓からも分離されませんでした。
と畜場B及びCで採取された肝臓64点については、15点からカンピロバクターが分離されました。分離されたカンピロバクター15株のうち、11株はC.jejuni、4株はC.coliでした。
指導者・事業者の皆様へ と畜場1か所での調査では、カンピロバクターは、肉用牛96頭のうち69頭(72%)から分離されました。消化管の部位別のカンピロバクターの分離状況は、直腸内容物から分離された頭数が最も多く(57頭)、次いで、十二指腸内容物(51頭)、第四胃内容物(12頭)、第一胃内容物(3頭)の順であり、カンピロバクターは直腸以外の消化管にも分布していることがわかりました。また、カンピロバクターを保有する69頭のうち12頭では、直腸内容物からカンピロバクターは分離されませんでした。したがって、生前に採取することが可能な直腸便のみを採取してカンピロバクターの保有状況を調べた場合、陽性牛を見逃す可能性があると推測されました。 と畜場は、受け入れる牛がカンピロバクターに感染し、カンピロバクターが直腸以外の消化管にも分布している可能性を考慮して、衛生対策を実施する必要があります。厚生労働省は、と畜場における衛生管理措置及び食肉検査(外部リンク)や、と畜・食肉処理場におけるHACCP(外部リンク)の導入を推進しています。関連法令や通知(検索画面へ)(外部リンク)等を参照してください。 また、肝臓と胆のう内の胆汁を採取した29頭のうち、9頭の胆のう内の胆汁からカンピロバクターが分離され、そのうち5頭は肝臓からも分離されました。胆のうは、胆管を介して肝臓とつながっています。胆のう内の胆汁中に存在するカンピロバクターが、胆のうを切除する際等に肝臓表面に付着したり、肝臓内部に入ったりする可能性については、引き続き情報を収集していきます。また、他のと畜場2か所で採取した肝臓65点のうち15点からカンピロバクターが分離されました。 通常の加熱調理(中心部を75℃以上で1分間以上加熱)を行えば、カンピロバクターは死滅します。厚生労働省は、飲食店や食肉販売店等の事業者に対し、牛の肝臓を生食用として販売・提供することを禁止しています。関連法令等やリーフレット(外部リンク)を参照してください。 |
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