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農林水産省

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作成日:平成29年3月31日

ブロイラー農場の鶏群及び鶏舎内部のサルモネラ汚染状況調査

 2.1.2.1. 肉用鶏農場

 2.1.2.1.7. ブロイラー農場の鶏群及び鶏舎内部の菌汚染状況調査(平成26・27年度)

次のことを把握するために、ブロイラーを生産する10農場(平成26年度)及び24農場(平成27年度)において、各農場で1鶏舎を対象にサルモネラの調査を行いました。

  • 鶏舎の洗浄・消毒後の汚染状況
  • 鶏舎の洗浄・消毒の前後に同一鶏舎で飼養された鶏群のサルモネラ保有状況

その結果、鶏舎を洗浄・消毒する前に飼養されていた鶏群の80%(平成26年度)、100%(平成27年度)がサルモネラを保有していました。それらの鶏群を出荷し、洗浄又は洗浄・消毒した後、半数以上の鶏舎の内部からサルモネラが分離されました。また、その後に同一鶏舎内で飼養された鶏群の70%(平成26年度)、96%(平成27年度)がサルモネラを保有していました。平成27年度の9鶏舎では、鶏舎の洗浄・消毒の前後の鶏群から分離されたサルモネラの血清型が異なっていました。

 

(1) 目的

空舎期間中に洗浄・消毒を行った後の鶏舎のサルモネラ汚染状況を把握する。また、鶏舎の洗浄・消毒の前後に同一鶏舎で飼養された鶏群のサルモネラ保有状況を把握する15

15 「ブロイラー農場の鶏群及び鶏舎内部のカンピロバクター汚染状況調査」(2.1.1.1.7)と併せて実施。
 

(2) 試料採取

〇 第1回調査

平成26年9月~平成27年2月に、ブロイラーを生産する10農場の10鶏舎において、次のように試料を採取しました(表40)。

表40:試料の採取時期、種類及び点数(1鶏舎あたり、第1回調査)

試料採取時期

試料の種類

試料点数

第1鶏群飼養中

(1)出荷1週間前

新鮮盲腸便

5

第1鶏群の出荷後
(空舎期間中

 

 

(2)鶏舎洗浄後

鶏舎床の拭き取り試料

4

鶏舎内部の拭き取り試料

5

(3)鶏舎消毒後 (敷料の搬入直前)

鶏舎床の拭き取り試料

4

鶏舎内部の拭き取り試料 5

第2鶏群飼養中

(4)出荷1週間前

新鮮盲腸便

5

※ 敷料や糞便を取り除いた後、鶏舎内を水で洗浄し、2~3回消毒し、新しい敷料を搬入。(器材の洗浄・消毒の有無は農場によって異なっていた。鶏群出荷から新しい雛の導入までの期間は15~30日。

※※壁、飼料パイプ、給水パイプ、電気ボックス等

 

〇 第2回調査

平成27年7月~平成28年2月に、ブロイラーを生産する24農場の24鶏舎において、次のように採取しました(表41)。

表41:試料の採取時期、種類及び点数(1鶏舎あたり、第2回調査)

試料採取時期

試料の種類

試料点数

第1鶏群飼養中

(1)出荷1週間前

新鮮盲腸便

5

第1鶏群の出荷後
(空舎期間中) 

(2)鶏舎洗浄及び消毒後(敷料の搬入直前)

鶏舎床の拭き取り試料

4

第2鶏群飼養中

(3)出荷1週間前

新鮮盲腸便

5

※  敷料や糞便を取り除いた後、鶏舎内を水で洗浄し、3回消毒し、新しい敷料を搬入。(器材の洗浄・消毒の有無は農場によって異なっていた。)鶏群出荷から新しい雛の導入までの期間は7~30日。



(3) 微生物試験

新鮮盲腸便、鶏舎床の拭き取り、鶏舎内部の拭き取りを試料としてサルモネラの定性試験(3.2.1.1(10)3.2.1.4(7)3.2.1.4(8))を行いました。各鶏舎で飼養されている鶏群の新鮮盲腸便の試料のうち、1点でもサルモネラが分離された鶏群は、陽性(サルモネラ保有)と判定しました。また、床拭き取り試料又は内部拭き取り試料のうち、1点でもサルモネラが分離された鶏舎は、陽性と判定しました。分離されたサルモネラについては、O抗原及びH抗原を調べて血清型を特定(3.2.3.1)しました。
 
  

(4) 結果

〇 第1回調査
第1鶏群がサルモネラ陽性であった鶏舎は、調査対象の10鶏舎のうち8鶏舎(80%)でした。

第1鶏群が陽性であった8鶏舎のうち6鶏舎では、第1鶏群を出荷し洗浄した後も鶏舎からサルモネラが分離されましたが、消毒した後には8鶏舎からサルモネラは分離されませんでした。

その後に同一の8鶏舎に導入された第2鶏群は、6鶏舎でサルモネラ陽性でした。この6鶏舎のうち、5鶏舎は、洗浄後にサルモネラが分離された鶏舎でした。

第1鶏群が陰性であった2鶏舎では、第1鶏群を出荷し洗浄した後、さらに消毒した後はいずれもサルモネラは分離されませんでした。その後に同一の2鶏舎に導入された第2鶏群は、1鶏舎でサルモネラ陽性でした(表42)。

 
分離されたサルモネラは、すべてSalmonella Infantis でした。

表42:各鶏舎の鶏群と鶏舎床・内部からのサルモネラ分離状況(第1回調査)

 

1鶏群(1)サルモネラ
陽性の鶏舎(8鶏舎)

第1鶏群(1)がサルモネラ
陰性の鶏舎(2鶏舎)

鶏舎床・内部(洗浄後(2))がサルモネラ陽性

6鶏舎

0鶏舎

鶏舎床・内部(消毒後(3))がサルモネラ陽性

0鶏舎

0鶏舎

第2鶏群(4)がサルモネラ陽性

   6鶏舎※※

1鶏舎

※   (1)~(4)は、表27の試料採取時期(1)~(4)に対応。
※ 6鶏舎のうち、5鶏舎は洗浄後サルモネラ陽性であり、1鶏舎は洗浄後サルモネラ陰性であった。

 


 〇 第2回調査

調査対象の24鶏舎すべてで、第1鶏群(24鶏群)がサルモネラ陽性でした。第1鶏群の新鮮盲腸便から分離されたサルモネラの血清型は、S. Typhimurium(71%、77/108)、S. Infantis(29%、31/108)でした。

第1鶏群を出荷した後に洗浄・消毒した鶏舎(24鶏舎)のうち、19鶏舎(79%)からサルモネラが分離されました(表43)。鶏舎から分離されたサルモネラの血清型は、S. Typhimurium(55%、31/56)、S. Infantis(45%、25/56)でした。

第2鶏群がサルモネラ陽性であった鶏舎は、24鶏舎のうち23鶏舎(96%)でした(表43)。第2鶏群の新鮮盲腸便から分離されたサルモネラの血清型は、S. Typhimurium(71%、73/103)、S. Infantis(29%、30/103)でした。
表43:各鶏舎の鶏群と鶏舎床からのサルモネラ分離状況(第2回調査)

 

第1鶏群(1)がサルモネラ

陽性の鶏舎(24鶏舎)

鶏舎床(洗浄・消毒後(2))がサルモネラ陽性

19鶏舎

第2鶏群(3)がサルモネラ陽性

23鶏舎

 ※   (1)~(3)は、表28の試料採取時期(1)~(3)に対応。
 

陽性の第2鶏群が飼養されていた23鶏舎のうち、14鶏舎では、第1鶏群と洗浄・消毒後の鶏舎床から分離されたサルモネラの両方と同じ血清型のサルモネラが分離されました。また、9鶏舎では、第1鶏群と洗浄・消毒後の鶏舎床から分離されたサルモネラのどちらとも異なる血清型のサルモネラが分離されました。

まとめ

 今回の2つの調査では、半数以上の鶏舎において、洗浄・消毒の前に飼養された鶏群と、後に飼養された鶏群から同じ血清型のサルモネラが分離されました。また、一部の鶏舎で、第1鶏群と洗浄・消毒後の鶏舎から、同じ血清型のサルモネラが分離されました。したがって、消毒後も、今回調査した鶏舎の床や、それ以外の場所にサルモネラが生き残り、次に導入される鶏群に感染すると考えられました。

また、第2回調査では、第2鶏群から、第1鶏群と消毒された鶏舎のどちらとも異なる血清型のサルモネラが分離されました。今回の調査からは、サルモネラの侵入経路は分かりませんでしたが、人や昆虫がサルモネラを持ち込んだ可能性(2.1.2.1.6)、第2鶏群が導入前からサルモネラを保有していた可能性など、鶏舎外からの侵入が考えられました。

引き続き、空舎期間中の洗浄・消毒の重要性や、有害微生物の侵入経路について、調査や情報収集等を行っていきます。

 

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-0490
FAX:03-3597-0329